No.616614

【恋姫二次創作】死神の毒 小さな軍師の実力

今回は集中しすぎてちょっと長くなったかも?

と、思ったが2話の方が長かったという事実に驚く今日この頃
(本当に2話の方が長いという確信はありません)

2013-09-06 21:57:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1050   閲覧ユーザー数:986

 

~一刀side~

 

「……って訳で、早速なんだけど、二人の意見を聞かせて欲しいんだ。俺たちはこれからどうすればいいのかを。」

 

俺は早速二人に意見を求めてみた。

 

すると、二人は少し戸惑いながらソウの方を向く。

 

「あぁ、なるほど。一刀殿、二人は『新参者なのに意見を言って良いのか?』だそうですよ?」

 

「当然。二人ともこれからは仲間なんだから、どんどん意見を言ってくれよ。」

 

「「……は、はいっ!」」

 

弾むように頷いた朱里と雛里が、

 

「私たちの勢力は、他の黄巾党討伐に乗り出している諸候に比べると極小でしかありません。」

 

「今は黄巾党の中でも小さな部隊を相手に勝利を積み重ね、名を高めることが重要だと思います。」

 

「敵を選べというのか!?」

 

「あぅ……そういうことですけど……。えっと…」

 

「あの……えと……。」

 

言葉を繋ごうとして戸惑う朱里と雛里。

 

愛紗にあんな迫力で言われたら、反論できる人間なんて、そういないだろう。

 

空気を変えるために、まだやってない自己紹介でもするか。

 

「この子は関羽。字は雲長って言うんだ。」

 

「私はね、劉備玄徳!真名は桃香だよ♪これからは桃香って呼んでね♪」

 

「鈴々は張飛って言って、鈴々は真名なのだ。呼びたければ呼んでも良いぞー。」

 

「むぅ。皆が真名を許すのならば、私も許さなくてはならんな。ご主人様が紹介してくださったように、我が名は関羽。真名は愛紗と言う。宜しく頼む。」

 

「は、はい!宜しくお願いします!」

 

「あぅ……。」

 

頭を下げた朱里に倣うように、雛里も慌ててペコンッと頭を下げた。

 

「さて、自己紹介が済んだところで続きだけど。……愛紗。俺は朱里の言うことも尤もだと思うんだ。」

 

「ご主人様もですか?しかし些か卑怯では……」

 

「誇り高い愛紗がそう思うのは良く分かるよ。だけど今の俺たちには、どう足掻いてみたところで弱小勢力であることに変わりはない。時には我慢するしかないんだ。」

 

「……」

 

愛紗は辛そうに下を向く。

 

武人として辛い選択だというのは分かる。

 

だが、集団として行動する以上、一人の意見を全て聞いて行動を起こすことは出来ない。

 

船頭多くして船山に登る、というやつだ。

 

「ケケッ、100点満点とは言えませんねぇ。」

 

ソウは朱里と雛里に向かって言う。

 

「名を上げて義勇兵を募り、どんどん大きくなるというのは良いですが……兵糧はどうするつもりですかねぇ?」

 

「兵糧?今持ってるんじゃないの?」

 

桃香は首を捻り、ソウに問う。

 

「まさか、ここまでとは……良いですか?今持っている分は白蓮殿から頂いた、今回の黄巾党討伐のための兵糧です。

 

当然その後の兵糧はありませんし、大きくなっていくのなら更に足りなくなるでしょうねぇ。

 

しっかり補給しないと、せっかく信頼して集まってくれた方も逃げるしかなくなり、逃げた先でも食料は無く、そして村を襲ってでも食料を得ようとするでしょう。

 

しかも、そのまま賊となれば、僕らの勢力の名が上がってきていても、あっという間に地の底に逆戻り……いや、地の底よりも更に深みにはまり、下手をすると悪人として大陸に名をとどろかせることになりますねぇ。

 

つまり分かりやすく言うと『賊討伐に行ったのに自軍が賊になってしまう。』と言ったところでしょうかねぇ?」

 

「お腹が減るのは、気合いで何とかなるって訳でもないからなー……」

 

「さて、どうしますかねぇ?」

 

朱里と雛里は暫く考えた後に答える。

 

「名を上げつつ、付近の邑や街に住む富豪たちに寄付を募るか……」

 

「敵の補給物資を鹵獲するしか、今のところ解決方法は無いと思います……」

 

「これから君たちは軍師をするんですからねぇ。そこまで言って、ようやく軍師として仕事をしていると言えると思いますねぇ。例え、その策が否定されても、まずは言うことが集団にとって大切ですからねぇ。」

 

「「は、はいっ!」」

 

朱里と雛里は強く頷く。

 

「策を考えている時に授業をしてすいません。では、どうぞ続けてくださいねぇ。」

 

「うーん……だったらやっぱり弱い敵部隊を狙って倒していった方がお得だね~。」

 

ようやく桃香も理解したようでまともなことを言う。

 

