前回までのあらすじ
荒野に怪しい男が降り立った
閃光弾は小さいお子様の手の届かない所に保管してください
山賊志終了のお知らせ
「もう一度、確認するんだが・・・此処は荊州?」
先ほどからこの問いかけは三度目である。彼女は律儀に三度も同じ答えを返してくれた。
(ケイシュウ!?ケイシュウナンデ?)
間違いなくそれは日本ではなく中国、さらに言うなら古い時代の地名であり
若い頃に読んだ漫画でのうろ覚えの知識しかない彼の頭の中では
(あー、荊州って何処だっけ?確かりゅうなんとかさんとかいう地味なおっさんが納めてた土地だっけか?)
程度の知識しかない。
「それで、君の名前はなんだったっけ?」
落ち着こう、そう思い・・・名前をもう一度問いただす。
「はい、私は性を劉、名を度と申します」
目の前の女性はふんわりとした笑顔で、そう答える。
年の割りに子供の様に笑うソレはかわいいと思うが、其処は問題じゃない。
「それは冗談じゃないんだよな?」
「冗談なんていいませんよ~、えーと、高様とお呼びすればいいんでしょうか?」
思わず頭を抱えたくなる。
仁は劉度と言う名前にも心辺りがあった。確か何処かの太守で劉備に負けたはずだ。
ただ、彼の知識の中の劉度は男性であり、目の前の笑顔が似合う女性ではない。
改めて、彼女を見てみる
(さっきも思ったが美人の類だ…ちょっとのんびりした口調も慣れれば悪くない、だがしかし)
目線を下に向ける
(改めてみると、おかしいだろ、アレ!メロン?メロンが詰まってるの!?)
彼女の胸元を見る
其処にはご立派過ぎる二つの果実がこれでもかと自己主張をしていた
今は少し肌蹴ている為、その健康的な肌がとても艶かしい
(盗賊に同意するわけじゃないが、そりゃ襲われる訳だわ・・・)
「・・・」
思わず凝視してしまう。しょうがないじゃない、だって男だもの。
「む~、話を聞いていますか?高様?」
どうやら話を聞いてもらえてないと勘違いした劉度がさらに近寄ってくる。
当然の事ながら、二つの果実も近寄ってくる。
「おおっ!?」
思わずその迫力に一歩下がる仁。
「行き成りどうしたんですか高様?」
「ん・・・いや、何―ちょっと人生の無常について考えていただけだ」
とりあえず、ごまかす。
さすがに「おっぱいがエロかったんで凝視してました」などは言えない
男が二つの双丘に夢を求めるのは本能だが、それを表に出してしまっては紳士失格である。
「で、なんだっけ?」
「やっぱり聞いてませんでしたか・・・高様は高が姓でいいんですか?」
「いや、俺は姓が高柳 名が仁だ」
「珍しいお名前ですねぇ」
ふむふむと此方を覗き込みながら劉度が話しかけてくる
「珍しいのか?」
「ええ、とても…ところで助けて頂いたお礼に真名を預けようと思うのですが」
「まな?」
「真奈を知らないのですかぁ?」
何を言ってるんだこの人は、そんな顔をされる。
「あ、あぁ・・・それは常識なのか?」
「常識ですよぉ、私が知る限り全ての人には真名があります」
「そうなのか」
「そうですよぉ・・・真名の無い貴方は一体何処からきたんですかぁ?」
「ん?俺が何処から来たって?うーむ」
そういって空を見上げる。
さすがに「気がついたら、荒野にいました」なんて言えば頭を疑われるだろう。
何かいい案はないか、仁はそう考え…
「東にある島かな?」
「なんで疑問系なんですかぁ?」
「ま、まぁ、いいだろ…で、真名ってのは結局なんなんだ?」
”納得はできない”そんな顔の劉度へ、話題を変える為に先ほど聞いた「真名」について聞いてみる
「真名とは神聖な名であって、本人の許しなくそれを呼べば殺されても文句は言えない名前です~」
「家族や信頼できる人にしか教えないのが一般的ですねぇ」
思わず、仁の頬が引きつる
(何、その初見殺し・・・怖い)
「つまり、なんだ・・・盗賊から助けた俺は劉さん的には信用できると?」
「はい~、貴方が乱入してこなかったら私は其処の盗賊たちに『自主規制』な事や<検閲削除>な目にあってましたので~」
「ぶっ」
思わず噴出す仁。
想像してみほしい、目の前の美女が急に『禁則事項です』や【にゃんぱす~】な事を言い出したらどういう顔になるか。
仁の今の表情はまさにそれであった。
「いや、そりゃそうだがっ!?物事にはオブラートに包んだほうがいい事があってだな?」
「汚腐裸亜都?なんでしょう?」
「あー、まぁ・・・女性たるものみだりにそういう事を口にするもんじゃないってことさね」
困ったように頬をかく、どうやら洋風な言葉は本格的に通じないようだ。
(どーも、俺の感覚と微妙にずれるんだよな・・・此処が中国だとすると、大陸だから解放的なのか?)
