No.627849

働きたくない錬金術師

たかBさん

第五話 禁則事項です

2013-10-13 22:14:34 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3192   閲覧ユーザー数:2856

 第五話 禁則事項です

 

 

 

 敷地内で倒れていた男の子を屋敷で保護して三時間後。

 男の子は目を覚ますと辺りをキョロキョロと見渡して私達を見つけると警戒していたが、怯えないでいいよと。日本語で思わず語りかけると、そうか。の一言で本当に警戒心を解いた。

 綺麗な金髪だったから日本語じゃ通じないと思っていたがちゃんと通じてほっとしたすずかとファリン。

 ちょっと拍子抜けした。

 彼はナンブと言う男の子ですずかよりも一つ年上らしい。どうしてあんなところにいたのかと聴こうとしたらきゅーっ、と男の子のお腹が鳴る。

 どうやらお腹を空かせているらしく、彼が寝ている間に帰ってきたお姉ちゃんの付き人。メイドのノエルがシチューを持ってきた。

 すずか達とシチューを見比べながらもシチューを一口食べたナンブはばくばくと食べ始める。

 その勢いはシチューを盛っている皿も食べそうな勢いだった。

 それに苦笑したファリンはこう言った。

 

 「まだありますから、遠慮せずにどんどん食べてくださいね」

 

 「すぐにかわりをもってこい」

 

 ばきっ。

 ノエルのパンチがナンブの顔にめり込んだのはすぐその後だった。

 

 

 TAKE2

 

 「すいません。自分調子のっていました」

 

 「いえ、こちらこそすぐに手を上げてしまい申し訳ございませんでした」

 

 「まったくだ」

 

 ごっ。

 

 

 TAKE3

 

 正統派メイドに二回ほど殴られたナンブは寝かされているベッドの上で呻きながらも3杯目のシチューのおかわりを貰う事にしている。

 怪我しているところを助けてもらっていながらもふてぶてしい態度でシチューを要求しているナンブは図太かった。

 

 「おかわり!」

 

 「ナンブ君。たくさん食べるね」

 

 元気よく四杯目のシチューを要求するナンブに彼を屋敷に運び込んだ少女。すずかは呆れ混じりに驚いていた。

 起きたばかりでよくここまで食べられるものだと。

 

 「食える時に喰うのがスクライアの教えだからな。牛の肉なんかいつ食えるか分からない」

 

 「え、と。いつもはどんなお肉を食べているの?」

 

 「虫」

 

 「…わあ」

 

 「それに、美人さんがよそってくれた飯だからな」

 

 ちなみに現在シチューをよそっているのはすずかの姉の使用人のノエル。持前(?)のドジで一度盛大にベッドのシーツに零した。

 それ以降はファリンに代わって、ノエルがシチューをよそっている。

 

 「ありがとうございます」

 

 「あら、まだ小さいにのにお世辞が言えるのね」

 

 「いや、本当にそう思っているからな。まるで」

 

 「まるで?」

 

 

 

 「エロゲーに出てくるヒロインぐらいに美人だからな」

 

 

 

 メメタァ!

 

 

 TAKE4

 

 それは禁則事項ですと言わんばかりに忍からの鉄拳を受けたナンブは潰されたカエルのようにベッドにひれ伏した。

 

 「…ツェペルんだったら衝撃は俺の下にあるベッドだけに通してほしい」

 

 「ツェペルってなに?」

 

 ナンブの言葉に首をかしげるすずか。

 どうやらこの世界にJOJOは無いようだ。残念である。

 

 「吸血鬼に有効な攻撃?」

 

 その言葉にファリンとすずかが驚きの表情を見せる。

 ノエルは平静を保っているように見せてはいたが持っているシチューの水面がやや震えた。

 そんな三人を置いて家長である忍がナンブに話しかける。

 

 「…ッ。なんで疑問形なのかしら?」

 

 「マンガの話だからな。それに出てくるツェペリの旦那は俺の憧れるダンディーな紳士だ。二番目は宇宙の傭兵団団長のジェフリー艦長。こっちはワイルドでダンディーだ」

 

 「…そう」

 

 自分達の秘密を知っている。と、思わせた発言をしたナンブ。

 だが、それが漫画の話と言われて少し安心の色みせたすずか。

 それに対して忍とノエルはナンブに気付かれないように視線を鋭くした。

 

 「あ、おかわりもらっていいですか?」

 

 すでに五杯目のシチューを要求するナンブに対してすずかが忠告と言うか質問を投げかける。

 

 「ナンブ君、おかわりはいいけど何でお肉やお野菜を残してるの?全部食べた方がいいよ?野菜は嫌い?」

 

 ナンブの持っている皿には人参とジャガイモが残されていた。

 だが、残されるのは野菜だけではなく肉片もである。だが、二杯目。三杯目は残さず完食したはずだ。

 

 「別に野菜が嫌いなわけじゃないぞ」

 

 「じゃあ、なんで残しているんですか?」

 

 すずかに追従するようにファリンも言葉を投げかけるがナンブが答える。

 

 「『自白剤』の薬が混ざった食い物は喰いたくねえ」

 

 ドンッ。

 

 その言葉を聞いた瞬間にノエルはナンブを組み伏せ、忍はすずかを守るように自分の背中に回し、ファリンがすずかを抱きしめるように後ろに立った。

 

 「…どうして自白剤があるってわかったんですか?無味無臭。そのうえ、胃の中で混ざり合った時に初めて効果を発揮するはずなのに」

 

 「いくら俺でも無警戒に他人の出したものは食べねえよ」

 

 殺気だったメイドに押し倒されながらナンブはスラスラと答える。

 

 「…質問に答えてください」

 

 「悪い、『鑑定』した」

 

 「…『鑑定』?」

 

 優しい慈悲めいた表情から、怪しい者を見る目付きに変わった忍とノエル。

 少し怯えた表情を見せるすずかとファリンにナンブは飄々と答える。

 

 「俺、魔法使いなんだ。改めてよろしく。吸血鬼さんに人造人間さん」

 

 ナンブはさらりと自分の正体を忍たちに明かした。

 


 
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