No.681038

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第三十七話


 お待たせしました!

 それでは拠点第三部の第一回目です。

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2014-04-23 23:02:23 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:7946   閲覧ユーザー数:5417

 

「ううっ…もう嫌や、何故ワイがこんな扱いなん?」

 

「どうしたんです、及川の兄貴?何かあったんですかい?」

 

 此処は洛陽でも中心街から少し離れた所にある所謂『場末の酒場』という所である。

 

 場末とはいえ、主人の料理の腕前とこだわりの酒の種類の多さと安さで常に繁盛し

 

 ている為、及川と文聘は情報収集(噂話の収集)の為に結構此処を訪れるのだが、

 

 この日の及川の様子は少し違っていた。彼はあまり酒は飲まない(未成年だという

 

 思いもあるようだが)のだが、この日に限ってかなりの量を飲み、その勢いもある

 

 のか、ずっと冒頭の言葉を言っていたのである。そんな何時もの様子と違う及川に

 

 文聘も少々心配になっていたのである。

 

「もしかしてまた地和ちゃんと喧嘩したとかですか?」

 

「ふん、誰があんな、ま○板娘と喧嘩なんかするかいな」

 

「だって何時も…『あれは話し合いや!』…はぁ、そうですか。なら一体何があった

 

 んです?俺にも言えないような事ですか?」

 

「…今日な、孫策はんが陛下に挨拶に来とったやろ?」

 

「はぁ、確か孫策様は陛下から正式に揚州の州牧に任じられて袁術様から独立を果た

 

 したんですよね?今日のはそれのお礼って聞いてますけど、それが何か?」

 

「ワイはその時、たまたま城におってそれを見たんやけど、孫策はんの連れの中にな、

 

 それはそれは立派なお尻の娘がおって、ついついそれに眼がいってもうてたら、い

 

 きなり甘寧はんに『お前如きがジロジロ見るな』ってマジに殺されそうになったん

 

 や。なあ、男やったらそないな立派なお尻はどうしても見てまうよな?」

 

 

 

「はぁ、その方のがどれだけ立派な尻だったかは分かりませんが、それは男の性って

 

 もんじゃないですかねぇ?」

 

「そうやろ!それをワイがどれだけ説明しても甘寧はんは全然分かってくれへんねん!

 

 しかもそれだけやない!ワイにはそないな対応なのに、かずピーの前では借りてき

 

 た猫みたいにおとなしゅうなってしもうて…絶対かずピーだってあの娘の尻を見と

 

 ったはずなのに!何故こうもあからさまに対応が違うんや!かずピーとワイの何が

 

 違ういうねん!!」

 

 さすがに将軍職にある人に斬りかかったら外交問題に発展しかねないからではない

 

 かと文聘は思ったのだが、今の及川の剣幕の前ではそれを言い出す事も出来ずただ

 

 苦笑いを浮かべていただけであった。

 

「話は聞かせてもらったぞ、及川君!」

 

「おわっ!?誰かと思うたら、李厳はんやないですか。どうしたんです?」

 

「いやね、オジサンはこういう所で飲む方が気が楽だからさ、たまに来るんだよね。

 

 そうしたら及川君の嘆きが聞こえて来たから、是非此処は力になってあげようでは

 

 ないかと思った次第さ」

 

 そこに突然現れた李厳がハイテンションでそうまくし立てる。どうやら彼もかなり

 

 できあがった状態のようだ。

 

「だから及川君、すぐに行こうではないか!文聘君も是非!」

 

「行くって何処にです?」

 

「行けば分かるさ!!」

 

 

 

「…って、此処って色街ですがな!?」

 

「そうだよ、此処なら幾らお尻を眺めても触っても自由さ!!」

 

「李厳様、それは払う物を払った人だけの事では…?」

 

「文聘君、それだけの事をするのだから当然の代価だよ、それは!いいかい、女性に

 

 そういう事をしていいのは惚れさせるか代価を払うかだ!ちなみに、今君達は女性

 

 を惚れさせる事は出来るかね?」

 

 李厳の言葉に二人は首を横に振る。

 

「なら後は代価を払うのみさ。タダはダメなんだよ、タダはね」

 

 そしてその勢いのまま三人は一軒の妓館へと入っていったのであった。

 

(一応此処で説明だけをしておくと、命を始め女性陣は全員、女性をモノ扱いしかね

 