「おかしな事を言う人ですね、高柳様は」
「ま、まぁ、細かい事は気にするな。後、盗賊の件は別にかまわねえよ、俺が好きでやったことだしな」
そういって、手を振る。
「では、私が真名を預けるのも私の好きでやることですよね、私の真名は『梅華(メイファ)』と申します」
「あのな劉さん・・・」
「梅華です」
「いや、そうじゃなくてな・・・」
「梅華です」
彼女の顔が一気に暗くなる。
なんというか、凄く罪悪感が沸く表情である。
雨の日のダンボールで捨てられた猫がこっちを見ている、そんな顔。
(あ~、女のこういう顔に弱いってのはアレだ…もう俺の性だな、うん、仕方ない)
そう思い、意を決すると、彼女の肩に手を置いて
「・・・あー、そのなんだ梅華さんや」
「はい、なんでしょう高柳様」
とたんに笑顔になる劉度
その笑顔に見惚れ、紅くなった顔を誤魔化すように背け、仁はこう切り出す
「俺も仁で構わんよ。あいにくと真名なんて高尚な物は俺には無いんでな。それと、様付けはやめてくれ、むず痒くてしょうがない」
「では、仁さんで構いませんかぁ?」
「ああ。しかし、なんだ・・・そんなに真名が預けられたことが嬉しかったのか?」
「はい~、駄目だったらぁ、泣いてしまう所でした~」
「それほどかよ!?」
「だって~、意味も無く真名を受け取ってもらえないって事は~、私は真名を受け取るに値しない人物ってことじゃないですかぁ?」
「…あ~、そういう意味に取られるのか、わーった、そら俺が悪かったわ」
カルチャーショック再び。
真名を預ける事が大事な事ならば、それを断られるのも大事(おおごと)なのね。
「はぁ…この年になって学ぶことばかりだわ、おじさん」
反省し、ため息をつく。
タバコが吸いたくなるが、此処が昔の中国なら手に入れるのも難儀しそうなので我慢しておく。
そうでなくても、女性の前ではなるべく吸わない、そんな仁特有の俺ルールもあった。
「おじさん?仁殿はおいくつなのでしょう?」
「確か今年で30だったかな?」
「でしたら私と同い年じゃないですかぁ?」
「え?」
(いや、待て・・・それはありえないだろ、どう見ても20代だぞ、梅華は…下手すれば10代でも通じるんじゃないか?)
「ですから、私も今年で30になるんですよ、おそろいですね」
「は、はぁ・・・」
「でも、仁さんがおじさんならぁ・・・私はおばさんなのでしょうか?」
「い、いや・・・俺が勘違いするくらい梅華は若く見える、大丈夫だ!」
もう片方の手も肩に置き、これでもかと力説する。
(大げさだろ?なんて思う馬鹿は女性の年齢に対する意識を甘く見すぎだ!)
「えへへ~、嬉しいですねぇ」
顔を赤らめ、身をくねらせる劉度。
そうすることでぽよんぽよよんと彼女の二つの果実も揺れるわけだが、どうやら気にしてないようだ。
「あー、嬉しがってる所悪いんだが、色々聞いても構わないか?」
「はい?なんでしょう?」
「今は西暦何年で・・・あー、もしかして皇帝なんていたりするのか?」
「西暦というのは分かりませんが、今の皇帝は劉宏様ですね」
(嫌な予感ってのは当たるもんだな・・・俺の記憶が間違ってなけりゃ、三国志の時代だわ)
「そうか・・・」
「何か困り事でしょうかぁ?」
その答えを聞いて暗い顔になる仁を心配してか、さらに顔を近づける梅華。
「顔が、顔が近いっ・・・胸が当たるッ」
他所から見れば女が男に言い寄ってるようにしか見えない状況。
さすがに、それは不味いと思い肩に置いた手を離そうとした、その時であった。
「きさまぁぁぁぁぁぁ!劉度様から手をはなせえええええええええええええ!」
大声を上げ、道を爆走する
金髪、碧眼の・・・斧を持った少女が見えてきたのは。
続く
あとがき
今日も異常に短い気がする
ある程度溜めてから書いた方がいいのかな?
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いや、区切るほど書いてないって話かもしれないな
何はともあれ
新年明けましておめでとう御座います
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