~~ヴィータ視点~~
アタシは現在海鳴のじーちゃんばーちゃん達と一緒にゲートボールをやっている。が…
「今日はこのくらいでお開きにしようかのぅ」
「え?もう終わんのか?アタシまだやり足りねえなぁ」
「はっはっは。ヴィータちゃんはこの暑さの中でも元気じゃのう」
「全くじゃ。若いって羨ましいわい」
「ヴィータちゃんゴメンなさいねぇ。今日は日差しが強いから私等にはちぃとばかしキツいんじゃよ」
「むぅ~…じゃあしょうがねえな」
まだまだ遊び足りねえがアタシのわがままでじーちゃんばーちゃんたちが倒れたりしたら嫌だからな。
「そうじゃヴィータちゃん。ワシの家に寄っていかんか?冷凍庫にアイスがあるんじゃが?」
「アイス!!?行く行く!!!よっしゃ、今日はもう切り上げだ!!!」
アタシは素早く後片付けをし、じーちゃん達の荷物も代わりに持つ。
アイス♪アイス♪
「ほらじーちゃん!!早く行こうぜ!」
「ほいほい、じゃあのぅ皆」
私は他のじーちゃんばーちゃんたちを手を振って見送ってから歩き出す。
じーちゃんの家はそれ程遠くなく、歩き始めて10分も経たない内に着く。
「ささヴィータちゃん、上がっとくれ」
「お邪魔します」
アタシは靴を脱ぎ、じーちゃんの後を追う様についていく。
玄関からすぐの居間に上がらせて貰い、腰を下ろす。
じーちゃんは冷房と扇風機を点けて
「ほいじゃあ、ちょいと待ってておくれよ」
すぐに居間を出てキッチンへ向かっていった。
ふぅ……。
外は暑かったな。冷房から出て来る冷気と扇風機から送られてくる風が気持ち良い。
「あ゛~~~~~~~~~………」
扇風機の前まで移動し、お約束の行動を取る。
「はっはっは。微笑ましいのうヴィータちゃん」
「っ!!?」
振り向くとカップアイスとスプーンを2つ持ったじーちゃんが丁度居間に戻って来た所だった。
けど足音は全く聞こえなかった。
「じーちゃん、何で足音鳴らねーんだ?」
「ワシは体重が軽いからのぅ」
そういう問題なのか?
「それよりヴィータちゃん、チョコ味と抹茶味のどっちにするかいのぅ?」
「チョコ!!」
スプーンとチョコ味のカップアイスを受け取り、フタを開けて早速一口口に運ぶ。
「あむあむ……このアイスは『メガうま』だな!」
「はっはっは。『ギガうま』じゃないのかい?」
「甘いなじーちゃん。最近のアタシが『ギガうま』認定しているアイスは今の所東雲堂のスペシャルバニラアイスだけだぜ」
「そうかいそうかい。なら今度はそのスペシャルバニラアイスというのを買っておくかいのぅ」
「なっ!!?そ、そこまでしなくてもいいって!!」
「遠慮せんでええ。ヴィータちゃんはワシらの可愛い孫みたいなものでありアイドルじゃからな」
「あ、アイドルって……//」
んな事言われたら照れるじゃんか。
「それに年金暮らしになってからは貯金が減る事もほとんど無くてのぅ。この歳じゃとあまり使い道もないし…」
「だからってアタシのために使う必要ホントに無えって」
「けどのぅ…」
パクパクとアイスを食べ、カップの中身が段々と減っていく。
「大体じーちゃんには息子さんがいるだろ?」
「あ奴はあ奴で未だに彼女すら出来ておらんしのぅ」
『ハア~…』と溜め息を吐くじーちゃん。
じーちゃんの息子さんってもう40歳目前だったっけ?
