十二話 想い
「御遣いさま、どうか私たちをあなた方の傘下に加えさせていただけないでしょうか?」
朝っぱらから、とんでもない事を言ってきた董卓。寝起きのためか頭がよく回らない。もう一度聞いてみよう。
「え~と……もう一度言ってくれる?」
一刀は耳を澄ませながら聞いた。
「もう、僕たちをあんた達の部下にしろって言ってんのよ!」
突然、話に割り込んできた詠。その表情は冗談で言っている訳ではなさそうだ。
「あの~…董卓さん?」
「私のことは月とお呼びください。」
朝っぱらから眩しいくらいの笑顔で答えてくれる董卓。
「は、はあ…あのさ、月。一応、理由を聞いていいかな?」
「はい。」
月たちは理由を述べた。何でも彼女たちの拠点である北方は領地こそ広いものの、作物の育てにくい土地で、毎日狩りを行いながらその日を生きているらしい。だから、餓えるものが後を絶たない。それに、昔から五胡と呼ばれる大陸の外側の連中相手に応戦を繰り返し、撃退していったらしいが、最近は五胡の活動も活発になり民たちは疲弊しきっていた。
さらに追い打ちをかけるように黄巾党の乱が起きた。月たちは外側と内側からの攻撃に備えなくてはならなくなり、大苦戦を強いられていた。兵糧も尽きかけ、もはや滅ぶしかないと思っていた矢先に、黄巾党が滅んだという情報が届いた。黄巾党を鎮めた者は、あの管路の占いに出ていた『天の御遣い』らしいと。民たちは、まるで自分たちのことのように喜んだ。何せ占いでは『乱世を鎮める英雄』と言われていたのだから。
力のない民草にとって、これほど頼れる存在は他にはないだろう。そのような者に国の統治をしてほしいと思うのは当然の流れといえた。
一刀は月たちの話を静かに聞いていた。
「う~ん………話は分かったけどさ…いいの?」
一刀は尋ねた。何せ、民たちが望んでいることとはいえ、見知らぬ人間に今まで統治してきた土地を任せるというのだから……
しかし、月は、
「はい、民たちがそれを望んでいるのなら……」
屈託のない笑顔で答えてくれた。
「それに、昨日少しお話しただけでしたが、御遣いさまは民草を優先する国政を行っています。そのような御人なら、安心して任せることができます。」
月の意思は固いようだ。こちらとしても領土を広げることができるのは願ってもない事だけど……問題点はいくつもある。
「でもさ、月たちの土地ってここからかなり離れているよね。俺たちはここを離れるわけにはいかないから、直接、統治なんて出来そうもないんだけど。」
当然のことだ。ここを離れたらこの土地を狙っている奴らに制圧される危険性がある。それに雪蓮たちも完全に安全とは言い切れない。何せここは元々彼女たちの土地だったのだから。
その時、詠が話に割り込んできた。
「はあ!?あんたを連れていくわけ無いじゃない。」
「え?どういうこと?」
「つまりあんたは、民たちの平和の象徴になればいいの。」
「象徴……。」
なるほど、一刀は理解した。その土地の統治者は一刀だが、あくまで国政を行うのは月たちという事だ。なんだか今の日本の天皇と総理大臣みたいだ。
「民たちの心を安心させるには、あなたの御名前が必要なのです。どうぞ私たちにあなた方の風評を御貸しください。」
月は跪きながら答えた。一国の王が他者に頭を下げるというのはものすごい意味がある。一刀も美羽もそれが分からないほど馬鹿では無い。
「あ、ああ……うん、いいよ。俺の名前が役に立つのなら好きなだけ使ってよ。」
「よろしいのですか!?」
「うん、俺の名前を使うだけで救われる人がいるのならとてもうれしいし。」
「ありがとうございます。ご主人様!」
…………え?
「ちょっと、月!」
詠はかなり驚いていた。一刀自身もかなり驚いている。
「え、何その『ご主人様』って!」
驚きながら一刀は月に訪ねた。
「そうだよ、月!こんな奴『ご主人様』なんて言っちゃだめだよ!」
詠も納得のいかない様子で月を咎めていた。
「だって詠ちゃん。この人は私たちの上に立つ人なんだよ。だからちゃんとご主人様って言わなきゃ。」
「そうだけどさ………月~……何もこんな奴をさ…」
「だめだよ、詠ちゃん。ちゃんと呼ばなきゃ!」
「う~……」
どうやら月は改める様子はないようだ。そしてついに詠も折れた。
「わ、分かったわよ!こ、これからよろしくね!ご、ごごごしゅ、、しゅじ……い、言えるか~!!この馬鹿チ●コ!」
バキ
「ぐは!」
詠は一刀の股間を蹴りあげた。悶絶している一刀に月は心配しながら駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか!ご主人様!……詠ちゃん、ちゃんと謝って!」
