「企鵝―」
「重いですトカゲ」
背中に抱きつくようにもたれかかってくるのは、外見だけなら美少女だ。
流行りの香を身につけ、華やかな菊の着物に合わせて爪紅も明るく。どこに出しても恥ずかしくない装いの娘は、しかし男の声で企鵝に絡んでいたのだった。
「今日が何の日か知ってます?」
「いいえ」
「しょうがないなー企鵝っちはー。今日はねー私様の」
「命日ですか?」
言うが早いか、立ち上がるついでとでも言うように腰の直刀に手をかけると、トカゲが体重をかけてそれを阻止した。
「逆!怖い!得物抜くなよ!」
「三枚に下ろされたら、もらえる贈り物も三倍にしなくてはいけないでしょうか……」
「悩むところはそれじゃねぇ!お前あの巫女に変な入れ知恵されてませんこと!?」
「失礼ですよ。涼はそんな子ではありません」
と言うことは素で言っているのか、それともトカゲの扱いがこうなだけなのか。よよと泣き真似をすると、おざなりながらも慰めるように撫でられた。
「と、言う訳で慰謝料込みで誕生日の贈り物を要求しますわ」
「……他の方からは何を頂いたんです?」
「難訓からはこの爪紅で、茜ちゃんからは香袋」
流石、二人とも選ぶ物が粋だ。そして、自分と同じ思惑もあるのだろう。
「では、私からは今髪に刺した簪を」
言われて気が付いたかのように手を髪にやると、手触りからして蜻蛉玉の飾りだろうか。先は丸く武器には向かないが質は良さそうだ
「お前、渡し方が気障になったわね」
「涼の驚いた顔が見たくて、渡し方を色々試していたんですよ」
「惚気はお腹いっぱいですわ」
こうみえて意外と義理堅いのか、それとも相手の心を許させるす手段なのか、トカゲは贈った相手と会う時には、その人から贈られた物を身につけていることが多い。もちろん、気付かれたくない時は付けないだろうが。それでも見分ける手段の一つにはなる
見つけたいのか、騙されないようにか、それとも見つけてあげたいのか。
送り主の思惑なんて企鵝には想像もできないが。
「企鵝」
知らぬうちに思索にふけってしまっていたのか、ハッと開いた企鵝に、トカゲは愛らしく笑って見せた。
「ちゃんと見分けられるように、あの世に行く時は今日もらった三つを連れてってやるよ」
「……嘘つきですね」
「まぁね」
生まれた日に、死ぬ話をして、彼は笑った。
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皆さま祝って下さってありがとうございます!
こんな薄暗い内容ですが、祝ってます。
登場ここのつもの:企鵝真白
登場いつわりびと:トカゲ・秋津茜・難訓