アイスを食べ終えたアタシ。今度は冷たい麦茶を用意してくれたので遠慮無く頂戴する。
「ヴィータちゃんみたいにさっさと恋人を作ればワシも安心できるんじゃがのぅ」
「ぶーーーっ!!!」
じーちゃんの台詞を聞いてアタシは麦茶を盛大に吹き出す。
「ん?どうしたんじゃヴィータちゃん?」
「ゴホッ…ゴホッ…じ、じーちゃんがいきなり変な事言うからだろ!!アタシに恋人なんていねー!!」
「んん?そうなのかい?赤井さんはよく『男の子と一緒にアイス食べてるのを見掛ける』と言うとったぞい。ヴィータちゃんの彼氏じゃろ?」
「な、ななななな……////」
そ、それってアレか!?勇紀にアイス奢って貰ってる時の事か!?
確かに勇紀の奴に奢って貰ってる機会は多い。
けどそれはアイツが家族の為に東雲堂のアイスをテイクアウトで注文する時に何故かよく遭遇して、声掛けたら奢ってくれるんだよな。アタシは東雲堂のアイス大好きだから嬉しいけどさ。
決して勇紀にたかってる訳じゃないんだかんな!!
そ、それよりもだ!!
「かか、かかか、彼氏じゃねーよじーちゃん!!アイツは…その……なんだ………そう!アイス友達だ!!//////」
勇紀との関係を否定する。
けど勇紀が彼氏か……悪くねえし、むしろ望む所だよな。
恥ずかしくてそんな事言えねえけどさ。それにライバル多いし。
「でもその男の子と一緒にいる時のヴィータちゃんの笑顔はいつも以上に輝いとると赤井さんが……」
「ちちち、ちげーって!!それはアイスがギガうまだからであって、別に勇紀と一緒にいるのが嬉しいって訳じゃねーんだってば!!!//////」
「照れんでもええじゃないかはっはっは」
「だーかーらー……」
アタシの言う事聞いてくれよじーちゃん………。
「そうじゃヴィータちゃん。コレ、いらんかい?」
じーちゃんがアタシに手渡してきたのは折り畳まれた1枚の紙と手帳だった。
「何コレ?」
「スタンプラリー用の手帳じゃよ」
手帳を開くと確かにスタンプを押すように四角い囲いがいくつか描かれている。
「???コレでスタンプ集めろって事?」
「そうらしいのぅ」
「集めて何か意味あんの?」
「ヴィータちゃんの好きな東雲堂のアイスが1ヶ月食い放題になるぞぃ」
「マジで!!?」
じーちゃんに言われ、折り畳まれた紙の方を開いてみる。そこに書かれていたスタンプラリーの景品一覧表を見ると
「ほ、本当だ!!コレは参加するっきゃないぜ!!!」
スタンプを3つ集めたら東雲堂のアイスが1ヶ月店内で食い放題という『プレミアムチケット』が貰えると書かれている。
「(東雲堂のアイス食い放題……うへへ……)」
ジュルリ…。
想像するだけで口元に涎が溜まり始める。
「じゃがのぅ、ヴィータちゃん。参加するのにはペアとなる男の子が必要じゃぞい」
「へ?」
「ほら、ココに書かれておるじゃろう?」
じーちゃんが指差した所には
『参加条件:男女一組』
とハッキリ書かれていた。
「男も必要なんかよ…」
「よくアイスを一緒に食べに行く子を誘えばええじゃないか」
「アイツの予定が空いてたらそうするつもりなんだけどよ」
とりあえず後で勇紀に連絡入れてみるか………。
~~ヴィータ視点終了~~
昨日で終業式が終わり今日から長い長い夏休みが始まった。
そんな初日の今日……
「今日は気合入れてけよ勇紀!!!」
「気合……ねぇ」
先日、突然ヴィータから連絡を受け、東雲堂の前で合流するや否やの第一声がソレだった。
「つーか俺、何でここに呼ばれたのか未だに分からないんで理由を教えてほしいんだけど?」
「お、そうだったな。実は…コレだ!!」
ヴィータが俺の目の前で見せてくれた物…
「……海鳴スタンプラリー?」
スタンプラリーの内容が書かれていたチラシだった。
「……そういや、そんなイベントがあるって前に雅さんから聞いた事ある様な…」
………うん、確かに以前魚屋に寄った時、雅さんが言ってたっけ。
「けどそのイベントの参加条件って、事前にネットで応募しなきゃいけなかったんじゃなかったっけ?」
