「では、貴女は俺がその御遣いであった場合は俺をどうする?」
「出来れば我々の陣営にて力添えを願う限りです」
力添え等体裁を気にしての発言だろう
現に魏では御輿が軍師の真似事をしていただけにすぎない、
「少し仮定の話をしよう。俺が実際に天の御遣いであり貴女の陣営についたとして、では貴女はその力を何に使う。答えてもらいましょうか」
荊の道、夢物語、平穏。
この世界で求めることは俺が生きていた時代より何十倍も難しい事は経験から分かる
「ただ一つ、私は平和を望みます」
覇道は消えた、残りは二つどちらかを見極めなければならない
「しかし今の漢王朝では諸侯を抑える程の力は既に無いのでしょう」
「ちょ、月。何を言い出す…」
「俺は今貴様の主君と話しているのだ賈駆、家臣が口を出すのはお門違いというものだ。少し黙ってもらおうか」
賈駆が董卓を止めかねないので俺はそれを遮る。
この場は明確でなくとも求められれば答えは出さなければ行けない場面
そうして華林は生きてきた、責任を負うべき人間として
「既に漢王朝は人心を集めるにならず、そして皇帝陛下を傀儡として扱う始末。では私たちはどうするべきでしょう。漢王朝と共に滅びるべきかもしれません、しかし我々にも守る物、守りたい者があるんです。だから、どうか我々の陣営に来てください。」
董卓…思想、傾向としては劉備と同じかと思ったがその甘さも持ちながら、武力を否定しない部分は劉備よりかは現実的である。
これが董卓か…悪くはないな。元々俺は魏には行けない人間だ。孤独に生きるか、どこかの陣営に入るしか道はない。
そして俺と言う存在を消さない為には恐らく乱世の結末が影響するのだろう
この不条理な世界の行く末に干渉するのも悪くはないと感じてしまう自分がいるのも否めない
概ね賈駆の差し金ではあるが董卓自身も望むべき未来
「分かった、俺で良ければ」
「ありがとうご…」
董卓が礼を言い終える前に指を上げて前につきだす。
「ただし、条件付きで。だ」
「わかりました、まずその条件を聞きましょう」
即答で"聞く"と言ったとに驚いた、華琳や孫策辺りなら間もおかず答えるだろうが、劉備・袁家辺りだったらその条件すら聞かずに了承していたところだろう
その判断が出来るなら今のところでは及第点だ
「では一つ目、俺は将軍だろうと軍師だろうと構わないが董卓、あくまで客将として扱っていただきたい」
賈駆は静観を決め込んでいるようで、当分口を挟んで来ることは無いだろう
が俺の後ろで控えている華雄はそうもいかないようで、今にも食ってかかって来そうな雰囲気を発している
それも致し方ないとは思う。誇りを持った董卓軍を遠まわしに貶されている様に感じている事だろう。
「そして二つ目、天下泰平が訪れた暁にはここを去る。また董卓殿もしくは配下の者が俺に不義を働いた場合も同様である」
玉座に鎮座する董卓が少しばかり驚きの表情を出したがすぐに元に締めなおす。
「理由を聞いてもよろしいですか」
「後者は単純だ。力を持つ者はどちらかの目を向けられる、尊敬か畏怖か。俺が怖くなったら先に言えどこへなりと消えてやる」
「そんなことは」
「無い、と言い切れるか。人の心は変わりゆく物だ」
人の心は簡単に変わる、俺自身がそうであるように
「そして前者だが、これには只興味がないそれだけだ」
今度こそ驚いた顔をする
天下統一など、軍を持つ者ならば誰しもが実現したいであろう夢である。
真実を話す必要はない、真実かのように聞こえる嘘でいいのだ。
そしてこの答えに疑問を持つ人間がこの場に何人いることか…
「興味が無いと仰られるのに貴方がその当事者となる事はどのようにお思いですか?」
「言葉が足りなかったようだな。誰が王に成ろうがどうでもいい。それ以上、それ以下でもない。統一される事が重要だ」
この言葉の通り、どうでもいいのだ。
誰が大陸の王になろうが構わない。
ただ一人を除いては。
どうも、なんかもっと短くする予定だったのにどんどん長くなっていって(´;ω;`)ウッ…
ゲームしたいよぉ
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第六話 夜の月