No.936931

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝第2話

小次郎さん

魏の恋姫達と一刀はあれから

2018-01-10 16:00:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8720   閲覧ユーザー数:6657

この種馬!女の敵!全身精液男!

ただでさえ忙しいなんて生易しい言葉では済まされない状態なのに、益州から戻ってきたら重臣が軒並み懐妊で政務の半分もこなせないなんて。

「全部アンタの所為よ、どうするつもりなのよ!」

「いや、元から仕事を一人で背負わないようにと言ってただろ?むしろ俺としては今回の事を機に皆に考えて欲しいと思ってる」

それは、確かに正論よ。

今後の治世を考えるなら組織として充実を図るべきで、一人の才人に決定を集中させる事からは脱却していかないと。

国の最重要課題ともいえる人材の育成、学校も来年から実施される。

「桂花、才ある者からすれば自分が行なった方が速いと思うだろうけど、それはあくまで支えてくれる者達があってこそだ。全てを一人が決めるなんて人の営みから考えれば歪でしかないよ。桂花も本当は分かってるだろ?」

「だからって新たに仕事を任された者が直ぐに役に立つ訳ないわ。丁寧に指導したとしても不備な点が出てくるわよ」

指導する時間だって簡単には作れないし、一人前になるまではどうしたって時間が必要なのよ。

それまでアンタの負担が更に増大するじゃない。

クッ、何よ、その如何にも心配してくれてありがとうと言いたげな笑顔は。

「今は産みの苦しみだよ。大丈夫、仕事を任せられるって嬉しいものなんだから。そりゃ失敗もするだろうけど互いに気に掛け合ってたら最悪にはならないさ」

華国の職場では一刀が共に協力しつつ競い合う空気を作ってる、漢帝国の末期だと同僚は蹴落とす存在でしか無かったけど。

つくづくコイツは今迄の世の在り方を引っ繰り返すわ。

「・・だからさ、桂花もお腹の子の為に仕事量を減らしてくれよ」

「分かったわよ!それと何度も言ってるけどお腹の子はアンタの子じゃなくて私と華琳様との子だからね!」

 

史書華伝 第三章 荀彧伝より抜粋

 

袁紹、曹操と仕え魏国降服後に華国臣となる。

類稀な内政手腕を発揮し、国家安定に多大な貢献を残す。

王佐の才を持つと言われた三名が一人。

北郷王の后が一人。

四男六女の母であり、公私において北郷王の良き相談者であったという。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 外伝 第2話

 

 

「反乱の芽?」

「ええ。慣れない仕事の為の失敗と報告されてますが共通点があったのです」

一刀殿の胸に頭を置きながら空気に沿わない事を口にします。

失敗の報告をして来たのは魏風、張泉、王昭といった元名家出身の若手官僚です。

上手く隠蔽してはいましたが、疑惑ではなく確信があれば証拠探しに手を惜しむ事はありません。

「稟、俺も彼等の報告書は読んだけど、共通点なんて無かったと思うけど?」

「ですから逆に怪しかったのですよ。何一つ失敗の要因が重ならないという不自然さが」

失敗とは形はどうあれ根は似たようなことから派生するものです。

それすら共通しないのは故意に変えてると証明しているようなものですよ。

「・・そうか」

現在華国は官僚育成に力を入れており、様々な才を見出そうとしています。

漢帝国で官僚の多勢を占めていた儒者達にとっては相容れない遣り方であり、一刀殿との溝は深まるばかりです。

彼等から権力は奪いましたが人脈はまだまだ健在です、侮れる相手ではありません。

「どうしますか。民に不安を抱かせないよう内々で処理する事も可能ですが」

「いや、法で対処しよう。稟、頼むよ」

「承知しました」

全く、愛し合った後だといいますのに色気の無い話です。

それもこれも私の妄想癖の克服にと一刀殿が一気呵成に事に及ぶからです。

妄想する余力を私に一切与えず、為す術も無く力尽きて気付いた時には波が過ぎ去っている。

幾度も繰り返された結果、私は華琳様のお誘いでも醜態を晒さずに済む様になりました。

「一刀に調教されてしまったのね」と、華琳様の何ともいえない表情と御声が脳裏から離れません。

 

史書華伝 第三章 郭嘉伝より抜粋

 

曹操に仕え魏国降服後に華国臣となる。

神算と称された軍略の天才、大陸内外に於いて彼女の得られぬ情報は皆無といわれた。

北郷王の后が一人。

一男二女の母。

「北郷王にだけは一度も勝てなかった」と言葉を残した逸話あり。

 

 

魏武の大剣、今では華武の大剣と言われる此の私が、何も出来ずに打ち負かされている。

床につくしか出来ない不甲斐無き私、申し訳ありませぬ、華琳様。

おのれ、全ては北郷の所為だ。

ちょっとばかり格好良くなったとはいえ、此の私に何という不遜。

絶対に許さん!

