「むぅ……」
星が不満そうな声を出す。
こういっちゃなんだが、趙雲はけっこう活躍してたと思うぞ?
まさか容姿か? 容姿に不満なのか!?
「私もあんなおじさん嫌だよぉ……。それに私、髭なんて生えてないし……」
と、今度は桃香。
まぁ……劉備はしょうがない。
「鈴々はかっこよかったからいいのだ! 鈴々の大活躍を見たか! なのだ!」
うん、よくわかんないけど、鈴々は納得してくれたみたいだ。
虎の髪飾りをしてるくらいだし、あの虎髭も気に入ったのか?
鈴々の趣味はよくわからん。
しかし問題は……。
「あのぅ……華琳……さん……?」
俺は、さっきから不機嫌な表情のまま一言も発しない華琳に声をかけた。
はい、無反応。
だから嫌だったんだ……。
真桜の奴が、DVDプレイヤーなんか作るから……。
つか、ホントこの世界。何でもありだな。
というわけで俺たちは、何故か俺の制服のポケットに入っていたハリ×ッド映画『レ×ド・ク×フ』をみんなで鑑賞していたのだが……。
「いいよなぁ、桃香たちは。私なんか、存在がなかったことにされてるんだぞ……。いくら影が薄いからって、あんまりじゃないか? なぁ、北郷?」
ちょ、ちょっと白蓮さん?
うん、まぁ、なんだ。
生きててよかったね、公孫賛、としか言えないぞ、俺は……。
「なによ、ボクと月が出てないじゃない! まぁ、ボ、ボクはいいとしても、月が出てないのは納得いかないわ!」
いや、だからね。
この映画、題材が赤壁だからね。
そのぉ、何というかね……。
お察しください!
「ちょっと一刀さん? どうしてあのクルクルおちびさんが出ていて、このわたくしが出ていないのかしら? 名門出身で、しかも容姿端麗・博学多才の、この、わ・た・く・しが」
「そうだぜ、アニキ。麗羽さまはともかく、あたいが大活躍しない映画なんかつまんないぜ。きっと観客も、あたいの大活躍を待ってるはず!」
だから察してくれ!
そ、そうだ、助けてくれそうなのは……。
って、朱里!
「は、はわわっ! わ、私も、かっこよかったし、名軍師でよかったなんて、ち、ちっとも思ってませんから!」
ああ、朱里は満足なのね。
まぁ、諸葛亮はこの映画の主役だしな。
同じ理由で、呉の皆さんも概ね満足、と。
孫権はイケメンだし、周喩は主役級の扱いだったからな。
まぁ、雪蓮は……。
仕方ない!
しか、しか……。
「い、痛い! 痛いってっ!」
俺は足を雪蓮に踏まれ、耳を華琳に引っ張られ、思わず悲鳴を上げる。
桃香も不機嫌そうな表情だ。
いったい、俺にどうしろと!?
いっとくけど、この映画撮ったの、俺じゃないから!
俺が三人に取り囲まれるようにしていると。
「ねぇ、雪蓮?」
か、華琳さん……?
「そうねぇ、華琳」
しぇ、雪蓮さん……?
こ、怖いって! 二人とも怖いってっ!
アイコンタクトで何かを確認した華琳と雪蓮の二人は、不敵な微笑みを浮かべている。
桃香は、そんな二人の様子を見てぽかーん。
「真桜」
華琳は、後ろに控えていた真桜を呼ぶ。
「はいな! 準備ばっちりでっせ、大将!」
何? 何が始まるの……?
続々と運ばれてくる何だか怪しげな絡繰りを眺めながら、俺は嫌な予感がしていた。
いや、嫌な予感しかしなかった……。【続】
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設定としては、蜀ルート完結後となっております。
たぶん続き物になるはずです。
よろしければ、お付き合いくださいませ。
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