No.73711

【NARUTO】夢小説 : たまには思い出して

NARUTO夢小説/カカシ×夢主/雪が降る町。優しくても遠くばかりを見る目に寂しさを感じる。
これを書いている時に、ちょうど雪が降っているのが見えました。
すごくノリノリで書いた覚えがあります。

2009-05-15 06:27:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9373   閲覧ユーザー数:8327

   たまには思い出して

 

 

 

急に雲が厚くなり、低い灰色の空から滴がポツリポツリと肌を打つ。

※※は薄着で出掛けたことを後悔しながら、恨めしそうに気分屋の空を見上げた。

雨か、と胸の前で手を広げてみると、肌に落ちたのは白く硬い小さな粒。

 

「雪だ!」

 

雪となれば話は変わって、テンションが上がってくる。

遠くで、同じようにはしゃぐ子供が歓声を上げた。

とは言っても、テンションが上がろうが寒いことには変わりなく――

 

「ふぇ‥‥クシュンッ!!」

 

思いっきり鼻を鳴らす。

ブルブルッと肩に悪寒が走った。

予想以上に大きなくしゃみを誤魔化すように鼻を擦ってみたが、周りにこれと言って人影は無かった。

ホッとした途端、アハハハと哂う声が頭の上から聞こえてきた。

聞き覚えのある声だった。

 

気配がした屋根の上には、カラカラと哂うカカシの姿があった。

機嫌良さげに、指に挟んだ文庫本を振っている。

 

「いやー、漫画のワンシーンみたいだったよ」

 

「生理現象だから仕方ないだろー」

 

と言った※※がスンと鼻をすすると、視界からカカシが消えた。

そして背中に硬いものが覆いかぶさる。

 

フゥ、と吐きかけられた熱い息が※※の冷えた耳たぶを掠めた。

 

「ひぁッ!ちょ、カカシ、やめろってば!」

 

絶妙な息遣いに、思わず悲鳴めいた声が出る。

 

「あ~ぁ、こんなに体冷やしちゃって。俺が温めてあげようか?」

 

「いい、いらない!」

 

人気(ひとけ)はなくても、天下の公道で密着されるのは気恥ずかしい。

※※は赤面しながら、カカシの腕のなかで抵抗した。

 

「でも、風邪引いちゃったら看病するの俺デショ?任務に差し支えるんだけど」

 

「そ、そうなのか?」

 

「う・そ・♪」

 

「ーーーーー!!」

 

※※は肘で思いっきりカカシの脇腹を小突いた――が、当たった感触はなく。

 

「そんな素人攻撃を、上忍に当てられると思う?」

 

と、※※の正面に回りこんで余裕綽々のカカシが、おかしそうに笑いながら※※の髪をかき混ぜた。

※※は不機嫌な手つきで、クシャクシャにされた髪を撫で付ける。

 

「で、その上忍がこんなところで何してるの?サボリ?」

 

「うぅん、今日は早上がり。空を見たら雪が降りそうだったから、そこで待ってた‥‥」

 

銀糸の間から見える右目が遠くなる。

急に置きざりにされた※※は、所在無さげに前髪をいじった。

 

カカシは※※をペットのように可愛がったり構うくせに、時々スッと周りに壁を作って独りになる。

そういう時の※※は、どう対応していいのか分からず、カカシと一緒に黙ることにしていた。

 

「※※」

 

口を開けたカカシは妙に優しい声で、ニィッと笑いながら※※の顔を覗きこんだ。

何か企んでいるな、と察知した※※が素っ気なく「何?」と聞き返す。

 

「雪、好き?」

 

「うん‥‥どちらかと言うと好き」

 

「なんで?」

 

「珍しいし、雪が降った後に雪だるま作ったり雪合戦したりできるし‥‥」

 

「ふ~ん、色気がないねェ」

 

カカシはわざと“ガッカリ”した顔を作って見せる。

それを見て※※が、ムスッと口を曲げる。

 

「じゃあ、カカシはなんで雪が降るのを待ってたんだよ?」

 

カカシの期待通りにつっかかって来た※※を見て、可愛いとカカシが笑う。

 

「寒そうだけど‥‥ちょっと付き合って?※※にも見せてあげるよ」

 

何を、と聞く間もなく、カカシが※※の手を引いて抱きかかえる。

あとは屋根の上までほんの一瞬だった。

衝撃も無く音も無く、屋根に降り立ったカカシはやはりスゴイ忍者なんだろう。

 

屋根の上は風を防ぐものもなく、寒さが一層肌を刺す。

※※を抱いたままで、カカシはまた黙ってしまい、遠くの空を見つめた。

 

肌を合わせるほどなのに、何故か感じる距離感。

※※はささやかな自己主張の意味も込めて、頭をカカシの胸に預けた。

すると、ようやくカカシの視線が※※に戻る。

※※が寂しいのを察したのか、カカシは優しく髪にマスク越しのキスを落とす。

 

「俺が雪を好きな理由はね、この町が静かになるからだ」

 

カカシの視線が、再び遠くに戻される。

 

「雪が降り出すと、町が灰色に曇っていく。それから急に静かになって‥‥人が居るのが嘘みたいだ」

 

風に消え入りそうな静かな声だけが聞こえてくる。

 

「あぁ、俺は独りなんだなぁ‥‥って思い出せる」

 

いや、消えてしまいそうなカカシだ。

‥‥なんて焦った※※が「カカシ」と不安で名前を呼んでしまう。

 

「オレのこと、たまには思い出してよ?今だって一緒に居るだろ?」

 

不安いっぱいの目が向けられているのを、カカシがあやすように語りかける。

 

「たまになんかじゃない。いつも、その後決まって※※のことを考えてる。※※の声が聞きたいなぁってね」

 

冷えた※※の体をぎゅぅっと抱きしめる。

※※の存在を確かめるように。

カカシの冷えた指へ※※の体温が染みこんでいく。

 

「――今は独りになるのが怖いよ。※※と※※の体温(からだ)を知ったから」

 

芝居掛かった台詞も、カカシが言うと妙にさまになった。

※※も顔を赤くしながら、素直にカカシの言葉を受け止める。

 

「なんで、まだ雪が降るところ見てるの?」

 

「あの頃の独りの町に戻るのは嫌だから‥‥※※をどれほど愛してるのか再確認するんだよ」

 

「愛してる」にはさすがの※※も反応せざるを得ない。

バカ、と小さく反論して俯いて、カカシの熱っぽい視線から逃げてしまった。

 

「ホント、色気がない子だなぁ、※※は~」

 

「色気がなくて悪かったな!」

 

「悪いとは言ってないよ。教え甲斐があるじゃない、色々と♪」

 

ユサッと体を振られて、カカシの腕に抱え直されると、先ほどより一層二人の顔が近づいた。

そして、マスクをずらし、※※の鼻先にちゅっと音を立ててキスをした。

 

「寒い?」

 

「うん」

 

カカシの綺麗な顔と、優しい声と、鼓動。

そして、良からぬことを企んでいる目。

 

「じゃ、帰りましょうか」

 

「うん」

 

「※※の体で温めてね♪」

 

「嫌だ」

 

「そこは素直に『うん』って言ってよね」

 

 

 

雪の粒が窓を叩く頃、カカシはしっかり※※の体で温めてもらいましたとさ。

 

 

 

 

 

   END


 
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