No.685781

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第三十九話


 お待たせしました!

 それでは拠点第三回という事で、

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2014-05-11 08:13:19 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:7744   閲覧ユーザー数:5273

 

 こんにちは、風です。

 

 今日は久々に戻ってきた洛陽で休憩中です。

 

 ちなみに何故久々なのかというと、おそらくご存じの方ばかりとは思いますが、お兄さん

 

 は袁紹攻めと益州での功績で潁川郡に領地を貰いました。しかしお兄さんは衛将軍、洛陽

 

 で陛下をお守りするのがお仕事です。だから実際の領地の運営については北郷組の面々が

 

 交代で当たるのですが…此処で問題が一つ。北郷組で文官系は風の他には輝里さんと燐里

 

 さんがいるのですが、燐里さんは益州との連絡役がある為洛陽を離れられません。すると

 

 必然的に風か輝里さんのどちらかが行かなければならないという話です。一応話し合いの

 

 結果、一月毎の交代で風と輝里さんが行くという形になり、この間当番が終わって洛陽に

 

 戻ってきたという状況なのです。でもまた一月後に行かなければなりません。この際誰か

 

 もう一人位文官が北郷組に加わってほしいなぁなんて思っている今日この頃な昼下がりの

 

 休憩なのでした。そうすれば風ももう少しお兄さんと一緒に過ごす時間が出来ると…風だ

 

 って夢様みたいにお兄さんの子供とか欲しいですから。

 

「という話なのですが、お前はどう思いますかー?」

 

「ふにゃぁ~…」

 

 むう、やはり一刀二号はそういう事に興味が無いようですね…むしろ猫という種族は人の

 

 事は我関せずですしね。風もちょっと前まではそう生きてきたつもりだったのですけど…

 

 お兄さんが悪いんですね、多分。仕方ない、此処は一刀二号のお腹をさすっておくだけで

 

 我慢しておきましょう。お兄さんとの事は基本的に夜に勝負ですしね。

 

 

 

「あっちだ、急げ!」

 

「ああ、分かった!でも、確か今お偉方はほぼ出払ってるんだろう?俺らが勝手にやってて

 

 いいのか?」

 

「仕方ないだろう、緊急なのだし」

 

 風がそうやって憩いと癒しの時間を過ごしている横を兵士さんが慌てた様子で通り過ぎて

 

 いくのが見えます。

 

「どうかしたのですかー?」

 

「うわっ…程昱様!?」

 

 むう、こんな可憐な少女の顔を見て驚くなんて失礼ですね…まあ、それはともかく。

 

「何があったんですかー?」

 

「そ、そうでした!何でも東門の前辺りで行き倒れがいるとか…しかもかなりの出血も確認

 

 されてるとの事で現場に急行する所です!」

 

「分かりましたー。なら一緒に行きますねー。指示は出しますからー」

 

 風がそう言うと兵士さんは少し安堵した表情になりました。まあ、口にした以上は責任は

 

 ちゃんと取りますけどね。

 

 ・・・・・・・

 

「程昱様、あちらです!」

 

 兵士さんが指した場所には既に人だかりが出来ていました。

 

「皆さん、下がって!どうだ、容体は!?」

 

「何とか止血しようとしてるんだが、何か呟いたかと思うとすぐに鼻からまた出血が…この

 

 ままでは…」

 

 うろたえている兵士さんの横から顔を覗かせて見るとそこに倒れていたのは…。

 

「稟ちゃん!?」

 

 

 

「それで風の部屋に運びこんだと…しかしびっくりだな。まさか、この間の戯志才さんが…」

 

 月の洛陽の近くの村への視察に同行して帰ってきた俺は風から告げられた報告に驚く。

 

 と言うのも、風と一緒に旅をしていて風が俺に仕えた時に別れた戯志才さんが城門の前で

 

 倒れていたという話だったからだ。

 

「しかし何故…確かあの時戯志才さんは『曹操様にお仕えするつもりだ』と言って去ってい

 

 ったはずだよね?とっくに曹操さんの所に仕官してると思ってたのに…」

 

「とりあえず何故か鼻血を出して倒れていたのを風が鼻血を止めて此処まで運んでもらった

 

 んですけどねー。でも何があったんでしょうかー?」

 

 二人して首をかしげていた所で、当の戯志才さんが眼を覚ます。

 

「稟ちゃん、おはようございますー」

 

「えっ…風!?それじゃ此処って…」

 

