「リト、模擬戦せぇへん?」
なんかいきなり言われた…
訓練の休憩中に急に現れた張遼に言われ、リトは豆鉄砲を食らった顔をする。
横にいる恋は頭の触角(?)をぴこぴこさせ、音々音は最初はリトと同じ反応をしたがすぐに目を輝かせた。
「ナニイテンダアンタイッタイ?」
「……………もぎせん…」
「リト兄ィの模擬戦!?見たいのです!ぜひ見たいですぞ!!」
「お、ねねっちノリノリやな~。ほな、やろか」
「いや、本人の意識を無視するな。別にいいんだけど」
いいんだ…と周りの兵達は心の奥で突っ込みをする。
だが、そう思っている兵達は内心期待していた。
兵達のほとんどはリトが三国の将全員と模擬戦した時に居た者もいるのだ。
もう一度見たい…あのあり得なさを見たい、そう思うのも仕方がない。
「ほんま!?せやったら呼びに行ってくるわ!」
「あ、おーい!?」
「……………行っちゃった」
「行っちゃったのです…」
「呼びにって……ギャラリーでも増やすのか?」
「よっしゃ!いっくでぇ~!」
「はいストーップ。一回お兄さんの話聞こうかー」
張遼が戻り、“準備”を済ませたあとリトに向かい嬉々と雄叫びを上げる。
それに対し冷めたテンションで静止させるリト。
何故ならば…
「……………どうしたの、ご主人様?」
「いまさら怖じけずいたのか?そんな男でないだろう、貴様は」
「シャラップ。何で張遼だけじゃなくてお前らまでやろうとするわけ?」
…恋と華雄までいるのだ。
そう、張遼が連れてきたのは観客、暇な三羽烏…そして華雄。
華雄曰く、『私の実力を見せつけたい。最初の私とは違うと見せつけてやる』だそうだ。
恋は…自然と刃の潰れた方天画戟をちゃっかり持って構えていた。
「ええやないか、ええやないか。最初は全員とやったやないか」
「あれはあれ。これはこれ。それにあの時恋と華雄居なかったろ」
「あの時の私は力不足だったからな。だが今は違うぞ」
「いや、だからって…」
「……………ダメ?」
「うぐっ、そんな目をしないでくれよ…」
恋の上目使いと潤んだ目はある意味兵器だ。
リトは罪悪感に押し潰されそうになり、最終的に承諾してしまう。
やっちまったぜ☆とかではなく、マジでやっちまった感が押し寄せてくる。
そんな事はお構い無しに音々音はリトと恋に熱い視線を送り、審判をやろうとしていた。
ちなみに音々音だけが熱い視線を送っているわけではなく、どこぞの忠犬も送っている。
「じゃあいくのです!」
「……!」
「真桜ちゃーん、凪ちゃんの三つ編みがぴこぴこしてるの」
「凪…本格的に犬になってもうたんか?」
「―――始め!なのです!!」
ズドォンッ!!!
