No.93356

【すずか×アリサ】幸せの福音

BLOさん

魔法少女リリカルなのはシリーズより
すずか×アリサ 【幸せの福音】です

好きな人の傍に居たいのは何故?

2009-09-04 07:25:08 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1849   閲覧ユーザー数:1785

幸せの福音

 

「すずか……。ねぇ、すずかったら」

我が家自慢のテラス。そこは日差しが優しくて、油断すれば眠ってしまいそうになる楽園。

そして、私とすずか2人だけのお茶会の場。

「う、うーん、後5分……」

なんてベタなセリフを、そんなのでこのアリサさんが、引き下がるとでも思ってるの? いい加減起きてもらうわよ。

2人だけのお茶会は、すでに回数が数えられないぐらいにやってきた。時が経つのも忘れる、楽しい時間。すずかと2人だけで過ごす幸せの時間。

ただ、勝手な話なんだけど。居眠りキャラが定着しているアタシは、このお茶会の中でも眠むっている。すずかと一緒にいられる時間を大切にしたいし、悪いことをしているなとは思う。だけど、彼女の傍にいるだけで、どうしても安心してしまい、眠くなる。すずかが傍にいてくれると思うと、何も考えずに安心してしまうのよ。

「まったく、勝手な話よね」

お茶会をしようと誘うのはアタシ。

その途中で眠ってしまうのもアタシ。

ホント、わがままなお姫様よね……。

まぁ、アタシだって悪いとは思っているし、すずかに何度も謝ったんだけど――寝顔が見られるので気にしないでとか、寝言が可愛かったよとか言われてしまう。アタシはすずかだけのお姫様だから、少しぐらい見られたってかまわないけど、面と向かっていわれると恥ずかしかった。

好きな人に全部見て欲しい、隠し事をしたくないとは思う。でもね、あまりにも恥ずかしい姿を見られるのは、どうかと思うわ。

「はぁ、そんな事考えてても何も変わらないわね」

私は必死に考えた。それなりにデキルと自負しているこの頭で、どうにかしようと考えた。アタシのすべきことが何で、何をしてはいけないかを……。

これでも色々考えたのよ?

何度も確認したけど、場所は我が家のテラス。目を閉じたまま歩けるとは言わないけれど、見慣れた場所。

OK、そこまでは問題ない。

続いて……お茶会の途中に、珍しくすずかが眠ってしまった。それだけよね。

OK、ここまでも問題ないわ。

私がするべきことは、すずかが風邪をひかないように、カーディガンをかけてあげること。

OK、これだって問題ない。

だから、何も問題なかったはずなのに……。

「アリサちゃん」

すずかに名前を呼ばれただけで、アタシは動けなくなってしまった。こ、この子は、今呼ぶ事がどれだけ危険か、分かっているの?

どれだけ我慢して、この場を離れようとしているか分かってるの?

呼ばれちゃったし、何かあるのかと振り返ったのが、間違いだった。振り返ったアタシの目に飛び込んできたのは、見ないようにと努力してきた危険な誘惑。それらは私の理性を侵食していく。

例えば、ふわふわしていて、なでたら最高に気持ち良さそうな髪。神秘的な雰囲気を漂わせ、閉られているまぶた。髪の毛からちょこんと飛び出ている耳。同じようにすき間からのぞく、うなじ。

今にも奪いそうになってしまう唇とか!

規則正しく上下する度に見え隠れする胸とか!

スカートからチラリとのぞく白い足とか!

もぅ、ありえない誘惑がアタシに手招きをしている。

「アタシも、はやてと同じなのかしら?」

あそこまでエロ親父になっているつもりはないけど。恋人の前で、自分を抑えられないようなら同よね。

ん~、ダメダメ。アタシはまだ大丈夫よ!

弱気になるな。これぐらい耐えてみせなさい!

可愛い恋人の寝込みを襲うなんて、そんな無理やりするみたいなことしないわよ!

