【 決意 の件 】
〖 益州 成都 にて 〗
────期限の3日目になった。
カツン カツン カツン カツン───クルッ!
カツン カツン カツン───クルッ!
何進「……………………」イライラ イライラ
成都城内にある賓客室で、何進が部屋内をウロウロしながら……思案顔をしている。 その様子に……鬼灯が顔を強張りつつ哀願をするのだが。
鬼灯「空母……じゃない何進様、少しは落ち着いて下さい!」
何進「あぁ~ん?」ギロッ
鬼灯「で、ですから………苛つかないで下さい! お願いします!! 空気が重くて動き難いんですよ! それに、覇気が少し漏れているものですから!」
何進「か、かか、一刀が……私の申し出を……完全に拒否でもされてしまったら……わ、私は……!」
鬼灯「───それこそ好機ではないですか! 大将軍の命令を拒否した不届き者として処罰すれば……労少なくして、邪魔者を外す事が可能かと………」
何進「───それでは、一刀に嫌われるだろうがぁあああッ!?」
鬼灯「───────!!」ガクガク
何進「い、いや──すまん! 私達が本気で事に当たれば……この大陸如き、10日まであれば制圧も可能だ! しかし、そんな羊の如き敵など……私はいらんッ!! 強大な敵が欲しい! 竜虎相搏ような強敵がな!?」
鬼灯「────コクコク!!」
何進「分かれば良い!」
そう言い放つと……また再度……往復を難しい顔をして、往復運動を始めた。
鬼灯「 (´ヘ`;) 」
後ろでは、鬼灯に呆れ顔されているとも知らずに………。
★☆☆
〖 紫苑屋敷内 にて 〗
その頃、一刀達は───
一刀「───俺が行かなけば、益州の民達への信頼を失いかねない! だから何進達に同行して、皇帝に拝謁しようと思う!!」
加賀「私は反対です! 一刀提督を……空母水鬼が支配する魔都へ送り込むなど───あまりにも無謀で危険すぎますッ!!」
長門「しかし、相手は何進だ! この国最大の軍事の長であり、民衆にも絶大の支持があるのは、劉焉の裁きで分かっているだろう! それに、奴の背後には現皇帝の力添えもある! おいそれと、簡単に断るこは不可能だぞ!?」
赤城「……私や加賀さん……あの場所に待機していた艦娘達は……皆、反対します! 一刀提督を救えない哀しみ、自分達の力不足の悔しさ! 私達は二度と……あの亡失感を───味わいたくありません!!」
一刀と艦娘達が話し合いをするが……圧倒的多数が、提督の洛陽行きを不定する! 前の世界の出来事が……多分に後を引いている事が大きい。
一時は、死んだと思われていた一刀達と……この世界で再開して数日!!
今までは、劉焉の戦で緊張していた為、普段と変わりなかったのだが……その張り詰めていた緊張感が……かなり緩みだしたとみえ、このような結果になった。 一刀も……意外な結果に……少々困惑気味である!
そんな中、恋姫側から意見が述べられる。 今回の敵は、艦娘達の方が対応も取りやすいとの判断で、傍観していたのだ。
ひとまず意見が出たので、朱里から口火を切った!
朱里「………私も……皆さんと同じ場所には、勿論居ません。 だけど、ご主人様の亡失感だけは……ハッキリ分かります! 魏の国で……ご主人様を失った皆さんは……これが戦勝国かと思う程、国全体で悲嘆に暮れていました!」
雛里「だけど、だけど……魏の将は……頑張ったんです! ご主人様に……また戻って貰っいたくなるような……治世を魅せるんだって! 官民も……皆で国を活性化して、ご主人様を……また迎えるんだって───!!」
紫苑「結果的には……ご主人様は……帰って来られませんでした。 しかし、私達の知る限り……最後の最後まで……諦めようとはしませんでしたわ! 必ず、必ず魏に再度降りて来ると───!!」
そこまで聞いて……艦娘達は……提督を見つめた。
確かに、死を受けざれ得ない状況だった!
自分達を助けて……提督だけ残す結果に……思い悩んだ!
もう────二度と会えないと感じた!
でも、自分達の『北郷一刀』提督は……幸いにして出会えを果たせた。 これを奇跡と言わず何と言おう!?