 ない色街については廃止するべきと主張していたのだが、一刀がそこに住む女性達

 

 は自分の仕事に誇りを持ってやっているという話をした結果、城外の一区画に全て

 

 移す事で存続する事になったのである。しかしそれまで行われていた人身売買によ

 

 ってほぼ強制的にそこに送られる事については完全廃止となっている。色街にいる

 

 女性・そこで働く者達・色街の仕事を女性に紹介する仕事に従事する者は全て国に

 

 よる登録制となり、もしそれに反する行為や人間がいた場合、例外無く極刑に処せ

 

 られる事となっているのである。さらに一刀の知識により、性交によって発生する

 

 病気についても広められ、衛生環境についても大幅に改善しているのであった。さ

 

 らに言うと、及川の発案でもあるが、女性専用の色街つまり現代でいう所のホ○ト

 

 クラブみたいな所も造られて、そこに集められた美少年を目当てに行く女性達の姿

 

 もあるようである)

 

 

 

「がっはっはっはっは!ええで、ええで!此処か、此処がええんか?」

 

「いや~ん、及川様ったらお上手です事♪」

 

 入ってから半刻後、三人の周りにはそれぞれ女性が侍り酒宴となっていたのである

 

 が、既に及川の理性は完全に吹き飛んでいたのであった。

 

 当然、相手の女性もプロなので男を喜ばせる方法については熟知している為、及川

 

 が何かする度に自分も喜んで見せたりしている。

 

「どうだい、及川君。最高だろ?」

 

「はい、さすがは李厳はんですわ!なあ、文聘はん?」

 

 及川は文聘にも賛同を求めようとしたが、既に文聘は相手の女性と床に入ってしま

 

 い此処にはいなかったのであった。

 

「何や、文聘はんも気の早い事やな~」

 

「さあ、及川様。私達もそ・ろ・そ・ろ…」

 

 及川の相手の女性はそう言いながら及川の脇の下を指で扇情的な仕種でなぞる。

 

「はひっ!?そうやな、そないに言うのなら…李厳はん、お先に」

 

「ああ、楽しんできたまえよ、及川君」

 

 そして及川はそのまま床へ向かうのであった。

 

(かずピー、遂にワイも大人の階段を登るで!!明日からはニュー及川や、生まれ変

 

 わったワイを見て腰抜かすなよ!)

 

 

 

「及川の様子がおかしい?」

 

 珍しく朝早くにやってきた人和が(通常の報告は大体夕刻位が多い)開口一番、俺

 

 に告げたのはそれであった。

 

「はい、とはいっても世話役の仕事の方は一通りちゃんとやってはいるのですが…」

 

 仕事はやってるのに様子がおかしい?別に普段からちゃんと仕事はやっているはず

 

 だよな…。

 

「どうおかしいんだ?」

 

「どう…と言うのもなかなか難しいのですが、何かこう…前に比べると仕事に対する

 

 情熱が感じられないというか、事務的という感じがするんです。それに…最近ちぃ

 

 姉さんともほとんど喧嘩しなくなりましたし」

 

 …喧嘩しないのは良い事のような気がするが?俺の顔にそう書いてあるように見え

 

 たのか、人和が言葉を続ける。

 

「何時ものあれは喧嘩とはいえ、あくまでも仕事に関するお互いの情熱のぶつかり合

 

 いのような所がありました。でも最近はちぃ姉さんが何を言っても『それでええん

 

 ちゃうか?』みたいな返事ばかりでして…そのせいか、ちぃ姉さんの機嫌も何だか

 

 良くないんです。及川さんの話をしようとするとますます機嫌が悪くなる一方で…」

 

 おや、意外に地和も及川の事を気にしていたんだな…しかし、及川自身の事もある

 

 が地和の機嫌が悪くなるのもよろしくないな。

 

「分かった。及川の事はこっちでも調べてみる。すまないが地和の方は何とか機嫌を

 

 取っておいてくれ」

 

「…分かりました、よろしくお願いします」

 

 

 

「それで俺に聞いて来たんですか?」

 

 翌日、俺は文聘さんを呼び出し昨日の人和の話をする。

 

「ああ、三姉妹と俺を除けば文聘さんが一番及川との接点が多いからね」

 

「はぁ…しかし及川の兄貴の様子が変わる切欠ねぇ…まさか」

 

「何か知ってるのか!?」

 