「はい、洛陽ですねー。稟ちゃんは門の前で倒れていたんですよー。とりあえずはもうすぐ

 

 お医者様が来るのでちょっと待っててくださいねー」

 

 ・・・・・・・

 

「ふむ、どうやら他に問題となる部分は無さそうだ。しかしそれだけ血を出したのなら二・

 

 三日は休んでいた方が良いだろうな」

 

 華佗はそう告げると慌ただしく部屋を出て行く。本当に何時も忙しそうにしているな。

 

「申し訳ございません、まさか風だけでなく北郷様にまでご迷惑をおかけする事になるとは」

 

「いや、別に俺は何もしてないし…でも、何であんな所で倒れてたの?確か曹操さんの所に

 

 行ったはずだよね?」

 

「は、はぁ…実は」

 

 

 

「なるほどねぇ…」

 

 戯志才さんの話を要約すると、実際に陳留には行ったらしいのだが、面接担当だった猫耳

 

 の人(おそらく荀彧さんだろう)から『曹操様の軍師はもう間に合ってるからあんたなん

 

 かいらない』と言われ追い出され、次は何処へ行こうか迷っていたという事らしい。

 

「でもそれと鼻血とはあまり関係無さそうだよね?」

 

「うっ、それは『おそらくそれはこれが原因ですねー』…あっ、何時の間に!?」

 

 戯志才さんは風が持っていた本のような物を見て狼狽するが、風は何処吹く風とばかりに

 

 それを俺に渡す。

 

「これって確か…八百一じゃ。まさかこれを読んで鼻血を?」

 

「どうやらそのようですねー」

 

「め、面目ない…」

 

 戯志才さんがそう言って縮こまっているのを横目で見ながら俺はその八百一をめくるが…。

 

「あれ、これってもしかして輝里の書いたやつじゃ…」

 

「えっ!?北郷様はこれを書いた方をご存知なのですか!?」

 

「うん、これって『近衛兵と宦官』とかいうやつだよね?すると書いた人を知ってはいる」

 

「な、なんと…まさかこのような所でこの大名作の作者に繋がるとは!それで、今そのお方

 

 は何処に!?」

 

「今は…潁川郡だけど」

 

「…はい?それは一体どういう事です?」

 

 

 

「では、これを書いたのは北郷様の部下の徐庶殿という事なのですね?そして今は潁川郡に

 

 出向いていて留守と…」

 

 戯志才さんはそう言ったきり少し考え込む。そして、

 

「ならばお願いがあります!是非私を徐庶殿に紹介していただきたいのです!あの名作が一

 

 体どのように生み出されるのかをこの目で見たいのです!」

 

 いきなりそう言い出して寝台の上で深々と土下座をする。

 

 一体どうしたら良いのだろう…困った俺は風に助けを求めようと視線を向けるが…。

 

「ぐぅ…」

 

「寝るな!!」

 

「おおっ!?稟ちゃんのあまりの壊れっぷりに思わず寝てしまいましたー」

 

「おはよう、風。で…どうしたらいいかな?」

 

「紹介するのは簡単だとは思いますが、さすがに仕事に行っている人の所にそんな理由で連

 

 れていくわけにもいかないでしょうしねー」

 

 ふむ…ならば彼女を連れていく正当な理由があればいいって事かな?だったら…。

 

「戯志才さんは俺の所に仕官するとか無理かな?」

 

「仕官…ですか?」

 

「ああ、風からあなたが優秀だという話を聞いている。軍師としてでも文官としてでも構わ

 

 ないからさ」

 

「ふむ…つまり徐庶殿に顔繋ぎするのならいっそ幕下に加われという事ですね?」

 

「少々悪い言い方をするとね」

 

 

 

「そうですね…正式にお仕えするのは少し考えさせていただくとして…客将という事で良け

 

 れば」

 

「ああ、それでも構わない。よろしくお願いするよ、戯志才さん」

 

「客将とはいえ、お仕えする以上はちゃんと申しておかなくてはいけませんね。戯志才とい

 

 うのは旅をする際に用いていた偽名でして、私の本当の名前は郭嘉、字は奉孝、真名は稟

 

 と申します。よろしくお願いします、北郷殿」

 

 何と…彼女があの郭嘉とは。これは曹操さんも随分と大きな魚を逃がしたものだな。

 

「俺の事は一刀で良いよ。よろしくな、稟」

 

「はっ、こちらこそ…一刀殿」

 

 ・・・・・・・

 

「へぇ…いきなり一刀さんがこっちに来るから一体何があったのかと思えば…」

 

 輝里はそう言ってため息をつく。

 

 ちなみに言うまでもなく此処は潁川郡である。俺は稟を伴ってこっちに来ていた(ちゃん

 

 と命からの許可は貰っている)。

 

 最初、俺がこっちに来た時は輝里の顔が何だか嬉しそうだったのだが、俺が経緯を説明す

 

 ると段々その顔がくもってきていたりしていたのであったが…俺なんか悪い事したかな?