音々音の合図とほぼ同時…いや、速かったかもしれないが、衝撃音が鳴り響いた。
その原因は目の前にいた…リトに突っ込んだ恋とそれを牙斬刀で受け止めるリトだ。
一瞬で距離を縮め方天画戟を振るった恋もそうだが、それを受け止めたリトも異常と言える。
数回武器をまじあわせたリトと恋だったが、恋の背後から張遼の飛龍偃月刀が襲いかかってきた。
その早さは彼女の『神速』と言う二つ名に相応しい…リトはさすがにヤバイと思い、距離をとった…
だが、上から華雄が金剛爆斧を降り下ろしてきた。
「うおおおおおおぉぉぉ!!!」
「ッ!なんだかな…息合ってるな、お前ら!」
「当たり前やないか!うちらは元々月んとこの将やったんや!」
「……………ん」
「私は猪と呼ばれていたがな。これぐらいの息は合わせられる」
三人の表情を見て、リトは冷や汗をかきながらニヤッと笑う。
正直、この三人は実力が高い。
一人は天下の飛将軍呂布、一人は神速の二つ名を持つ張遼、そして現在の力量はリトの知る肉だるま二匹と同じとなった華雄。
しかもこの連繋…正直ひやひやしている。
「にゃははは。凪の師匠やからな、がんがんいかせてもらうで!!」
「お手柔らかに…とは言えそうに無いな」
「………行くっ!!」
「参る!!」
刄金を抜いたリトに恋と華雄が突撃してくる。
恋が横に一閃し、リトはそれを跳んで避ける…が、それを読み華雄はリトを真っ二つに割ろうと金剛爆斧を振るう。
刄金を使い軌道をずらし、牙斬刀をゴルディオンハンマーに変え再び攻撃してきた恋の一撃を止める。
ギシッ…とゴルディオンハンマーからするが、それでもお構い無しにリトは方天画戟を弾く。
弾いたと同時に張遼は恋の肩を踏み台にし跳躍…ゴルディオンハンマーの先端に乗り、上からリトを攻めてきた。
刄金を使い防御するリトだが両側から二つの影…恋と華雄が近づいてくる。
そして二人の得物がリトに触れる…と思えるまでの距離に二つの武器はリトに近づいた。
だがリトは寸分でそれを屈んでかわし、ゴルディオンハンマーをゲッターサイトに変えて張遼に攻めこむ。
「そらぁ!どうしたぁッ!!」
「ううぅぅ~♪ええわぁ!ごっつええわぁ!やっぱ魔神名乗っとっただけあるなあ!!」
「そらどうも。そっちも神速の二つ名通りだなっ!」
「ふっふっふ、おおき…にっ!」
互いに楽しみあいながらの会話を交えて武器をまじあわせるリトと張遼。
二つの攻防は最初は誰でも見えていた…だが会話が進むごとに早さが増し、現在では残像が見える。
それでも笑い続けられているのだから異常と思える。
リトの方も羽目を外しているせいか…
しかも当たったのは、張遼のサラシだ。
「…あっ」
「ひゃぁっ!?」
「あ、ちょ、ごめ…ぐえええええ!!?」
「……………あ」
「余所見をするな、まったく」
張遼の胸が露出したことによりリトは急いで明後日の方向に顔を向ける。
その隙を突かれて…とかだったら良かったのだが、恋と華雄の一撃が腹部に当たり吹き飛んだ。
地面を何回かバウンドしているリトを見て華雄は呆れ顔になっている。
「あだだ…死ぬかと思った…」
「…………ご主人様、だいじょうぶ?」
「どこか緊張感が足りない奴だ。頑丈さは評価に値するがな」
「うっし、これでよしっと」
(これ以上やると手加減できなくなるし…あれで行くか)
起き上がったリトは一回脱力。
…次の瞬間、その場で突然動き出す。
その動きはまるで一人スパークリング…しかも若干奇声をあげている。
張遼達は訳がわからないと言わんばかりの表情でそれを見る。
そして、―――
「―――アパ」
動きが止まった。
「…………あぱ?」
「何だ…!?急に雰囲気が…」
「なにしでかすか分からへん。気ィつけ」
「イ~~~ヤバダバドゥ~~!!」
「てぇ!?」
張遼達が警戒している中、リトは恐るべき速さで張遼に攻撃し、彼女を吹き飛ばした。
