装「友人たちは、どんどん先に逝ってしまいますねぇ。」
その夜、城壁の上に優男が居た。
装「堅ちゃんに騰ちゃん。どちらも逝ってしまいましたし、馬の方も寝たきりだと聞きます……。」
装は月を眺める。
その目は哀しみであり、絶望。
そして、うらやましがっているような目だった。
装「何故、僕だけなんでしょうかねぇ……。」
月は見事な満月。
雲は全くなく、星がより鮮明に見える。
装「死んでも死ねず、生きても生きれぬ。無限回廊。」
装は酒を少々口に含む。
酔っているのか、いないのか。
少々こけている頬はやや赤に染まっているが、いつもの酒を飲んだ雰囲気とはまるで違う。
装「僕がやっているのは八つ当たりもいいとこですねぇ。」
装は酒と大きく書かれている酒瓶を置き、目を閉じる。
全くの無音。
虫の声さえ聞こえず、風のそよぐ音さえ聞こえない。
装「ですが……先に騙したのはこの『物語』です。一つは絶望、二つは願望、三つは非望、四つは野望、そして五つは……どうなることやらねぇ。」
一つ、二つ、と指を折り数える。
五つ目で、ニヤリと笑う。
その顔は異常であり、正常である矛盾を孕んだ顔。
それこそ、本当の装の顔なのだろう。
それこそ、本当の装の心なのだろう。
装「覗き見……いや、覗き聞きですかねぇ。感心しませんねぇ。」
???「シシシッ、さすが装様だ。この最恐で最強な忍びを見つけるなんて。」
城壁の街側、つまり絶壁のところから、赤色で背の低いやんちゃそうな少女が、ヌッを顔を出す。
装「まさか、允恭が大陸に来るとは思いませんでしたねぇ。」
忍装束を着ている允恭と呼ばれた少女は「シシッ」と笑い、装の隣に座る。
允恭「あたいだって来るつもりは無かったさ。だけど、安康がうるさくてなぁ。」
装「……允恭は嘘が下手ですね。わざとだと思いますが。」
允恭「やっぱ、あたいは正直者だから嘘が苦手なんですわぁ。わざとですがね。」
允恭は装から酒瓶を引ったくり、口に当て飲もうとする。
允恭「ありり?空っぽじゃないっすかぁ。」
酒瓶の口を覗き込む允恭。
装「知っててやってるでしょう?やはり嘘が下手ですねぇ。」
允恭「シシッ少しはドキッとしろよぉ。間接チューってやつですぜぇ?」
装「僕は既に結婚済みですからねぇ。」
允恭「結婚した初日に、妻を島流しに……いや『物語流し』にしたのに結婚済みねぇ?今頃泣いてるぜ、きっと。」
装「どうでもいいですねぇ。この物語の流れよりもどうでもいいです。」
允恭「シシッ、全くだ。」
允恭は酒瓶を街側に放る。
装「呉を見てきたでしょう?どうでしたか?」
允恭「海産物や塩がたくさんあったなぁ。ま、あたい達のとこよりは質悪いっすけどねぇ。」
装「その呉ではありませんねぇ。」
允恭「あぁ、そっちの呉ね。今は袁術の下でヒーヒー言って働いてますぜ。」
允恭は、背中に重い物を背負って働く人の真似をする。
装「……そうですか。」
允恭「おやぁ、死んだ友人の娘たちが可哀そうなのかぁ?忘れんなよ、装様の味方はあたいたち、あたいたちの味方は装様だけだってことをよぉ。」
允恭は、光の無い狂気の混じった目で装を睨む。
允恭「忘れたのかぁ?あのガキの時をよぉ!!あいつは装様を騙したんだぜぇ?装様もさっき、非望っつたじゃねぇか!!あの時でその願いはまだ装様には、分不相応の大きな望みだったんだよ!!わかんねぇのか!?」
装「……」
允恭「シシッ、忘れたら困るぜ?あたいらの天辺が狂ってもらっちゃ困るぜ。いや、
もう狂ってっけど、壊れてもらっちゃ困る。そんなんじゃあ一生……いや、永遠に死ねないぜ?」
装「……」
允恭「シシシシシシシッ、だんまりかよ。まぁ、いいですぜ。あたいたちは装様に付いて逝くだけだ。装様が死ぬまで永遠になぁ!!」
装「わかってますよ。もとは違えど、あなたたちと僕は一つですからねぇ。狂っても壊れはしませんよ。」
允恭「分かってんじゃねぇか。だけど、もとは違うってのは違ぇですなぁ。あたいらは最初から狂って、終わって始まってんだ。」
装「狂って……ねぇ。それは貴女の姉のことですかねぇ。」
装が言うと、允恭は装の方をスッと向き、目をギョッと開き、すぐ傍まで顔を寄せる。
允恭「シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシ
シシシシシシシシシシッ、装様。あんた、何言ってんのか分かってんですかぁ?」
装「分かってますよ。
自分の『両親』を喰い、最愛の妹に殺された姉。
全く悲劇ですねぇ。
ほら、話は終わりです。
報告、ご苦労様でしたねぇ。
わかったら、さっさと仕事に戻れや。」
装が目を薄ら開き、允恭を見てそう言うと、允恭はビクッとして少し離れる。
允恭「シ、シシッ、了解しましたぁ。」
允恭はピョンと街側へ跳び、落ちていった。
装?「ったく、いったいどこで俺は道を間違えたんだろうなぁ。
まぁ管理者の糞共と会った時以外、あり得ないわなぁ。」
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ようやく書けたが、短いし、駄作だし、オリキャラしか出てないし。
あと『boys, be "stand up"!!』が神曲すぎて、日本恐い。
でもこれは、18歳以上の大きいお友達にしかオススメできないよ!!