幽州を中心として、いくつかの州を版図に加えた俺達は、来る日も来る日も軍備と政治に明け暮れていた。
仕事をすればそれだけ町は良くなっていく。
募兵所に若者が列を作るようになり、軍の規模もかなり大きくなった。
そんな中、俺達は今後について話しあおうと玉座の間に集まっていた。
「現在、私達の支配区域は経済状況、軍備状況、いずれをとってもかなり充実を見せています」
「兵力としても、曹魏には劣りますが、孫呉と同じかそれ以上にはあるはずですけれど、両国と同時に事を構えるのは無理でしょうね。」
みんなの意見としては、専守防衛にするか、先手必勝でどちらかを攻め落とすか。
という二択らしい。どちらが被害が少ないかといえば、おそらく打って出る方か。
「曹操は人材を求め、孫権は領土を求め、か。この際、桂花や紫青、愛紗に魏へいって曹操をたらしこんできてもらうというのはどうだ?」
「なっ!? なんて案出すのよ!」
「さすがに冗談でも怒りますよ?」
「な……何をバカな事をいっている! 誰がそんなことするか!」
星のいった冗談に露骨に嫌そうな顔をする3名。
確かに、曹操は桂花や紫青、霞に愛紗と、正史で執心だった者や元々曹魏に居るべきだった人物が欲しい欲しいと漏らしているって聞くし。
そういうのも無くはないんだろうけど。
「生命線は握ってるんだけどね。塩っていう」
最近塩の生産効率がかなり良くなっていて、魏に結構な量を輸出している。
間諜の話しだと、かなりの所をこちらで作る塩に頼っているとか……。
日本の関西でいうところの、滋賀の「水道止めるで」っていうのをやれるわけである。
もっとも、塩を止めるといったら速攻で攻めこんできそうだけど。
魏と呉の様子を聞いてみると、魏は西を併呑したばかりで統治が安定するまで付け入るすきがある。
呉は富国強兵に取り組み、それは半ば成功している。孫権はまず防衛ありきだから侵攻までにまだ余裕がある。
それに孫権派と周瑜派にわかれており、一枚岩ではないために、こちらにも付け入るすきはある。
とにかく相手の状態や地理が詳しくわからなければ始まらない。
向かわせる忍者隊の数を増やし、情報収集に勤めることにした。
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「さて、今日の仕事は終わりと……」
午前中に仕事を切り上げて、自室を出て、今日も良い天気な事だし何をするかと思案する。
「町でも見て回るか」
休日といってもできることはしれてるし。
寝るか、城内をぶらつくか、町をぶらつくか。
今日って他に誰か休みの人いたっけかな。
しばし考えてみる。確か今日は……。
「華雄と紫苑か」
華雄を町に誘ってみるか。
城内をぶらぶらと歩いてみると……。
居た居た。城の庭に座っている華雄を発見して声をかける。
「主か、どうした? 何か用事か?」
「町に出るから一緒にどうかとおもってね。昼ごはんぐらいおごるし」
「ああ、かまわんぞ」
と、二つ返事でOKをもらい、2人で町に繰り出した。
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「さて、昼ごはんどうしようかなぁ」
のんびりと考えながら町をぶらぶらと。歩く。
「普通に、ラーメンあたりでいいのではないか?」
それもそうなんだけど、いつもそれじゃあひねりがないしなぁ……。
「ごしゅじんさまだー!」
なんて考えていると飛び込んでくる幼い声。この声は璃々ちゃんだな。
「そういえば今日は紫苑も仕事休みだったな」
紫苑と一緒に歩いてるその姿にひらひらと手を振ると、こちらにやってくる。
「わーいっ! ごしゅじんさまだー!」
「買い物?」
「ええ、璃々に新しい服を買ってあげようとおもいまして」
「なるほどね。こっちは華雄と息抜きってとこ。これから昼ごはんどうしようかって話してたとこなんだけど、一緒にどう?」
「ごしゅじんさま、璃々、やたいがいい」
そういえばこの通りにも屋台があったな。丁度昼時だから店に入ると混み合いそうだし。屋台もいいか。
「屋台ね、華雄もそれでいい?」
「主のおごりだし、主がそれでいいなら私はそれでかまわないぞ」