「いえ、その、何と申せば良いのか…」

 

 文聘さんはそうしどろもどろに話すばかりであった。しかもその視線は何だか女性

 

 陣の方に向けられているような気が…ふむ。

 

「皆、すまないが人払いだ。此処は俺と文聘さんの二人にしてくれ」

 

 俺がそう言うと、皆が部屋から出て行く。

 

「さて、これで少しは話してくれるかな?」

 

「はぁ、実は…」

 

 ・・・・・・・

 

「色街に?」

 

「それが原因かどうかは分かりませんが…様子がおかしくなった頃合いから考えると

 

 もしかしたらそれなんじゃないかと」

 

 つまり及川は色街の女の人の誰かに入れあげて、他の事がおろそかになっていると

 

 いう事か?しかし本当にそうか確証がいるな。

 

「文聘さん、申し訳ないけど少し調べてもらえないかな?本当は個人の自由時間の使

 

 い方については口出しを避けるべき話なのだろうけど…このままで良いのかどうか

 

 判断する必要がある」

 

「分かりました…つきましては、あの…」

 

「少ないかもしれないが、これは軍資金だ。よろしく頼んだよ」

 

 俺はそう言って銭の入った袋を渡すと、文聘さんはそれを押し頂いて部屋を後にし

 

 たのであった。

 

 

 

 それから数日後。

 

「やはりそうでした」

 

 文聘さんからもたらされたのは予想通りの情報だった。

 

 つまり、及川が最初に文聘さん・李厳さんと一緒に行った妓館で床を共にした人に

 

 入れあげて、すっかり通い詰めているという話だ。

 

 まあ、及川も仕事時間外に行っている以上、本来ならば注意するべき話では無いの

 

 だが…一度話はしてみるか。

 

 ・・・・・・・

 

「呼んだか、かずピー」

 

「ああ、すまなかったな…って、及川!何だ、そのやつれようは!」

 

「うん?そんなにやつれとるかな?むしろ引き締まった顔になった言われてるけどな」

 

 誰に…って聞くまでもないか。

 

「及川、何だか最近随分遊んでるみたいだな?しかもその費用に少しでも多く回す為

 

 に朝食や昼食をあまり食べてないって聞いてるけど?」

 

「ああ、かずピーの所にも話は行ってたんか。ふふ~ん、どうや?大人の階段を登っ

 

 たニュー及川の魅力は?」

 

 ニュー及川って…俺の眼にはただのやつれた顔をした男の姿にしか見えないのだが。

 

「及川…別にそういう所に行くなとは言わないけど、ちゃんと仕事と食事はしてから

 

 にしろ。今のままじゃ体を壊すだけだぞ」

 

「おや~、かずピーは大人になったワイに嫉妬しとるんか?」

 

「及川…今はそういう話をしてるんじゃなくてだな『ともかく、ワイはこれで。今日

 

 も首を長うして待っててくれてるもんでな』…って、おい!及川、話はまだ…ダメ

 

 だ、全然話を聞いてないし」

 

 さて、どうしたものか…。

 

 

 

 それから数日後。

 

「及川が倒れた?」

 

「はい、仕事が終わった直後に。ただうわ言で『今日も行かな…ワイが彼女を救うん

 

 や』とかばかり繰り返して…」

 

 輝里からもたらされたのは及川が倒れて華佗の下へ担ぎ込まれたという報告だった。

 

「とりあえずは及川の様子を見に行ってくる」

 

 ・・・・・・・

 

「華佗、どうなんだ及川の容体は?」

 

「ああ、特に病気というわけじゃないから大丈夫だ」

 

「病気じゃない?」

 

「過度の過労…特に精力が著しく減退している上に、あまりまともに食事をしていな

 

 いのが重なったようだな」

 

 食事をしていない?おかしい…及川への給金を考えれば食費が無いなどという事は

 

 無いはずだが。

 

「及川の兄貴が倒れたって本当ですかい!?…って、北郷様!」

 

「文聘さんか、ご覧の通りだよ。華佗の診察じゃ過労と食事の不足という事だけど…」

 

「えっ!?…それじゃ、まさか」

 

「何か知ってるのか?」

 

「え、その、ええっと…何と申したら良いのか」

 

「はっきり言え、これは命令だ。もし今後及川のこれが続くようなら、それは仕事に

 

 支障をきたす事になるからな」

 

