No.75354 心・恋姫†無双 第七話南風さん 2009-05-24 20:13:23 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:12509 閲覧ユーザー数:9621 |
心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~
第七話 ~約束~
黄巾党の本体撃破から数日。
いくら本隊を撃破したとはいえ、まだ残党が各地に潜んでいるため安心できない。
厳顔さんは戦の褒美が何だかって事で黄忠さんと共に成都に向かった。
それ以外は俺の周りはいつも通りの平和が流れている。
俺たちは今、戦の傷を癒していた。
「フン!」
ブン!
「セイッ!」
ブン!
俺は今、中庭で自主的な鍛錬中だ。
とあるつてで木刀を特注で作ってもらい、それの手応えを確かめている。
「形状や用途を言っただけなのに、ここまで精巧に作るなんて、さすが職人技。」
「あ!北郷さん!」
徐庶が俺を見つけて近寄ってくる。
「どうかした?」
「いえ、これから人が来るので私たちと共に会ってくれますか?」
「人?わかったけど、他に誰がいるんだ?」
「えっと、法正さんと張松さんと魏延さんです。」
「主要な人材が勢ぞろいの中に俺がいていいのか?」
「北郷さんもすでに私たちの主要な人材の一人です。」
「そんなもんかね。雑用しか仕事してないのに。」
「そんなものです。では、軍議の間に来てください。」
そう言って駆け出していく徐庶。
軍議の間、いわゆる玉座の間と同じ場所。
ただ、城主たる厳顔さんが「わしには合わん。」と言って呼び名を変えたのだ。
俺は見たことはあるが、その場所での軍議などには参加したことがない。
「汗拭いてから行くかー。」
汗を拭いて服を調え俺は指定された場所に向かった。
「遅いぞ北郷。」
法正がおぶさってくる。
「汗かいてたからね、ちょっと拭いてきたんだよ。」
法正を下ろして、俺は一番下座の位置で立ち止まる。
まぁ、一応こういった礼儀は知っているつもりだったのだが、
「北郷さんはここに来てください。」
徐庶が言った場所とは豪華な椅子がおいてある一番上座の場所。
「さすがに、そこは俺じゃなくて厳顔さんが座る場所だろ?」
「普段、厳顔さまはそこには座りません。立ってお話を聞かれてます。」
「桔梗さまはそういう事が嫌いなお方だからな。」
ウンウンと頷きながら話す魏延。
「まぁそれはわかるけど。でもなぁ・・・・・。」
「無理に座ってくださいとは言いませんが、せめてそこに立ってください。今回は、北郷さんへのお客さんでもあります。」
「俺の!?」
「私も良くはわかりませんが、そうお話を聞いています。」
「誰から?」
「黄忠さまですが。」
「・・・・・・・ん~、わかった。」
納得はしていないが、あまり周りを困らせたくないので一刀はしぶしぶ言われた場所に立った。
「っよ!似合ってるじゃん!」
「・・・・・・・茶化すものではありません。」
法正がニシシと笑う。
そんな法正を張松がなだめる。
「今回は変装しないんだ。」
「・・・・・・・はい。」
余談ではあるが、張松の変装をとくのは城内と戦などの時のみ。
ほとんどの場合は何かしらの変装をしている。
人に会うときでも例外ではない。
変装をしないと言うことは、顔見知りかよほどの人物などだということ。
(・・・・・・・そんな人が俺に用ねぇ。)
暫くして兵が人を連れてきた。
「お久しぶりです。」
黒髪のポニーテールと言っても髪自体は短く、後ろで結んであって首のところまでの長さ。
前髪は二つに分けている。
そんな人が俺に手を合わせた礼をする。
「・・・・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・北郷さん。」
徐庶に何か促されているがよくわからない。
「あ、えっと、うん・・・・・・そんな固くならないで・・・・・・・?」
「はい。」
黒髪ほ子は顔が整えられており、カッコイイ女性のような女顔の男のような、ようはカッコイイんだけど・・・・・・・誰?