「ああ、けどじーちゃんが応募した奴が当選しちまったらしくてな」
「そのお爺さんに参加権利を譲って貰ったのか?」
「元々はアイスをネットで注文した際に間違えて応募しちまったんだと」
それで当選…大した強運だな。
「それにこのイベントの主催は東雲堂と海鳴市だかんな」
「その点では俺達は地元だからラッキーだな」
土地勘あるし、交通費とか使わなくて済むし。
「……にしてもここにいる人達皆参加者か?」
「そうだろうな。じゃなきゃいくら東雲堂といってもここまで人が集まるなんて事無いって」
しかも時間は午前8時45分。
東雲堂が開店するのは午前10時からだから1時間以上も早い。
にも関わらず50組程の男女が東雲堂の前に集合している。
「……しかも皆、カップルっぽいねぇ」
俺はそう呟く。
この日差しが多少強く暑い日にも関わらずここに集まっている男女ペアからは気温とは違う熱気を放っている様に感じるのは気のせいでは無いだろう。
「何だ?勇紀は彼女でも欲しいのか?」
「いずれは欲しいかなー」
ずっと独り身ってのは嫌過ぎる。前世では死ぬまでの間、一度も彼女なんて出来なかったし。
「そ、そうか…そうだよな(て事はその『いずれ』が来ればアタシにもチャンスが…)////」
何度も『うんうん』と頷くヴィータ。
「それより、スタンプラリーが始まるみたいだぞ?」
東雲堂のシャッターが開き、中から店の店長らしき人が出て来る。
「皆さんおはようございます」
「「「「「「「「「「おはようございまーす!!!」」」」」」」」」」
参加者は皆気合が入っている。
「抽選に見事当選された皆様、本日は暑い中、東雲堂と海鳴市が主催のスタンプラリーにご参加して頂きありがとうございます」
店長らしき人が頭を軽く下げ、礼を言う。
「えー、挨拶は割愛しまして…この炎天下の中、時間を掛けるのもアレですので早速スタンプラリーの説明をしたいと思います」
そうだな。さっさと済ませてほしい。
「まず、参加者の皆さんには事前に手帳とスタンプラリーのチラシを渡しております。後は所定の場所で用意されている『お題』に挑戦し、見事クリア出来たらスタンプが手帳に押して貰える仕組みになっています」
お題?
「ここに海鳴市のガイドマップを用意させていただきました。どこの店の『お題』から挑戦するかは参加者の皆様の自由となっております。ただ、どのお店の『お題』も一筋縄ではいかないものばかりです」
ふーん。
「最終的に3つのスタンプを集めたペアの方から当方で用意している好きな景品を1つ進呈致します。数に限りがありますので先着順…早い者勝ちとなりますのでご了承下さい」
「アタシ等の目的はアイス食い放題の『プレミアムチケット』だかんな勇紀!!」
「そう言うと思った。このイベントに参加したのもソレ目当てなんだろ?」
景品の一覧表を見たが、ヴィータが参加してまで欲しがりそうな物ってソレしか無いし。
「んだよ!!文句あんのか!?//」
「無い無い。だから落ち着け」
ヴィータを宥めてから俺は、改めて景品の一覧表を見る。
「(…俺的にはマウンテンバイクが欲しいんだけどなぁ)」
マウンテンバイクは2台。東雲堂のアイス食い放題のプレミアムチケットは6枚。
つまりマウンテンバイクは1組、プレミアムチケットは3組まで貰えるという事だ。
「(あー…でもこのマウンテンバイク、レヴィ辺りが『欲しい!!』って言いそうだなぁ)」
アイツはとにかくカッコイイ物を欲しがるから、ママチャリとマウンテンバイクなら間違い無く後者を選ぶ筈。
逆にシュテル、ディアーチェ、ユーリはママチャリ派だろう。買い物へ行く際の使い勝手なら断然コッチの方が良いに決まってるし。
「…という訳でこれより第1回海鳴スタンプラリーを開催します!!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!」」」」」」」」」」
ん?少し考え事をしてる間に一通りの説明が終わったのか?
