【 新たなる艦娘 の件 】
〖 益州 成都 紫苑屋敷 にて 〗
益州争乱後の二日目
一刀の目の前に……異様な気配の者が二人……佇んでいた。
紫苑からの報告により、屋敷の出入り口まで近付くと、向こうから声を掛けてきた!
卑弥呼「久し振りじゃ……むぅ~! また、男っぷりが上がったか! 『男子三日会わざれば刮目して見よ』とは、よく云ったものよ!!」
華佗「………初めまして……だな! 俺は漢中で医療活動を行う『五斗米道(ゴットヴェイドォー)』の長『華佗』だ! 君達の仲間に助けられて、劉焉より漢中を守る事が出来た! 代表して御礼を云いたい!!」
卑弥呼の事はさておき、一刀は目の前の青年に……丁重に礼を述べる!
一刀「いや、此方こそ……! 土地だけでもなく、色々便宜を図って貰いながら……代表である俺から挨拶させて貰うのが筋なのに! 当方こそ……申し訳ない! 俺が不甲斐ないばかりに────!!」
華佗「はははっ! 謝ってばかりじゃ話が進まないぞ! 双方……持ちつ持たれつだ! これからも何かと言ってくれ! 出来るだけ手伝わせて貰う!!」
一刀「こちらこそ!! 危ない事があったら……いつでも頼って欲しい!! あっ……言い忘れていたが……俺の名前は『北郷一刀』! あの娘(こ)達を纏める者だよ! 『北郷』でも『一刀』でも、どちらでもいい!」
華佗「じゃあ……一刀! 宜しく頼む!! 俺は華佗と呼んでくれ!」
華佗の言葉に一刀は安堵して、それぞれの名を交換し合い、今後の協力を約束する。
一刀「了解だ、華佗! 五斗米道(ゴットヴェイドォー)の方々にも、感謝していると……伝えて欲しい!」
華佗「───ご、五斗米道(ゴットヴェイドォー)の発音を……此処まで正しく……だと? い、今まで会った者達……誰も発音できなかったのにッ!? す、素晴らしい───ッ! 是非、友と呼ばせてくれぇ!!」
一刀「─────────!?」
こうして、この一言により……華佗との間に熱く固い友情が結ばれるのであった………!!
★☆☆
一刀「………それじゃ、漢中鎮守府が!?」
卑弥呼「うむ! 儂らが劉焉との争いに巻き込まれている間に、妖精達や残った艦娘達が、引き続き建造を続け──遂に完成したのだッ!!!」
華佗「その知らせと合わせ、何進達の来城を……一刀達の耳に入れようとしたんだが……一足違いだったようだ! ───スマンッ!!」
一刀「いや! どうあれ……何進に助けられたのは事実だよ。 それに、華佗達が成都に来れなかった理由……何かあったのか? 急病人でも?」
卑弥呼「う~ん……実はな! 前の世界で預かっていた工廠の機械を、漢中鎮守府へ再取り付けをして、試運転したのだ! ちょうど、傍に漢水や嘉陵江と大河が流れる為、水力発電で発電し作動も順調だったのでな!」
一刀「凄いじゃないかぁ!! 三国志の時代で電気が使用できるのは大きい! ありがとう──卑弥呼!!」
卑弥呼「だぁ、だぁりんの前で……褒められては……照れるではないか……」
華佗「いやッ! 左慈達の協力もあったが、卑弥呼の知恵と力があったからこそ──完成が早まったんだ! それは間違いない!! 俺も、卑弥呼を褒められて誇らしいし、正当な評価を貰えて嬉しいよ!!」
卑弥呼「だぁ───りんッ!!!」
一刀「それで、理由は────『ガバッ!!』──?!?!」
??「あ、『暁型 1番艦 駆逐艦』の暁よ! 貴方が……わ、私の司令官になるんでしょう!? 一人前のレディーとして………扱ってよねぇ!」
??「Я больше не могу ждать! (もう、待てないよ!) 『暁型 2番艦 駆逐艦』の響だ! その活躍ぶりから不死鳥の通り名もある。 まったく……司令官を目の前にして、お預けを食らうとはな!」
??「初めましてぇ!! 『陽炎型 8番艦 駆逐艦』 雪風です! どうぞ、宜しくお願い致しますっ!!」
一刀「───えぇっ? まさか……この子達が!?」
卑弥呼「残っている艦娘に頼んで、船渠を試験使用したのだ! 上手く作動しなければ、鎮守府の運営に支障をきたすかもしれん! なぁに、資材に関して心配はいらんわぁ! 今の備蓄を使用せずに済ましたからな!!」
一刀「い、幾らなんでも、資材無しで建造が出来るわけ───!?」
卑弥呼「最後まで話を聞くのだ! 儂と貂蝉が、前の世界の大本営へと、陳情に出掛けた結果よ! 下の者に言っても話にならんのでな、元帥と呼ばれる上の者に、直接声を掛け事情を説明し、許可を得たのだ!!」ニカッ!
