No.683744

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第三十八話


 お待たせしました!

 それでは今回は拠点第二回という事で、

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2014-05-04 08:48:06 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8428   閲覧ユーザー数:5651

 

「おお~い、夢ってば…そんなに急がなくても大丈夫だって」

 

「ダメです。とりあえず城の外に出るまではこの速度で行きます」

 

 部屋を出てから夢は俺の腕に自分の腕を絡めたままかなり速いスピードで歩いていた。

 

 しかもその視線は何かから避けるかの如くにキョロキョロしていたりする。

 

「一体何をそんなに焦ってるんだ?」

 

「いいからしばらく黙っててください」

 

 そして俺の質問にはまったく答えてくれずに一目散に城外を目指す。

 

 結局それは街に入るまで続いていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 その頃、城内では。

 

「そっちにはおらんかったか!?」

 

「はい、この状況だと既に城内にはいないものかと」

 

 命が兵士や侍女達に一刀の行方を聞いていた。

 

「いないのは一刀だけか!?」

 

「いえ、劉協殿下のお姿も見えません」

 

「申し上げます!劉協殿下と北郷将軍のお姿を城門の辺りで見かけた者がいるとの報告

 

 がありました!」

 

「む…やはりそうであったか。まさか夢に先を越されるとはな。おそらく一刀とは既に

 

 約束をしておったという事か…やられた」

 

 命はそう一人ごちていたのであった。

 

 

 

「さあ、一刀。この服なんてどうですか?少し色遣いが派手ですが、結構あなたに似合

 

 ってると思うのですけど」

 

 買い物に向かった先は服屋だったのだが…あれ?何だか俺の服を選び始めてるんです

 

 けど…?

 

「なぁ、夢の服はいいのか?」

 

「私?私はこの間買ったから大丈夫。今日は一刀の服を選びに来たんです。大体あなた

 

 は見てたらずっと同じ服ばかり着ているではありませんか」

 

 うっ…確かに俺の服は元々の制服を除けば前の洛陽潜入時にもらった数着と夢に前に

 

 買ってもらった服しか持ってない。

 

「でも別に今特に不自由は…『少しはあなたの立場も考えてください!戦場に立ってい

 

 る時は仕方ないですが、平時はもっと身なりにも気を配らないといけませんよ!』…

 

 はい」

 

「よろしい、それでは改めて…こっちの服なんてどうです?少し大人し過ぎな気もしま

 

 すけど…」

 

 結局、それから一刻余り俺の服選びに時間をかけたのであった…本当、何故こんなに

 

 買い物の時間が長いんでしょうかね?

 

 

 

「今日は良い買い物が出来ました。今後もたまにはこういうのも悪くないですね」

 

 買い物を終えた俺達は食堂に入り休憩していた。ちなみに此処は個室形式となってい

 

 て、当然部屋の中には俺と夢しかいない。

 

「たまにはって…今更ながら一応確認するんだけど、そんなに出歩いてていいのか?一

 

 応皇族だよね?」

 

「ふふ、如何に洛陽とはいっても民が皆皇族の顔を知っているわけではないですよ。実

 

 は姉様もたまに街に出ていますし…さすがに姉様を一人で行かせるわけにはいかない

 

 ので凪か霞に同行してもらってますけどね」

 

 という事は、夢は一人で出歩いてるって事か?それはそれで如何なものかと思うけど。

 

「それと、街に出ている時はあくまでも私は『李粛』ですからね。真名で呼んでもらう

 

 分には問題無いですけど」

 

 まあ、確かに街中で『劉協』などと名乗ったら大事になるだろうしね。

 

「さあ、まずは冷めない内にご飯を食べましょう」

 

 ・・・・・・・

 

「ふう、食べた食べた…でも、あれであの値段っていうのは随分お得だな」

 

「そこはあの店主のこだわりのようですね。実はあそこの主人は昔宮中の料理人だった

 

 んです。でも、その頃から高い食材を使って一部の人間だけしか食べられない料理を

 

 作る事に疑問を持っていたようで、五年位前に急に宮廷料理人をやめてあそこに店を

 

 出したのです。それから私や姉様、母様も時々あそこに食べに行ってたのです。実は

 

 あそこが個室形式なのも私達がいる事を知られない為の物なんですよ」

 

 なるほど…だから夢はあの店で食事をと言ったのか。

 

 

 

「さて、日暮までもう少しあるけど…もう帰るか?」

 

「一刀はそんなに私と二人は嫌ですか?」

 

「…えっ!?いや、そういうわけでは…」

 

「なら、もう少し付き合ってもらいます」

 

 ・・・・・・・

 

「へぇ~、こんな所があるとは…初めて知ったよ」

 

