佳織さんも加わったテーブルで私は話し続けた。
「一週間前にね、体調が変だったから、病院にいったの。そしたら三ヶ月って言われて。」
良はなんだか難しそうな顔をしている。私が何を言おうとしているのか、わかったらしい。佳織さんはよくわからない表情を良に向けていた。
そんな二人を見ながら私はアイスティーを一口飲み喉を潤わせて、さらに話を続ける。
「言われてからね、いろいろと考えたんだ。どうしたらいいか。でも、いくら考えても答えは一つしかなかった。当然なんだけどね」
ここまで言ったとき、次々とお腹の子に対する懺悔ともなんとも言えない言葉が次々と私の脳裏にこだまする。
覚悟したの。ごめんね。私には無理だから。あなたは何にも悪くないのに。
「文、大丈夫。あとは私が話すね。ほら涙を拭いて。」
亜輝に言われて、初めて頬に冷たい感触がした。
どうやら、自然と涙がでていたみたいだ。
亜輝は手にハンカチを持ち、私に取るように促した。
「ありがとう。」
そう言い、ハンカチを受け取った。
そんな事をしていると亜輝が話はじめた。
「良司、鈍いアンタでもだいたい理解できたと思うけどさ。お金が必要なんだ、協力してくれるよね。」
「……。」
良司は黙ったまま、コーヒーを手に取り全部飲み干し。
カップをおろし、静かに言い放った。
「帰る」
そう言い、良司は伝票を掴み席をたつ。
「ちょっと、アンタね。何考えてんのよ。」
亜輝も大きな声で怒鳴りながら立った。
「そっちこそ何考えてるんだよ。」
良司が怒鳴り返した。そんな二人のやり取りをオロオロしながら見ていたら、佳織さんが口を開いた。
「二人とも、大きい声ださないの。赤ちゃんビックリしてるよ。」
亜輝は「ゴメン」と一言、私に言って席に着いた。
「ほら良司も座って、文さんはまだどうするか言ってないよ。最後まで話ぐらいききなさい。」
そう言い良司に席に着くように促した。
良司は佳織さんを睨んだ。
「あのな俺は、そこまで鈍くない。文がどうしたいかわかったつもりだけど」
良司が私の方をみた。そして、私と良司の目が合う。
私は卑怯だと思ったけど言た。
「良、最後まで聞くって約束。破るの?」
良司は約束した事は必ず守る。
私は良司が約束した事を反故にしたところを、見た事がない。
といっても、大学での四年間っていう短い間だでのことだったけど。
でも良司の性格はよく理解していた。良い人だから。
「……、ちぇ。そう言えばそんな約束したな。」
ボサボサの頭に手をやり、座り直した。
「佳織、コーヒー追加。モカ100%の濃いやつ。」
「はいはい、文さんの話を聞いてからね。」
「お前、商売する気ある?まったく。」
佳織さんは、良司の注文を机に置いてある伝票に書き込んで私に話を振った。
「で、文さん。どうすることにしたの?」
私は続きを話す事にした。
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どこかで起きていそうで、でも身近に遭遇する事のない出来事。限りなく現実味があり、どことなく非現実的な物語。そんな物語の中で様々な人々がおりなす人間模様ドラマ。