魏END 外伝
~風稟の音~
北郷一刀が逝った夜、私は一刀殿を恨んだ、憎んだ。
それはなぜだか私も良くわからない。
私は何の想いもなかったはずなのに・・・・・・なぜ?
私は極端に素直ではない・・・・・・そんなの昔からわかっている・・・・・はず。
それでも、一刀殿を・・・・・・想ってない。
これは本当にそうだと、素直ではないとかを無しにしても本当に何も想ってないはずだったのに・・・・・・・・なぜ・・・・・・・・・・なぜ、こんなに胸の奥が痛いのだろう。
そして、皆のおかげで一刀殿ことをまた信じることにした。
それが無性に嬉しかった。
けど、私はふと気付いた・・・・・・なんで嬉しいのか?
わからない・・・・・。
わからない・・・・・。
皆と慣れないお酒を飲んで騒いだ後、天幕に戻り寝床の上でなぜか涙がでた。
・・・・・止まらなかった。
・・・・・止められなかった。
そんな中、私の天幕に来訪者が来た。
「風・・・・・?」
「稟ちゃん・・・・・・今日は一緒に寝ませんか?」
「え、えぇ・・・・・一緒に寝ましょう。」
風は何も聞かなかった。
涙で顔を濡らしてる私に何も。
私も風には聞かなかった。
風が寝床にもぐり、声を抑えて泣いているのを知ってるとしても。
私達は互いに体を寄せ合い泣いた。
声にはださず、ただ、ただ、泣いた。
「ん・・・・・・。」
「夢・・・・・・。」
寝床から上半身だけ起こす。
そして、隣で寝ている人を見る。
「なんで今になってあんな夢を見たのかしら。」
稟は風と一刀と閨をともにして、全てが終わったあと三人で川の字で寝ていたのだ。
そして、一刀と風の幸せそうな寝顔に笑みがこぼれる。
「赤子みたいですね・・・・・先程はあんなに激しかったのに。」
そして、ふと気付く。
窓から指す月の幻想的な光に。
稟は寝床から降りて、窓を開け夜空を見上げた。
「・・・・・・綺麗。」
夜空に輝くのは満点の星空と大きな琥珀色の月。
「まるで、あの日ようね・・・・・・・・・・そうは思わない、風?」
「おやおや、ばれてましたかぁ~。」
「当たり前です。」
「もう少し、稟ちゃんの綺麗なお尻を見れると思ったのですが。」
稟は前を布で隠してはいるが、後ろからは丸見えの状態。
それに気付き顔を赤らめ急いで布で全てを隠す。
そして、負けじと
「風も、胸が見えてるわ。」
風は先程の稟と同じように起きて話しているが、胸の部分が丸見えの状態。
「おやおや、恥ずかしい限りなのです。」
風は寝床から稟と同じように布をまとって降りてきた。
そして、稟の隣で同じように月を眺める。
「どうしたのですか?」
「・・・・・・昔の夢を見ました。一刀殿がいなくなった日の。」
「・・・・・・奇遇ですね。実は風もなのです。」
「それもこれも、あの月のせいですか・・・・・。」
「かもしれません、あの日と同じ月です。」
二人は月を眺める。
そして、静寂が流れる。
「ねぇ風・・・・・。」
「なんですかー。」
「風は一刀殿のこと好きですか?」
「・・・・・・はい。・・・・・・・・・・でも、それは稟ちゃんも同じなのです。自信を持ってください。」
「そうですね。・・・・・・私もとんだアマノジャクに生まれたもね。」
「それが稟ちゃんの魅力の一つですよ。最近は鼻血も流さなくなりましたし。」
最近、稟は鼻血をださくなっている。
その理由はおのずと知れている。
「一刀殿が私を変えてくれたのですよ。」
「お熱い事なのですー。」
「ふふっ、風には負けますよ。」
「・・・・・・本当に強くなったのですね、稟ちゃん。」
「風もですよ。」
「風・・・・・・。」
「今度はどうしたのですか?」
「・・・・・・今ならはっきり言えることですが、私は一刀殿が好きです。」
「おぉ~、随分と進歩しましたね。」
「私もそう思います。」
「俺もだ。」
「なっ!」
「おぉぉう!」
二人は声がしたのに驚くが、さらに後ろから抱きつかれたことに驚く。
「い、いつから起きてのですか!?」
「ん~、ついさっき。」
「では、先程の稟ちゃんの発言も?」
「あぁ、ばっちしだ。」
「な、な・・・・・忘れてください!」
「嫌だ。」
「・・・・・・・っあ。」
顔を赤らめて暴れる稟を強く抱き寄せる。
「・・・・・・・おぅ。」
そして、風も抱き寄せる。
「俺も好きだよ。」
今度は三人で月を眺める。
とても幻想的な琥珀の月。
月光が照らすのは寄り添う三人。
どこまでも、
どこまでも、
今度こそは・・・・・・
幸せが続きますように。
余談ではあるが、この時に北郷一刀は魏の種馬から魏の父と呼ばれている。
魏の将に一斉に告白した話が民達の間でもちきりだったためもあるが、
一番大きいのは、一刀と将達との間に生まれた娘達が街中を元気に駆け回っているためだ。
もちろんその中に、風と稟の娘もいる。
魏の国は、
いや、三国は
幸せでいっぱいである。
「旦那さま、お茶が入りましたよ。」
「ありがとう。」
「風は・・・・・相変わらずですか。」
「あぁ、今娘達と昼寝してる。」
一刀の部屋、一刀の寝床には大きな猫と小さい猫達が寝ている。
「私の娘もすっかり風に汚されてしまいましたね。」
そういう稟は笑顔で、黒髪の猫をなでる。
「ん・・・・・母さま?」
「起きましたか?」
「抱っこ。」
「はいはい。」
「うにゅ~、風も抱っこなのです。」
目を開け、風が稟にねだる。
「風は旦那さまの仕事を手伝いなさい。」
「むー、仕方がないのです。手伝いますよー、お父さん。」
「おぅ、ありがとう。」
本当に魏は幸せいっぱいです。
魏END 外伝 ~完~
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この作品は作者・南風の魏END 外伝シリーズの流れを組んだ作品ですので、そちらを読まれたほうがよりよくわかります。あと、キャラ崩壊とオリジナル設定がありますので、苦手な方は申し訳ありません。感想や誤字の指摘などをよろしくお願いします。