SAO~黒を冠する戦士たち~番外編 ExtraEdition 中編
明日奈Side
和人くんの甘い囁きでヘブン状態になっていたわたしと、
同じく和人くんに怒られて怯えていた里香が正気を取り戻したことで、急いでプールにある更衣室へと向かいました。
先に来ていた直葉ちゃんは苦笑しながら着替える途中みたい。
「ごめんね、直葉ちゃん。遅れちゃって~」
「いえいえ。というより、お兄ちゃんの言動にはいい加減慣れてきましたから…」
「うぅ~、アイツをからかいすぎると良くないって分かってるのに、毎回やっちゃうのよね…」
「里香さんも学習しないとダメですよ」
談笑しながら着替えを始めるわたしたち。そんな時、途中まで着替えていた直葉ちゃんがこういってきました。
「というか、今更かもしれませんけど、あたしの練習のためにこの学校のプール使わせてもらっていいんですか?」
「大丈夫よ。和人の奴がちゃんと許可取ったみたいだし」
「和人さんは優等生ですからね。屋上やパソコン室とかの予備の鍵も預かってるとか…」
直葉ちゃんの言葉に里香と珪子ちゃんが答える。
和人くんは成績も授業態度も良いし、課題の提出も欠かした事がないし、
評判も良いとくれば学校側の融通が利きやすいみたい。
そういえば、偶に屋上で寝てるみたいだもんね……わたしもご一緒したいかも…。
「わぁ、里香さんの水着カッコイイですね!」
「でしょ~♪ SAO前に使ってた水着はきつくってさ~。
この前の志郎とのデートの時にね、アイツ似合いそうだって言って買ってくれたのよ~♪」
「うぅっ、あたしは前とサイズほとんど変わってなかったんですけど…」
「珪子も
「む、むりですよ~///!? そ、そんな、水着、選んで、もらうなんて…//////」
そっかぁ~、里香は志郎君に買ってもらった水着なんだね…。
わたしも和人くんに買ってもらったのにすれば良かったかな~?
でも、見せた事がないのを見てもらいたかったし……はっ、だけど似合ってなかったらどうしよう?
うぅ~、彼が買ってくれたのにすれば良かったかも~…///
「ほぇ~……明日奈さん、ビキニなんですね…」
「ふふ~ん、大胆な水着で和人の奴を悩殺ってところかしら~?」
「ち、違うよ/// ただ、和人くんには見せた事がないのだから、もしかしたら褒めてくれるかなって、思って…//////」
べ、別に期待してるわけじゃないもん! 今日は直葉ちゃんの練習のために来たんだから!……そう自分に言い聞かせる。
「み、みんな、学校指定の水着じゃないの…///? あたし、学校のプールで練習って聞いたから、てっきりみんなも…//////」
そんな時、直葉ちゃんがか細い声で言ってきました。
見てみると、そこにはスクール水着を着ている直葉ちゃんの姿が……なんなの、あの
「不公平です!!」
「け、珪子ちゃん…//////?」
「明日奈さんも里香さんも、ましてや1つしか年が違わない直葉ちゃんまで……あたしも
「「「ちょっ///!?」」」
わたしと里香が直葉ちゃんの胸を見ていると珪子ちゃんが突然叫びました。
「と、とりあえず落ち着きなさい!?」
「う、うん、話せばわかるよ!?」
「て、ていうか、こんなの運動の時とか邪魔になるし、肩凝るだけだから!?」
ちょっと、直葉ちゃん!? 多分だけどそれは地雷のはず…!
「――そんなのっ、勝者の余裕です~~~~~!!」
それから、珪子ちゃんを落ち着かせるのに少々の時間を要しました…。
「うぅ……あたしだって、あたしだって…(しくしく)」
ご乱心な様子からようやく元に戻った珪子ちゃんは涙を流しています。なんて声をかければいいかな~?