する時はちゃんと……その、すずかと話し合って、ベッドの上で、リードしてもらいながら……って、何考えさせるのよ!

そんな感じでアタシは混乱しているのに、すずかは気持ちよさそうに眠っている。

もぅ、いたずらしちゃうわよ?

「アリサちゃん……好き」

時々寝言が漏れてくるけど。

「ここなんて、もうこんなになちゃってるよ……」

眠っているといったら、眠っているのよ!

 

 

     ◇

 

 

「ホント、まいったわ」

日頃、王子様であろうと頑張ってくれるすずかは格好良いし、何よりも可愛い。そして、目の前で眠るすずかだって綺麗。

何をしても、どんな状況でも、褒め言葉しか出てこない恋人相手に、アタシはどうすれば良いのよ!

「はぁ……怒っても仕方ないわね」

どんなに考えても、それだけで現実は変わらない。

テラスには、無防備に眠るすずかと、挙動不審なアタシがいるだけ。

「キ、キスしちゃっても良いのかな?」

いつもはすずかに確認してキスをするから、こういった感じのキスは初めてで……って違う!

何を考えてるの、しっかりしなさい!

眠っているすずかを襲うなんて――目の前で眠っている彼女を襲って、その唇を奪うなんて……そんな誘惑にのっちゃうなんて……。

「す、すずかが悪いのよ? アタシの前で寝ちゃうすずかが悪いんだからね!」

もう、限界だった。

 

     ◇

 

 

「ん、んっ?はっ、ふぁ……って、すずか!」

「なぁに? アリサちゃん」

「起きてたのね」

……アタシとしたことが忘れてたわ。

よく分からないことを言って、彼女からアタシにキスしたり、抱きついたりとかはあんまりしてこない。

だけど、アタシがすずかの腕の中に入ってしまったら、こんな風にあっさりと捕まってしまう。

「眠っている私にキスをしようとした、悪戯好きなお姫様は誰かな?」

「あっ、えーとね。その、つい……」

1度捕まってしまえば、逃げられない。彼女の意思のままに求められるって分かっているのに、またやっちゃった。

もう何度目かも分からないぐらいなのに、すずかを前にしたら……あの可愛い姿を見ちゃったら、我慢出来るわけないでしょ!

「アリサちゃんはちょっとした気持ちで、私を襲おうとしたのかな?」

「べっ、別に、そんな……襲うとか。そんなの考えてないわよ」

言い訳、行動。

抵抗したら、より深くからめとられてしまう。

焦った分だけ、彼女から逃げられなくなる。

それだって分かっているのになぁ。

キスをしたのはアタシなのに、その瞳に見られているだけで、心はどんどんと追い詰められていく。

「アリサちゃん。この状態で、誰か信じてくれると思う?」

「そ、それは……」

誰も信じてくれないわよね。

この状態を誰かに見られたら、アタシがすずかを襲っているようにしか見えないだろう。例え言い訳をしたって、誰も分かってくれない。逆に、何かを言えば言っただけ、泥沼にはまってしまう。

