No.74933

心・恋姫†無双 第六話

南風さん

投稿が遅くなって申し訳ありません。とりあえず十六話まで書き終わっているので、一日に一つないし二つ投稿していこうと思います。オリジナル設定・オリジナルキャラが多くでてきますので苦手な方は申し訳ありません。感想をお待ちしております。

2009-05-22 12:23:26 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:12800   閲覧ユーザー数:9779

心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~

第六話 ~黄巾党~

 

黄巾党が大軍で州境で展開しているという報が入り、俺と魏延が先行することになった。

「おい。」

「どうした?」

「準備は出来たのか?」

「あぁ、ばっちりだ。」

「なら、いい。足を引っ張るなよ。」

「わかってる。」

先行すると決まった日から似たような会話を毎日している。

徐庶に言わせて見れば、

「魏延さんも心配なんですよ。」

らしいけど・・・・・・どうだかなぁ~。

 

「おい・・・・・・。」

「おっと、まだいたのか。」

「気配で気づけ。」

「そんな、俺は武人じゃないから無理だって。」

「軍師というわけでもないな。」

「そうだな。」

「なら、なぜ貴様は戦に出る?」

「命令されたから?」

「ワタシに聞くな!・・・・・それに嫌なら断ればいいだろう。」

「・・・・・・・・・・そうはいかないよ。」

「なぜだ。」

「俺でも何か出来たらって思うんだ・・・・・・それに皆が戦ってるのに一人で城にいたくない。」

「そうか。・・・・・・死ぬなよ。」

「何かあったら守ってくれ。」

悪気の無い笑顔。

「ふ、ふざけるな!」

顔が一瞬で赤くなる。

「顔が赤いな風邪か?」

「うるさい!もう少しで出発だ!とっとと城門に来い!」

魏延は足早に俺の視界から消えていった。

「俺、何かしたか?」

 

 

暫くして俺らは出陣した。

先行部隊の任務は主に陣の設営や、敵部隊の情報収集だ。

俺たちは敵より南西三里のとこに陣を設営した。

「敵は平野に陣をしいている。」

「それって?」

「仲間を待っているのかもな。すでに報告の五万より一万増えている。」

「そうか・・・・・・・。」

「どうした、うかない顔をして?」

「いや、今回の敵は前とどう違うのかなって。」

「・・・・・・前の黄巾は、盗賊や若者の暴走したやつらだ。文字通り馬鹿者どもの集まりだった。」

「今回は?」

「大半が貧困などで生活が苦しくなっている民達だ。」

「・・・・・・六万もいるのか。」

「そうだ。・・・・・・よけいな事を考えるな死ぬぞ。」

「あぁ・・・・・・・・・・・・・どうして魏延は戦うんだ?」

「ワタシは武人だ。己が武の誇りを試せる戦場こそワタシの生きる場所だ。」

「じゃあ、あの人たちはどうして戦場にいるんだ?」

「それが余計な事だ。・・・・・・ワタシだって戦いたくは無い。だが、ワタシ達が役人である以上、そしてワタシ達が戦わなければさらに酷い事がおこる。」

「前みたいにか。」

「そうだ。」

「・・・・・・わかった。ごめん。」

「今日はもうする事は無い。寝ろ。」

「あぁ。」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・北郷、お前は優しすぎる。」

 

 

陣設営より三日後。

厳顔さんと黄忠さんが陣に到着し俺たちの軍は五万の大軍となった。

だが、逆に敵も増え八万の大軍になっていた。

戦は二度目だけど、こんな大軍は初めだ。

「ふむ、やれぬことはないの。」

「そうね。いささか乗り気はしないけれど。」

「そういうな、紫苑。」

「では、前曲を法正さん魏延さん。右翼を厳顔さん。左翼を黄忠さん。後曲を張松さんでお願いします。本陣には私と北郷さん。かなり変則的ですがよろしいですか?」

「うむ、徐庶がそういうなら間違いがはなかろう。」

「そうね、それでいきましょう。」

「ありがとうございます。」

「よいな?」

「お任せください!」

「俺も早く暴れたいぜ!」

「・・・・・・わかりました。」

「あぁ、わかった。」

「では、各自出陣の準備をお願いします。」

 