桔梗「───戦場では死が付き物。 ここで大将軍の誘いを断れば、敵対の意志ありと見られ、戦になるかもしれん! 下手をすれば──記憶を持つワシ等のような将が駆けつけ、天下を二分した大乱になる可能性もある!!」
焔耶「ワタシ達だって……せっかく逢えた北郷様と、離別されるのは嫌だ!! しかし、罪も無い民衆にまで危害が加わるのは───もっと嫌だぁあああッ!! ワタシが命懸けで護衛するから──頼む! 許可して欲しい!」
『…………………………』
艦娘達は再度話し合い……『護衛を付ける事が最低条件』と許可を出す。
その後、護衛は誰が良いか……擦った揉んだ挙げ句……こうなった。
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艦娘側
金剛「当然デース! Follow me! 皆さん、ついて来て下さいネー!」
長門「ふふん! 実力からして当然だ!!」
雷「な、何よ! 私の実力じゃあ、不足とでも言いたげな顔じゃないッ!」
電「雷ちゃん!! 我慢、我慢なのです!!」
天龍「ふふふっ……オレの怖さを思い知らしめてやるぜぇ!」
龍田「うふふっ! 天龍ちゃんが、こんな具合だからね~!」
港湾棲姫「ワ、ワタシモ……良イノ!? 何進ニ通ジテイルカモ……知レナイノニ……? ───! ア、アリガトウ! ………信ジテクレテ!!」
ーーー
比叡「金剛お姉さまが──私を呼んでいるッ! どこまでも付いて行きますよぉおおおッ!! ────気合い! 入れて! 行きますッ!!」
榛名「提督の行かれる場所でしたら、榛名はどこまでも……お供します!」
霧島「私の頭脳が必要なんですね? 分かりました! お付き合いします!」
翔鶴「えっ!? 一航戦の先輩方よりも、五航戦の私達を選んで頂けるなんて……ホントに嬉しいですッ!!」
瑞鶴「私達──五航戦の力が認められたんだよ!! きっと!!」
響「初任務か……ふふっ、Настроение поднимает настроение!(気分が高揚するな!)」
暁「レディだもんッ!! べ、別に──嬉しいとか楽しみとか……思ってないわよ!! 任務よ、任務!! 仕事と遊びの区別、しっかり分けるわよ!!」
雪風「はぁ──い! しれぇ~!! 一緒に付いて行きますぅ!!」
木曾「分かった! 全力で……期待に応えよう!!」
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恋姫側
朱里「はわわわわッ! お任せ下さいッ! ご主人様!!」
桔梗「わしを選んで頂けるとはの? いやはや──流石は北郷殿よ! お目が高いッ!!」
焔耶「あり……ありがとうございます!! 信じてくれて、ありがとうございますぅううう!!! 必ず、必ず無事にッ!!!」
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数刻後、何進達との話し合いが開始。
鬼灯曰わく『何進様に鈴を数個付けて、直立して貰えば……良い曲を奏でて頂けるでしょうね………』と密かに皮肉る程、震えていたそうだ。
結局……洛陽に同行する事を一刀側が条件付きで承諾。 何進は大喜びで、その条件を呑み込み、使いを洛陽に出立させるのだった!