「なら基本方針はそれで行こう。それで良いかな、みんな。」

 

「はい。状況を説明されれば、それしか方法が無いのだと分かります。私に否はありません。」

 

「私もなーし♪ご主人様の方針に従うよ。」

 

「当然、僕も否は無いですねぇ。」

 

「鈴々は別に何でも良いのだ♪」

 

「何でも良いって。……まぁ鈴々らしいと言えばらしいけどさ。」

 

お気楽な鈴々の言い方に苦笑しながら、

 

「じゃあ方針も決まったことだし。そろそろ出発としよう!」

 

こうして―――。

 

新しい仲間が加わった俺たちは、白蓮と星に別れを告げ、意気揚々と出陣した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果てしない荒野を進軍しながら、各方面に細作を放って黄巾党の動向を探る。

 

……と言えば俺がすこぶる名将に聞こえるけど、全部朱里と雛里とソウがやってくれてるんだから、実際楽と言えば楽なんだよな。

 

「良い天気だなぁ~……」

 

なんて思わず呟いてしまった俺に、桃香と愛紗の非難の声が投げつけられる。

 

「ご主人様のんびりしすぎ!」

 

「桃香様の仰る通り。……今から戦いなのですから、もっとしゃんとしてください。」

 

「う……ごめんなさい。」

 

「にゃはは!お兄ちゃん怒られてやんのー。」

 

「うーむ。どうにも実感が無くてなぁ……」

 

ぽりぽりと頭を掻きながら、言い訳にもならない言い訳をしていると、

 

「でも、変に鯱張っているよりも、今みたいにのんびりとしている方が良いと思います。」

 

「兵士たちは、上に立つ人の気分や態度をちゃんと見てますから。だからご主人様の何事にも動じない態度というのは、頼もしく見えると思います。」

 

「あまり、甘やかしすぎてはいけませんねぇ。」

 

と、朱里と雛里が一生懸命フォローをしてくれるが、ソウの一言によりフォローは水の泡だ。

 

うう、俺の味方は二人しかいないんだ……。

 

そんな風にみんなで話をしていると、

 

「申し上げます!」

 

前方から走り寄ってきた一人の兵士が、俺たちの前で跪く。

 

「ここより前方五里のところに、黄巾党とおぼしき集団が陣を構えております!その数、約一万!」

 

「い、一万っ!?……ちょっと多すぎだな。」

 

こっちの兵数は約七千。

 

……兵数の差を考えれば、苦戦は必至だろう。

 

かといって、ここで進路を変更すれば、黄巾党討伐という大義名目を掲げたことで集まってくれた義勇兵たちが、俺たちを見限ることになるだろう。

 

転進するのは、初めに決めた方針からすれば当然のことではあるが、さて、どうしたものか……。

 

「……」

 

伝令の兵士が報告してくる敵軍の状況を聞きながら、頭の中でどう戦えば良いのかをシュミレートしていると、

 

「あ、あの……」

 

朱里の背中に隠れるようにしていた雛里が、緊張した声と共に、躊躇いがちに俺の袖をクイクイと引っ張ってきた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「だ、だいじょうぶです。きっと勝てますから……」

 

「勝てるって……でも相手の兵力は俺たちより三千も多いんだよ?」

 

「それぐらいなら大丈夫です……」

 

怖ず怖ずしながらも、雛里はそれでも俺の目をしっかりと見て大きく頷く。

 

「私たちには、勇名を馳せている愛紗さんとか鈴々ちゃんが居ますし、それに義勇兵の皆さんの士気も高いですから……」

 

「でも数は力だろ?味方の兵士一人に対し、敵兵士が一人とは限らないんだから、苦戦するのは目に見えているんじゃ……」

 

「だけど、えと……わ、私たちが居ますから。」

 

話を聞いていた愛紗が雛里に問う。

 

「ん?どういう意味だ?」

 

「あぅ……」

 

愛紗の言葉にビクリと身体を震わせた雛里が、ヨロヨロとソウの背中に隠れる。

 

ソウは朱里と兵糧について、より確実に得られる方法を話し合っていて、雛里が背中に隠れたため「?」としている。

 

「あーあ……」

 

「愛紗、雛里を怖がらせたら駄目なのだ!」

 

「ええっ!?わ、私は別に怖がらせてなどいないぞっ!?普通に訊いただけでは無いか!?」

 

「へぅ……」

 

「何かよくわかりませんが、きっと大丈夫ですよ。皆さん良い人ですからねぇー。」

 

ソウは背中に隠れてきた雛里の頭を、慰めるようにポンポンを叩いていると、

 

「む、むぅ……私の口調はそれほどキツく受け取られてしまうのでしょうか……」

 

と、愛紗はちょっぴり凹み気味だ。

 

「あはっ、大丈夫大丈夫。愛紗ちゃんは別に怖くないよー?ただちょっぴりマジメ過ぎるだけ。」

 

「助け船になっていませんよ、桃香さま……」

 