他の参加者も非常にやる気に満ちている。
「開始は午前9時、終了は午後3時。それではーー………スターーート!!!!!!」
時計が丁度9時になったと同時にスタンプラリー開始の合図が出され、各ペアは海鳴市内のガイドマップを手に取りながら方々に散って行く。
「勇紀!!アタシ等も行くぞ!!!」
「おう!!」
俺とヴィータもその後を追う様に駆け出し、スタンプラリーに参加するのだった………。
「で、最初は何処から行こうか?」
「ていうか2人別行動でスタンプ集めんのは?」
「それは無理。ここに書かれてるし、ホラ」
俺が指差したトコには『必ずペアで行動する事』って書かれていた。
「それに手帳は1つしか無いんだから別行動してお題をクリアしてもスタンプ押せないし」
「言われてみりゃそーだな」
納得してくれた様子のヴィータ。
「それで話は戻すけど最初は何処から行く?」
「ここから1番近いのは?」
「商店街の中にある中華料理店だ」
「んじゃ早速行こうぜ」
ヴィータに手を引かれ、商店街へ足を踏み入れる。
目的の中華料理店は商店街に入ってすぐの所にある。
普段ならこんな朝早くから店は開いていないのだが今日はイベントのため、既に『営業中』の掛札が入り口の扉に掛けられている。
俺とヴィータが店内に入るとスタンプラリー参加者のペアが既に4組いた。ただ、自分達以外のペアの様子を窺えない様、仕切りを立てられている。
「いらっしゃいアル!!スタンプラリーの参加者アルか?」
厨房から姿を現す人物。
どうやらこの店の店長だと思われる。
「アタシ等、ここのお題に挑戦しに来たんですけど?」
ヴィータがそう言うと店長はニヤリと笑みを浮かべる。
「了解したアル。ソコの席に座って少し待つヨロシ」
そしてすぐさま厨房へ消えていく。
「ここのお題って何だと思う?」
「さあ?中華関係じゃねえのか?」
俺とヴィータは顔を見合わせ『うーん』と唸る。
「「「「「「「「ガツガツガツ……」」」」」」」」
他の参加者は一心不乱に何か食ってる様だけど腹ごしらえか?
様子が窺えないまま俺とヴィータは店長が指定した席に座りジッと待つ。
やがて店長が大皿を持って俺達の席にやってきた。
「当店のお題は
ドンッ
テーブルに音を立てて置かれた大皿に乗っている物を見て
「「でかっ!!?」」
俺とヴィータは声を上げる。
「フッフッフ。このワタシが丹精を込めて作ったジャンボギョウザ。とくとご堪能あれ、アルヨ」
店長が言う様に大皿にはジャンボギョウザなる食べ物が1個乗っているが大きさが半端無い。
大体20インチのテレビと同じぐらいか。しかも液晶やプラズマみたいな薄さではなくアナログテレビとほぼ同じ太さ…。
「……コレを完食?」
……マジか?
「無理ならここのスタンプは諦めるアルネ。餃子は私が処分しておくから他の場所のスタンプを3つゲットするヨロシ」
うわ、あの笑顔がムカつく。
「ゆ、勇紀…どうすんだよ?」
「……やるしかないな」
ここで別の場所へ移動する場合は多少時間を取る上、次のお題がある店が必ず空いているかは分からんし。
大きさは規格外だが完食するだけで貰えるなら……。
俺は箸を手に取って小皿を用意し、餃子の皮に箸の先端を刺す。
「……まあ、コレを見た瞬間から予想はしたけどさ」
皮も相当に分厚い。
「ちなみにご飯や飲み物はいくら注文してもタダアルから遠慮しないで注文するヨロシ」
飲み物はともかく、ご飯注文する奴なんているのか?