「大丈夫だよ。そんなに心配しなくても、私はアリサちゃんがそんな事しないって知ってるよ」

「すずか」

……そっか。

すずかさえ、すずかだけでも分かっていてくれれば、

良いもんね。優しい王子様で良かった――

「アリサちゃんが私の寝ている姿に欲情して、無理やり襲おうとしたなんて、これっぽっちも思っていないから」

前言撤回。アタシの王子様はいじわるだ。

まったく、笑顔でそんなのこと言われたら、認めるしかないじゃない。

「はぁ、すずかにはかなわないわね」

どんどんと階段を上っていく恋人を、頑張って追いかけているつもりなのに、ぜんぜん追いつけないわね。悔しいわね。

「でも、私は嬉しいよ? アリサちゃんが欲情したのは、私を愛していてくれるからでしょ?」

「も、もちろんよ……って、なんて事を、聞いてくるのよ! 愛してるけど、大好きだけど……その、節度をもってお付き合いしたいわ」

そう、バカップルって呼ばれないように、人前では我慢出来る恋人でいたい。イチャイチャ、べたべた。

そんなことしなくても、愛し合えるカップルにアタシ達ならなれるはず。

「そうなの? だったら失敗しちゃったなぁ」

「どうゆうことよ?」

失敗って……アタシがすずかに捕まった以外は、問題ないはずでしょ。

「え~とね。私が先に寝たフリをすれば、アリサちゃんが眠りやすいかなって思ったんだけど」

「別にそんなところまで、気使わなくて良いわよ!」

もう、変なところまで優しいんだから。

……さっきまでのが、すずかの優しさだったとしたら、アタシはまだまだ未熟者ね。

 

「ア、アタシだって、すずかといる時は起きていたいし、おしゃべりだってしたいし」

恋人の優しさを感じ取れなかったなんて、アタシがまだ知らないすずかがいるってことね。

「アリサちゃんの可愛い寝顔を、見せてもらえると思って楽しみにしてたのにな」

そんなの期待しないでよ。もぅ、感動したのに、台無しじゃない。

「でも、折角アリサちゃんが起きているんだから、もっと楽しまないとね♪」

「えーと、すずかさん? その、怖いんですけど?」

「気のせいだよ?」

嘘よっ!

さっきとは違って、獲物を前にしたような目をしてるじゃない。それぐらいなら、私にも分かる……って獲物?

えーと、アタシとすずかしかいないわよね?

「ま、まぁ、良いわ。気のせいなら良いのよ」

「あれ? アリサちゃんどこに行くの?」

何かされる前に逃げようって思ったけど、無理なのかしら。左手から伝わってくる熱が、すずかのものだとしたら――。

「席に戻るんだけど……?」

「アリサちゃんの指定席は、ここでしょ?」

そう言って彼女が指した場所はヒザの上で、その嬉しいんだけど、座ったら何かされちゃいそうで怖い。

「ほら、早く座って」

「いや、そう言われても、困るわ」

「大丈夫、私のヒザは硬くないから。ね?」

ね? じゃないわよ!

別にすずかのヒザが硬いなんて思ってないけど、座るわけないでしょ。

「も~、アリサちゃんが座ってくれないと、お茶会始められないよ?」

そう言って、すずかが動いた気がした。

 

 

     ◇

 

 

ふっと景色が滑り、お尻の下に温かい感触が広がる。どう考えてもすずかのヒザの上なんだけど、いつの間にやられたのかしら?

「ほら、ここがアリサちゃんの指定席だよ~♪」

「も、もう、すずか! 何するの……んっ」

一瞬の早業に驚いていたら、口の中に生暖かいものを流し込まれた。そして、そのまま舐め回される。

「うふふ。これは、アリサちゃんが言うことを聞かない、悪い子だからだよ?」

「す、すずかったら、もうっ!」

人のあごに手をあてて飲ませるとか、どこで覚えたのよ!

「急にこんなことして……あれ?」

あの、立てないんですけど?

「何で立とうとするのかな? アリサちゃんの席はここなんだよ?」

「で、でも、戻らないとお茶会できないし……」

「安心してアリサちゃん。ちゃんと私が飲ませて上げるから♪」

いや、とびっきり笑顔で断言されても困るわよ。それに、そんな笑顔向けないで……目が離せなくなっちゃうじゃない。

彼女の大胆な行動に驚いて、アタシは動けない。それを分かっているのか、すずかの行動がどんどんとエスカレートしていく。

ちょっと、こんなに飲めないわよ!

既に紅茶はなく、口付けを交わしているだけなのに熱いものがあふれてきそう。ちょっと、こんなの反則でしょ!

雰囲気と、王子様に酔わされている。そんなお姫様に、何を飲ませる気かしら?

心のどこかから聞こえてくるおかしそうな声に躍らされ、アタシは全てを飲み干す。

 

――幸せが注がれていく

 


 
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