月は、かなり怒っているようだ。無理もないだろう。自分たちが主と認めた人間をいきなり蹴りあげたのだから。
「だ、だってさ~……」
「え~い~ちゃ~ん~!!」
「分かったわよ、ご、ごめんなさい。……ご、ご主人様!」
詠は顔を真っ赤にしながら答えたがすでに一刀の意識は遠くに行っていた。
月たちが仲間になった。これで美羽は大陸の四分の一は征服したことになる。勢力図だけで言えば大陸一だろう。月たちは一時帰郷し、民たちに庇護を貰ったことを伝えた後、改めて正式な契約を結ぶと約束した。
しかし、あんなかわいい子たちに『ご主人様』呼ばわりされるのはなかなかいい気分である。一刀は一人、鼻の下を伸ばしていた。
「………ご主人様、気持ち悪い。」
「どうせ、よからぬ事を考えていたのに違いないです!このチ●コは!」
今、俺の近くにいるのは恋とねね。二人は月たちの護衛だったのだが、月たちが傘下に入った際、詠は、
「あんたはもう僕たちの主なんだから、簡単に死なれちゃ困るのよ。だから護衛に恋をあげるわ。この子もあんたの事を気に入っているみたいだし、親衛隊にでもしたら?」
などと言いだした。一刀はもちろん断ったのだが肝心の恋がなかなか離れてくれない。なので結局、月たちの好意に甘えることにした。
恋が残るならねねもと、どこからともなく現れた女の子は言いだした。恋の命令で真名を預けられたのだがいつも一刀の事をチ●コと呼ぶ。……正直、かなり迷惑である。
恋は、いつも俺のそばにいた。警邏の時も、食事の時も離れない。中でも一番驚いたのは、朝起きた時に、ベットの中に潜り込んでいた事である。理由を尋ねても『ご主人さまを守るため』なんて可愛い事を言ってくれる。もちろんその後、ねねに蹴り飛ばされた事は言うまでもない。
正直、恋はかなり可愛い女の子である。だから、こんな事が続くと俺の精神力が持たなくなる。一刀は恋に聞いてみた。
「な、なあ恋。いつも俺の護衛をしてくれてありがたいんだけどさ、何もいつも一緒じゃなくてもよくないか?」
「…………フルフル。」
恋は静かに首を横に振るばかり。
「でもさ、さすがに城の中で危険はないと思うからさ、その………。」
「…………恋、邪魔?」
まるで捨てられた子犬のような目で見つめてきた。この目に逆らえる人間は多くはいないだろう。一刀もまた逆らえなかった。
「い、いいや!全然邪魔なんかじゃないよ!いつも助かっているし、本当にありがとな!」
「……良かった。」
本当にうれしそうな顔で喜んでいる恋。このまま一緒にいたら本当にどうかなりそうだった。
はぁ………
美羽side
美羽は不機嫌だった。最近、一刀が構ってくれない。しかもいつもいつも呂布がそばにいる。一刀と遊ぼうとしてもいつも呂布がいるのではつまらない。そんな風に最近の美羽はイライラとしていた。
偶然、呂布が一人でいるのを見かけた。ここは、自分の立場というものを分からせるために美羽は呂布に言い寄った。
「これ、呂布よ!なぜ、お主はいつもいつも一刀の傍におるのじゃ!?」
「………?」
恋はまるで何も分からないような顔で美羽を見ていた。
「お主がいつも一刀と一緒におると、一刀が迷惑なのじゃ!」
「…………ご主人様は迷惑じゃないって言った。」
「む、む~!し、しかし、一刀は妾の部下なのじゃ!じゃから、妾はお主にとっても主なのじゃ!」
美羽はむきになりながら恋に言い寄っていた。
「この袁術が命じるぞ!今後、一刀に近づく事はまかりならぬ!」
美羽は恋にこれ以上一緒にいてほしくなかった。だからこその命令だった。しかし、恋は、
「………恋のご主人さまは一刀だけ。………お前じゃない。」
完全に拒否した。
「な、何じゃと!わ、妾は一刀の主じゃぞ!」
「………お前、うるさい。」
二人が喧嘩に発展しようとしていた時、一刀が遠くから、姿を現わした。
「あ、ご主人様。」
「なぬ!?」
恋はそそくさと行ってしまった。
「こ、こら、呂布~!待つのじゃ!」
美羽の声が届くころにはすでに一刀と共に行ってしまっていた。
「おのれ~!呂布め~!」
ねねside
最近、呂布殿が冷たい。これもみんなあのチ●コのせいです!この前だって、
「呂布殿~!一緒に食事に出かけましょうぞ!」
「…………無理、今日はご主人様と一緒。」
はっきりと否定されてしまった。自分の主にしつこく言い寄れるはずもなく、その日のねねは諦めた。
「そ、それなら仕方ないです。でしたら明日の昼にでも……。」
「…………無理。明日もご主人様と一緒。」
むむむ!ならば
「な、ならば、明後日にでも「あ、ご主人様。」…え?ちょ、呂布殿!どこに行かれるのですか!呂布殿~!」
……………
これもみんなあのチ●コのせいです。あいつさえいなければねねと呂布殿はあ~んな事やこ~んな事が出来るというのに!