◆◇◆
【 寂しさ の件 】
〖 揚州 丹揚郡 建業 城内 にて〗
冥琳「雪蓮……少し……いいか?」
雪蓮「どうしたの? ──って、珍しい!? 冥琳が酒を持参して、私の部屋に来るなんてぇどういう風の吹き回しぃ?」クスッ
冥琳「今、益州で有名になっている『天の御遣い』……雪蓮はどう思う?」
雪蓮「唐突ねぇ……情報が眉唾みたいに見えるけど、全部事実なんでしょ? 思春を早々に益州へ送って、詳細な情報を私達に齎したんですもの! 流石は冥琳よねぇ!! 冥琳が孫呉に居てくれて──良かったッ!!」
冥琳「────ならば───『北郷一刀』と云う名前には?」
雪蓮「うーん、覚えが無いわね? その名前がどうかしたの?」
冥琳「…………益州に降り立った天の御遣いの名前なのだが……」
雪蓮「……そう、なんか普通の名前ね? もっと、凄く格好いい名前を想像していたんだけど……」
冥琳「…………そうか」
雪蓮「冥琳、私に何か……『もっと違う事を言って欲しい』……って顔をしているわよ? 御期待に添えられなくて残念だけど……私は、亡き母様の為……国を建国しなければならない! 男なんかに興味を持つ事なんか無いわ!」
冥琳「分かってる! 文台様の悲願だ……忘れる訳がなかろう! 私が云いたかったのは……『天の御遣いの血を──我々に取り込めばどうか?』と相談したかったのさ! お前なら……多分賛成するだろう!」
雪蓮「あらっ!? 冥琳にしては良い案じゃない! 確か……御遣い君は益州に居るんでしょう? じゃあ、早急に問い合わせて、他の軍閥に出し抜かれないよう、釘を刺さないとね!!」
冥琳「────分かった! しかし、皆に意見を聞いてからだぞ? お前が良くても蓮華様や小蓮様、他の将達が肯定するかどうかだ! 早走って益州に使いを送るなよ!?」
雪蓮「大丈夫よ! 冥琳達の返事を聞いてから送り出すから!!」
冥琳「それを聞いて安心した! 今宵は一杯、付き合って貰うぞ! ちょっとした前祝いだ! 祭殿お勧めの黄酒を買ってきたんだが、これが……なんと幽州で生産された珍しい酒だ! 味わいも良い、一杯試しに呑んでみろ!」
雪蓮「へぇ──? あの冥琳が、私に酒を勧めて……しかも高そうな酒を持ってくるなんて……天変地異でも起きるのかな。 コクッ! ん? んん──っ!! これぇ、すごっくぅ───美味しいぃいいいッ!!」
冥琳「やはり──分かるか! 知り合いの酒屋で急遽入った『老酒』だ! 私達の所では、肉桂、陳皮など入れて造酒するが、向こうでは黍や粟を使用するそうだぞ!? なかなか、まろやかな味だ!」
雪蓮「………もしかして、蓮華にも?」
冥琳「もし……見つかっていたら……此処で呑むことなど、叶わなかったぞ? この高級酒が……一晩で空だ!!」
雪蓮「あちゃー! そうなったら痛いわねぇ!?!?」
冥琳「人事では無いぞ? 雪蓮も……この酒の味に会えないまま。 しかも、蓮華様の後始末で、お前に降りかかるぞ? そして、蓮華様も……この味を忘れて、深酔いするだけ。 誰も得をしないと云う結果になりかねん!!」
雪蓮「……あぁ~ッ!! 折角の酔いが一気に覚めちゃうぅううう!!!」
冥琳と雪蓮は、そういって……酒を呑んだ。
ーーー ーーーー
『北郷一刀 再会』の前祝いをしながら、冥琳は思う。
『この記憶を持たぬのは……果たして……幸せなのだろうか? 不幸なのだろうか?』
雪蓮の記憶の確認しつつ……思案に暮れる冥琳だった。
◆◇◆
【 三人が行く! の件 】
〖 揚州 丹揚郡 建業 街中 にて 〗
ーーーー☆
────ガヤガヤ!
ーーーー!
─────ガヤガヤ!!