「はぁ~……珪子、あたしからアンタに伝授してあげるわ」
「ふぇ…?」
里香から何か助言があるみたいだけど、どんなのだろう?
「まずは牛乳を飲みなさい、そして良く食べなさい、運動も忘れないこと……そして…」
「「「そして?」」」
「揉んでもらいなさい、彼氏に///♪」
「「「あぁ~//////」」」
納得しました……特に最後の、凄く…///
話し込んでしまったわたしたちは本来の目的を思い出して、すぐに更衣室から出ました。
そこには既に着替え終わっていた志郎君と烈弥君と刻君が体を動かしながら待っていました。
準備運動をしているみたい。
「ごめんね、お待たせしちゃって」
「待ってないから大丈夫っと、準備運動もできたしな。それにしても…」
遅れちゃったことを謝ると志郎君は本当に気にしてない様子で言いました。
その代わり、最後に水着姿の里香に視線を向けて、そのまま歩み寄りました。
「俺の見立て通り、よく似合ってるよ、里香」
「あ、ありがとう//////」
ふふ、里香ってば更衣室では自信有り気だったのに、いざ言われるまで心配だったんだね。
ホッとして喜んでるのが分かるな~。
「えっと、可愛いよ、水着姿///」
「ありがとう、烈くん//////♪」
うんうん、珪子ちゃんもさっきまでの乱心っぷりが嘘みたいだね。
「スグ…」
「な、なに…?」
「まぁ、練習だからスク水ってのは分かるっすけど……正直、色んな意味で反則だと思うんすよ…///
その、破壊力抜群っす…///」
「~~~っ/////////!? と、刻くんの、えっち…//////」
一方、1人だけスクール水着で不安そうだった直葉ちゃんだけど、刻君の言葉で一気に真っ赤になりました。
SAOで1度だけスクール水着を着たけど、また着たら和人くん喜んでくれるかな~///?
「当たり前だ!」
「ん、なにがだい?」
「いや、なんとなく言わなければいけないような気がしただけだ…」
(作者:同時刻、カウンセリング室の彼氏がそう叫んだとかw)
「でだ、1つだけ疑問に思ったんだけどさ、聞いてもいいか?」
「どうしたの?」
里香と珪子ちゃんがテンションが上がったせいでプールに飛び込もうとしたけれど、
志郎君と烈弥君が2人を捕まえてから準備運動をさせています。勿論、わたしと直葉ちゃんもしてるよ。
それで準備運動が終わって、いざプールに入ろうとしたところで志郎君が聞いてきました。
「今日は直葉ちゃんが泳げるようになるためにみんなで集まったんだよな?」
「うん、そうだね」
「でだ…当然、俺たち3人はそういうつもりで来たから学校指定の水着なわけだよ」
「そういえばそうね」
「ということはだ……里香、明日奈、珪子ちゃん」
学校指定の男性用水着の志郎君と烈弥君と刻君、同じく学校指定の女性用水着である直葉ちゃん、
一方の私用水着のわたしと里香と珪子ちゃん……志郎君が放った言葉は…。
「……3人とも、期待してるw?」
「「「……………/////////!」」」
「「「あ、逃げた…」」」
――ダッ!ザップーンッ!!!