「あの、すいません。自分の顔に何か?」
「あ、いや、うん。何でもないよ・・・・・・うん。」
「はぁ?・・・・・・・・。もしかして覚えていませんか?」
「い、いや、そんなことは・・・・・・ないですよ。」
露骨に覚えてませんという感じの一刀。
「仕方がありません。あの時は鎧を着ていましたし額あても着けていましたから。」
「・・・・・・・・・もしかして?」
「はい、あの戦の時に救っていただきました者です。」
俺の中の謎がすべてとけた。
「あーーーーー!あの時の!傷は大丈夫?」
一刀は眼をまるくしながら、黒髪の子の手を握って嬉しそうに振る。
「っ!////」
「どうかしたか?」
「い、いえ。今日はあの時の礼に参りました。」
「いや、そんなわざわざいいのに。」
「そんな訳にはまいりません。・・・・・・あの、すみません手を・・・・・・・・・。」
「おっと、そうだったな。」
ずっと握っていた手を離す。
「それでですね、自分はそのお礼に来たわけでして・・・・・・・。」
「うん。」
「えっとこれを・・・・・・・。」
そいうって手渡せたのは一本の刀。
「これは凄いな。」
全てが純白の日本刀。
鍔には羽ばたいている鶴の絵が彫ってある。
鞘から抜いて刃を見ても凄いものだと一目で判る。
「・・・・・・どうしてこれを?」
「はい、鍛冶屋の方に聞きました。」
「あぁ~なるほどね。」
俺は木刀をつくる際に武器商人に話を聞いて腕の良い鍛冶屋を紹介してもらったのだ。
鍛冶屋に木刀をお願いして初めは断られるかなと思ったけど、簡単に承諾してもらって木刀が手に入ったのだ。
え?鍛冶屋は城外だって?・・・・・・・・・それはねぇ、聞かないで(笑)
「俺が鍛冶屋に木刀を頼んでから少ししか経ってないのに良く出来たね。」
「もともと鍛冶屋の方が北郷さまを見て直ぐ作り出したそうですが、そこに自分の案といいますか・・・・・それを反映させてもらったものです。」
「そうなんだ。こんなに高価な物を・・・・・・本当にありがとう。」
一刀の固有スキル、満面の笑顔が発動する。
「////い、いえ。喜んでもらって嬉しいです。////」
「本当に凄いな。」
刀を見て子供のように純粋に喜ぶ一刀。
しかし、それを見つめる暗い視線が四つ。
「で、では、自分はこれで。」
「おぅ、ありがとうな。」
「いえ!」
そういって黒髪の子は足早に出て行った。
「あ!・・・・・・・また名前聞くの忘れたな。」
そして、そこで初めて気付く。
冷たく暗い視線を。
一刀の顔と背中に冷や汗が滲み出る。
「え、えっと・・・・・・・どうしたの?」
「何でもありませんよ。」
眼が笑っていない徐庶。
「ワタシも何でもないぞ。」
「俺もだ。」
拳を鳴らす魏延と法正。
「・・・・・・・どうせ空気です。」
仮面の奥底から何やら不穏なオーラを出す帳松。
「お、俺は何もしてな・・・・・・・。」
「何を言うか!」
「北郷の馬鹿!」
「最低です。」
「・・・・・・・ですね。」
この後、心身ともにボロボロになり木に逆さ吊りされている一刀を厳顔と黄忠が発見した。
「何しておる。」
「そんな趣味があったのね。」
「・・・・・・・助けてください。」
その日の夜の事
「動きますか?」
「うむ、ちょうど紫苑もおることだしの。」
「そうね、これ以上好き勝手されたら、第二の黄巾党が生まれかねないわ。」
「ですが、私たちがやろうとする事も・・・・・・・。」
「わかっておる。じゃが、仕方がなかろう。」
「・・・・・・では・・・・・・・・・・・・。」
「北郷を呼んできてくれぬか。」
「俺が行く。」
「ワタシも行こう。」
「頼むぞ。」
「「わかりました。」」
「・・・・・・・私たちは。」
「うむ、軍議の間に行くとするかの。」
「これからは玉座の間と呼ぶべきかしら。」
「そうかもしれません。あちらの城の方はまだ時間がかかるようですので。」
「ふむ、そちらも仕方がないの。では、行くか。」
「えぇ。」
「はい。」
「・・・・・・・はい。」
夜遅くに俺は魏延と法正に起こされ連行された。
「何処行くの?」
「黙って着いて来い。」
「悪いようにはしないからさ。」
・・・・・・・いい予感はしないんですけど。
連れて来られたのは軍議の間。
・・・・・・まさか同じ日に二度も来ることになるなんて。
主要なメンバーが列に並んでいる中で、また俺は一番上座の椅子へ案内されて今度は無理やり座らされた。
「え、えっと何?」