「それでは頑張るアル~♪」
店長は去っていく。
困ったなぁ……。朝食を食ったのは7時前だからまだ2時間ちょいしか経ってない。
「ヴィータ、朝食いつ食った?」
「大体2時間ぐらい前」
「俺と同じか…」
軽く溜め息を吐く。
「なあ勇紀、胃の中に何でも詰め込める様な魔法ねーのかよ?」(ボソボソ)
「そんな目の前の都合に合う様な魔法ねーよ」(ボソボソ)
「だよなー」(ボソボソ)
分厚い皮の奥にあるのはギッシリと詰まった具の姿が……。
コレ食い終わったら絶対ニンニク臭くなるな。
「ならよぅ、勇紀の
小声で喋りながら『我ながら名案だ』とでも言わんばかりの笑顔を浮かべるヴィータ。
「お前、そこまでして勝ちたいのか?」(ボソボソ)
「当たり前だろうが!!アタシ等は『戦争』やってんだぞ?いくら過程が良くても結果出せなきゃ意味がねー!!」(ボソボソ)
…いつからスタンプラリーは戦争へと発展したんだ?
そもそもヴィータ、お前は古代ベルカの騎士だろう?ベルカの騎士は正面から正々堂々とぶつかるタイプなんじゃないのか?そんな裏ワザ使って勝つのはどうかと思うんだが…。
「それなら心配はねぇ。能力を使うのは
言いたい放題だなオイ!!!
『だって』って何だよ『だって』って。ミッド式でも正々堂々と戦う奴はちゃんといるんだぞ!てか正々堂々戦う奴の方が多いんだからな!!
「それよりもさっさと食うぞ。プレミアムチケットがアタシを呼んでんだ!!!」
ヴィータもジャンボ餃子の一部を切り取って早速食い始める。
「(…駄目だ。もうコイツにはプレミアムチケットしか目に映っていない)」
他の参加者みたいに『ガツガツガツ…』と勢いよく食べる姿を見てから俺も餃子を口にし始める。
うー……後でガム買って口臭何とかしないといけないな………。
「……俺、しばらくは餃子食う気にならない」
「……アタシもだ」
お腹をさすったり、軽くポンポンと叩きながらヴィータと肩を並べて歩く。
結局、2人で5分の1程食うのがやっとだったので、残りはヴィータの提案通り宝物庫に収納した。
ただ最後に入店した俺達が最初に大皿を空にしたのを確認した店長は大きく目を見開いて驚いていたがな。
「…宝物庫の中がニンニクの匂いで満たされないか心配だ」
「家に帰ってから残りを食えばいいじゃねえか」
……コノヤロウ、何他人事の様に言ってんだ?しかも今俺は『しばらく餃子食う気にならん』て言ったばかりなのに。
「…ともあれスタンプ1個ゲットだな」
「そうだな。東雲堂のアイス食い放題に一歩近づいたぜ」
満足そうな表情を浮かべ、ヨタヨタと歩くヴィータ。
「次はどの店に行こうか?」
「飲食店以外ならどこでもいいぞアタシは」
その意見には賛成だ。
「じゃあ…ここでいいんじゃないか?」
次に俺が目をつけたのはバッティングセンター。
「おお!!いいじゃんいいじゃん!!丁度身体を動かしたいと思ってたんだよアタシ!!」
ここもスタンプラリーの対象店舗であり、腹が膨れている今、少しでも身体を動かしておきたい。何もしないでいると太るだろうからな。
俺達は自動ドアをくぐり、室内に入る。
「いらっしゃいませ。スタンプラリーの参加者ですか?」
「「はい」」
「ではどうぞコチラへ」
スタッフの人に案内されて俺達は移動する。
そしてバッティング場……を通り過ぎる。
あれ?
