魏END 外伝
~霞との約束~
俺は最低な男だ。
約束を守れなくて、大切な人を泣かした。
だから、今度こそは約束を果たす。
絶対に!!
「ここ、どこ~?」
「おぅ、やっとお目覚めか。」
彼女は霞、魏屈指の武人だ。
酒と喧嘩を愛している、昨日は俺と一緒に晩酌をした。
霞はお酒に強いのだが、さすがに昨日は飲みすぎたらしく寝てしまった。
そんな霞を連れて、俺は馬車で山道を移動中。
「動くと落ちるぞ。」
「ん~?・・・・・ほんまにどこやここ!?」
「あぁ、山の中。」
「どないなってんねん、一刀!?」
「え~と話すと長くなるんだけど、いいか?」
「かまへんよ。」
省略するとこうである。
華琳が俺と霞の旅行の約束がどういうわけか耳に入ったらしく、羅馬は無理だけど、二人で明日から七日間旅行へ行ってらっしゃいと言われた。
んで、俺は霞を見つけたけど、話す間もなく晩酌になって今にいたる。
「わかった?」
「・・・・・なぁ一刀・・・・・・・。」
「どうした?」
「うちな、別に約束なんてどうでも良かったんや。」
「・・・・・・・・・。」
「一刀が消えて戻ってきてくれて、うちらと夫婦になってくれて・・・・・・それだけで充分やった。確かに、華琳とは新婚旅行に行かせるって約束もしたけど、別に一刀とこれからずっといられるんなら、良かった。」
「・・・・・・でも、二人で旅ができて嬉しいだろ?」
何かを言おうとしている霞を遮って、笑顔で話しかける。
「・・・・・・へへっ、そうやね。」
そんな一刀を見て霞は頬を赤くして同じく笑顔になってくれた。
「んで、何処に向かってるん?」
「霞は国中旅してきただろ?そんな霞でも行ったことない場所かな。」
「うちが行った事がない場所って、そうそうないで?」
「でも、行った事はないよ。絶対だ。」
「そうかぁ~、なら楽しみに待ってる。」
「おぅ、楽しみにしててくれ。」
一刀の強気な発言にニシシッと霞が笑う。
霞が起きてから気になっていた布に包まれた何かを広げようとする。
「それにしても何やこの布。」
「それには触っちゃ駄目だ。後の楽しみにとっとこう。」
「まぁ一刀がそういうなら、しゃあないな。」
「ほら、着いたぞ。」
暖かい陽気に誘われて、霞はどうやらまた寝ていたようである。
「なんや、もう夜?」
「寝ぼけるな。ほら、着いたから見てみろ。」
馬車から身を乗り出し、霞の目に入ったもの
それは、
まだ、この時代には珍しい桜だった。
「うわ・・・・・・・・・なんやこれ。」
「桜っていってな、俺の国では一番綺麗で有名な花さ。」
「さくら・・・・・桃の花やないの?」
「まぁ色は同じだけど、違うよ。」
「これが、さくら・・・・・さくらって真桜の桜の字のやつか?」
「あぁ、何でここいらに無いのに真桜の字に桜が使われてるか、聞いてみたらさ真桜の両親が一度見たことがあるって言っててな。」
「んで、真桜の両親に話聞いたん?」
「おぅ、俺じゃなくて真桜が聞いてきた。」
「・・・・・・・むっちゃ綺麗やな。」
「あぁ・・・・・・・どうだ気に入ってくれた?」
「・・・・・・・・・。」
霞は無言で、一刀の胸に顔をうずめる。
「霞?」
「・・・・・・うち、うち、むっちゃ嬉しい。」
「そう言われると、連れてきたかいがあるってもんだ。」
「一刀・・・・・・・・・・愛してる。」
「俺も。」
満開の桜の中、二人の男女は唇を重ね、体を重ねた。
満開の桜の中で最も大きな桜の下。
一刀と霞が体を寄り添いながら木に寄りかかってる。
二人は今、夜桜を見ながら晩酌中。
一刀が霞に河原でしたように、蝋燭や雪洞に灯をともしながら。
布の中身は沢山の食料と酒、そして蝋燭だったのだ。
「なぁ、一刀。」
「ん?どうした?」
「なんで一刀はうちにそんな優しくしてくれるん?」
「俺ら夫婦だろ。」
「それだけ?」
「好きな女を喜ばせたくて色々するのが男ってもんだ。」
「そんなもんなんか・・・・・・・・。」
「はぁ~・・・・・・・・・実はな、自分自身許せなかったんだよ。霞をほっておいて消えてさ約束が果たせなかったことに。」
「・・・・・・一刀は、優しい。」
「・・・・・・からかうなよ。」
「からかうなんてしてへんよ。うちの素直な気持ちや。」
「なぁ、一刀。」
「ん?」
「今度は三人でここにこうへんか?」
「それって・・・・・・・・・・・ん!」
一刀の唇を霞がふさぐ。
そして、そのまま夜桜が舞う中に倒れこんだ。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・。
桜が満開なこの場所を歩く影が三つ。
「むっちゃ凄いな!」
「あんま、走ると転ぶで。」
「んな、アホな事するか!」
「しかし、元気だな。霞そっくりだ。」
「もうちょい、女の子らしくしてほしんやけどな。」
「なにしとるん!!早ようきい!」
「わかってるって。」
「しゃあないなぁ・・・・・・・。」
「ごっつ凄いなこの木!」
ちびっ子が立ち止まったのはこの桜の中で一番の大きな木。
「なぁ、母ちゃん!こいつごっつ凄い!」
「せやろ、凄いやろ。」
ちびっ子は霞と一刀の娘である。
その、ちびっ子は桜の木を見上げて感嘆の声をあげている。
「来てよかったな。」
「ほんまや。・・・・・・約束守ってくれてありがと。」
「今度は四人で来るかー!」
「な、なに言ってんの!」
霞の頬が赤くなる。
「だったら、うちは妹がほしい!!」
聞こえたらしくちびっ子が駆け寄ってくる。
そのちびっ子を一刀が肩車する。
「そうか、妹かー。任せておけ!」
「・・・・・・・ほんま、一刀は親馬鹿やな。」
桜の花びらが舞う中、親子の笑い声が響き渡る。
次は四人でここに来るという約束をして。
魏END 外伝 ~完~
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この作品は魏END 外伝の流れを組んだ作品です。なので、作者・南風の魏END 外伝シリーズを読んでいたただけたらよりよく楽しめます。また、キャラ崩壊やオリジナルの設定がありますので苦手な方は申し訳ありません。感想や誤字等の指摘をお待ちしております。