重い空気が辺りを支配する。
「北郷は理由を探しておったな。」
厳顔さんが一歩前に出て話し出した。
「お主が来る少し前、管路という占い師が占いをだしておってな、詳しくは伝わっておらぬが、白い天からの遣いが乱世を治めるというものじゃ。」
「それって・・・・・・・。」
「まぁ、わしも拾った時は半信半疑じゃったが、徐庶にお主の持ち物を調べさせてみたら、知らないものばかりでな。」
「そこからは私が話しましょう。」
徐庶も一歩前に出てくる。
「私が考えた結果二つの答えが出ました。一つはこの世界とは違うところから来た。二つは未来から来た。」
「!!」
「両方とも普通に考えればありえないことですが、身なり・持ち物を見るからにそういった答えがでました。」
「後はお主が起きた時に話して確信したのじゃよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「私の名前を聞いて驚き字を言い当てて、私が文官・軍師とも名乗っていないのに言い当てましたね。それは知っていると言う事。聞いてきたとかではなく、あらかじめ知識として知っていた。そうですね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、そうだ。この世界の未来ではないけど、似た世界から来た。」
「似た世界ですか?」
「俺の知っている厳顔さん達は皆男なんだよ。」
「そうですか。ですが歴史は同じ。」
「そうだね。黄巾党は歴史どおりだった。・・・・・・・・なぁ俺が未来から来てその占いとあってたから介護してくれたのか?」
一瞬の沈黙。
「そうじゃの。それが無いと言えば嘘になる。」
「桔梗さま!」
「黙っておれ。・・・・・・嘘は嫌いじゃ。じゃが、お主が誰であろうと助けてはいた。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「これだけは言うておこう。わしらは皆、お主の事を好いておる。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「それは、占いや知識などお主が持っているものがあるためではなく、単純にお主に惹かれたのじゃ。」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「それだけは信じてほしい。」
「・・・・・・わかった。それで、俺に何をしてほしいの?」
「ふむ。わしらの旗になってほしい。」
「旗?」
「わしや紫苑、ここにいる者と他にも大勢の者が今の現状を嘆いておる。・・・・・現に今回も税の引き上げ、兵役などいずれも民の害にしかならない事を言われてきたのでな。」
「ですが、桔梗を含め私たちはただの武将。何を起こそうにも率いてくれる者がいなかったのです。」
「わしらは劉璋のボウズに反旗を翻す。その旗になってほしいのじゃよ。」
「はっきり言います。劉璋は益州の州牧ですが、朝廷との繋がりが深いので・・・・・王朝への反乱ということになります。誰かが王朝を滅ぼすのを待つわけにもいきません。私たちが滅ぼすのも無理があります。」
「その旗を俺が?」
「お主は優しく人の痛みがわかる奴じゃ。」
「そういった人物が上に立つべきなのです。」
「・・・・・・・・・・・・俺でいいの?」
「お主しかできぬ。もし他に現れてもわしはお主の下でしか働く気がせぬ。」
「私達、ここにいる全員の総意なのですよ。」
「そして、そのために私たちは約束をしました。」
「・・・・・・約束?」
「北郷さんが、私たちの旗にならなかった場合はそのままでした。単純に働いてもらうか、どこかでひっそり暮らしてもらう。最低、殺すことすら考えました。」
「そうなんだ。状況が状況だしね。」
「すみません。」
「謝らないで。それは俺自身わかるから。・・・・・・・それで何だかんだで俺は認められて、旗になれる資格を得たと。」
「はい、そして旗を承諾してもらった場合は真名を授け、私たちの主人となってもらいたいのです。あつかましいですが、反乱軍の首謀者という重い名を背負ってほしいのです。反乱、私たちが第二の黄巾党になると言うことです。私たちの行く道は修羅しかありません。死が私たちの終わりです。」
「・・・・・・・・わかってる。・・・・・・・・・・・・・本当に俺でいいの?」
「当たり前じゃ。」
「そうです、自信を持ってください。」
