第四話 ボーイ・ミーツ・ガール
ズキズキと体中に走る鈍い痛みでナンブは目を覚ます。
ユーノを転送させた後、どうやら自分も転送されたみたいだ。生憎ノ―ダメージとはいかないか。
あの俺達を襲った時の雷のダメージ。それとも中途半端に転送された反動でなのか。体中が痛い。その痛みに悲鳴を上げることも体を動かすことも出来ない。
「…つー。…あー、『鑑定』」
体はだるいが思考だけははっきりしているので、自分に鑑定の魔法をかける。
自分自身に青白い光が包み込むと同時に頭の中に体の状態が頭の中に流れ込んでくる。
内臓に損傷。致命傷だけは受けてない。だけど、体中に怪我があり骨にもひびが入っている。
あと、状態異常に麻痺。レベル3。
これは体中の感覚が鈍くなり、動けなくなるほどの麻痺だ。
「…体中のダメージ。…麻痺」
以前調合した【特殊回復薬:麻痺】のポーション。それを試験管に詰めて服の裏側にしまいこんでいた。それが転送された衝撃で試験管が割れて自分に振りかかったんだろう。
それが傷ついたダメージを癒し、麻痺の効果のおかげで今は鈍い痛みだけで済んでいた。麻痺が無かったらショック死していたかも。
「あー、いてぇー。…意識がはっきりしてくると痛みもはっきりとしてきた」
麻痺の効果が切れていくと共に思考がはっきりしてくる。同時に痛みも…。
何とか体が動かせるようにまで回復するとズキズキと体が。まるで足が攣る予兆のように痛みの影が迫ってくる。
「あー、ポーションは残り三本か」
二十本近くを服の裏に小指サイズの試験がほとんど割れていた。
中身がピンク色の溶液が詰まった試験管を一本取り出す。これを飲むと確実に意識を失うだろう。
見知らぬ土地。見知らぬ森の中。こんな場所で意識を失えば野生動物に襲われて死んでしまう。
「…あー、周囲の草木を『鑑定』」
自分を中心に半径三メートルほどに存在している草木に青白い光が灯る。
人の手入れした後があり、大型の動物が踏み荒らしたような草木も無い。
どうやらここは大型の生物はおらず人の出入りのしている森の中という妙な所らしい。
あー、肉食の小型動物がいない事を祈ってもう一本いっとくか。
気絶している間にここを出入りしている人間に保護してくれることを祈りながら。
くいっとポーションを飲み干すと同時に痛みがすとんと体の奥に引っ込むと同時に俺の意識も落ちていく。
「誰か、助けて…」
くれますように。と、言い切る前に俺は再び倒れ伏した
その光景を見ている少女に気づかずに…。
と、お風呂から逃げ出した子猫の後を追っていた私は、あちこち焼け焦げた服を着た少年を敷地内にある森の中で見つけた。
少年の体が青白く、次に彼の周辺にある草木を包む青白い光。
その後に少年は何かを口にすると再び仰向けに倒れた。
本当ならこの不思議な少年は自分の使用人であるメイドのファリンやノエルにすぐに知らせるべきだった。だけど、倒れる際に彼は確かに「誰か、助けて」と。
だから…。
「お、お、お嬢様!どうしたんですか!ち、血だらけじゃないですか!」
「…ファリン。この人を助けてあげて」
私は自分の家の敷地内にある森の中で見つけた少年を背負い、自分の屋敷に運び込んだ。
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第四話 ボーイ・ミーツ・ガール