賑やかな建業の街中を、三人の若き娘が華やかに通過する。
ーーーー ーーーー
??「星ちゃ~ん! 良かったんですかぁ──? 幽州の高価な酒を売ってしまってぇー?」
星「フッ! 酒は各地を廻って販売されるが、地元のメンマは地元でしか買えん! ならば……その一期一会を歓喜し、何より優先して購入するのが、メンマ道。 例え、安酒になろうとも、素晴らしいメンマがあれば──最高だ!」
??「メンマとは……そんなに凄い味付けなんですか? 私には、歯応えがあるしょっぱい食べ物にしか………」
星「何を云うか! 稟、よく聴くがいい! そもそも……メンマと云う物は、人が地面より生まれた時、同時に生えて来たと伝わる『友』だ!! だから、人はメンマを欲し、メンマは人を恋しがる! これが、メンマのメンマたる──!」
稟「ヒィ────ッ!?」
…………
………………説教中
…………
風「稟ちゃん~? 駄目ですよぉその言葉ー! 星ちゃんにとって、禁句なんですよー!? メンマの暴言は、竜の逆鱗に鼻血を吹きかけると同じ事ですー! 気を付けないと、有り難いメンマの説法を長時間喰らいますよー!」
稟「もっと早くぅ言って下さいぃいいいッ!! ────風ぅうううッ!!」
宝譿(ほうけい)「何度も何度も注意してやってんのに……忘れて星に絡むからよぉお! いい加減──オレも呆れ果てたんだ!!」
星「稟よ! まだまだ、メンマの有り難みを伝えてないぞ! メンマとは……究極の備蓄品である! まず、何があっても……先にメンマを持ち出さなくては、人は生きては行けん!!」
稟「風───ぅ!! 何とかして下さいッ!!」
風「……むぅー! 仕方ありませんねー。 このままでは、風も支障がありますのでー。 星ちゃん! 『天の御遣い』の事……覚えていますー?」
あまりにメンマの教えを語る星に、いい加減ウザくなってきた風が……星に別の話を持ちかけた。 稟に説教しかけた星は、目を細めて──あの頃の情景を思い浮かばせながら、ゆっくりと語った!
★☆☆
星「あぁ! 今でも……はっきりとな! 『北郷一刀』……蜀の桃香様と並ぶ大徳の御人! あの方が……私の槍に目指すべき志を示し、民の幸せとは何か、徳とは何か……身をもって教えて下さった愛しい『主』だ!!」
風「稟ちゃんと風の見解は違んですよねー? 魏の優秀な警備隊長にして、華琳様の相談役! そして……まぁ~何と言うべきなんでしょうかー? 『魏の種馬』の二つ名で分かると思いますが───」
稟「風──!! それ以上はぁ止めてあげて下さい!! 一刀殿が聞けば、間違い無く落ち込みますからぁあああッ!!!」
星「うむぅ……。 しかし、確かに魏、呉の記憶もあるが、蜀の記憶こそ私の真の事実! あの凛々しき姿! 戦を指揮し、勇将、知将を束ね、皆を導く勇姿!! この趙子竜、己の槍と星の真名に懸けて、間違い無いと断言できるぞ!!」
風「それは、風だって同じですよー! 魏の記憶……華琳様の覇業を裏から支え、民の安全と幸せを望み、風達を愛してくれた『お兄さん』こそ、正しい天の御遣いなのですー! この風の真名、宝譿の名に懸けて譲れませんー!!」
星、風「「────むむむむむぅッ!!!!」」
稟「こんな他国の往来激しい場所で、双方睨み合っても困ります! 官兵が来られてでもしたら……どうするんですかッ!?」
星「稟の言う事も一理ある。 ………よし! 主に出会った時に、どちらが正しいか問おうではないかッ!?」
風「臨むところですー!!」
稟「………ですが、益州の『天の御遣い』は、果たして一刀殿本人なのでしょうか? 旅の商人等の噂では、『北郷一刀』と、名乗りを上げたと聞きいています。 見た事も無い『白く輝く服』を着ていたとも………」
星「しかしだな……その傍らには、益州で名を轟かす『黄忠』『厳顔』『魏延』将軍達が立っていたと云うではないか! 紫苑達が信じる者が、主以外の何者にもならん! これぞ──『主』である明かしとなるのではないか!?」
風「『お兄さん』の可能性も高いですよーだぁ! お兄さんの金箍棒の力で、虜にしたかもしれませーん! 何たって、あの男嫌いの桂花ちゃんさえ、誑し込んだ実力者ですー! 三人纏めて陥落させた可能性も、否め(いなめ)ませんねー!!」
星、風「「 うぐぐぐぐぐぅぅぅ───ッ! 」」
稟「で、ですからッ!! こんな往来では、止めて下さいぃいいいッ!!」
ーーーー ーーーー
二人の睨み合いは、稟の静止を振り切り続けられた。
…………孫呉の官兵に囲まれるまで………
ーーーーー
ーーーーー
あとがき
最期まで読んでいただき、ありがとうございます!
急に休みが入ったため………話が出来ましたので投稿します。
今度こそは……次の話、来週になる筈。
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今回も短いですが……