 

「というわけで、彼女が郭嘉だ」

 

「よろしくお願いします、徐庶殿!是非間近であなたの事を拝見させていただきたい!」

 

 そして一人稟はハイテンションだったりしたのであった。

 

 

 

「どうだった及川、稟の様子は?」

 

「とんでもなく有能やで…さすがはあの郭嘉といった所や。今じゃ元直はんも仕事の半分位

 

 任せている位や」

 

 十日程経った頃、俺は及川に潁川郡の様子を見に行ってもらっていた。自分の領地を探る

 

 というのも何だか変な話だが、報告書には書かれないような事を調べるにはこういう事も

 

 必要になる。

 

「政はほぼ全てが滞り無く行われてるし、兵達の規律もきちんと守られてる。それとまだ正

 

 式な報告は来てないと思うけど、二日程前に南の境を越えて侵入してきた賊の軍勢八百余

 

 りを僅か百五十程の手勢で退けてたで」

 

 なるほど、及川じゃないがさすがは郭嘉という所だな。

 

「まあ、稟ちゃんならその程度の事簡単でしょうねー」

 

「風ならどの位の兵で撃退出来るんだ?」

 

「そうですねー…あの辺りの地形を利用すれば百二十もあれば」

 

 …さりげなく稟より少ない兵力で言う辺り、見た目には分からないけど、風の心の中にも

 

 多少は対抗心的なものがあるようだな。

 

「しかしそれだけ優秀な人材なら客将じゃなくて正式に部下にしたい所だけどな…そうすれ

 

 ば風と輝里の負担も減るだろうし」

 

「そう言っていただけるのはうれしいですけど…稟ちゃんを繋ぎとめるのはそう簡単にいき

 

 ませんよー」

 

 風は嬉しさ半分・対抗心半分といったような表情で言っていた。まあ、稟の事については

 

 ゆっくり考えていく事にしよう。出来れば正式な部下にしたいのは本音だし。

 

 

 

 それから数日後。

 

「久しぶりね、北郷」

 

「はい、曹操さんも…ところで、随分とお疲れの様子に見えますけど?」

 

「…今日の為に色々と準備が大変だったのよ」

 

 曹操さんが定時報告の為に洛陽を訪れていたので俺が接待係となったのだが、命との拝謁

 

 を終えた曹操さんの顔には疲れの色が見えていた…折角の美人が台無しな位に。

 

「でも曹操さんの所なら優秀な人が多いからそういう準備も困らないんじゃないんですか?」

 

「随分な皮肉をありがとう…確かに優秀な人材ばかりだけど、こういう事が出来るのは荀彧

 

 と夏侯淵位なのよ。あなたの所みたいに軍師がもっと多ければ良かったんだけどね」

 

「えっ?だって、荀彧さん一人で十分なんでしょう?本人がそう言ってる位だし」

 

「どういう事よ?何時あなたが彼女と喋ったの?」

 

「いや、直接ってわけじゃないけど…」

 

 ・・・・・・・

 

「…そういう事なのね。まったく桂花ったら…はぁ」

 

「こっちとしては大助かりだけどね。荀彧さんにお礼言っておいて欲しい位に」

 

 稟が曹操さんの所に仕官に行って断られた話を聞いた曹操さんは、こめかみに手を当てて

 

 ため息をついていた。

 

「でもその様子じゃ荀彧さん一人じゃ無理って事だよね?」

 

「そうだけど…それじゃ衛将軍殿が誰か良い人でも紹介してくれるのかしら?」

 

「紹介出来る人はいないけど…荀攸さんって人はいないのかな?確か荀彧さんの親戚だった

 

 と思うんだけど…いれば大きな戦力になるんじゃないかな?」

 

「荀攸?聞いた事無いけど…でもあなたがそう言うのならさぞ優秀なんでしょうね。帰った

 

