野次馬の男は処刑台の上に昇って、サラの身体を弄び始めました。騎士団員や他の野次馬たちも処刑台の前に群がります。それを見たゲイザーが怒り狂って雄叫びを上げました。
「やめろ!!大の男が寄ってたかって、一人の女に手を出すとは…。お前たち、騎士として恥ずかしいとは思わないのか!?」
「ほほう、やはり昔の女が他の男に手篭めにされる姿を見るのは辛いか?」
「ギルバート!貴様は騎士団に所属していた頃から気に食わなかった…。お前だけは絶対に許さない!!」
「何を許さないと言うんだ?今のお前の姿はただの負け犬の遠吠えだ」
突然、ゲイザーの身体がビクンと脈打つように動き出しました。全身がけむくじゃらの狼人間に変身して、縄を引き千切るとサラのいる処刑台に向かって、猛スピードで突進します。
「見よ!?ゲイザーは獣人の仲間だ!!」
ギルバートが叫ぶと、男たちは悲鳴を上げて、我先にと逃げ去ります。ゲイザーはサラの縄を解くと、抱き上げて逃走しました。騎士団員が追いかけましたが、足が速く追いつけません。
「弓を射よ!奴を絶対に逃がすな?」
矢が何本かゲイザーの背中に突き刺さりましたが、そのまま森の中に消えて見えなくなりました。
「何と言う事だ!悪党ゲイザーをおめおめ逃してしまうとは…」
「国王様、申し訳ございません!どうか私めにご慈悲を…」
「ならぬ!其の方の失態は目に余る物がある。ギルバートの首をはねよ?」
「そんな!なぜ私がこんな目に…。おのれ、ゲイザー!!」
騎士団員に取り囲まれ、ゲイザーの縛られていた処刑台に縛り付けられて、ギルバートは首をはねられました。その頃、ゲイザーはマルヴェールの出入口である洞穴の前にサラを連れて来ていました。
「サラ…。私が獣人になった姿を見て驚きましたか?」
「いいえ、ゲイザー様が獣人の女性と結婚されたと聞いて薄々勘付いていましたので…」
「こんな恐ろしい化け物になった姿を見られてしまったら、もう私への愛情は冷めてしまったでしょう?」
「私の事を見くびらないでください!ゲイザー様への愛情はそんな簡単に冷める物ではありません…」
「こんな姿を見てもまだ私を愛していると言うのか…」
…つづく
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昔、書いていたオリジナル小説の第63話です。