「はぁ…実は」

 

 

 

「なるほど…そういう事か」

 

 文聘さんからの話を要約すると、つまり及川は妓館で馴染みになった例の女性に収

 

 入のほとんどを貢いでいるという事だった。本当かどうかは知らないが、その女性

 

 は死んだ両親の借金の返済の為に色街に身を投じ、その返済にはまだ多額の金が必

 

 要だからという事らしい。

 

「正直、及川本人が本気で恋愛をしているのであれば特に口出しするつもりも無かっ

 

 たけど…文聘さん、少しその女性の事を調べて欲しい。悪いがこれは命令だ」

 

「了解しました。では早速」

 

 ・・・・・・・

 

「かずピー、何処に連れて行くんや!?ワイはこれから行く所が…」

 

「良いから来い」

 

 数日後、ようやく容体が回復した及川を俺はある場所へ連れて行く。

 

「此処は…料理屋?でも随分寂れてるけど…」

 

「こっちだ」

 

 俺は及川をその店の裏手に連れて行く。

 

「だから一体こんなとこに何が…」

 

「中から聞こえて来る声に聞き覚えは無いか?」

 

 俺にそう言われ中から聞こえて来る声に耳を傾けた及川が、それを聞いた瞬間に固

 

 まる。その内容はというと…。

 

 

 

「おほっ、こりゃ今回も随分たんまりと貰って来たじゃないか」

 

「ふふ、あたしの魅力にかかればこの位ちょちょいのちょいだよ」

 

「ははっ、違ぇねぇ。こんな魅力的な体でちょっと優しくされりゃ大概の男はころっ

 

 といっちまうわなぁ」

 

「そんな事言わないでおくれよ…本当は嫌々なんだからさぁ。何が悲しくて、あんな

 

 しょぼい坊やに腰振らなきゃならないのかって思ってるんだから」

 

「でも金は持ってるんだろ?」

 

「ええ、どうやら結構お偉いさんみたいだし、とことん吸い尽くしてやるさね」

 

 話をしていたのは及川が懇意になっていた女性とこの寂れた料理屋の主人である。

 

 その後で聞こえてきたのは、女性の喘ぎ声であった。

 

 ・・・・・・・

 

「だそうだぞ、及川」

 

 俺はそう声をかけるが…及川は呆然と立ち尽くしていただけであった。俺はそれに

 

 構わず続ける。

 

「悪いが少し調べさせてもらった。どうやらあの女は前に幽州でも同じような事をし

 

 てそれがばれてこっちに逃げてきたらしい。男の方はその頃からの…いわばヒモみ

 

 たいなものだな。一応料理屋なんかやってるけど、ご覧の通りの寂れぶりだ」

 

 それを聞いていた及川の肩は後ろからでも分かる位に震えていたが、突然顔をあげ

 

 るとあろう事か料理屋の入り口の方に走って行き、扉を乱暴に開ける。

 

 

 

「何だ、てめぇは!?」

 

「えっ…まさか、あんた…」

 

「もしかして、こいつが?」

 

 突然の乱入者が及川であった事を知った二人は衣服の乱れもそのままに凍り付いた

 

 ように動かなくなる。

 

「な、何だっていうのよ!?こっちだって商売だ、あんただって楽しんでたじゃない

 

 のさ!」

 

 女の方は開き直ったようにそうまくし立てるが、及川はじっと彼女を見つめたまま

 

 動かない。そして、懐から出した財布を彼女に向かって投げつける。

 

「何、一体何だって…『それで終いや』…えっ?」

 

「それ持って何処へでも行け。もうあんさんとはこれっきりや。確かにあんさんの言

 

 う通り楽しかったわ。じゃあな」

 

 及川はそう言うと振り返りもせずにその場を立ち去る。

 

 そして残った二人はただ呆然とそれを見送るだけであった。

 

 やれやれ、かっこつけたのは良いけど、顔中が涙でクシャクシャじゃないか。

 

 俺はそう思いながら後を追ったが…あれ、あそこにいるのって、やっぱり後をつけ

 

 てきてたのは彼女だったのか。

 

 

 

「何泣いてるのよ、バカマネージャー」

 

「なっ、地和?何でこんな所に?」

 

「た、たまたまよ、た・ま・た・ま!」

 

 後で人和に聞いた話では地和は地和なりに及川の事を調べたらしく、あの女の事を

 

