No.657726

真・恋姫†無双 異伝「空と命と夢の狭間に」第二十四話

 お待たせしました!

 では一応黄巾党との最終決戦の開幕です!

 張三姉妹の運命は…諸侯の思惑は…そして

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2014-01-26 08:37:51 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:8647   閲覧ユーザー数:6069

 俺の眼に映ったのは城門から出てくる黄巾党の大軍勢だった。

 

「何だ…城の中にまだあんなにいたのか?」

 

「さすがに衰えたりとはいってもまだ張角達を慕う者達は多かったという事ですね。

 

 私達はどうします?」

 

 輝里に聞かれ、俺は軍勢を見ながら考える。

 

 見た感じ二万はいそうな感じだ…あれ?

 

「及川、確かそっちの調べじゃ城内の兵力って…」

 

「ああ、まともに戦えそうなのは二万程。後は一応武器を持ってるだけの連中やっ

 

 たで」

 

 そう、此処に来る前に及川に黄巾党の城内の様子を調べてもらったのだったが…。

 

「でも今出てきているのは二万…それじゃ中はほとんどもぬけの殻か?」

 

「完全にではなくとも、まともに戦う力は無さそうですね…しかも他の諸侯は出て

 

 きた軍勢に向かってます。あの軍勢の中心に黄巾党の旗が掲げられていますので、

 

 おそらくあの中に張角がいると判断したものと」

 

 輝里の言葉を聞きながら俺はある考えに達する。

 

「…よし、俺達はあっちに向かう」

 

 俺がそう言って指差した方を見て皆が首をかしげる。

 

「一刀さん、あっちは確か曹操殿が塞いだ例の抜け道では?」

 

「そうだけど?何か問題があるのか?」

 

「今更あっちに向かって何があるというのです?もはやあそこには軍勢が通る道な

 

 どありません。それこそ身一つ通るかどうかの…もしかして?」

 

 輝里の言葉に俺は頷く。

 

「そう、そのもしかしての可能性が高いって事だ」

 

 

 

「まさか…だって此処まで国を混乱させた張本人ですよ?今更何処へ行こうと…」

 

「そもそも前提条件が違うのかもしれないじゃないか?」

 

「前提?」

 

「そうか、そういう事か」

 

 輝里の疑問に反応したのは空様だった。

 

「どういう事です、李通殿?」

 

「張角自身にそもそも漢と戦う気が無かった…と考えればという事だ」

 

「そんな…だったら何故此処まで大きな争乱になるのです?」

 

「戦の切欠なぞ、元を辿ればどうでも良いような小さな諍いだったりする事もある

 

 という事だ。もしかしたら、張角本人は戦をする気そのものすら無かった…とい

 

 う可能性すらな。ならばそういう事も考えるのではないか?」

 

 空様の言葉に皆は考え込む。しかし当の本人は…。

 

「さ、それはそれとして、私はあっちの戦の方に行ってくるので向こうは任せたぞ」

 

 そう言うなり馬に乗ってさっさと戦場の真っ只中へ駆けて行ってしまう。

 

「って、空様!?…ああ、ダメか。今更戻って来ないな、あの人は」

 

「一刀さん、どうします?」

 

「仕方ない…恋達はすまないが空様を追ってくれ。大丈夫だとは思うが、怪我でも

 

 されたら大事だ」

 

 俺の言葉に恋は頷くとねねを伴って空様を追いかける。

 

「ウチも空はんの方へ行くで!」

 

「それは任せるけど…楽進さんを借りる事は出来るか?」

 

「えっ、私…ですか?」

 

 突然名前を呼ばれた楽進さんは驚きに眼を見開く。

 

「凪がええんやったらウチはかまへんけど?」

 

「私も…北郷様のお望みとあらば」

 

 

 

 楽進さんは何故か顔を赤らめながらそう呟くように言う。あれ?何かおかしな事

 

 言ったかな、俺?

 

「?…ええっと、それじゃ楽進さんはこっちでお願い出来るかな?それと、翠達は

 

 どうする?」

 

「私は戦場の方へ行くぜ!」

 

「…翠姉を一人で行かせるわけにもいかないので私も戦場の方へ」

 

「では決まった所で…皆、武運を祈る!」

 

『応っ!』

 

 ・・・・・・・

 

「あ、あの…北郷様?何故私をこっちに…?」

 

 行軍を始めてしばらくしてから楽進さんはおずおずとそう聞いてくる。

 

「君が必要だからだ」

 

 俺がそう答えると楽進さんの顔が急に赤くなる。あれ?何かおかしい事言ったか

 

 な?(二度目)俺としてはただ『これから向かう先では楽進さんの無手の技が必

 