「ふふ、此処は私のとっておきの場所です」

 

 夢に連れられて来たのは、洛陽の街より少し外れた所にある高台であった。そこから

 

 は洛陽の街を見渡す事が出来て、なかなかの眺めだ(さすがに城の中までは見えない

 

 のだが)。

 

「でもこんな所で一人でいて危なくないのか?」

 

「実は此処は劉家が管理する場所なんです。しかもその責任者は私なので大丈夫。元々

 

 は先祖の祭祀の場所だったのですが、何十年も前から使われていないのです。しかし

 

 こういう場所を野放しにするわけにもいかないので私が責任をもって…という事で。

 

 だから此処の周りも警備兵の巡回路になってるでしょう?」

 

 そういえば、此処に来るまで結構兵士を見かけたような…あれ?

 

「でも、そういう所なら命や空様も来るのか?」

 

「残念ながら、此処が我々の管理の場所だと母様も姉様も知らないんです。私が気付か

 

 なかったら本気で野放しになってたかもしれません」

 

 夢はそう言って肩をすくめる。

 

 

 

「ふう~ん…という事は、此処にいるのも俺達だけか?」

 

「はい、二人きりの場所ですよ」

 

 夢はそう言いながら俺に寄りかかってくる。

 

「あ、あの…夢さん?一体何を…」

 

「こういうのは嫌ですか?」

 

「嫌じゃないけど…」

 

「なら無問題ですね」

 

 夢はそう言いながらグイグイ胸を押し付けてくる。

 

「あの…夢?」

 

「何かありましたか?」

 

 夢はしれっとした顔でそう聞きながらもより体を密着させてくる。当然その豊かな胸

 

 の感触も強くなってくるので、俺の身体が反応してくるのも当然なわけで…。

 

「一刀、どうしたんです?急に前かがみになって…あっ」

 

 そして反応したそれに夢が気付く。

 

「いや、これは、その…」

 

「嬉しい…私でもちゃんと反応してくれた」

 

 えっ!?予想外の夢の言葉に俺は驚く。

 

「私なんかじゃ全然魅力なんか無いって思ってたから…ちゃんと私の事も女の子として

 

 見てくれていたのですね」

 

 

 

「いや、夢は十分過ぎる位女の子だけど…」

 

「だって…私は姉様みたいに明るくないし、体つきだってそんなに魅力的じゃないから」

 

 …何処が一体魅力的じゃないというのだろうか?血筋というのか、夢だって命や空様

 

 に負けない位に胸大きいのに。

 

「でも本当に私の事を少しでも女の子として見てくれているのなら…もしそれが今日だ

 

 けの事になろうとも決して恨みません。だから…」

 

 夢はそう言うと潤んだ眼でじっと見つめてくる。

 

 俺も決して夢の事が嫌いというわけではない。むしろ一人の女の子として守るべき相

 

 手として見ている。しかし本当に俺が皇族に対してそういう関係になっても良いのか

 

 と悩んでいる部分もあり、今まで命や夢に対してそのような行動に出なかったのだが

 

 …此処まで言ってくれている相手にもはや何もしないなどという選択肢があるはずも

 

 無かった。

 

 俺は夢を抱き寄せてキスをする。その瞬間、夢は少し体を強張らせたがそのまま俺に

 

 身を委ねる。俺は緊張しつつも夢に覆いかぶさった。

 

 それから事が終わるまで、あまりにも夢見心地な感じの記憶しか残らなかったのであ

 

 ったが、夢の肌の感触と息遣いだけははっきりと残っていたのであった。

 

 

 

「ふふ、遂にしちゃいました」

 

 事が終わって夢が発した言葉はそれであった。

 

「今更だけど…本当に俺で良かったのか?」

 

「此処に至って本当に今更ですね…嫌だったら間違いなく斬り捨ててますから。あなた

 

 に抱かれたのは私の意志ですよ…それとも、後悔してますか?」

 

「それは無いよ。むしろこれで本気でこっちの世界で生きていく覚悟を持てたから」

 

「…それじゃ今までは覚悟も無しに戦っていたのですか?」

 

「今まではどうしても心の何処かで『俺は余所者で、その内に元の世界に帰る』という

 

 思いがあったんだけど…もう迷わない」

 

 俺がそう言っているのを夢は嬉しそうに眺めていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 それから二ヶ月程はこれといって何も無かったのだが(夢と何回かヤッた以外は)…

 

「皆の中で、夢に何かあったか知ってる者はおらんか?」

 

 ある日の朝議で命がそう問いかけてきた。しかしかなり抽象的な言い方だったので、

 

「何か…とは?」

 

 王允さんがそう問いかける。

 