 知らせようとした所で俺が及川を連れだすのを見てこっそり後を追っていたとの事

 

 だったのだが。

 

「な、泣いてなんかいるか、ボケ!これはちょっとそこの池にハマっただけや!」

 

「へぇ、随分器用なハマり方ね…顔だけなんて。いっそその芸を披露すればウケるん

 

 じゃない?」

 

「うっさいわ!そもそもワイに喧嘩でも売りにきたんか!?」

 

「はぁっ!?そんな暇あるわけ無いでしょ、明後日からライブだっていうのに!だか

 

 ら早く戻るわよ」

 

 地和はそう言って及川の腕を掴み走り出す。

 

「お、おい、待てって…」

 

「待てないわよ、今度のライブはあんたが発案したあれを使うんだから!だからさっ

 

 さと戻って準備、準備!」

 

 そのまま二人は走り去っていった。

 

 やれやれ、どうやら俺の出番は無さそうだ。

 

 

 

「という事があってね。文聘さんに聞いたらそもそも誘ったのは李厳さんだって聞い

 

 たもので」

 

 次の日、俺は李厳さんを執務室に呼び出し、経緯を説明する。

 

「それは悪い事をしてしまったようだね。俺はただ息抜きになればと思ってね…一応

 

 ああいうのには深入りするなとは言ったんだけど。程々に相手するのが一番だとね」

 

「李厳さん…あなただってその境地に至るまで失敗とかあったんじゃないんですか?」

 

「そう言われると返す言葉も無いな」

 

「だったら分かってたでしょうに…」

 

「俺は思うに、男は一回位ああいう失敗をした方が成長するものなのだよ。きっとこ

 

 の経験は及川君の今後に良い影響を及ぼすと思うよ。どうだい、北郷様も一回?」

 

 懲りない人だな、この人も…。

 

「お断りします」

 

「君だって女遊びの一つや二つした方が…『一体、一刀に何をさせるというのです?』

 

 …ひっ!?」

 

 気が付くと、李厳さんの首筋に剣が当てられていた。その主は夢だった。

 

「李厳殿、もう一度聞きます。あなたは一刀を何に誘っているのですか?」

 

 夢は笑顔でそう聞いていたが、その背中にまるで毘沙○天か不○明王でも見えるか

 

 の如くの闘気を発していたりする。

 

「いえ、その…」

 

「それとも何も誘って無かったという事でよろしいのですか?」

 

「う、うん、そう、そうなんだ。何も誘って無かったんだよ。そうだ、急ぎの用事を

 

 思い出したから俺はこれで!」

 

 李厳さんは脱兎の勢いで部屋を後にしていた。

 

 

 

「まったく…よりにもよって一刀に…そもそもそういう事を一刀がするのなら別にそ

 

 んな所に行かなくたって私が…」

 

「何をブツブツ言ってるんだ?」

 

「な、何でも無いわ、何でも、ね!」

 

 そう?まあ、本人が何も無いってなら別に…。

 

「ところで夢は何しに来たんだ?」

 

「一刀…忘れたとは言わせないわよ?」

 

「えっ?…ああ、そういえば、午後から買い物に付き合うって約束…だったよね?」

 

「何故疑問系なのかが引っかかるけど…その通りです!だから行くわよ」

 

 夢はそう言うなり俺の腕に自分の腕を絡めてそのまま俺を引っ張る。

 

「そんなに引っ張らなくても大丈夫だから…おお~い、夢ってばぁ!」

 

 ・・・・・・・

 

「やれやれ、どうやら北郷様に女遊びは必要無いようだな。そもそも彼を誘ったら俺

 

 の命の保証が無さそうだし」

 

 李厳はそう呟きながら肩をすくめていたのであった。

 

                                    続く。 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は及川の童貞からの卒業、そして受難の巻でした。

   

 彼のこれからに幸あらん事を…という所です。

 

 あと、地和とはフラグかどうかは…未定という事で。

 

 次回は拠点第二回…実は話はこのまま続きます。

 

 そう、夢とのデートをお送りします!果たしてデート

 

 だけで終わるのかどうか…お楽しみに。

 

 

 それでは次回、第三十八話でお会いいたしましょう。

 

 

 追伸 及川と懇意になっていたあの女性はしばらくして

 

    洛陽からいなくなったとの噂がちらほらと…。

 

 

 

 

 


 
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