一刀「………………!?」
華佗「正確には、一時借りたそうだ。 鎮守府の長である一刀に説明もせず、このような事をしてしまい申し訳ない! だが、貴重な資材を一刀の許しもなく使うのは、俺達にとっても気が引けるし、残った艦娘達にも悪いから……」
一刀「───とんでもない! 雷達の姉妹艦や雪風のような素晴らしい艦を出してくれたんだ! 此方こそ……幾ら頭を下げても足りない思いだよ!」
華佗「……そう言って貰えると助かるッ! 益州は鉄等の資源が豊富だし、運営が軌道に乗れば……すぐに返す事が出来る! 卑弥呼が、借用書も渡して来たと云うし。 約束は人と人との大事な誓い、命と同等に大事だな事だ!!」
卑弥呼「無利子、無期限で良いそうだわい! なかなか話が分かる元帥だった! 嬉しさのあまり、卑弥呼と儂で抱きついたら、大声を上げて嬉しがっていたぞ! ………け、決して浮気では無いぞぉ? だぁりん!?!?」
華佗「あぁ! お疲れ様!!」
一刀は、遠くから拝見した事しかない元帥を思い浮かべ……密かに……心の中で合掌するのであった。
◆◇◆
【 大賢良師 の件 】
〖 冀州 鉅鹿郡 とある村 にて 〗
この村は……どこにでも普通にある村なのだが……ある人物の行いが広まり、多くの民が訪れる事になった所。
『病を治療する方がいらっしゃる!』
『天の奇跡よ───ッ!』
と……病に罹る(かかる)人々が……求め敬う場所。
『奇跡の村』とか云う時もあるが……別に秘孔を突いて、病を治すアノ人物が居る訳でもない。 何故か……この世界の貂蝉が、某暗殺拳を会得しているのかは……おいて置く。
ーーー ーーー
民1「あ、ありがとーごぜぇますだ! 『大賢良師』様ぁあ!!」
??「はいはいっ! お代は此方よ! 次の人──どうぞぉ!!」
民2「へ、へぇい! 儂は腹が下ってぇ………」
??「うぅ~ん、そうねぇ……? この札を使えば治るからね! これらを千切って器に浮かべて、一緒に呑んで……暫く休めば良くなるから~!」
民2「へへぇ───ッ! ありがとーごぜぇやすぅ!!」
ーーーー
ーーーー
ーー★
??「ふぅ───! やっと客が捌けたわねぇ!! れんほぉ~? そちらはどうぅ? 今日の売り上げはどうだったの?」
人和「ちぃ姉さん、此方も大体終わったわ! 近頃は、代金の支払い……お金から野菜みたいな収穫物になってきたから。 だけど……幾ら計算するのは楽と云っても……こうも野菜ばかりだとね。 偶には、お肉も食べたい……」
地和「ちぃだって食べたいわよ! だけど……天和姉さんが食べないのに、ちぃ達が食べられる分けないでしょ!?」
地和は、そう云って恨めしそうに……奥の部屋を眺めた。
★☆☆
この家には、近隣に名を知られている『大賢良師』なる人物が……病に効く霊符を販売していると知られている。
家に住む三姉妹は、両親を早くに亡くし……幼き身ながらも、山の幸や近所の手伝いをして日々の生活を暮らしていた。
ところが……ある日、一番上の姉が山に出掛けた時に、『白き服を着用した貴人』に出会い、病を治す術を教わったと……幾つかの木の枝を持って降りてきたのだ。
天和「……この葉をね。 わたしが霊符に変えると……病が治るの。 天の貴人が……私に教えてくれたわ!」
やり方は、山に生えている『多羅葉』に文字を書き、祈祷して渡すシンプルな物。 近隣な者は、恐る恐るその行為を見守った。
天和が書いた物を、病に悩む者に服用させたところ、何人か回復したため、評判が評判を呼び……今に至るのである!