「うむ、何だかここ最近夢の様子がおかしいのじゃ。時々気分を悪そうにしておる事が

 

 あるかと思えば、何だか嬉しそうな顔をしている時もあるし…それにどうやら華佗の

 

 所に何回か行っておるようなのでな」

 

 命のその言葉に皆の顔も曇る。確かに夢が何か病気にかかったというのなら、大問題

 

 になるからだ。

 

 

 

「華佗に聞いてみるというのは?」

 

「それは既にした。じゃがあやつめは『例え誰であっても本人の許可無しに教える事は

 

 出来ない』との一点張りでな…確かにそれが華佗の良い所でもあるのじゃろうが…」

 

 しかしそれは夢に何かあったと言っているようなものでもあるんだけど…。

 

「そこでじゃ…一刀、お主が夢に聞いてきてくれぬか?」

 

「…俺?」

 

「そうじゃ、お主になら或いは言うてくれるのではないかと思うてな」

 

「分かった」

 

 ・・・・・・・

 

「…っていうわけでね。俺が聞きに来たんだけど」

 

 此処は夢の自室である。此処最近夢は執務以外は此処で過ごしている事が多かったの

 

 で、此処まで聞きに来たのであった。

 

「皆に勘ぐられないようにしてきたつもりでしたが…さすがに姉様にはばれてましたか」

 

「すると…何かあるのか?」

 

 本当に病気なら大変な事だし…。

 

「いえ、その…病気というわけでは。それに…さすがに一刀に言わないわけにもいかな

 

 いでしょうし」

 

 俺に…?どういう事だ?

 

「その…落ち着いて聞いてくださいね?ええっと…その、来てなかったんです」

 

 

 

「来てなかった?何が?」

 

「…その、つ、月の物がです。一刀と初めてのあの日からなのですけど…それで華佗に

 

 診てもらったら…その、間違いないと」

 

 月の物が来ない…間違いない…えっ!?

 

「それじゃ…まさか?」

 

「はい、どうやら私のお腹の中には一刀の子が…」

 

 何と!?まさかの事態に俺の頭は真っ白になる。

 

「本当はもうちょっと体の調子が安定してから言おうと思っていたのですが…」

 

「そういう事はもっと早くに言わないとダメだな」

 

「へっ!?…母様?」

 

 そこに空様が入ってくる…っていうか何時の間に?

 

「そんな事だろうとは思っていたがな」

 

「知ってたのですか?」

 

「私と紫苑はな…何せ出産の経験があるのだ、見ればおおよその事は理解出来る。本人

 

 が何も言わない以上はそっとしておこうとは話していたんだ」

 

 空様のその言葉に夢は苦笑いを浮かべるばかりであった。

 

「まあ、めでたい事ではあるし…私も遂にお祖母ちゃんになるのか、正直想像が出来な

 

 いがな。それはともかく、ちゃんと報告しないとダメだ」

 

 

 

「…という事です」

 

 次の日の朝、夢の口から妊娠の事が語られた。それを聞いた皆の顔が夜叉に見えたの

 

 は俺の気のせいなのだろうか?

 

「…そうか、そうじゃったのか。夢、もはやお主一人の身体で無いのじゃから、無理は

 

 せぬようにな」

 

 命は姉らしくそう夢をいたわるが…俺に顔を向けた瞬間、その顔はまさに鬼か夜叉か

 

 と言わんばかりの形相と化していた。もう帰っていいですか…いや、結構本気で。

 

「オッホン、まあ、めでたい事で何よりでした。とりあえず今日の所はこれにて。夢様

 

 のお身体にも障りましょうから」

 

 とりえあず王允さんのその一言でその場は解散となったのだが…。

 

(まさか夢に先を越されるとは…一刀にツバをつけたのは妾が一番最初じゃったという

 

 のに!見ておれよ…妾だって!)

 

(しかし私がお祖母ちゃんか…だが、私もこのまま枯れるつもりは無いぞ。ふふ、孫よ

 

 り年下の叔母か叔父が出来るというのも面白そうだな)

 

 それは皆の心に火をつける事でもあったのだった。

 

 

                                      続く。

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 少々投稿が遅れて申し訳ありませんでした。

 

 とりあえず今回は…遂にヤッちまったというお話でした。

 

 トップバッターの夢は一気にその結晶まで宿しましたが、

 

 果たして他の面々はどうなるか?乞うご期待…と言う程

 

 になるかは不明ですが(エ。

 

 とりあえず次回は拠点第三回です。誰が登場するかは、

 

 お楽しみにという事で。

 

 

 それでは次回、第三十九話にてお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 今後の一刀の精力が何処まで続くやら…。 

 

 

 

 

 

 


 
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