 

その日の昼、俺たちは敵を倒すべく出陣した。

「・・・・・・随分と上手に乗れるようになれましたね。」

「先生が良かったからな。」

「それは良かったです。」

あんなスパルタな教え方はもうこりごりだ。

はやく勉学も卒業したい。

「何かいいました?」

徐庶の口は笑っている、けど眼が笑っていない。

「!?な、何も言ってないよ。」

・・・・・・心を読まれたか!?

 

先程までのやりとりとは別に徐庶の顔が真剣になる。

「・・・・・・何かお悩みですか?」

「そんなことないよ。」

「嘘はいけないと思います。」

「・・・・・・・・なぁ戦いってなんだ。」

「そういう事を言うと兵の士気が下がりますよ。」

「わかってる。でも、俺が納得いってないんだ。」

「聞きましたか?黄巾党の事を。」

「あぁ。」

「考えてることを当てましょうか?」

俺と徐庶は馬を止める。

「・・・・・・・。」

「もしかしたら救えたかもしれない。俺が何かしていたら俺に力があったら。・・・・・・言い過ぎかもしれませんが、大方間違いでは無いでしょう。ですが、こういった考えは偽善です。理想です。」

「・・・・・・・。」

「戦に善も悪もありません。・・・・・・武人にとっては己が武を発揮する場所で、すなわち武人の生きる場所。そういう意味では戦は神聖なものでしょう。信念が誇りが己がめざす理想をぶつけ潰しあう場所。・・・・・・・・・・・綺麗にいうとこうなります。ですが、私は戦はただの欲望のぶつけ合いだと思っています。」

「・・・・・・・うん。」

「私は戦は嫌いですが、戦を否定はしません。・・・・・・・力を使い理想を現実のものとするのを否定しません。・・・・・・・・それは私たちが人だからです。」

「人だから。」

「はい、自分を自分以外の人を救いたい。自分を大切に思う人たちを救いたい。その全てでもどれかでも成し遂げようとするならば、人には争いしか選択肢はありません。争いは今みたいに戦争になるでしょう。・・・・・・話し合いや両者が歩みあえば平和になるでしょう。

しかし、それもようは争いです。」

「・・・・・・・だよな。」

「生きたい、怒り、嫉妬他にも色々な感情や思いで争いはおこります。・・・・・・・それもこれも私たちが人だからです。」

「人が人である限り争いは消えないんだ。」

「はい。その通りです。・・・・・・・でも、それは悲観的なことばかりではないと私は思います。それも私たちが人だからです。」

「あぁ。」

「少しは晴れましたか?」

「まだ・・・・・・・かな。」

「全て言葉に表せたらどんなに良いでしょうね。」

「そうだね。」

「北郷さん、戦に連れてきたのに言う事ではありません。ですが、今は自分の命と私たちの一兵一兵全ての命を見守ってください。敵と味方の生き様と死に様を一緒に見てください。そして、私たちの勝利を願ってください。」

「わかった。」

「あなたの考えは痛いぐらいわかりますから。」

そう最後に一言告げて、徐庶は馬を進めた。

 

俺は何してるんだろうな。

何がしたいんだろう。

救いたい。

救いたい、敵も味方も。

けどそれは矛盾だ。

救いたいのか?

戦から逃げてるだけじゃないのか?

「あぁ~まとまらないな。・・・・・・・こういう時はやるしかないな。」

俺も徐庶に追いつくべく馬を進めた。

 

 

俺たちが出陣して目の前に現れるのは、大地を埋めつくす黄巾の大軍。

黄天というよりは黄地。

俺はおもわず唾を飲む。

ついこの前に初陣した時よりも緊張する。

胸の鼓動が頭に響く。

俺の中で戦に対する考えがかわったためだろうか・・・・・・・。

 

ドーン、ドーン!!