☆★ 閑話休題 ★☆ ★☆
《 実際、この葉は肉厚で、裏に尖った物でなぞると、文字が書ける性質がある。 別名『ジカキシバ』等云われ……日本の戦国時代に伝達方法として使用、そのため『葉書』の語源になった。
また、この『多羅葉』の近種が、実際に『苦丁茶』として飲まれているし、また……解熱、下痢止めと多岐に渡る薬効があると云われている 》
★☆ ☆★ ★☆ ☆★
しかし、その生業を教えてくれた人物の名を……一切語る事なく、天和は部屋に閉じこもり……偶に葉を取りに山へ向かうのが常であった。
◆◇◆
【 天和の願い の件 】
〖 冀州 鉅鹿郡 付近 にて 〗
今日も……一人で山に登り、多羅葉を集める天和。
天和「……かずとぉ……教えてくれてありがとー。 まさか、こんな風に役に立つだなんて……お姉ちゃん、思わなかったよ……」
そう呟き……多羅葉の樹木に寄りかかり、目を瞑った。
ーーー ーーー
ーーー ーーー
昔、別の世界で教わった知識。
『俺が居た世界……』の前文句から始まる不思議な話を、三姉妹でドキドキしながら聞いたのを……まるで昨日あった出来事のように覚えている。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『この葉はね、裏に文字や絵を書いても……こうやって黒く残るんだよ! ずっと昔に、これに経文と云う……難しい言葉を書いて………』
『俺の知っている張角達は、病を治すと云って、胡散臭い祈祷とか妖術とか行って民の心を掴んだんだ! 天和達とは全然違うのにね………!!』
『…………大好きだよ! 天和! 地和! 人和!』
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
天和「かず……とぉ……。 早く……会いたい……よ……」スゥースゥー
その思い出を繰り返しながら……天和は静かに眠りへと入った。
★☆☆
今から数ヶ月前、山に入り山菜を捜してした時のこと。
天和『フンフン~ッ! 今日はぁ新鮮な山菜が取れれば……いいなッ!!』
上機嫌で山に登って、辺りを見渡す!
辺りは、かなり山の奥で……普段は人など入らない場所。 しかし、天和にとっては、何時も来ている庭みたいな場所。 どこに危ない動物が居るか? どこに珍しい山菜があるかは……全て把握済み。
だから……この突然の飛行物体には驚いた!
今ままで、日が当たっていた所にポツンと影が見え、その影が少しずつ大きくなる! 慌てて上を見れば……白い光の尾を引く流星が此方に向かってくる───!
天和『えっ!? えぇぇぇ~ッ!? キャアァアアア────ッ!!』
天和が叫ぶ声を上げると……流星は急に角度を変えて……別の方向に向かい飛んで行く!! 辺りには『ゴオオオ───ッ』と得体の知れない音、天和が吹き飛ばされるかもと思う程の強風が、流星の置き土産として襲いかかる!!
天和『な………何なのぉ??』
震えながら突然の事態を把握しようと、頭を働かせる天和!
少し経ち……辺りが静かになった頃合いをみて、天和は服に付いた葉を払い、先程の出来事を確認するために見渡した!
天和の頭の上……雲一つ無い……天空で起きた不思議な光景。
夜の闇を切り裂く流れ星が……急に現れ、日が昇る空を駆けて抜けて行ったのだ! 方向を変えて進む流星の目指す先は……どこだか知れず、他に遮る物が無い青い空を、真一文字に飛んで行った!