今日もあのチ●コと一緒にいる様子。ねねの怒りのボルテージは上がっていくばかり。
「おのれ~!あのチ●コさえいなければ~!」
今日は、一刀は警邏のために街を散策していた。もちろん隣には恋がいる。三国志最強の武将が護衛なんて頼もしいけど、恋を見ていると何だかそんな気がしない一刀であった。
「今日も、いい天気だな。」
「………コク。」
最初は、あまりにも口を開かない恋に対して、一刀は困惑していたがそれももう慣れた。今では恋が何を考えているのかも分かる。そろそろ、お昼の時間だ。
「そろそろ、昼飯の時間だな?恋は何を食べたい?」
「………何でもいい。」
ぶっきらぼうに答えているが、その視線は、前にある飯店に集中していた。どうやらここがいいらしい。
「だったらさ、今日はここで食べよう。」
「………コク。」
いつも一人で昼飯を食べていた一刀にとって、恋はもう一緒に飯を食べる仲間になっていた。一人で食べるより、二人で食べたほうが美味しいというもの。まさにその通りだった。
「恋、そんなに急いで食べなくても飯は逃げたりしないよ。……ほら、唇にそんなに食べカスを付けて。」
一刀は持っていたハンカチで恋の唇をふき取ってあげた。
「…………///」
恋は顔を赤くしていた。
「あ、ごめん。恥ずかしかったかな?」
「………フルフル。あ、ありがとう。」
「はは、どういたしまして。」
傍から見れば恋人同士にしか見えない、実にほのぼのとした光景であった。
そんな二人を影から覗き込んでいる影が二つあった。
……………
「おのれ~!一刀の奴~!あんな風に呂布なんぞと楽しそうにご飯を食べて~!」
その近くにもう一つの影が、
「おのれ~!あの馬鹿チ●コめ~!何をにやにやしているのですか~!本来ならあそこにはねねがいるはずなのに~!」
二人は自分とおなじ気配を持つ者を感じ取った。そして、出会ってしまった。
「うん?お主は呂布の片割れの……。」
「お前は、あの馬鹿チ●のコの……。」
二人は瞬時にお互いの事を理解した。気がついたら、二人は熱い握手を交わしていた。
今ここに、美羽、ねねの同盟が結成された。
美羽とねねは城に戻り、軍議を開いていた。
「美羽殿の話は分かりましたのです。美羽殿は呂布殿が邪魔。そしてねねはあの馬鹿チ●コが邪魔。我々が協力すれば必ずや、あの二人を別れさせることができましょうぞ!」
「おお~、さすがじゃな!ねねよ!」
二人はお互いに真名を預けた。それほどまでにこの二人は今、固い絆で結ばれていた。
「して、何か作戦があるのかや?」
「もちろんです。このねねにかかれば作戦など一つや二つは朝飯前なのです!」
「おお~!」
ねねは、誇らしげに胸を張っていた。そんなねねは美羽にとってとても頼もしい存在に見えた。
「ではまず、一つ目の作戦を言うです。名づけて、『馬鹿チ●コ、超弱~い!最低な屑人間野郎です』作戦です。」
「ふむふむ。」
「これは簡単です。あいつが一人でいるところを数人がかりでボッコボコのメッタメタにするんです。恋殿は弱い馬鹿チ●コをみてあいつの事を考え改めるでしょう。」
「うむ、じゃが………何もボコボコにするほどでは無いのではないか?」
さすがの美羽も自分の我がままで一刀に怪我をさせるのは少し心が痛む。
「何を甘い事を言っておられるのですか、美羽殿。このままあいつを野放しにしておけば呂布殿だけではなく、他の女にも毒牙を掛けるのですぞ!」
確かにそうだ。実際に雪蓮だけではなく、奴の妹や配下まで手を出そうとしている。そう思うとだんだん腹が立ってきた。だが、それでも一刀の事を傷つけるというのは………美羽はまだ悩んでいたが、
「それに、傷ついたチ●コ野郎を美羽殿が介護すればあいつは必ずあなたに惚れるでしょう。何せ単純な奴ですからな!」
この一言が決め手になった。
「うむ、その作戦に決定じゃ!さっそく準備するのじゃ!」
「了解したです~!」
美羽とねねは動き出した。
一刀は今、恋と共に警邏の真っ最中である。その背後に美羽とねねはいた。
「しかし、呂布の奴がおるのではなかなか作戦の決行に移れんぞい!」
「むむ~あのチ●コめ~!いつまで呂布殿と一緒にいる気なのですか!」
美羽とねねは兵士を三人ほど連れてきていた。この兵士たちには野盗のような格好をしてもらっていた。
彼らは、『天の御遣い』を殴り、蹴飛ばせと命令を受けたがもちろん最初は断った。しかし、命令したのが一刀の主である袁術なら断る事は出来なかった。彼らにも生活があるのだ。生きるためにはどんな嫌な仕事でもしなければならなかった。
(お、おい!本当に御遣いさまを殴り飛ばすのか?)
(お、俺に聞くなよ。……命令なんだから仕方ないだろ!)
(でもさ、どっちにしても俺たちの首って飛ぶんじゃね?だって黄巾党を鎮めた英雄を殴るんだぜ………首だけじゃ済まないかも…)
(い、いやだよ、俺は!まだ彼女もいないのに!)
(俺だって嫌だよ!でも、命令に従わなかったら本当にそうなる!)
(こうなったら破れかぶれだ。御遣いさまはとてもお優しい方だから事情を話したらきっとお許しになってくれるはずだ。)
(そうだな、御遣いさまを信じるか!)
(うん!)
兵士たちの心境はこんな感じだった。
そんな兵士たちの思いを無視する美羽とねねは、
「まずは、呂布殿とチ●コを別れさせる必要があるです。」
「どうするのじゃ?」
「ねねが、呂布殿を引き付けている間に、美羽殿は兵士を連れてあのチ●コを!」
「うむ、分かったのじゃ!」
お互いの健闘を祈りながら作戦は決行された。
「呂布殿~!お待ちくだされ、呂布殿~!」
後ろから恋を呼ぶ声が聞こえる。どうやらねねのようだ。
「呂布殿、一大事にございます!はやくねねと来てくだされ!」
「……………?」
「呂布殿、さ、お早く~!」
ねねは恋の腕を引っ張っていった。
「ねね?一体何が一大事なんだ?」
一刀は何も知らずに聞き返した。
「お前には関係のない事なのです!さっさとどっかに行くです。このチ●コ!」
「な、わ、分かったから、そんな風にチ●コって連呼するなよ!悲しくなっちゃうじゃないか。」
一刀はすごい気迫のねねに対してこれ以上言えなかった。もし言ったら『ちんきゅうきっく』をお見舞いされそうだったから。
「…………ご主人様?」
「ああ、行ってきていいよ。ねねが一大事って言うのだからさ。」
「…………コク。」
恋は一刀から離れた。距離は約30メートル。ねねは離れていた美羽にアイコンタクトを送った。
(今ですぞ、美羽殿!)