 

そんな中、高らかに響く銅鑼の音。

兵達が一斉に動き始める。

雌雄を決するべく。

 

 

 

――前曲――

「戦に熱くなって策を忘れるなよ、焔耶!」

「わかっている!」

「よっしゃ!じゃあ、まず一当てだ!」

魏延と法正前曲の部隊が黄巾党の前曲と衝突した。

 

 

 

――右翼――

「派手に暴れおって。策のためとは言え前線で戦えないのは、ちと歯痒いのお。」

 

 

 

――左翼――

「焔耶ちゃんも嵐(ラン)ちゃんも楽しそうねぇ。」

 

 

 

――後曲――

「・・・・・・・馬鹿ばっかりです。」

 

 

 

――本陣――

「前線の状況は?」

「っは!一度は押しましたが、現在は後退しつつあります。」

「さすがです。上手くいっているようですね。・・・・・・このまま前曲の後退を維持させてください。本陣も期を見て動きます。後曲の張松さんに追撃の準備をさせてください。」

「っは!右翼と左翼には?」

「あの方々なら指示なくても動きますよ。ただ、そのまま勢いに乗りそうで不安ですが。」

「そうですね。では!」

伝令の兵が徐庶にあいさつを交わし走り去る。

 

「上手くいってる?」

「はい。」

「わざと後退させて、潜り込んできた敵を右翼と左翼で挟んで挟撃ね。」

「そうです。実際は弓による一斉斉射ですが、一度の斉射で瓦解するでしょう。」

「そして、そのまま無傷の本陣と後曲で追撃と。」

「その通りです。何も話してないのによくこの動きだけでわかりましたね。」

「まぁ、凄い先生が勉学を教えてくれてるからね。」

「・・・・・・そんなことはありません。その全てが北郷さんの実力です。」

「ならいいけどな。」

 

暫くして、前曲が後し右翼と左翼が動き出したという伝令が届く。

「後はどうするんだ?」

「あのお二人ならご自身で判断されるでしょうから、私たちは期を逃さないようにするだけですよ。」

 

 

 

――右翼――

「おもしろいように策にかかりおって。・・・・・・・・では、そろそろかのぉ。弓構え!」

 

 

 

――左翼――

「では、こちらも動きましょうか。・・・・・・弓を構えてください。」

 

 

 

――右翼・左翼――

「「斉射!!」」

 

 

 

――本陣――

「今です!押し返しますよ!」

 

 

 

――後曲――

「・・・・・・・私に続いてください。」

 

 

 

この息のあった一連の動きで俺たちは見事黄巾党を撃破した。

戦場に転がるのは無数の屍。

勝った事は確かに嬉しいのかもしれない。

しかし俺の心の揺らぎは止まることはなかった。

 

この戦いの五日後、曹操と劉備が黄巾党の本隊撃破の報が届いた。

そして、首領の張角も死亡したらしい。

孫策も西方の黄巾党の大部隊を撃破したという報も届いた。

こっちに来て初めて耳にした三国志の主役の名前。

俺の時代の演技でも正史でも活躍した歴史の上の英雄。

 

こうした英雄の活躍で黄巾党は撃破されたわけなんだけど、結局黄巾党の人達の理想と夢を潰したってことだ。

生きるために蜂起したのに。

そんな事を考えていると、

「このような事を繰り返さないためにも私たちは生きるんですよ。」

と徐庶に言われた。

「考えるだけ無駄だ。」

と魏延に言われた。

 

二人の言葉が対照的だが、何だか俺は何かわかったかもしれない。

そして、俺は思う。

俺の知ってる歴史と同じだとするならば次は・・・・・・・。

 

 

 

第六話 完

 

 

予告

知りたい。

 

この世界を、

 

俺自信を、

 

皆のことを。

 

次回 心・恋姫†無双 ~大陸動乱編~

第七話 「約束」

 

生き方が変わる。

 


 
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