嬉しそうに走って行く璃々ちゃんに3人でついていって屋台で食べあるき。
でも屋台でご飯食べると、偏っちゃうんだよな。
璃々ちゃんは串焼きをもぐもぐやってるのを横目に見ながら。俺と華雄はといえば、立ち食いソバならぬラーメンをすすっている。
紫苑はさすがに璃々ちゃんの面倒を見なくてはいけないので汁物を食べる余裕はないらしい。
「これはこれで美味しいんだよな」
「そうだな。量は少ないが、その分ほかの屋台で好きなようにおかずを組み合わせられるのがまたいい」
屋台で昼食をすませれば、そのまま璃々ちゃんにつれられる形で服屋へ。
「そういえば、華雄は普段着に可愛い服とかってもってないの?」
「不要だ。私は武人だぞ?」
「武人でも女の子でしょ。それに素材はいいんだから、もったいないとおもうけどなぁ……」
で、そんな会話を聞いていた紫苑に華雄はロックオンされてしまったらしく、ずりずりと服屋の中へ連れて行かれてしまった。
ああ、これはもう逃げられないだろうなぁ……。
「よ、よせ! 不要だというのに!」
「ふふ、ご主人様はきっと褒めてくださるわよー? そうだ、ご主人様に選んでもらいましょう」
「んー」
そういえば、星の服とか着物っぽいし、ひょっとして着物あるんじゃ……。
着物は胸が薄いほうが似合うっていうし、華雄くらいならよく似合うんじゃなかろうか。
商品を物色していると、やっぱりあったよ、着物系のコーナー。なんであるんだっていうツッコミはこの際無しにしてだな。
華雄は銀髪だから、黒系のヤツが髪が映えて似合うかなぁ。でも黒系だと地味かな……。
「これとかどう?」
結局選んだのは、紺色の着物でモミジのワンポイントが入っているヤツ。
普段の華雄の服の色が赤と紺がメインだから似合うのではないかと思っただけ。で、帯はグレー。
でもこれだと普段とあんまり変わらないような気もするな。
華雄が自覚してるかどうかは分からないけど普段の衣装が結構可愛いし。
選択肢としては露出度を上げていくかもしくは下げて清楚系にするかだけど……。あえて清楚系に走ってみた。
そして華雄はさっそく試着させられるハメに。というか着物の着付けとかできたんだ、紫苑……。
どこを触ってるんだ! とか 見るな! とかいう声を外で聞きながら待つことしばし。
試着室からようやく出てきた華雄は、何だか頬を赤くそめて恥ずかしそう。
予想以上に着物は似合っていた。
「すごい似合ってるなぁ……」
「かゆうおねーちゃんかわいい!」
「ほんと、かわいいわね」
おそらくいちばん攻撃力があるのは璃々ちゃんの一言か。すっかり顔を真っ赤にしてまぁ……。
「う、動きにくいんだが……」
「戦闘服じゃないしそれ。しかしホントに可愛くなったなぁ……」
「これで化粧をすればもっと可愛く……」
紫苑の目が危ない事になっている気がした俺は、どうにか現実に引き戻して、なだめる事に成功。
この服は華雄に買ってあげて、また紫苑が暴走するまえにここで別れることにして……。
値段はそんなに高くなかった。現代だと着物はたっかいイメージあるけど、そうでもなかった。
「んー、それにしても可愛いなぁ」
「あ、あんまり見ないでほしいんだが……」
「よし、このままお菓子屋でもいこうか」
「菓子屋……」
悩んでいらっしゃる。さっさと帰って着物から開放されるのと、甘い菓子を食べるのとで天秤にかけてるなこれは。
先に立ってあるけば華雄はしぶしぶといった体でついてくる。でもその顔は何だかうれしそう。
それにしても、こう、おしとやかにみえる華雄って結構貴重じゃなかろうか。
この後、夕方まで華雄を連れ回し、2人で休日を堪能した。
あとがき
どうも黒天です。
今回は華雄さんでした。
可愛い服ってどうしよう、って所で、ここであえて露出度を下げるという選択肢。
黒天は絵心がないので華雄さんの着物姿は想像力を働かせてください。
極妻に見えるとかいわない。
多分次回は紫青さんかなー……。
さて、今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
また次回にお会いしましょう。
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今回は華雄さんの拠点な感じです。