サインはちゃんと美羽に届いた。
(任せるのじゃ!)
美羽は兵士たちに命じた。手筈通り、酔っぱらったふりをして一刀の事をボコボコにして来いと。
兵士たちは太守の命令に逆らう事ができず、もう破れかぶれになってお酒を一気に飲み干してから一刀に迫った。
ドン!
突然、一刀の肩に何かがぶつかった。どうやら酔っぱらいのようだった。
「てめ~!いったいどこ見て歩いてんだ、コラ!」
酔っ払っているためか中々の名演技の兵士である。
「ぶつかったのはお互い様だろう。それに昼から酒を飲むなんて感心しないぞ。」
一刀はこの酔っ払いが自分たちに兵士だという事を知らない。
「るっせ~!」
酔っ払い(兵士)は一刀を殴りかかろうとした。遠くのねねはガッツポーズを決めていた。恋はとっさに一刀の元へと駆け寄ろうとしたが、ねねに袖を掴まれていて動けなかった。美羽は両手で目を覆った。
バキ!ドガ!ベキ!
静かになった。何が起こったのか、美羽は覆っていた手を退かし、一刀の現状を確認した。何と、一刀は殴りかかってきた男三人をあっという間に倒しているではないか!これには美羽もねねも口を大きくあけて驚いていた。
忘れがちだが、一刀はこの世界にきてすでに2年近く経過しているのだ。もともと、剣道を習っていたため常人よりは運動神経がよく、鍛錬は定期的に行っている。それに雪蓮たちと仲良くなってからはよく、祭さんに訓練を受けさせられていたし、思春とシャオ(白虎とパンダ付き)にちょくちょく追いかけられていたので彼の運動神経はすでに常人では無かった。名のある武将たちには敵わないまでも、そこらへんの雑兵相手には苦戦などはしない。相手が酔っ払いなら尚のことだ。
酔っ払い(兵士)たちは街を騒がせた罪として警邏隊に連れて行かれた。街の人間は一刀の事を絶賛していた。美羽も恋もなぜか顔を赤めていた。ただ、ねねは一人歯ぎしりをしていた。
恋は今一刀と一緒にいる。ねねの言っていた一大事とはもう大丈夫らしいので放してもらえたそうな。
ねねと美羽は喫茶店に入り次の作戦を練っていた。
「しかし、あの馬鹿チ●コが結構やるとは………誤算だったのです。」
ねねは悪態をついていた。一方の美羽は顔を赤めながら呆けていた。見知らぬ一刀の一面を見て、チョットばかしかっこいいなどと思ってしまっていた。そんな美羽を見てねねは、
「美羽殿、しっかりしてくだされ!あんなチ●コに惑わされてはなりませぬ!」
美羽を諌めたが肝心の美羽は明後日の方向を見ている。
「このままではあいつと呂布殿はずっと一緒にいるかもしれないのですぞ!」
ねねのこの一言が美羽を正気に戻させた。美羽もハッと我に返り現状を知った。
「う、うむ。しかし、他に作戦があるのかえ?」
「ご安心くだされ!このねねにかかれば他の作戦などいくらでも!」
「おお~!頼りになるの~!」
「当然なのです!」
胸を張って堂々と言った。何ともほのぼのとした光景である。
「では、二つ目の作戦を発表するです。名づけて『馬鹿チ●コ、頼りなさすぎて嫌になっちゃう』作戦です。」
「ふむ。して内容は?」
「はいです!」
ねねの作戦内容は簡単に言うとこうであった。まず、一刀にいろんな失敗をさせる。何でもいい。とにかく一刀が頼りない主だという事を恋に見せつける。そして、一刀が無能だと知った恋は一刀を見限る。傷ついた一刀を美羽が、怒った恋をねねがお互いに慰める、と言った作戦であった。
「おお~!なかなかの作戦ではないか!」
「御褒めに頂き、光栄なのです。」
「よし、では早速行動を開始するのじゃ!」
「はいです!」
こうして、二人は行動を開始した。
………………
…………
……
一刀と恋は警邏の仕事が終わり、今は喫茶店のようなお茶屋でお茶を楽しんでいた。
「へ~、恋の家族か。」
「…………コク。セキトって言う。」
「セキトか。いい名前だな。今はどこにいるの?」
「…………月たちの家。今度来たときに連れてくるって。」
「そうか、会ってみたいな。」
二人はお互いの身持ち話で盛り上がっていた。そんな二人を美羽とねねは遠くから眺めていた。
「むむむ~!あの馬鹿チ●コめ~!呂布殿と楽しそうにお茶などしやがって~なのです!」