無謀なのか勇敢なのかわからない突然の奇襲を防いだ張遼だが、何が起こったのかいまいち理解できていない。
それは恋と華雄も同じ事で、次の一手を行うのにタイムロスができる。
リトは華雄の金剛爆斧にカウロイをし、次に恋に向かって連続でパンチを食らわす。
防御はしたものの、二人の武器はヒビが入っていた。
「アパパ~~!裏ムエタイの死神、アパチャイ・ホパチャイ!!」
「あ、あれは…師匠の師匠…!?」
「凪、知っとるんか!?」
「ああ。前に少し…それに修行の時も…」
「真似っこなの?」
「真似……いや、おそらく…師匠はそのまま再現できるだろう」
「物理的に地獄に落ちるよ~~!!」
そう言ってリトは恋と華雄を左右同時に相手をする。
恋はいつも通りのリトだと思って戦っていた。
だが、今目に前にいるのはリトであってリトではない。
なので色々とやりにくいのだ。
そんな中、華雄は慣れとも言える適応力でリトに向かい斧を降り下ろす。
「…見切ったっ!ハアアアア!!」
「―――シッ!!」
完全に当たる…そう思った華雄であったが、急に一定の行動から外れるようにリトは金剛爆斧を正拳突きで相殺する。
金剛爆斧のヒビは酷くなり、危険と判断した華雄は距離をとった。
「雰囲気が…またか!?」
「へへへ…ケンカ100段の空手家、逆鬼至緒!!」
「……………なんか怖い」
「ケンカ何段か知らんけど、討ち取ったるわ!!」
そう意気込んで張遼はリトに突っ込むが、リトは飛龍偃月刀の刃の無い部分を掴み、手刀で刃先を折る。
動揺する張遼だが、リトはさらに残った棒部分を半分に折った。
すると背後から華雄が斧を降り下ろしてくる。
だがリトは白刃折り三日月蹴りを繰り出し、武器を破壊…といっても、蹴ったのは残った棒部分のみだ。
「どぉした!!気合いが足りてねーぜ嬢ちゃん達!!」
「完璧性格…いや、人間変わっとるで…」
「………はっ!」
恋が正面から鉄砲の如く方天画戟をリトに向けて走って来る。
これなら刃を受け止めれない…そう思った華雄だが、リトはその場を動かずに逆に構える。
そして、拳と方天画戟がぶつかる……壊れたのは不動砂塵爆を受けた方天画戟だ。
いくら刃が潰れていても、無謀すぎる
恋もさすがに驚き、残った棒をリトの足元を払うようにするが…リトは異常な跳躍で回避。
しかもその動きは…なんかセクハラ臭かった。
「あらゆる中国拳法の達人。馬剣星ね!」
「なんだ…手つきがいやらしいぞ…!?」
「……………どきどき」
「ちょんわ~!!ピチピチのお嬢ちゃん達、おいちゃんと遊ぶね~!!」
手をワキワキとさせながらリトは恋と華雄の周りを高速で移動。
二人は背中を合わせ対処しようとするが、リトは一瞬のうちに二人の足元に移動し、手を掴んでいた。
反応に遅れながらも恋と華雄は腕を離そうとするが…それよりも前にリトは特殊な関節技を決める。
「哲学する柔術家、岬越寺秋雨。…さて、あと一人と言うところだね」
「ぐう…!動けん…!?」
「無駄だよ。それは岬越寺・責人自重山。と言っても二人しかいないけどね。互いの関節を外したとしても解けないから大人しくしていたまえ」
「……………うん」
「簡単に頷くな、呂布!?」
「では残った張遼くん。君には…――――これで決め…る」
さらに口調が変わり、刄金を取り出すリト。
張遼は息を飲みながらも刃先の無くなった飛龍偃月刀を構える。
そして、二人は同時に前に飛び出した。
「行…く」
「どんな手え使うか知らんけどな…うちの方が早いんやで!」
そう…飛び出す速度は張遼の方が早い。
おそらくはすれ違う時に一撃入れようとする気だろう…現在の自分の得物ではリトを仕留めきれるかわからないからだ。
そして、その思惑通り…張遼は素早く横を通り、リトの脇腹を攻撃した…筈だった。
(とった!)