わたしと里香と珪子ちゃんは顔全部が赤くなるのを感じて、すぐさまプールの中に飛び込みました。
直葉ちゃん、刻君、烈弥君の3人が何か言ったけど、聞こえない聞こえない。
「「「(………すいません、実は期待していました/////////)」」」
プールの中で揃って同じ考えなのはよく分かって、このあとプールの中から出たのは息が苦しくなった時でした///
珍騒動から少しして練習を始めた。
まずは水に慣れることから始めないといけないから、最初は顔だけをつけるところから初めて、
いまはステップを進めてわたしが手を掴んで移動し、直葉ちゃんがバタ足をしながら顔を水につける段階です。
ぱしゃぱしゃとバタ足をしている直葉ちゃんの両手をわたしは掴んで後ろに下がり、
刻君がその直葉ちゃんの後ろをゆっくりと進んでいるのはもしもの時のため。
里香たちもプールに入りながらゆったりとし、だけど直葉ちゃんのことを見守っています。
「どうかな、少しは水に慣れた?」
「はい、顔をつけるだけならなんとか……まだ目は開けられないですけど」
「大丈夫。ゆっくり、少しずつ慣れていけばいいからね。それじゃあ、そろそろ休憩にしよっか」
あんまり焦っちゃうと失敗しちゃうし、水の中だからそれは危険で大変だから、焦らないようにするのが一番良い。
わたしたち女の子はプールから上がって水に足だけをつけて談笑します。
男の子たちはどうやら競争をするみたいで、飛び込み台に上ると志郎君の「スタート!」の言葉と同時に飛び込んでいきました。
3人とも凄く早いです…。
「そういえば、前から気になってたんですけど……みなさん、どうやってお兄ちゃんたちと知り合ったんですか?
あと、馴れ初めとかも…」
直葉ちゃんの言葉にそういえばと思う。
わたしたちはそれぞれ恋人との出会いや馴れ初めを詳しく話した事がなかったことに気付いた。
特に直葉ちゃんはそれが顕著だから、これは良い機会かもしれない。
3人で視線を合わせると最初は珪子ちゃんが話し始めました。
「あたしは、モンスターに襲われて、命が危なかったところを烈くん……ヴァルくんに助けてもらいました…」
そこから始まった彼女の別れと出会いの物語。
珪子ちゃんの相棒である小竜のテイムモンスター、ピナ。
あの子との1度目の別れが烈弥君との出会いの軌跡になって、ピナの蘇生のために訪れた第47層のフローリア、
オレンジギルド『タイタンズハンド』の襲撃とそれを迎撃した『黒衣衆』であるヴァル君。
彼の優しさにピナと一緒に救われて、それからキリトくんたちに出会って、ヴァル君と過ごしていく内に彼を好きになった。
そして想いを伝えた時、断られたことで悲しみにくれたらしい……だけど…。
「あの時、烈くんに断られて、すごく悲しくて、そこから逃げ出したんです…。
でもあたし、いまもですけどその時はもっと子供で、バカだったんです…。
烈くんたちが、苦しい思いをしていることに気付いてなくて、知ろうともしてなかったんです…」
ヴァルくんと離れてしまったことで攫われてしまって、犯人は脱走した『タイタンズハンド』。
彼らはシリカちゃんを餌にしてヴァル君を誘き出して殺そうとしたけれど、それが彼の逆鱗に触れてしまった。
――我、狩りし者を狩る者、『
そして、ギルド『タイタンズハンド』はヴァル君の手によってその命を散らした…。
「確かに
だけど、少なくとも、あの時あたしが捕まってなければ、あの人たちも生きて捕まることができたはずなんです。
結局、あの人たちを死なせてしまったのも、彼に殺させてしまったのも、あたしの責任なんです…」
「珪子ちゃん…」
できたのなら、生きて罪を償ってほしかったはずだと思う。
それでも、彼や和人くんたちが手を汚さなければならなかったのは、そうせざるを得なかったから。
「だから、少しでも一緒に背負いたいんです。
烈くんの傷を少しでも癒して、彼が背負うものを分けてもらって、一緒に進んでいけたらなって、そう思うんです」