「ねねよ、早速、作戦を開始するのじゃ!」
「お任せくださいです!」
今、ねねは変装している。いつものツインテールはポニーテールになっており、帽子をかぶらずに眼鏡をかけている。そして服装はいつもの軍師服ではなく、ワンピースのような格好であった。どこからどう見ても一目ではねねとは分からないだろう。
「では、行ってくるです!」
「うむ、頼んだぞ!」
ねねは一刀の近くまで忍び寄ってきた。失敗は許されない。どうやら一刀も恋もねねに気付いていないようだ。
ねねたちの作戦はこうだった。まず、ねねが一刀の背後に近づく。そして、一刀の尻ポッケから財布を頂戴する。罵声を浴びせてから逃げる。恋は一刀にあきれる。
と、とても幼稚な作戦であったが実際に女の子の居るところでやられた時の心身のダメージは計り知れないだろう。ねねはそこを狙ったのである。
ねねは狙いを定めた。尻ポッケに財布がある事を確認。実行に移る。
「貰った~のです!」
ねねは一瞬のすきを突いて一刀から財布を奪い取った。一刀はびっくりして声が出なかったみたいだ。ここで罵声を与えながら逃げる。
「へへ~んです!生意気にも呂布殿とお茶なんてしていつからこんな事になるんです!思い知りましたか!?この馬鹿チン「ドン!」痛!」
ねねは前方で何かにぶつかった。その拍子で転んでしまった。
「あ~ん!なんだこのチビは!」
何ともガラの悪い三人組であった。顔が赤く、少し酒が入っているのかもしれない。
「あ~あ~痛って~!!こいつは骨が折れちまったな~………どうしてくれるんだ!このチビ!」
リーダー格の男はわざとらしく痛がった。完全にイチャモンである。
「な、何を言っているのですか~!ぶつかったことは謝るですが、そんなんで骨が折れるわけないのです~!」
「生意気言ってんじゃね~!おい!親を呼んで来い!親を!」
かなり騒ぎになってきた。もはや作戦どころではなかった。美羽も遠くから見ているだけで動けなかった。その時、一刀がねねを庇うように前に出た。
「よさないか!この子も謝るって言ってんだからその辺にしとけよ。」
「あんだと~!テメ~には関係ねえだろうが!」
「そうはいかない。この街で騒ぎを起こすのは警邏隊の人間として見過ごすわけにはいかない!」
一刀は勇敢にもゴロツキ相手に怖じけなかった。ねねはそんな一刀の袖を掴みながら震えていた。
「け、めんどくせ~!おいデク!こいつをやっちまえ!」
リーダー格の男は一番強そうな男に命令したが返事はなぜか返ってこなかった。
「おいデク!聞いて……る…のか?」
すでにチビとデクは恋にボコボコにされていた。あれは当分起きることはできないだろう。
「どうするんだ?」
一刀は少し怒気の入った声で尋ねた。周りのヤジ馬も冷たい目で男を見ていた。リーダー格の男はこの状況に耐えることができず、仲間たちを引きずりながら帰って行った。
周りは大喝采だった。楽しいものが見れたと人々は満足した様子で仕事に戻って行った。しかし、ねねだけはいつまでたっても一刀の袖を離すことができなかった。そんな女の子をねねと知らず、頭をなでながら慰めてあげていた。
「災難だったね。でも、もう大丈夫だよ。」
一刀は自分の財布を盗んだ盗っ人相手に優しいくらいの笑顔でなだめてあげた。頭をなでながら一刀は女の子に言った。
「お金に困っているのかもしれないけど人のお金を盗んじゃだめだ。………これだけあれば十分だろう。」
一刀は取り戻した財布を開けて、中に入っていたいくらかのお金を女の子に渡し、握らせた。
「俺と約束してくれ!もう絶対に人の物を盗まないと!」
一刀は女の子(ねね)の目を真剣に見つめながら聞いた。女の子(ねね)は喋ることが出来ず、ただ頷くだけだった。
「よし、いい子だ。」
「……////」
そう言って、また頭を撫でてあげた。その時、一刀は女の子に何かに気がついた。
「あれ、君ってどこかで…………」
「っ!////」
一刀がすごく接近してきてもう少しで唇が重なり合うところで、女の子(ねね)は逃げ出した。その顔はものすごく真っ赤であった。
(認めないのです~!あんな奴を、ほんの少しとはいえ、……かっこいいなどと思ったなんて!)