「……なーんちゃっ…た」
「なぁ!?」
声が聞こえてきたのは後ろからだった。
さらに言えば自分が攻撃したリトは手応えが無い。
…リトは気当たりによる分身を作ったのだ。
あたかもそこに自分がいるように錯覚させるために。
「武器と兵器の申し子…香坂しぐれ…。にゃめんな…よ」
「おどれは隠密か!?」
「遅…い」
振り向いた瞬間、張遼の髪がほどける。
香坂流・相剥斬り…メリケンサックのような髪止めだけを斬ったのだ。
それを確認し、張遼は両手をあげて降参の意を示した。
「にゃはは……参った」
「…ほい、じゃあ俺の勝ちね」
「……はっ!?しょ、勝者、リト兄ィなのです!」
意識が飛んでいたのか、音々音ははっとしながらも宣言する。
周りも数秒遅れながら歓声を上げた。
「はぁ~…にしても強いなぁ~…ウチも見習いたいわぁ~…」
「なにいってんだよ。十分強いじゃん、お前」
「それでも、や。…って何人の事じろじろ見とるん?…助平」
「スケベ言うな。ただ可愛いなって思っててさ」
「へっ?」
「いや、可愛いなって」
「は…はは…冗談きついわぁー。ウチが可愛い?そんなことあらへんて…」
照れ臭くなったのか、あるいは冗談だと思ったのか張遼はリトの言葉を軽く受け流した。
だがリトはまだまだ続ける。
「いや、可愛いだろ。普段は髪纏めてて綺麗で格好いいなってイメージ…印象だけどさ、今は髪おろして大人しいって感じで」
「そ…そうなん?」
「うん。なんかさ…猫耳着けたらもっとよくなる感じなんだよな」
「猫耳って…自分、趣味悪ぅないか?」
「そうか?でもさ、可愛いと思うぞ…ニャンちゃん?」
無防備な張遼に近づき、頭を撫でるリト。
しかも無意識になのか…猫にやるようにゴロゴロと喉元まで撫でている。
いきなりのことで驚いた張遼だが、次第に大人しくなり借りてきた猫のようになった。
(あ、アカン…!凪に相応しい男かどうか見極める為にやったのに…)
顔を紅く染めてリトをチラリと見る張遼。
リトは?としながら微笑む。
さらに顔を紅くする張遼はすぐにリトから顔を背けると両手を頬に当てて踞った。
「(ほ…惚れてもうたぁぁぁぁぁぁ!!)うにゃあああああああああ!!」
「やっぱ猫じゃん」
XXX「作者と!」
一刀「一刀の!」
X一「「後書きコーナー!」」
XXX「前回は…ね。アンケート少なくて困ったわー」
一刀「まさか一票ずつとはな」
XXX「なので投票した順で投稿することにしました。ちなみに次回は運命を砕くです」
一刀「今回は模擬戦か」
XXX「正直、華雄をどう扱うか悩んだよ」
一刀「結果そんなに目立たなかった、と」
XXX「うるさいやい!あと、関西弁おかしかったらご指摘ください」
一刀「てか梁山泊の師匠メドレーって…」
XXX「普段女の子を殴れないリトが妥協してやる戦法だよ。ま、一番物まねしたくないのは…あの人だけどね」
一刀「ああ、中国拳法の…」
XXX「ま、とりあえず勝ってね…作者初めてナデポ(?)書いたよ…あと、ニコポ?」
一刀「お前の場合モドキじゃ?」
XXX「それでさー。話変わるけど、音々音がヒロインにほぼ確定なんだよね。申し訳一人のヒロイン恋だけど」
一刀「まあ、作者優遇してるからな」
XXX「そりゃね。でもヒロイン自体は…物語終盤らへんのシナリオで必要になってきてんの」
一刀「は?物語終盤で?」
XXX「うん、実は…【この小説の重大なネタバレ】…なんだ」
一刀「…mjd?」
XXX「ま、お約束だし…どっかのパロディみたいになるかもね」
一刀「ネタバレ好きの作者がここまでとは…。でもまさかリトがb」
XXX「あ!!ちなみに音々音が活躍する拠点は似た者同士と一人だけでもです!!」
ΟДΟ;ノシ再見
一刀「…マジで言わないのか…」
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