第三話 あの味を僕は忘れない。
「…うう」
ナンブとユーノが管理局にジュエルシードを運びに行ったその三日後。
着ている服のあちこちに焦げ跡をつけたユーノが転送されていた。
「ナンブ!ユーノに何をした!」
「「「間髪入れず兄(ナンブ)の所為?!」」」
転送されてきたユーノの状態を見たユーノ母の一言にその場で発した言葉に、スクライアの一族は思わずツッコミを入れる。
「い、いや。母さん。兄さんがやったんじゃなくて、転移中の時空航行船にいきなり雷みたいのが船に当たって、兄さんが僕を先に転送したんだ」
「雷?高次元空間でもない限りそんなことはないはずだが?」
「ううん。兄さんと僕は通常の次元空間を転移していたんだ。そこで、僕を緊急転送させたんだ」
だが、ユーノが転送される最後に見た光景は、突如飛来した雷によって壊された次群航行船。そして、ジュエルシードと共に次元空間に投げ飛ばされているナンブの姿だった。
「じゃあ、ナンブは…」
「ジュエルシードと共に次元空間に…」
魔力は持っていたとしても『鑑定』しかできないナンブはいまもその次元空間に残されている。
そう考えているスクライア一族。だが、ユーノはそれを否定する言葉を言う。
「それはない。と、思うよ。だって兄さんが僕を転送させる際に兄さんにも転送されるための魔方陣が浮かび上がっていたから…。でも…」
転送された。と、言いきることは出来ない。
だけど、ユーノは信じている。自分の兄がこんな事で死ぬとは思えない。
どこかドジだが、自分が楽するために努力するという変な行動力がある兄が。ナンブが死ぬはずがないと。
「…兄さん」
ユーノは思い出す。
ある日、自分が広大な森の中で一人遭難した時。
『鑑定』のレアスキルを使って森中をくまなく探索して自分を見つけてくれた兄。
その時に兄が採集したキノコを串焼きにして食べた。
あの味を僕は忘れない。
『ちゃんと毒消し草のサラダも食えよ』
あの毒キノコの味を僕は忘れない。
絶対にだ!
兄の安全を祈っていたユーノだが、いつの間にか『いつかぶん殴ってやる』という、怒りに変わっていた。
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第三話 あの味を僕は忘れない。