一刀と恋は脱兎の如く逃げ出したねねを見送っていた。
「………ご主人様、捕まえる?」
「いいよ。あんな子がもう増えないようにしないとな!」
一刀はまだまだ裕福でない子供たちがいたのだと心を痛ませていた。そんな子供たちをこれ以上増やさせないためにも、もっと頑張ろうと決意した。
「…………ご主人様、とても優しい。」
「ははは、ありがとう。でもこれで俺の小遣いもパアだ。七乃さんに叱られるな。」
「………クス。」
恋がほんの一瞬笑ってくれたのを一刀は見逃さなかった。でもそれを口にするほど一刀は空気の読めない男では無かった。今はこの恋の笑顔で我慢するか、と考えていた。
美羽たちは一度城に戻り体制を整えることにした。戦略的撤退である
ねねはいまだに顔を赤めていた。まさかあんなにかっこいいなんて思いもよらなかったからだ。
「むむむ~!認めないのです!あんな奴に、あ、あんな奴に……////」
「ねねよ。これからどうするのじゃ?」
美羽たちはいろんな作戦を決行していた。足もとに縄を引っかけさせたり、落とし穴にハマらせたり、上空からタライを落としたりと。しかし、そのすべてが恋によってふさがれていた。もはや万策尽きたのであった。
一刀side
今日はいやに変な日であった。なぜか行くとこに限って縄が引いてあったり、地面に穴があいていたり、空からタライが落ちてきたりと変な事が起きる。でもすべてが大した事では無く、恋のおかげで助けてもらっているし、別にいいか。一刀はそのように考えていた。
「…………ご主人様、何考えてるの?」
「ああ、今日はいやに変な日だったなって。………それでさっきの話の続きだけどさ…」
一刀たちは警邏が終わった後、市を見学していた。休憩がてらに今度は違う喫茶店に入り、自分たちの身持ち話で盛り上がっていた。
「その祭りで俺たちは別れることになるかもしれなかったんだけど、なんとか引き分けにまで持ち込むことができたんだ!」
恋はただただ一刀の話を聞いているばかりである。彼の話はとても面白い。だが、
「…………袁術の話しているご主人様、何だか楽しそう。」
どうやら気付かないうちに顔が笑っていたようだ。恋の言うとおりだった。一刀はとても楽しかった。自分と美羽の苦労話をしているのが。
「……………ご主人様、袁術の事……好き?」
恋はいきなりこっぱずかしい話を持ち込んできた。どう答えようと一刀は悩む。
しかし、一刀の悩みはすぐに無くなった。自分は美羽の事が大好きだ。この二年間苦労もしたけど楽しい事もあった。そしていつも自分の傍にいて、支えていてくれたのは美羽だった。
この二年間、本当にいろんな事があった。南陽で美羽たちに拾われて、いきなり殺されそうになったり、南陽の祭りで自分と国を賭けた戦いが始まっていたし、黄巾党の戦いでも雪蓮たちと協力して何とか勝利することもできたし、本当にいろんな事があった。そして、傍には美羽がいた。だから、悩む必要なんてなかった。
「ああ、大好きだよ。」
一刀は屈託のない笑顔で答えた。たぶん、この一言にはいろんな意味が込められている。でもそれを知るのは当の本人たちだけであろう。恋もまたそれを感じ取った。
「…………分かった。」
恋は何か考え事をしてからそう答えた。そろそろ日が落ちる。一刀たちは城に戻った。
夕食後、美羽は一刀に直談判をしに一刀の部屋へと向かった。
(何としても呂布の奴を一刀から離れさせなければ!)
七乃に言っても自分で何とかするしかない、としか言ってくれない。ねねはすべての策が不発に終わり、ショックのためか部屋に閉じこもって出てこない。
(一刀はどうして妾にかまってくれんのじゃ!)
なぜか、一刀の傍に誰かがいると心が痛む。仕事のためとは分かっている。でも、それでも、などと考えている内に、一刀の部屋の前に来ていた。
「一刀?いるかや?」
美羽は一刀の部屋に入ってみたが部屋は暗く誰もいなかった。
引き返そうと思い来た道を戻ったら、前の方から一刀と呂布がやってきた。美羽は思わず隠れてしまった。
(なぜ、妾が隠れなければならんのじゃ!)
一刀と呂布は楽しそうに話をしていた。
ズキ!
美羽はあんな楽しそうな二人を見たくなかった。気がつけば頬を濡らしていた。
(………ひぐ…………ぐす……………一刀!)
「じゃ、御休み、恋。」
「…………コク。」
一刀は自分の部屋に入って行った。恋は一刀が部屋に入ったのを確認したあと美羽の方へと足を運んだ。
美羽は逃げようとしたが体が動けなかった。いや、動かなかった。美羽はプライドだけは一流だった。ほんとにしょうもないプライドだが。ここで逃げたら何か大切な者がなくなってしまうような気がしたからだ。
恋が美羽の存在に気づいた。
「…………袁術…。」
恋は美羽を見つめながらその場にとどまっていた。
「な、何じゃ!わ、妾はお主なんぞに用はないぞ!」
ただ、恋は美羽を見つめているだけであったが、ようやく口ほ開いた。
「……………恋。」
「ほえ?」
呂布はいきなり何を言ったののだろうと不思議に思った美羽。
「……………恋の真名。お前にやる。」
突然、とんでもない事を言い出す恋。確かにこいつは美羽の配下になったのだから真名を預けるのは当然と思っていたが、今までそんな事無かった。
「い、いきなりなんじゃ!」
当然、疑問に思うだろう。
「…………ご主人様、お前の事好き。」
「ふえ?」
「…………だから恋、お前の事も守ってやる。」
さっきから何を言っているのか分からなかったが、はっきりしている事はこの呂布が真名をくれるという事だけだ。
言いたい事を言って、恋は戻って行った。美羽はその場に置いてきぼりにされた。
一刀は今日の事を振り返ってきた。よくよく考えてみるとすごく恥ずかしい事を言ったのかもしれない。恋に、美羽の事が好きだと言ってしまった。
でも最近、話とかをしていない。そう思うと彼女が恋しくて堪らなくなった。
(…………美羽。)
いつも俺の傍にいてくれる大切な半身。ちょっと生意気でお調子者でプライドだけは無駄に高い。でも本当は優しくて、泣き虫で、甘えん坊な美羽。そんな彼女の事が好きだった。数か月前の祭りの日に告白された時の事を思い出した。あの時は、状況が状況だったため彼女の告白に答えたが、いつの間にかこんなにもあの子の事を思うようになっていた。
(会いたいな、美羽に。)
そんな事を考えていた時、戸を叩く音が聞こえた。
「一刀、居るかや?」
(み、美羽!?)