「コチラです」
休憩所らしき場所に着くと、中華料理店の時同様に複数のペアがいた。
「現在順番待ちですのでここでお待ち下さい」
そう言われた事で何故バッティング場を通り過ぎたのかに納得し、俺とヴィータは腰を下ろして座る。
「なあ勇紀ぃ。ここでのお題、何だと思う?」
「単純に考えたら投げられてくるボールを打ち返すんだろ?『何回打ち返すか?』とかじゃないのか?」
「もしそうなら楽勝だな。こう見えてアタシ、フルスイングには自信あんだ!ゲートボールで鍛えてっからな」
……俺の知識が正しければゲートボールにフルスイングなんていう行為は必要無かったと思うんだけど。
ゴルフと勘違いしてないよな?
気合十分なヴィータと共に順番が来るのを待つ。
俺達より先にお題に挑むペアの男女達だがほとんどが暗い雰囲気で腹をさすりながらバッティングセンターを後にしていく。
「うーん…そんなに難しいのかな?」
「さあ?」
俺達はその様子を見て首を捻る。そして小一時間程待たされて
「お待たせしました」
スタッフの人がやって来た。
お?やっと出番か?
席を立ちあがってスタッフの人の背中を追い掛ける。
俺達はバッティング場……をまたまた通り過ぎて別室に案内される。
別室の中にはテーブルと椅子があり、テーブルの上にはこれまためちゃくちゃ長い皿の上にバットが置かれている。
何で皿の上にバットが?
「ここのお題は…コレです」
そう言ってスタッフの人は皿の上のバットを指差す。
「コレを制限時間内に2人で
…………は?
「あの…『バット食う』って言うのは何かの冗談ですか?」
小さく挙手してスタッフの人に質問する。
「バットではありません。ジャンボポッ〇ーです」
ああ、コレポッ〇ーだったんですか。
……………………
………………
…………
……
「「でかっ!!!!!?」」
中華料理店の時と同様に規格外の大きさのポッ〇ーを見て俺とヴィータは声を上げる。
「どうです?金属バットと同サイズのポッ〇ーを見たご感想は?」
「いや!何でポッ〇ーを食べなきゃいけないんですか!?」
バッティングセンターとポッ〇ーにどういう繋がりが?
「我々の上司が無類のポッ〇ー好きですので」
「バッティングセンター関係無えじゃねえか!!」
ヴィータが叫ぶが俺も全く同じ事を口にしようとしていた。
てかスポーツセンターで大食い…いや、今回は時間制限あるらしいから早食いか。
予想外過ぎるだろ!!?てっきり身体を動かせると思っていたのに。
「嫌ならお止めになられますか?他のスタンプラリー対象店舗のお題も似た様なものですが…というかスタンプラリーのお題はほとんど『大食い』か『早食い』の類ですよ?」
「「嘘おっ!!!?」」
綺麗に俺とヴィータの声がハモる。
スタンプラリーの対象店舗には服屋とか宝石店なんかも含まれてた筈。それ等も全て『大食い』『早食い』だと!?