 要になるから』というつもりだったのだけど…。

 

「あ、あの…北郷様、わ、私の事は凪と呼んでください…」

 

「えっ?あ、ありがとう。俺の事は一刀で良いよ」

 

「はい!これからもよろしくお願いします、一刀様!!」

 

 …何だか急に凪のテンションが上がったような気がするけど?まあ、良いか。戦

 

 の前にやる気が出るのは良い事だろうし。

 

「ねえ、一刀お兄様ってやっぱ鈍いよね…あれで何も気付かないって」

 

「私達があれだけ頑張ったってまったく反応無しだったんだし、今更彼女にだけ反

 

 応されてもそれはそれでむかつくだけでしょ」

 

「はぁ…一刀様もあの鈍さが多少なりともマシだったら言う事無いんですけどね」

 

「でも、そのくせ女の子が喜ぶような事をさらっと言っちゃったりするし…天然の

 

 蕩しだよね」

 

「きっと北郷家には蕩しの血が流れてるのよ…蕩された身で言うのも何だけど」

 

「ですよね…北郷家の一族の人って絶対他でも女の子を蕩してますよね」

 

 何やら輝里達がジト目で俺を見ながら何やら話しているのが気になるが…。

 

 

 

 その頃、黄巾党と各諸侯の軍との戦場にて。

 

「皆の者、今ぞ、かかれーーーっ!」

 

 公孫賛は黄巾党の正面から普通に攻めかかっていた。彼女の率いる軍は約一万、

 

 しかも五胡との戦でならしてきた精鋭揃いである以上、至極真っ当な方法ではあ

 

 るのだが。

 

 ・・・・・・・

 

「ほう、さすがは白馬長史という所だな」

 

 それを後方から眺めていた周瑜はそう感想を洩らしていた。

 

「あら、冥琳が人の用兵を褒めるなんて珍しい事もあるものね」

 

「私とて褒める所は褒めるぞ?ところで、許可は出たのか?」

 

「袁術ちゃんは背後を固めるから好きに行って来いって」

 

 孫策は少々ふくれ気味にそう伝える。

 

「おやおや、また面倒事は儂らに任せて高見の見物か」

 

 それを聞いた黄蓋もやれやれといった表情でそう呟く。

 

「まあ、好きに行けってならそうさせてもらうという事で…聞け、皆の者!今より

 

 我らは公孫賛殿の援護に入りつつ敵軍中枢への攻撃を行う!孫呉の兵どもよ、我

 

 に続け!!」

 

 ・・・・・・・

 

「どうやら孫策も動いたようね…それじゃ私達も行きましょうか」

 

 敵補給路を潰した後、少し離れた所で態勢を整えていた曹操はそう呟く。

 

「春蘭、秋蘭、準備は出来てる?」

 

「「はっ、何時でも!!」」

 

「桂花、行軍の経路を示しなさい」

 

「はっ、我らは公孫賛・孫策両軍によって指揮系統に混乱の見られる黄巾党の軍勢

 

 に最後の痛打を与えます!我らが衝くのは城と軍勢の間、奴らの逃げ道を失くす

 

 この場所です!」

 

 

 

 

 曹操の軍師である荀彧が示した経路を見た夏侯惇は驚く。

 

「桂花、これだけ完全に敵の逃げ道を塞いでは逆に死に物狂いに抵抗されるのでは

 

 ないのか!?」

 

「今更、死に物狂いで来たって既に公孫賛と孫策の軍の攻撃で混乱している軍勢に

 

 どれだけ力が残ってるっていうのよ?それに、此処で逃げ道なんか作ったら逆に

 

 張角に逃げられちゃうでしょ?」

 

「桂花の言う通りね。此処は確実に敵を殲滅させる方を選ぶ事にするわ」

 

 曹操がそう決めたその時、

 

「申し上げます!黄巾党の軍勢に『李』・『張』・『呂』の旗印の軍勢が攻撃を仕

 

 掛け、凄まじい勢いで敵を葬っています!」

 

 もたらされたその報告に全員が固まる。

 

「……どういう事、それ?」

 

 ・・・・・・・

 

「あっはははははははは!何だ何だ、その程度で今まで良く漢と戦ってこれたな!