ものすごい偶然だった。会いたいと思っていた子が来たのだから。
「ああ、居るよ。入っておいで。」
部屋の中に美羽が入ってきた。思わず、一刀はドキドキしている。
(今日はこの子の話ばっかりしていたからな。変に意識しちまうよ。)
美羽は、一刀に恋の話をした。いきなり真名を預けられた事、自分には何の見覚えもない事等など。
「妾には何が何だか分からんのじゃ。」
一刀は気がついた。一刀は恋に美羽の事が好きだと告白していたのだ。ひょっとしてその時の事で………
「な、なあ、美羽。恋は他になんか言っていなかったか?」
「っ/////!」
美羽は突然顔を赤めた。そう言えばさっき恋は、一刀が自分の事を好きだと言ったいたような……
「れ、恋の奴………その………お主が妾の事を………す、好きだから…と抜かしておった。」
一刀は確信した。あの時の言葉で恋は美羽の事を認めたんだと。
「……そうか。」
「お、お主はわ、妾の部下なのじゃから、妾の事の好きになるのは当然なのじゃ!それなのにあ奴は一体何を考えておるんじゃろうな!?」
美羽は、耳まで赤くして強がっていた。そんな美羽が面白くて、いじらしくて、そして恋しかった。
一刀は、美羽を抱きしめた。美羽はびっくりして硬直していた。
「かかかか一刀や、いいい一体、な、なんじゃ!?」
緊張しているのか、美羽はロレツが回っていなかった。
「美羽、好きだよ。」
「~~//////!!」
「好き、本当に好き、大好き。」
一刀は美羽の耳元で甘く囁いていた。美羽は真っ赤になりながら自分の気持ちのも正直になった。
「わ、妾も、お主の事が……す、好きじゃ!大好きじゃ!」
「本当に?」
「ほ、本当じゃ!ほんとの本当にお主の事が大好きなんじゃ!」
美羽はむきになりながら告白してくれた。そんな美羽を見て一刀は本当にうれしかった。
「美羽、うれしいよ。」
ただ、その一言を言って、一刀と美羽は唇を重ね合わせた。まだ、経験の少ない二人だったから決して上手とは言えなかったが、二人にとって永遠ともいえる至福の時であった。
「ん!ん~!ぷは!…………なんだか初めて会った時の事を思い出したのじゃ。」
「偶然だな、俺もだよ。………ん…」
そう言って、二人は再び唇を合わせた。月日がたつのは早いものだ。2年前はまだわがままな子供にしか思えなかったのに、今では幼さを残しつつ、すっかり女らしくなっていた。
「な、なあ。美羽。きょ、今日はさ、その……い、一緒に寝ないか?」
「なっ!//////」
一刀は美羽に聞いてきた。美羽も子供とはいえ、その意味が分かるくらいには成長していた。
「そ、それは、………その……どういう意味でじゃ?」
美羽は真っ赤な顔をさらに真っ赤にしていた。美羽も分かっているはずなのだが一刀は言葉を紡いだ。
「こういう意味だよ。………ん…」
再び、唇を重ね合わせた。美羽も三度目になると抵抗などはなかった。
「俺は、美羽が大好きだ。………いやか?」
沈黙が走った。
「………フルフル。」
美羽は、首を横に振るだけであったが、それだけで十分だった。一刀は、美羽を抱き上げてベットに運んだ。
「…………一刀、妾はお主を、」
「言わなくていいよ。美羽、大好きだ。」
二人の想いはその夜につながった。
…………………………
………………
………
朝が来て、七乃さんが起こしに来てくれた時、七乃さんは言葉に出来ないくらいすごい顔をしていたらしい。
翌日
俺と美羽は七乃さんの前で正座をしながら説教を聞いていた。説教が終わると、
「もう!今度は私も混ぜてくださいね。」
なんてとんでもない事を言い出した。美羽は喜んだが、一刀はげっそりと嫌な顔をしたのは言うまでもない。
……………
美羽は恋を探していた。食堂に恋がいるのを見つけ、彼女の近くに座った。
「こ、これ、恋よ。」
「……………?」
恋は茶碗を持ったまま、美羽の顔を見ていた。
「き、昨日は……その……お主に強くあたってしもうた。……済まぬ。」
「……………??」
美羽は昨日、恋にこれ以上一刀に近づくなと言ったことを悔いていたようだ。
「これからは、一刀と一緒にいても何も言わんが………妾と一緒の時は……譲ってくれなのじゃ。」
「……………???」
恋は美羽が何を言っているのか分からなかったが、とりあえず頷くだけはしておいた。
「そ、それからの…………こ、これからは、わ、妾の事を……美羽と呼ぶがよい!」
「………美羽?」
「うむ!」
恋はどうして真名を預けられたのか理解できなかったが、とりあえず嬉しかったらしく、美羽に微笑んだ。
「…………美羽とご主人様、恋が守る。」
「うむ!これからもよろしくなのじゃ!うははははははは!!」
……………………………
…………………
…………
数週間が経った。
月たちは民たちに報告を済ませ、戻ってきてくれた。その際、恋の家族も一緒に連れてきた。セキトって名前だから馬かと思ったが犬だった。恋らしいといえば恋らしかった。
民たちはとても喜んでくれたらしく、早速、契約に入った。こうして俺たちは大陸最強の勢力になった。
雪蓮たちはかなり驚いていたが、何より驚いたのが一刀と美羽が男女の関係になっていたことに驚きを隠せなかったらしい。
「うわ~ん!美羽ちゃんに先を越された~!うえ~ん!」
などと大泣きしていた。もちろんそんな雪蓮を見て調子に乗らない美羽では無い。
「うはははははは!雪蓮よ、お主等がどうしてもと言うのであれば、一刀を貸してやらんこともないが~……」
などと雪蓮たちをおちょくっていた。本当ならここで反論するはずなのだが考えもせずに一瞬で美羽に下った雪蓮。なぜか、雪蓮だけでは無く蓮華や思春たちも頭を下げていた。
こいつら、本当に大丈夫なのだろうか?