がっくりと項垂れる愛紗をよそに、

 

「と、とにかくですね。こういうとき、私やソウ先生も役に立てるんですが、特に役に立ってくれるのは雛里ちゃんなんです。」

 

場の雰囲気を変えようとしたのか、だいたい場を把握した朱里が話題を元に戻すように進み出る。

 

「本来ならば、敵よりも多くの兵士を用意するというのが用兵の正道ですけど……。でもそれが無理な以上、戦力の差を覆すには策あるのみです。……だからこそ私たちが、特に策について勉強していた雛里ちゃんが役に立つかと。」

 

「べんきょーしてたって、朱里たちは何のべんきょーしてたのだ?」

 

「えと、孫子、呉子、六韜、三略、司馬法……それに九章算術、呂氏春秋、山海経……あとはいくつかの経済書と民政書を勉強しました……」

 

「学問に限界は無いですからねぇ。彼女らにはまだ尉繚子や、李衛公問対に、休憩として鬼谷子や世界のヘイホーも教えても良いと思ってますからねぇ。」

 

「うわー……それ全部勉強して覚えてたり、覚えたりしてきたの?」

 

「……(コクン)」

 

「すごーい!愛紗ちゃん愛紗ちゃん。この子たちってば、もしかしてとってもスゴイ子かも!」

 

「スゴイどころではありませんねぇ。僕も覚えるのに何年もかかった物を、あっという間に覚えていくんですから正直、自信を無くしてしまいますねぇ…」

 

「そこまで凄いのですか?孫子の兵法書は私も読みましたが、その他の書籍に関しての知識はありませんね。いったいどのような書籍なんです?」

 

「孫子、呉子、六韜、三略、司馬法。これらは全て兵法書です。あとは算術、農政、地理書……経済学の本とか、民を治めるための本とかです。」

 

「ちなみに尉繚子と李衛公問対も兵法書で、鬼谷子は小話とでも言ったところでしょうかねぇ。」

 

「ほえー。すごいのだー。三人とも完璧超人なのだなー。」

 

「そ、そんなことないですよ、えへへ……」

 

皆に絶賛されたことで嬉しかったのだろう。

 

慌てたように謙遜しつつも、朱里と雛里は頬を緩ませて微笑みを漏らす。

 

「それじゃ皆に実力を認められたところで……数の差を覆す策っていうのを教えてくれるかい?」

 

「はい!えっとですね、伝令さんからの報告を聞くと敵は五里先に陣を構えているとのことですが、ここより五里先に陣を構えているとのことですが、ここより五里先というのは兵法で言うク地(漢字が出ない)となっています。」

 

「くちー?なんなのだ、それ?」

 

「ク地とは各方面に伸びた道が収束する場所のことを言うんです。」

 

「つまり交通の要衝ってヤツか。」

 

そこに兵や物資を配備しておけば各方面に進軍している部隊に素早く補給物資を送ることが出来る。

 

「そんな重要なところに一万しか兵を配置していないっていうのも……なんだかなぁ?」

 

「だからこそ、相手は所詮雑兵。そして、そここそ僕らの狙うべき場所ですねぇ。」

 

「どういうことー?」

 

「敵は私たちより多くの兵を持つとはいえ、雑兵でしかありません。またその雑兵が守っている地は黄巾党全軍に影響を及ぼすであろう重要な地。」

 

「そこを破れば私たちの名は否応なく高まります。だからこそ、これは千載一遇の好機。」

 

「更に言えば、僕らの兵は敵よりもかなり少ない。そんな部隊が前に現れたとしても敵は恐れないでしょうねぇ。……そしてそこが付け目ですねぇ。」

 

「なるほど。敵を油断させ、策を持って破る。……そう言いたいのだな?」

 

「は、はひっ!」

 

「……そんなに緊張しないで欲しいのだが。」

 

「あわわ……ごめんなさいです……」

 

「よしよし。愛紗殿は良い方ですから怖がらなくても良いですからねぇ。」

 

「そうそう、見た目と違って凄く優しい女の子だからね。怖がらなくてもいいよ。」

 

「……ほお。私の見た目は怖いと、そう遠回しに仰るのですね、ご主人様は。」

 

「ち、違う違う!そういう意味じゃなくて……」

 

誤解した愛紗に必死になってフォローしようとする俺の横で、

 

「そんなのどっちでも良いのだ。とにかく方針を決めて戦うのだー!」

 

長い話に飽きたのだろう、鈴々がウガーと癇癪を起こす。

 

「そうだよ、ご主人様。愛紗ちゃんとイチャイチャするのは後にしてね。」

 

「と、桃香さまっ!」

 

「分かった、後にする。……それで、話の続き聞かせてくれるかな?」

 

「ご、ご主人様!?」

 

あたふたと表情を変える愛紗を横目で見て、軽く吹き出しそうになりながら、

 

「それで朱里、雛里、ソウ。策っていうのは?」

 

俺は何かとマジメな顔を作って、質問してみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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