 

 もっと骨のある奴はおらんのか!!」

 

 戦場に乱入した空は得物として持ってきた自分自身の倍の長さはあろうかという

 

 斬馬刀を片手で小枝を振り回すが如くに振るい、一回武器を振るう度に十人近い

 

 敵兵が宙を舞っていた。

 

「何や、あれ…空はん、ただ者やないって思ってはいたけど、まさかあそこまでっ

 

 て…くくくっ、あんなん見せられたらウチも抑えが効かんわ。行くでぇ!!」

 

 それに続いて霞も敵中に乱入して次々に敵兵を薙ぎ払う。

 

「……………死ね」

 

 別の方面からは既に恋が突入し、次々に敵を屠っていく。

 

 そして一刻もしない内に黄巾党の大半を血祭りに上げていたのであった。

 

「何だありゃ!?あれじゃ私達の出番無いじゃないか」

 

「仕方ない…だけど本当に義母様から聞いた通りの人だ」

 

 少しばかり出遅れた翠と雫は少々呆然としながらそれを眺めていただけであった。

 

 

 

「何よ、あれ…あそこにいるのって本当に人なの?」

 

 その光景を見ていた荀彧がひきつった顔でそう呟く。

 

「ふん、私だってあの位の事など雑作も…」

 

「姉者、そういう台詞はもう少し身体の震えが治まってから言った方が良いと思う

 

 ぞ?…しかし一体何者だ?特にあの兜を被った者…」

 

 夏侯惇の強がりをたしなめながらも、夏侯淵の眼も驚愕に彩られていた。

 

「あれ?あの兜を被った人…あの時の」

 

 そこに劉備がそう口を挿む。

 

「劉備、あの者を知ってるの?」

 

 曹操がすかさず質問をする。

 

「知ってるって程ではないですけど…この間、陣の前でちょっとお話しただけで」

 

「陣の前って…何処の誰かも分からない者が陣の前に来ていたっていうの!?」

 

 曹操にそう言われて劉備もそれに気付く。

 

「えっ…そういえば、あの人と話をしている間って誰も兵士さんが来なかったよう

 

 な…何時もだったら誰か来た時点で兵士さんが応対してるのに」

 

「そんな…わが軍の兵が誰も気付かないって」

 

「兵どころではない、私も姉者も気付かなかったのだぞ…」

 

 荀彧と夏侯淵も揃って苦い顔になる。

 

 それもそのはず、目の前で敵兵を恐ろしい程の勢いで葬っている者が誰にも気付

 

 かれる事無く陣の前まで来るだけの技も持っているという事になるからだ。もし

 

 その時、曹操の陣に何かを仕掛けるつもりがあったなら、おそらく成す術も無く

 

 やられていたのはほぼ間違いの無い事でもある。

 

 皆がそう思い驚愕に包まれる中、

 

「そう、何者かは知らないけど…是非欲しいわね」

 

 曹操は一人そう笑みを浮かべながら呟き、夏侯淵は『また悪い癖が出た』とばか

 

 りに渋い顔をしていたのであった。

 

 

 

 ちなみに空の暴れっぷりは他の陣営からも驚愕の一言であったようで…。

 

「何だ、あれ?あんなのが来たらもう私の出番なんか無いじゃないか…」

 

 公孫賛はそう呟きつつ、自軍の兵が巻き込まれないように素早く距離を取り、

 

「世の中は広いな…雪蓮以外にもあんなのがいるのか」

 

 周瑜は公孫賛と同じように距離を取りつつそう感嘆の声をあげていた。

 

「何よ、私はもっとしなやかで綺麗でしょ?」

 

 孫策はぶうたれながらそう言っていたが、

 

「でも確かにあれはちょっと規格外よね…母様が勝てないわけだ」

 

 ため息をつきながらそう呟く。

 

「どういう事だ?雪蓮はあの者を知っているのか?」

 

「知ってるも何も…あの人がそうよ」

 

 孫策のその言葉に周瑜は驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。

 

「なっ…ははっ、確かにあれは規格外だな。しかし何故あれだけの力を持っていな

 

 がらみすみす宦官や何進にいいようにさせてきたのだ?最初から本気であれをし

 

 ていれば瞬時に全て屠れそうだが…」

 

 周瑜のその疑問に答えられる者は何処にもいなかったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「申し上げます!この軍勢の中に首領らしき者は見当たらないとの事です!」

 

 それからさらに一刻程経ち、空達の攻撃と公孫賛・孫策・曹操及び各諸侯の軍勢

 

 によって遂に黄巾党の軍勢は壊滅したのであったが、それら全ての者が幾ら捜し

 

 ても、その中に張角…というより軍勢を指揮していたような者が見当たらず、捜

 

 索に当たった各諸侯は首を捻っていた。さらに、

 

「曹操さん、城内の探索も完了しましたけど…中にいたのはお年寄りか子供ばかり

 

 でした。張角さんが何処にいるのかは誰も知らないと…」

 

 曹操の命で城内の制圧と探索に向かった劉備からもそのように報告を受ける。

 

 

 

「そう…一体何処に消えたというの?そもそも首領が此処にいないって…」

 