優しく、だけど強い意思を感じさせながら言った珪子ちゃん、彼女は強いなと思った。
まだ中学3年生なのにこんなにしっかりしているなんて、SAOに閉じ込められた時のわたしと比べると余計に凄いと感じる。
わたしも珪子ちゃんを見習わないとね。
「あたしは珪子と違ってロマンチックじゃなかったけど、それでも良い出会いだったのは確かね」
里香が語る志郎君との出会いはわたしも良く知るもの。
当時、キリトくんたちと共に攻略組として行動していたルナリオ君は彼ら専属の鍛冶師としてだけでなく、
通常の鍛冶師と細工師としても活動していたために多忙を極めていて、
そんな時にわたしはキリトくんから腕の良い鍛冶師を紹介してくれと頼まれた。
そしてわたしはリズのことを話して、キリトくんとハクヤ君はオーダーメイドをするためにリズの店を訪れた。
それからわたしも含めて4人で鉱石を取りに行って、砕けた大穴に落ちちゃったリズを助けに飛び込んだハクヤ君。
リズはその時にハクヤ君の人としての温かさに触れて、勇猛果敢に戦う姿を目の当たりにして、そんな彼を好きになったらしい。
「恋は突然やってくるって言葉、SAOをやる前のあたしは結構真面目だったから信じてなかったけど、
まさか自分が一目惚れするなんて思わなかったわよ…。
だけど、あたしも珪子と同じで、志郎のことを何にも知らなかった…。
あたしは、ホントの命のやり取りを知った気でいたのよ…」
少しずつ距離を縮めていたリズとハクヤ君の前に立ち塞がったのが、第76層での出来事。
キリトくん、ハクヤ君、ハジメ君、カノンさん、以上の4人が迷宮内で特殊な罠に掛かり、行方不明になったんだよね。
あの時はわたしも混乱して、リズに怒られちゃったんだっけ。
それで4人の居場所がわかって、その場所が76層のフロアボスの部屋で、リズも連れて攻略組で参戦、
ハクヤ君はHPが0になったけどクラインさんが持っていた蘇生アイテムの《還魂の聖晶石》がなんとか間に合って、
彼は一命を取り留めたんだよね…。
「あんな思いはもう二度とゴメンよ…。だけど、志郎も和人たちも、それに明日奈だって、
ずっと一番危険な場所で戦っていたんだって、あのボス戦に参加して、ようやく実感できた…。
それに、志郎たちが抱えてた苦しみも、知ることができた…。
だからさ、あたしも珪子とおんなじで、アイツの背負ってるものを分かち合おうって、思えたのよ」
「里香…」
そう、リズベットという少女も、一度は大切な人を失いかけた。
幸い間に合ったけどもう少し遅れていたら間に合わなかったかもしれない。
だから里香は、和人くんが目覚めなかった時にわたしを何度も励ましてくれた。
わたしも、和人くんが目の前で死んじゃったと思ったから…。
「里香さん珪子ちゃんも、辛い目にあったんですね…」
「皮肉にも、その辛い経験が結ばれた理由なのよね~…」
「そうですね…」
「ほらほら、3人とも。暗くなるのはここまでだよ。あんまり湿っぽくなっちゃうと気付かれちゃうわよ、男の子たちに」
直葉ちゃんの言葉に里香は本当に皮肉そうに言って、珪子ちゃんも静かに頷いた。わたしは空気を変えようとそう言う。
見てみれば男の子は3人ともプールにぷかぷかと浮いている…器用だな~。
「それじゃ、お昼までもう少しだから、お腹を空かせるために頑張りましょ」
「「「は~い」」」
休憩が終わったわたしたちはもう一度プールに入って直葉ちゃんの練習を再開しました。
男の子たちはそのまま休憩に入ると言ってプールから上がりました。
「志郎君、わたしたちの話し聞いてた?」
「ん? どんな?」
「ううん、聞こえてないならいいよ」
一応彼にそう聞いておいたけど、それなら良かった…。
「……実は全部聞こえてたんだけどな…」
「あの話を聞いたら、僕たちももっと頑張らないといけないって思いました」
「同感っすね…ま、次はボクの番っすかね~?」
しばらく練習を重ねてから丁度良い時間で区切りをつけて、わたしたちはお昼を取ることにしました。