天和『………あ、あれ……? ………か、一刀? 一刀!? 一刀!!!』
そんな天和の頭の中に蘇る記憶があった。 今まで忘れていた………懐かしき前の世界の思い出! そして……愛した『天の御遣い』を!!
ーーー ーーー
黄巾党を率いて姉妹と苦心の日々。
曹操軍に破れ、配下に加わり、一刀を紹介されるまで、二転三転した運命!
忙しくも楽しかった……ファンと共に過ごしたアイドル活動!
少しずつ惹かれ……最後は姉妹共に……愛した男性『北郷一刀』!
そして………別れの言葉も交わる事もなく………突如に消えた愛しき者!!
ーーー ーーー
天和『か、一刀ぉおおおッ!! 私ぃ──ッ! 此処に居るんだよ!? 『ちぃちゃん』や『れんほーちゃん』も一緒に居るんだよぉおおおーッ!!』
…………気が付けば……流れ星が去った方向に………涙を流し叫び続けた自分が居た。 一緒懸命に両手を振り回し、自分の存在を示していたのだ。
★★☆
混乱と喜び、悲しみと驚き……天和は山菜も取らずに戻り……妹達に話をした! しかし……彼女の期待とは裏腹に……妹達は覚えていなかった。
山菜が入っていない事に、驚き怒る次女。
身体が悪いのかと……心配する三女。
ーーー
天和「何で……覚えてないの!? 一刀だよ? 一刀なんだよ!?」
地和「あのねぇ………こんな日も高いのに、何寝ぼけているのよぉ! 天和姉さんが沢山取ってくるっていうから……期待して待ってたのにぃ──!!」
人和「天和姉さん……どこか……身体の具合でも悪いの? ………天和姉さんの話す『一刀』と云う名前の人……私も……心当たりがないの……」
天和「────────!!!」
ーーー
………天和は……深く哀しみ……部屋に閉じこもる。
妹達は心配して、部屋の外で呼び掛けるが……反応は無い。
1日、2日と経ち、3日目に姿を見せた時、天和は妹達へ多羅葉に書いた文字を見せて告げた!
『天の貴人より授かった道術で、私は病が治せる』───と!
それは……一刀との日々の中で……思い出した事。
自分を……一刀の世界に居た『張角』に模倣したのだ!
★★★
天和は、一刀の言葉を信じて………実行した!
多羅葉に文字を書き、病に苦しむ人に分け与え、治療を行う!
始めは興味本位で見ていた二人も……姉の様子に手伝うようになり……今では生活の糧として働いている。 実際に効能があるため、姉が本当に……貴人より教わったのだと信じての事である!
そして……名が広がるにつれ、天和は『大賢良師』を名乗り出した!
ーーー ーーー
天和が……したかった事。
生活の糧を得る事も、妹達を見返す為でも無く……ただ、どこかに居るであろう『天の御遣い』に……『天和は此処に居るよ!』と知らせる為だった。
前の世界で……一刀との会話が真実だったら……あの話に出てきた『張角』を真似て行動を起こせば、一刀は必ず気付いてくれる筈!
どんなに遠くに居ても、有名になれば───必ず会いに来てくれる!!
────そう信じて───!
ーーー ーーー
ーーー ーーー
天和「ムニャァ………かずとぉ~。 かずと……大好きぃ………!!」
しかし………天和の純粋な理由とは別に………新たな運命の歯車が、少しずつ少しずつ……回り始めるのであった!!
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あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
話ができたので……投稿をば。
それから……Jack Tlam提督 コメントがお返しするのが、遅くなりすみません。 いただいたコメントは読んでいたんですが……私用で静岡三島に行き、名槍『蜻蛉切り』を見学していたもので。
因みに本物ですよ。 本多忠勝使用の本物です。
コメントは、見かけたら……直ぐに返事をさせていただきますので。
次回は、来週……かな?
また、よろしければ……読んで下さい。
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