うっ!おええ~~~~。

「大丈夫か、姉者?」

背中を擦ってくれる秋蘭に返事も返せない、それほど辛いのだ。

「春蘭、秋蘭、入るよ」

諸悪の元凶が訪ねて来たが、力が入らず剣を振るえない。

「秋蘭、春蘭の様子はどうだい?」

「変わらずだ、まさか姉者の悪阻がここまで酷いとはな」

「秋蘭はどうだい?」

「私は何とも無い。代われるものなら代わりたいよ」

そう、私と秋蘭は北郷の子を身ごもった。

それはまあ許してやってもよいが、こんなに苦しむとは聞いていなかったぞ。

「食欲も無いって聞いてるから林檎を摩り下ろして持ってきたよ、春蘭、はいアーン」

な、何の真似だ、此の私を子ども扱いする気か。

絶対に食べてやらん!

北郷はしつこく食べさせようとしたが、私の誇りにかけて口は絶対に開けなかった。

ようやく諦めたようで、フフ、私の勝ちだ。

だが事もあろうに北郷がとんでもない事をした。

「秋蘭、あーん」

「フフ、頂こう。・・うむ、美味いな」

しゅ、秋蘭、それはあんまりではないか。

私には解っているぞ、そうやって私にも食べさせようとする罠だという事を。

私は負けん、負けんが・・・二人だけでイチャイチャするなあ!!

そして私の心を身体が裏切り、指が北郷の服を掴む。

北郷は笑顔で、私は口を開く。

・・美味しい。

 

史書華伝 第四章 夏侯惇伝より抜粋

 

曹操に仕え魏国降服後に華国臣となる。

忠厚く戦場において常に兵に背を見せ、魏国、華国に於いて武の大剣と称されていた豪将。

北郷王の后が一人。

三男五女の母。

裏表の無い気性で土木作業も率先して行ない兵に好かれていた。

 

史書華伝 第四章 夏侯淵伝より抜粋

 

曹操に仕え魏国降服後に華国臣となる。

冷静沈着で姉である夏侯惇を支えつつ、自らも将として大きく武勲を挙げる。

天下屈指の弓技から神弓将軍とも呼ばれた。

北郷王の后が一人。

二男二女の母。

将でありながら政にも秀でており、文武官の橋渡し役でもあったという。

 

 

子を宿すのは天の配剤。

確かにその通りですが、人とは必要に迫られると予期出来ない程の偉業を成し遂げる事があります。

その実例が正に目の前にいる人物、一刀さんです。

あれだけ私達姉妹を含め、多くの女性と結ばれていながら懐妊する人が出なかったのに、平和に成りましたら当たりまくりです。

生々しい話ですが計算なんかして無かった筈です。

「とにかく三年は活動休止、今は生まれてくる子の事だけ考えよう」

「ねえねえ、一刀、男の子かな?女の子かな?」

「ちいは女の子がいいわ、将来は私と一緒に舞台に立つんだから」

そう、天和姉さん、地和姉さんが懐妊しました、そして私も。

勿論凄く嬉しいです、嬉しくない訳がありません。

ですが私達は黄巾の乱を起こした償いもあります、素直に喜んでいいのでしょうか?

以前に一刀さんが幸せになっていいと言ってくれましたけど、本当にいいんでしょうか?

そう悩んでいましても時は流れます、私の中の宿った命にも。

その鼓動を感じる毎に、私の中で新たな気持ちが心に灯りました。

辛くても、苦しくても、生きて欲しいと。

貴方の人生を歩んで欲しいと。

それは生まれてくる子に世界を見せてあげたいという感謝の心でした。

・・私達姉妹は無事に子を産み、三年後に活動を再開します。

そして五年後にまた新たな命を宿します。

天に命を返す時まで、私は悩み続けるでしょう。

ですがその時まで、一刀さんを、姉さん達を、家族を、世界を、私は愛します。

 

史書華伝 第七章 北角・北宝・北梁伝より抜粋

 

数え役萬姉妹と称した歌姫三姉妹。

華国の治安や広報活動に貢献。

姉妹共に北郷王の后。

揃って一男一女の母。

黄巾の乱を起こした張三姉妹ではないかとも言われているが確たる証拠はない。

 

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あとがき

小次郎です。

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。

今年も投稿できたらと思っています、読んでいただけたら嬉しいです。


 
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