「《ど、どうするよ勇紀!!?さっきの餃子ですら完食出来なかったのに流石にこれ以上、食うのは無理だぞ!!?》」
「《アレから1時間程経ってるとはいえ俺も胃袋は限界だ。コレは完食出来んって!!》」
しかもこのスタッフさんが審判役として残るらしく、宝物庫の中に収納するという裏ワザは使えない。
「えっと…この早食いリタイアしてもいいんですか?」
「それは構いませんが他のお題がある場所が必ず空いているとは限りませんよ?それに目的地に向かうだけでも時間を使う事になりますがそれでも宜しいので?」
確かにそれも問題だよな。次の場所を探すために歩き回れば多少胃の中を空ける事は出来るがその分時間ロスになるし、今回みたいに1時間…下手するとそれ以上の待ち時間を食らう羽目になる。
現在の時間は昼の12時前だから、ここを見捨ててしまうと時間的には厳しいかもしれない。
「《ヴィータ、俺は覚悟を決めるぞ》」
「《コレに挑むのか!?》」
「《…時間無駄にしたくないからな》
俺は審判役のスタッフさんに飲み物を注文し、持ってきてもらう。
「それではジャンボポッ〇ー早食い、制限時間は5分です……始め!!」
スタッフさんの合図と共に俺はジャンボポッ〇ー攻略に取り掛かった………。
「……うぷっ」
お腹の中の許容量がもう危険領域を超えている感じの俺はゆったりとした足取りで街中を歩く。
「…なあ勇紀、大丈夫か?」
「へーきへーき…と言いたいところだけどキツいかも」
「どっかで休んだ方が良いって」
「そうだな。……じゃあもう少し行った所にある場所で休むか」
「ん?この先に何かあったっけ?」
「ああ、俺の知り合いが……って見えてるしな。あそこだ」
俺が見つめている視線の先の看板には『槙原動物病院』と書かれた文字が目に見える。
そこまで歩き、病院内に入る。
「すみませーん、愛さんいますかー?」
「はーい……って、あれ?勇紀君?どうしたの?」
パタパタと足音を鳴らし奥の部屋から俺達の前までやってきたのはこの病院の院長を務める『槙原愛』さんその人である。
「ちょっと食い過ぎまして……少しだけ休ませて貰って良いですか?」
「そうなの?良いよ良いよ。外は暑いもんね」
笑顔で快く迎えてくれた愛さんに感謝し、俺達はロビーの一角を借りてゆっくりする。
室内はクーラーが効いていて非常に涼しく心地良い。
「ふー…落ち着くー」
「あー…すまねえ勇紀。ポッ〇ーほとんど任せっきりにしちまって」
「気にすんなー」
今回のジャンボポッ〇ー攻略だが、普通に食っていたら間に合いそうになかったのでひたすら殴って粉々に砕き、粉末状にした所で、水を飲んで一気に胃の中に流し込んだ。
おかげでお腹がタプタプしてる。
「はい勇紀君、オレンジジュースだよ。そっちの彼女さんにもどうぞ」
そこへ愛さんがお盆に2つのコップをのせて運んできた。愛さんの気遣いは嬉しいけど今の俺は飲み物を飲みたくないです。
「か、かかかかか彼女おっっっ!!!?//////」
顔を真っ赤にしたヴィータは激しく動揺する。
「違うの?」
「ち、ちちち違います!!勇紀とは彼氏彼女の関係なんかじゃねーです!!//////」
「そうです。ヴィータとは『友達』ですよ」
「……………………」
ゴンッ!
「痛っ!!?」
後頭部をヴィータに殴られた。いきなり何すんの!?
「う、うっせーっ!!頭に蚊が止まってたんだよ!!!(少しは慌てる素振りぐらいしろよな!!)////」
だからってグーで殴る事は無いでしょうが!!
ヒリヒリする頭を片手でさすり、ヴィータをジト目で睨む。当の本人も睨み返してきてるが。
そんな時に
「スンマセーン!スタンプラリーのお題に挑戦しに来たンスけどー?」
見た目がまんまチャラ男な男性とかなりの厚化粧をした女性のペアが声を上げて病院内に入って来た。
「あ、はーい。少しお待ち下さーい」
愛さんは俺達の側から離れていく。
「ていうかここもスタンプラリーの対象店だったのかよ」
「みたいだな」
動物病院での
愛さんはすぐさま戻って来た。お盆には俺達の時同様に2つのコップがのせられているが、中身はオレンジジュースではなく青汁の様な色をした液体が入っていた。
「愛さん愛さん」
「どうしたの勇紀君?」
「ここってスタンプラリーの対象店舗だったんですか?実は俺達も参加してるんですけど…」
「そうだったんだ。うん、そうだよ」
「ここのお題って…」
「コップに注いだアレをペアで一気飲みする事かな」
「アレ…何の飲み物ですか?」
「アレはね、私が作った特製の野菜ジュースだよ♪」
その言葉を聞いて俺は戦慄し、顔を真っ青にする。
愛さんの手作り……だと?