わたしと直葉ちゃんがたくさん作ってきて、里香と珪子ちゃんもそれなりに作ってきてます。
「「「「「「「いただきま~す!」」」」」」」
お弁当にお箸を伸ばし、わたしの作ってきたサンドイッチに手を伸ばしたりして次々に食べ進めます。
男の子たちはよく食べるから、多めに作ってきて正解だったかも。
「どう///? 美味しい///?」
「うん、美味しい。僕の好きな味付けだよ」
「ん! これ美味しいっすよ!」
「えへへ~、結構自信作なんだ~///」
「あ~ん///」
「あむ、んぐんぐ……うん、美味い」
珪子ちゃんと烈弥君、刻君と直葉ちゃん、里香と志郎君……はぁ、わたしも和人くんが居ればな~…。
その時、わたしの携帯端末にメールが届きました、和人くんからだね。
『すまないけど、時間が掛かるからみんなで先に食べててくれ』か、はぁ~…。
「どしたのよ、明日奈?」
「和人くん、時間かかるんだって…」
「あれま。それならアイツの分はあたしが「里香、多分次はないと思うぞ」はい、ごめんなさい」
落ち込むわたしに里香が聞いてきたけど、また自爆しそうになったね…志郎君に咎められたけど。
とりあえず、和人くんの分を適度に取って置いてわたしたちは食べ進めることになった。
そんな中、直葉ちゃんがさっきの話のことで気になったのか、わたしに訊ねてきました。
「そういえば、明日奈さんとお兄ちゃんってどうやって知り合ったんですか?
前はそこまで詳しく聞かなかったんですけど、いまは知りたいな~って思って」
「あたしも気になるわね」
「あたしもです!」
「明日奈視点か、そりゃ気になるな」
「和人さんからはそれとなく聞いてましたけど、違った視点も気になりますね」
「ぜひとも聞かせてもらいたいっすね」
「え、えぇ~!?」
直葉ちゃんの疑問は尤もだけど、他のみんなもノリノリだなんて~……というか、
男の子たちは和人くんから聞いてるみたいな言い方だけど…。
「そんなに面白い話しじゃないからね? えっと、わたしが和人くんと出会ったのは…」
―明日奈語り開始
わたしが和人くんと出会ったのはアインクラッドの攻略が39層まで終わって、40層の攻略が進んでいる時のことだったの。
38層にそこそこの高さまである迷宮があって、わたしが所属してたギルド『血盟騎士団』、
それと並んでトップギルドだった『聖竜連合』のパーティーの1つが全滅した事があったの。
原因はその迷宮にいるダンジョンボスで、未踏破の場所だったから警戒はしていたと思うんだけど、
様子見で戦った結果が全滅なんだと思うの。
――そういや、そんなこともあったな…
うん。それでね、その時に血盟騎士団と聖竜連合が手を組んで、一部の攻略組の有志を募って討伐に向かったんだ。
それで、いざボスの居る広間に入ってみると、たった1人のプレイヤーがボスを相手に圧倒していたの。
――フロアボスじゃないとはいえボスを!?
――まさか、そのプレイヤーって…
ふふ、里香と珪子ちゃんの考えてるとおり、和人くん…ううん、キリトくんだったよ。
1人で、30体近いMobを倒して、そのうえでボスまで翻弄して、結局そのまま1人で倒しちゃったんだよ。
――お、お兄ちゃんてば、その時から無茶苦茶だったんだ…
――その話しをアイツから聞いた時はマジで噴いたな(笑)
――溜まりに溜まった鬱憤をダンジョンボスにぶつけたんっすよね(笑)
――盛大な八つ当たりだったみたいですから(笑)
そうだね~。それから彼が戦い終わったら、団長と話してて、わたしはそれを見ていただけだった…。
当時はわたしもまだ正式に副団長になってなくて、それでもレベルも実力も攻略組に通用するからって、
騎士団に入ってたんだけど……その時のわたしは、ただキリトくんの事が怖かったって思ってたの。
――明日奈(さん)が和人(さん・お兄ちゃん)のことを、怖いって!?×3
うん。だって、ボスを相手に1人で圧倒して、蹂躙してたんだよ?