 曹操のその疑問は皆が思っていた事であった。しかし、当然これを推測していた

 

 空達は…。

 

「どうやら予想通り一刀の方が当たり籤だったようだな。後はお手並み拝見といこ

 

 うか」

 

 そう言って一刀達がいるであろう方を見ていたのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「はぁっ、はぁっ、はぁ…人和~、こんな道何処まで続くのよ~」

 

「お姉ちゃん疲れたよ~、ちょっとだけ休もうよ~」

 

「…もう少し我慢して。今此処で歩くのをやめたら見つかってしまう危険がある」

 

 その頃、張三姉妹は城を抜け出し曹操が塞いだ道の隙間をぬい、少し離れた山道

 

 を進んでいた。道といってもそこは獣か猟師位しか通らないような細く険しい物

 

 であったので、三姉妹の体力も限界に近付いていたのであった。

 

「それじゃ何処まで行ったら安全なのよ~」

 

「この山を抜けて、さらに谷越えの道があるからそこを過ぎれば…」

 

「ええ~っ、それってあとどの位距離があるの~?」

 

「多分後三十里位…」

 

(ちなみに此処では一里=400mでお送りします)

 

「そんな~、お姉ちゃんそんなに歩けないよ~」

 

「じゃ此処で死ぬ?」

 

 張角は不満の声をあげるが、張梁が冷たくそう言うと観念したかの様子で黙って

 

 ついてくる。

 

 

 

「でも人和…本当にこの道しか無かったの?」

 

「仕方ないでしょ、近い距離の道は曹操に塞がれて…『違う、そっちの事じゃなく

 

 って』…どういう意味?」

 

「ちぃ達は本当に戦う道しか無かったのかって…」

 

 張宝の突然の言葉に張梁も押し黙る。それは彼女もずっと考えていた事だったか

 

 らだ。

 

(そんなのちぃ姉さんに言われなくてもずっと考えてた…一体私達は何処から間違

 

 えたのか、そもそも切欠は何だったのか。でも…)

 

 張梁がそう考えた瞬間、彼女の懐から怪しい光が発せられ、それと同時に強烈な

 

 頭痛に見舞われる。

 

「うっ…ああああああっ!」

 

「ちょっ、人和!しっかりして!」

 

「人和ちゃん!!」

 

 姉二人が駆け寄ろうとしたその時、

 

「そこまでだ!!」

 

 突然の声と共に道の両端から軍勢が現れて三人を囲む。

 

「誰よ、あんた!」

 

「ちぃちゃん、それより人和ちゃんを!!」

 

「俺の名は北郷、君達には色々と聞きたい事があるけど…まずは、凪。あの眼鏡の

 

 娘を」

 

「はっ!」

 

 

 

 凪は眼鏡の娘に近付くと彼女の懐に手を入れ、そこから一冊の本を取り出す。

 

 それが取り出されると同時に頭痛が治まったのか、彼女のうめき声も止まる。

 

「一刀様、これです!この本から怪しげな気が!!」

 

「それか!凪、すぐに処分しろ!!」

 

 俺の命に応じ、凪は本を上に投げるとそれに気弾をぶつける。本は怪しげな気と

 

 共に爆散し、塵一つ残さず消える。

 

「さて、それでは…君達が張角・張宝・張梁の三人で間違いないですね?」

 

「「「!!…はい」」」

 

 俺の問いに三人は驚きと観念が入り混じった様子で答える。

 

「へぇ、ホンマに女の子やったな…しかも三人とも可愛いし」

 

 俺の後ろから顔を出した及川は三姉妹の顔を見るなり、そう感想を洩らす。

 

 実は既に及川達諜報部隊から、黄巾党首領の張角は女の子で妹が二人いる事まで

 

 は聞いていたのだ。そもそも三国志でも張角には二人の弟がいたから、こっちで

 

 は三姉妹であろうことは予想は出来たのだが。

 

「わ、私達をどうするっていうのよ!?」

 

 そう聞いてくるのはポニーテールの娘…張宝だった。

 

「どうするかは俺が決める事では無いのでね…すまないがおとなしく同行してくれ

 

 るかな?」

 

「…何処まで行くのです?」

 

 眼鏡の娘…張梁の問いに俺は短く答える。

 

「ちょっと洛陽まで…かな?」

 

 

                                                                    続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 とりあえず張三姉妹確保までお送りしました。

 

 一体洛陽で三姉妹を待つ運命や如何に!?

 

 という事で、次回は一応黄巾編の最終話をお送り

 

 する予定です。

 

 

 それでは次回、第二十五話にてお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 空様はあれでもまだ100%の力は発揮してませんので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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