「私たちには北郷さんが必要です。」
「俺たちの主に。」
「・・・・・・お願いします。」
「・・・・・・・・・。」
皆が臣下の礼をした。
魏延は何も言わなかったが、誰よりも早く臣下の礼をしていた。
「わかった。・・・・・・こんな俺が皆の役に立つのなら。俺自信は何もできないけど。・・・・・全てを背負う。」
「すまぬ。それに、お館さまが全て出来る人ならば、臣下のいる意味がなくなるのでな。」
「はい。ご主人さまは私たちを頼ってくださればいいのですよ。」
「これからはよろしくお願いします。ご、ご主人様。」
「ふん、だが少しはお館として振舞ってほしいがな。」
「よろしくな、北郷!」
「・・・・・・北郷さま。」
「えっと、その呼び名は変わらないよね。」
「変わりませぬよ、お館さま。今まで我慢してきましたからな。それにわしらの主となるのだぞ。」
「だけど、慣れないな。」
「まぁ良い。では改めて・・・・・わしの名は厳顔。真名は桔梗。お館さまに忠義を尽くしましょうぞ。」
「我が名は黄忠、真名は紫苑。よろしくお願いします、ご主人様。」
「ワタシの名前は魏延、真名は焔耶だ。・・・・・・・しっかりするんだぞ。」
「俺の名は法正、真名は嵐(ラン)だ!」
「・・・・・・張松、真名は白(ハク)です。」
「そう言えば初めて聞いたな。えっと、白って真名。」
「・・・・・・そうでしたか?」
「ん~、記憶が確かだったら。」
フフッと二人の笑みがこぼれる。
「えっと、ご主人様。」
徐庶が申し訳なさそうに声をかけてくる。
「おっと、ごめんな。」
「・・・・・・・私はとあることを決意していました。」
「うん。」
「初めて真名を授けるのは、私が生涯をかけて仕える主に会った時だと。」
「・・・・・・・・・。」
「ですので、今まで皆さんにも真名をお教えしていませんでした。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・私の名は徐庶。真名は千里(センリ)を申します。ご主人様、末永くよろしくお願いします。」
「あぁ。こちらもよろしく頼むよ。・・・・・・それも俺も名乗らなくちゃな。」
「俺の名は北郷一刀。真名とかいうのは無い。」
「はい?」
「なんじゃと?」
「そうだったのですか?」
「ん?言ってなかったけ?」
「・・・・・・聞いてません。」
「聞いてないぞ!」
「てっきり、一刀が真名だと思ってました。」
「・・・・・・・ごめん。」
「じゃあ、俺は一刀と呼ぶことにした!」
元気に手を挙げる嵐。
「・・・・・私は一刀さまと。」
恥ずかしそうに手を挙げる白。
「ま、まぁ・・・・・うん。よろしく。」
この日、決意を新たに俺は皆の主になった。
「天の御遣い」などと胡散臭い名前を利用してだけど。
この時代、不思議なモノ・・・・・つまり神や妖などの神秘的なモノに対して絶大な信仰心や恐れがあった。
「天の御遣い」はまさにそれ。
利用するものは利用しよう。
それで、何か皆の役に立てるなら俺は・・・・・・。
けど、この決意が波乱と破滅を呼ぶことになる。
この事が、どれだけ大事な事なのか。
この事が、どれだけの悲劇を生むのか。
それを知るものはいない。
第七話 完
キャラ設定
徐庶 真名・千里(センリ)
張松 真名・白(ハク)
ですので、これからもよろしくお願いします。
黒髪の人
これから、色々と活躍予定のオリジナルキャラです。
オリジナルが多いって?
・・・・・・・ごめんなさいとしか言いようがありません。
一人称「自分」
一刀に憧れを抱いております。
呼称表
厳顔→お館さま
黄忠→ご主人さま
魏延→お館
徐庶→ご主人様
法正→一刀
張松→一刀さま
一刀は皆のことを呼び捨てにします。
予告
俺たちは立ち上がった。
変えるために。
民のために。
だがそれは・・・・・・・
次回 心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~
第八話 「覚悟」
覚悟、その言葉の重み。
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第七話投稿です。この作品はオリジナル要素が強く、オリジナルキャラがでます。苦手な方は申し訳ありません。そして、三国志の時代の流れとはかなり違いますので恋姫キャラが出てくる作品程度に思ってください。では感想をお待ちしております