 ら早速聞いてみるわ」

 

 曹操さんは次の日に陳留へと帰っていったのであった。

 

 

 

「お兄さんもうまい事かわしましたねー。もしかしたら曹操さんが稟ちゃんの所に直接勧誘

 

 に行っちゃうんじゃないかと思いましたけど…でもその荀攸さんって人の事は何処で聞い

 

 たんですかー?」

 

「聞いたっていうか、知ってたっていうか…ごめん、うまく説明出来ない」

 

「むぅ、なら今日はとことんそれについて聞く事にします。とりあえずお兄さんの部屋に行

 

 きましょう」

 

 風はそう言うと俺の手を握って引っ張ろうとする。

 

「へっ?何でいきなり俺の部屋に?」

 

「まあまあ、そこは色々と『色々と何をするのです?』…おや、燐里さんではないですかー」

 

 そこに燐里が現れて風の首根っこを掴む。あっ、何だか風が猫みたいだな。

 

「風、仕事を放っておいて一体何をしようと?そんなに重要な事なのかしら?」

 

「ぐぅ…」

 

「寝るな!」

 

「おおっ!?つい現実から逃げる為に寝てしまったのですよー」

 

「おはようございます…で、仕事を放って一刀様と何をしようというのです?」

 

『おうおう、燐里の姉ちゃんよー。うら若き男女が二人きりでする事なんか言わなくたって

 

 分かるじゃねぇか。それをわざわざ聞こうってのは野暮な話だぜ』

 

「これこれ宝譿、そういう事はあまりはっきり言ってはいけませんよー」

 

「…あっそうですか、なら余計に仕事が先です!一刀様、今日の所はこれにて!風、行きま

 

 すよ!…私だって我慢してるのに、まったく」

 

 そしてそのまま風は燐里に引きずられて行ってしまったのであった。

 

 

 

 その頃、陳留にて。

 

「え…ええ~~~っ!?荀攸を幕下に加えるってどういう事ですか、華琳様!?」

 

「そう、それじゃ本当に荀攸というのはいるのね?」

 

「そ、それはそうですけど…あいつがいなくても華琳様の事は私一人で支えてみせます!」

 

「そう言ってる割には今回の洛陽へ行く準備も随分大変そうに見えたけど?実際、私も秋蘭

 

 もあまり寝れなかったし。それにこの間あなたが採用しなかったという郭嘉は北郷に仕え

 

 てしまったのよ。あなたも聞いてるでしょう?潁川郡に入った賊を僅かな手勢で撃退した

 

 その者の話は?もし彼女が此処にいれば…」

 

 曹操にそうツッコまれ、荀彧はそれ以上の反論が出来ない。

 

「それにね…私は桂花には何時も美しくいてほしいのよ。あまり徹夜とかばかりだと折角の

 

 綺麗な肌が…ほら、実際ちょっと荒れてるじゃない」

 

 曹操はそう言うなり荀彧を抱き寄せて頬を指でなぞる。

 

「ああ、華琳様…」

 

「だからね、その荀攸があなたに近い位に優秀なら、その分あなたの負担も減って肌の輝き

 

 も戻るし…そうすればより一層可愛がってあげる時間も出来るわよね?」

 

「わ、分かりました…ならばすぐにでも呼び寄せましょう」

 

「ふふ、良い娘ね。でも今日はこのまま私の部屋にいらっしゃい」

 

「はい、華琳様」

 

 二人はそのまま奥へと消えていったのであった。

 

 ちなみにそれから数日後、召し出されて曹操に仕える事になった荀攸が期待以上の働きを

 

 見せる事になったのは言うまでもない事であった。

 

 

 

                                       続く。

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は…もっと風メインに進める予定でしたが、随分色々と

 

 ごちゃ混ぜになってしまいました。

 

 そして稟が客将とはいえ一応一刀の部下になりました。 

 

 最初は普通に華琳に仕えさせようかと思ったのですが…色々

 

 考えた末にこうなりました。でも彼女はしばらく潁川郡に留

 

 まるのであまり出番はありませんので。しかも彼女は客将だ

 

 から結局輝里と風が一月交代で行くのは変わらないという…。

 

 とりあえず次回もまた拠点です。誰が登場するのか、一刀と

 

 のチョメチョメはあるのか…それはお楽しみに。

 

 

 それでは次回、第四十話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 稟が一刀の毒牙にかかるかはまだ未定ですので。

 

 

 

 


 
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