No.94807

【魔法少女リリカルなのは】アリサさんの事情

BLOさん

魔法少女リリカルなのはシリーズより
アリサ×すずか 【アリサさんの事情】です。

それぞれの立場、それぞれの事情
悩みだけは尽きません

2009-09-11 07:39:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2321   閲覧ユーザー数:2266

アリサさんの事情

 

アリサ・バニングスは猛烈に悩んでいた。

発端となっているのは、友人である、高町なのはとフェイト・テスタロッサの事だろう――

 

 

「わ、私とフェイトちゃんは、こ……恋人になりました!」

仲良し5人組での昼食。お弁当を食べ終わり、今日は何を話そうかと悩んでいたら、なのはが真剣な顔をして立ち上がった。ちょっと聞いて欲しいといわれ、何かなと思ったところにこの一言。

真っ赤になりながら報告するなのはと、手を握ったままうつむいているフェイト。

――何でこんなことになってるのよ

「おめでと、なのはちゃん、フェイトちゃん」

「いや~、いつ発表するんか楽しみにしとったで」

素直に祝福するすずかに待ちかねていた様子のはやて。知らなかったのはアタシ1人な訳ね。

「ま、良かったじゃない」

そして、アタシだけはおめでとうと言えなかった。

確かに、2人共幸せそうだし、女の子同士という事を差し引いてもお似合いのカップルだと思う。

……お似合いなんだけど、なんか納得いかなかった。

「な、なのは。そんなに大きな声で言ったら恥ずかしいよ……」

「にゃはは、ごめんね。だけど、みんなに知っておいて欲しかったんだもん。フェイトちゃんは私の恋人さんだよって」

「なのは……」

「フェイトちゃん……」

ここは学校で、今は昼休み。当然ながら他にも屋上には生徒がいる。その注目を浴びながら、見詰め合うのは止めなさい。見てるこっちが恥ずかしいわ。

「なのはちゃんもフェイトちゃんも、ここで熱うなったらあかんで。まだお昼やし、お楽しみは夜までとっとき」

「は、はやてちゃん、私達別にそんなつもりじゃ……」

「そ、そうだよ、はやて。それに夜って……私達まだ小学生だよ?」

はやての言葉に真っ赤になる2人。あぁ、もうイライラするわね。はやても突っ込むところ間違えてるし。

「何、言ってるんや。愛し合うのに年齢は関係ないで? せやから2人共、気にせず」

「どっかのエロオヤジか、あんたは!」

さっきので終わりだと思ったアタシが甘かった。とりあえず叩いておいたけど……まだまだ油断ならないわね。まったく、2人のことだけでも大変なのに、ややこしくしないの!

「はやてちゃん、大丈夫?」

「放っときなさい」

「で、でも……」

はやてなんか心配しなくて良いのに。まぁ、すずかだから仕方ないかな。

う~ん、それにしても、この引っかかるような感じは、何かしら?

「そのうち起きてくるでしょ。ほら、そこの2人もイチャついてないで戻るわよ」

床とキスをしているはやてを放置し、アタシは校舎へと戻る。……放置してても大丈夫よね。

ちょっとだけ気になって、後ろを見てみる。そこには、あわてて追いかけてくるすずかと、手をつないで嬉しそうにしているカップルの姿があった。

おいていかれたような――

          ――先をこされたような

そんな気がして悔しかった。

 

 

      ◇

 

 

オマケとして、はやては休憩時間が終わる頃に、ひょっこりと帰ってきた。丈夫な子だ。

「なのはちゃんもフェイトちゃんも、幸せそうだったね~」

でも、現在アタシを悩ませているのは、あの2人ではなく、もちろんはやてでもない。

「はぁ……良いなぁ。もうキスとかしたのかな。ね、どう思うアリサちゃん?」

夢見るお姫様、月村すずかだった。

どうも、あの2人に影響されてしまったらしく、昼休みからずっとこの調子。疲れないのかしら?

「あれだけで赤くなってる2人には、まだ無理でしょ。ほら、すずかぼーっとしてないで行くわよ」

「ま、待ってよアリサちゃん」

塾の前に出来た空き時間。折角、2人で買い物に来ているのに。すずかったら、なのは達のことばっかり。

何だか気に入らないわね。

「急がないと塾の時間になるでしょ。……しょーがないわね。ちょっと、手だしなさいよ」

「え? 手つなぐの……」

「何? すずか、嫌なの?」

「そんなことないけど……ちょっと恥ずかしいかなって」

昼にあんな光景を見せられて、いつもよりイライラしていたかもしれない。

それに、この表情。すずかの恥ずかしそうに微笑む姿が、アタシをダメにする。

アタシをすずかから離れなれなくする。

アタシがすずかの傍にいなきゃいけない。そんな風に思わせる。

でも、なのは達と違って、アタシは告白なんか出来ない。今の関係で満足しているし、満足するしかないのよ。

「アリサちゃん、ちょっと早いよ」

いつまでも、どこまでも、すずかの手を引いてあげる訳には行かない。

2人共、親が経営者だし、お金だってある。女の子同士なんかで結婚は出来ないし、許してもらえるわけない。どんなに努力しても変わらないものもある。

それに、すずかは王子様を待っているお姫様だから。

いつか王子様が現れたら、すずかにとっての王子様が現れたら、笑って祝福してあげる――親友として、友達として、おめでとうって言わなきゃいけない。そんな事、ちゃんと分かっている。分かってるわよ!

その時、アタシが失恋しちゃうって、しっかりと分かっている……。

でも、すずかがアタシを好きでいてくれるなら――いや、止めておこう。そんなの考えるだけ無駄だし、望むだけ無駄だわ。未来を変えることなんて出来ないんだから。

それでも、例えそうなることが決まっていたとしても、今は……せめて今だけは、この手をつないでいたい。

 

いつか来る別れの時まで、

この夢の中で――

 


 
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