新しい仲間ができ、俺たちは雪蓮たちと月たちを引き合わせた。お互いに仲間と認め合い、真名の交換を交わした。冥琳も北の産物や経済の流れ等が気になったらしく、軍師である詠と意気投合していた。
お互いが仲良くなったとても理想的な形になった。一刀も月も雪蓮も、みんなが幸せに手を取り合いながら生きてけたらと願った。ほんの少しだがこの光景を見たらそれも不可能では無いかとも思えた。
月たちが一刀の傘下に入り数か月、一刀たちと雪蓮たちは月たちと交流を深めながら、お互いの国を繁栄させていった。だが、ここで大陸を揺るがす大事件が起きた。漢王朝の帝である霊帝が崩御したとの情報だった。これにより大陸はますます混乱を広めていくことになる。
つづく
おまけ
ねねは自室に閉じこもっていた。
「く~!!あのチ●コめ~!あんな風にねねを惑わすとは~!」
ねねは酔っ払いに絡まれたところを助けてくれた一刀の事を考えていた。あの時、一刀は間違いなくねねに気が付かなかったはず。
つまり、見も知らない泥棒を助けた挙句、お金まで渡してくれたのだ。
「認めないのです~!ぜ、絶対にあんな奴認めたりしないのです~!」
ねねの手には一刀から渡されたお金が握られていた。
「これ、どうすればいいですか?」
一刀に握らされた金を見てねねは思った。
翌朝、ねねは市場にいた。一刀にお礼の品を買うためにいたのだ。
(決して、あいつの為なんかじゃないのです!それにこれは元々あのチ●コのお金だからお礼にもならないのです!)
などと、自分に言い訳していたねね。
「しかし、あのチ●コは何が好みなのですか?」
ねねは物を物色しながら歩いていた。
途中、ねねは『幸運になれる指輪』とか言う怪しいものを見つけた。何でも相手の左手の薬指に入れると幸運になれるという怪しさ全開のものだった。
(あのチ●コにはこういう怪しいもので十分なのです。)
ねねはその指輪を買い、城に戻って行った。
その夜、
ねねは一刀の部屋を訪れた。珍しく仕事をしているようだった。
「なんだ、ねねか。」
「なんだとは、何ですか!?」
「ははは、ごめん、ごめん。」
「むむむ~……!」
一刀は不思議に思った。いつもなら有無も言わせずに攻撃してくるのになぜか今日のねねはとてもおとなしい。それどころか何かモジモジと恥じらいを見せている。
「チ、チ●コ!左手を出すです!」
「……?」
一刀は言われるがままに左手を差し出した。そしたらとんでもない事をねねはしてきた。何と、一刀の薬指に指輪をはめ込んできた。
「き、今日は市で珍しいものを見つけたから、………決して、お前の為なんかじゃないのですぞ!」
この小さな生き物は何か言っているようだが、その言葉は一刀に届かなかった。
(ゆ、指輪!?し、しかも左手の薬指って………ま、まさか、ねねの奴!?)
ねねは一刀の異変に気が付いた。しかし、気が付いたころにはすでに遅かった。
「ねね~!」
「な、何をするですか~!!////」
急にねねに抱きついてきた一刀。ねねは両手を絡めとられており、身動きが取れなかった。一刀はねねの唇に近づけていった。
(や、やられる!………呂布殿、申し訳ありませんです!ねねはこのチ●コにあんなことやこんな事をされてしまうのです~!)
ねねは目に涙を浮かべながら覚悟を決めた。と、その時、
「か、一刀~!何をやっておるのじゃ~!」
ドガ!
「ぐは!」
突然、体がくの字に折れた。美羽が助走をつけながら一刀にドロップキックを喰らわせたようだ。美羽近くには恋もいた。いつもの恋なら止めてくれるなり、助けてくれるなりと何かしらの行動を行うはずなのになぜか静観していた。
一刀の意識はそこで途絶えた。
起きた後、一刀は尋問を受けた。そして、一刀の世界での指輪の意味を三人に教えてあげた。ねねは顔を真っ赤にしながら一刀の股間を蹴りあげ、逃げだしていった。
美羽は指輪を買えとせがんだ。恋もまた指輪を買ってほしそうな目で一刀を見てくる。結局、一刀は美羽と恋の二人に指輪を買ってあげた。
余談だが、一刀は七乃さんだけではなく、ねねにも指輪を買ってあげた。
今日も一刀たちは幸せである。
あとがき
こんばんは、ファンネルです。
今回の本編はどうでしたでしょうか?
ついにというかようやく幸せをつかんだ二人です。
いろいろありましたが一刀と美羽を祝福していただければ幸福です。
相変わらずの長編。40キロバイトは書いてしまった。しかも、おまけも長い。
長いのに最後まで見てくれた人たちには本当に感謝です。
次回から、舞台が変わります。皆さんの考えも及ばない展開にして見せます。
もしかしたらすごい長編小説になってしまうかもしれませんが、なにとぞお付き合いください。
では、次回もゆっくりしていってね。
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こんばんわ、ファンネルです。
ついに袁術ルートも十二話になりました。
相変わらずの長編です。
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