怖いって思っても仕方がなくて、そのことを和人くんに話したら「気にしてないし、当然だから」って、ね。
それで、そのあとはわたしは騎士団の副団長になって、攻略会議とかも任されるようになって、
キリトくんとは何回も言い合ったりしたんだよ~。
――そういや、良く口論してたよな~
――和人さんは強く静かに、明日奈さんは強く激しく…
――攻略会議での名物になってたっすよね
――へぇ~、意外ですね~。お兄ちゃんと明日奈さんが口論なんて…
ふふ、いまのわたしたちを見たら考えられないよね?「「「「「「うんうん」」」」」」……ま、まぁ、
わたしと和人くんの出会いはこんな感じかな~。
―明日奈語り終了
区切りをつけて話し終わったわたしは用意してきた紅茶を飲んで一息を吐いた。
「人に歴史あり、ですね…」
直葉ちゃんの言葉に小さく頷く。
あんな小さな出会いでも、わたしも和人くんも覚えていて、それがきっかけになったと言えばそうなのかもしれない。
「それで~? あんたがアイツのことを好きになった出来事を、あたしたちは詳しく知りたいんだ・け・ど~?」
「うっ、誤魔化せなかった…」
里香は誤魔化されてくれなかった。珪子ちゃんと直葉ちゃんは流されそうだったのに…。
「そうね……59層で『圏内事件』って呼ばれる出来事があって、わたしと彼はその事件の捜査を行ったの。
名前はアレだけど、幸い事件って呼ばれるほどのものじゃなくて、
それを起こした人たちにはキリトくんが厳重注意をして済ませたの。
その捜査の時に彼と一緒に行動して、普段わたしが知っていたのは上辺だけの、たった少しの彼だったことに気づいてね。
彼のことをもっと知りたいって思って、そしたら、いつの間にか、好きになっちゃってたの…///」
「ほ~ほ~、そんな事情があったのですか~(ニヤニヤ)」
「そういうのも良いですね~♪」
「明日奈さん、可愛いです」
うぅ、里香も珪子ちゃんも直葉ちゃんも、からかわないでよ~/// 男の子たちは微笑ましそうに頷いてるし///
さらに彼からの猛アタック、それに気付いてなかったわたしの猛アタックも話して、より一層からかわれました//////
か、和人くんが居ればこんなことには…///
「あの、それじゃあ2人はどうやって恋人同士になったんですか?」
直葉ちゃんの言葉にわたしは自分の表情が固まっていないかが気になった。
だってあの出来事は、わたしも全てを知る出来事だったのだから…。
「……わたしのギルド脱退のためのキリトくんと団長の決闘のあと、1日だけ彼は騎士団の訓練に参加することになったわ。
その時、前にキリトくんといざこざを起こしたプレイヤーが同行していて、
胸騒ぎがしたわたしはフレンド登録の追跡機能を使ったの。
そしたらキリトくん以外の1人の反応が消えていて、移動中にもう1人も消えて、
間に合ったと思ったら危ないところだった…。
結局、そのプレイヤーを殺せなかったわたしが危なくなって、わたしの代わりにキリトくんがそいつを殺して、
わたしも彼の全てを知ることになった…」
――我、狩りし者を狩る者、『
「そのあとは、お互いに気持ちを伝えあって、結婚することになったの…」
「「「「「「………」」」」」」
自然に沈黙が流れた…さすがに仕方がないよね、『黒衣衆』のみんな以外に詳しく話したのはこれが初めてだし。
男の子たちは知っていたとはいえ悲痛な表情をしてるし、
里香と珪子ちゃんも翳りを落として、直葉ちゃんは申し訳なさそうな顔をしちゃった。
「もう大丈夫だから、直葉ちゃんも…ね?」
「はい……ひゃっ!? ほひふん、ふぁふふふほ!?(ときくん、なにするの!?)」
「んな暗い顔するからっすよ。そういう顔は今しちゃダメっす」
直葉ちゃんの柔らかそうなほっぺたを引っ張る刻君。その様子にわたしたちに笑みが零れました。
「ははは、刻に気遣われちまったな」
「ですね」
志郎君と烈弥君も微笑を浮かべています。
「でも、そんな明日奈さんと和人さんだからこそ、ユイちゃんも懐いたんですね」
「それもそうね」
「我が家の自慢の娘ですよ~!」
ここにいるみんなは勿論、わたしの仲間たちはユイちゃんの出自は既に説明している。
みんなも疑問に思ってたし、知っておいてほしかったから。
「アンタたち、10代で立派な親バカよね」
「褒め言葉ありがとう♪」
親バカなんて言葉、わたしと和人くんには褒め言葉にしかならないもん♪
「さてと、飯も食い終わったし、休憩もしたから……そろそろ再開しますか」
「そうね。1時間も経ったことだし」
「泳げるようになって、お兄ちゃんを驚かせよっと」
「その意気っすよ、スグ」
志郎君の言葉に賛成する里香、直葉ちゃんはやる気満々で刻君も十分な気概。
「僕たちも、食後の運動でまた少し泳がないとね」
「そうだね」
「それじゃあ、もう一度準備運動をして、始めましょう」
烈弥君と珪子ちゃんの意気込みも十分、わたしも頑張ろうっと。
さっきの復習をしてから息継ぎの練習をして、それが出来るようになってから今度は
時間を重ねるごとに上達していって、ついには顔を付けて息継ぎも出来るようになった。
「25m、泳げるようになったね」
「直葉ちゃん運動神経良いから」
「これならすぐにボードも必要なくなるかもしれないわね」
「ありがとうございます!」
わたし、珪子ちゃん、里香の言葉に喜ぶ直葉ちゃん。さて、男の子たちの評価は…。
「ん、隣で見た感じは姿勢もバタ足も綺麗っすから大丈夫っすよ」
「こっちから見ても問題なしです」
「こっち側もOKだ」
隣を泳いでいた刻君、プールの上から左右別れて様子を見ていた烈弥君と志郎君、3人の評価もバッチリです。
「なら、次のステップに移るね」
ここまでくれば疑似クロールの練習をすればいい。
スイミングボードを使いつつ、両手を交互に水を掻くように回して息継ぎをする、それの繰り返し。
その説明をして練習を再開しました。
疑似クロールもすぐに出来るようになって、ついに最終ステップであるクロールの練習になりました。
直葉ちゃんの傍には刻君がついて、偶に失敗しそうになる彼女を即座に助けます。
そして、しばらくすると、彼女は泳ぐ距離を少しずつ伸ばしていきました。
3m、5m、10m、15m、20mと……記録を伸ばす度にわたしたちは喜びます。
そして、最後の目標、25mに直葉ちゃんが挑戦します。
明日奈Side Out
To be continued……
あとがき
珪子の暴走に始まり、明日奈たちSAO女性陣が馴れ初めなどの過去を話し、ちょっとばかりイチャコラした中編でしたw
直葉が刻との馴れ初めを話していないのは仲間達には周知のことだからと言っておきます。
それと明日奈と和人、というよりはアスナとキリトの出会いが原作と違うのは『黒戦』を読んでいる人からすれば、
既に今更だと思いますが復習的な意味合いで書かせていただきました。
詳しい内容はまた追々書くと思いますのでその時にでも・・・。
次回はついに海底クエストの後編、更新は日曜になります。
それでは・・・。
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前回の続きで『ExtraEdition』の中編になります。
和人が菊岡と話している一方、プールでの様子を明日奈視点で書いてみました。
どうぞ・・・。