「勇紀、これってチャンスじゃねーのか?コップ一杯分の一気飲み程度ならアタシ余裕だし」
「ヴィータ馬鹿!!お前馬鹿!!」
「なっ!?誰が馬鹿だ!!」
うるせー!お前は全く知らないからそんな事が言えるんだ!
『槙原愛』という人物が作った食べ物、飲み物がどれ程の殺人兵器になるのかという事を…。
「コレだけ?なら楽勝じゃね?」
「チョー余裕っしょ」
そんな事を全く知りもしないチャラ男と厚化粧女はお題に挑む。
ガッ×2←コップを手に取るペア
グイッ×2←一気に口に流し込むペア
カハッ×2←吐血するペア
バタッ×2←地に伏したペア
「「……………………」」
俺とヴィータは3秒にも満たない一連の出来事を無言で見つめていた。
「わわっ!!?また倒れちゃった!?」
『また』!!?『また』って何ですか愛さん!!?まさか俺達が来る前にこの液体に挑戦した勇者達がいたんですか!!?
「お、おい勇紀…」
「……何も言うなヴィータよ」
顔から血の気が引いているヴィータ。
それにしても相変わらず凄い威力だぜ。なのはの
「あ、もしもしフィリスちゃん!?また人が倒れちゃって…救急車お願いしたいんだけど……」
『ちょ!?愛さん、またですか!!?』
「うう…ゴメンなさい」
愛さんは愛さんで
「なんつーか…料理が出来る前のシャマルを思い出すな」
「いやいや、あの時のシャマルさんの方がまだマシなんだよ」
「……マジか?」
俺は無言で頷く。
それから愛さんに聞いた所、ここのお題に挑んだペアは例外なく全員救急車で運ばれて行ったそうな。
何で海鳴市はココをスタンプラリーの対象店舗に選んだんだ?愛さんの料理の腕前を知らないからか?
だとしたら無知というのは罪なもんだな………。
時間は午後2時。
後1時間以内に最後のスタンプをゲットして東雲堂に戻らないと景品ゲットの条件を満たせないので俺とヴィータはスタンプラリーの対象店舗に向かっている。
「勇紀、ここに挑むのか?」
「まあ、愛さんのトコから一番近かったし」
俺達の目の前にある場所……それは馴染みの店である『翠屋』だった。
ここでのお題をクリアして東雲堂へ向かうのが一番時間の消費が少ない。
「翠屋ならまずお題を出すのは桃子さんだろうし、そう無茶な事はしてこないだろう」
というかしてこないと信じたい。
愛さんの所で休憩出来たから少しなら食べれるだろうが、餃子やポッ〇ーみたいなジャンボ物が出たらキツい。
しかしその可能性は無いだろう。
翠屋の厨房には何度か入った事あるからどんな調理器具や設備が置いてあるか等はちゃんと覚えている。
そして翠屋ではジャンボ物を作れる程の調理器具も設備も無い。
「(警戒するとしたら早食いかな?)」
けど時間内にちゃんと食えたら腹はあまり膨れず時間も無駄にする事は無い。
意を決して俺とヴィータは翠屋の中に入る。
「いらっしゃいませー……って、勇紀君とヴィータちゃん?」
出迎えてくれたのはなのはだ。翠屋のエプロンを身に着けていると言う事は店員として店の手伝いか。
「なのは、俺達スタンプラリーのお題に挑戦したいんだけど」
「あ、2人共参加してるんだ?けど何で?」
「俺はヴィータに頼まれて」
「ふーん…」
なのはの視線がヴィータに移る。
「何だよなのは?」
「ううん、別に…(ヴィータちゃん、ズルい。勇紀君と参加するなんて)」
なのはの奴、何処となく不機嫌そうだな。
「それよりなのは、さっさとアタシ達を案内しろよ(なのはの奴、やきもち妬いてるな。けど今日はアタシが勇紀を独占する日だぜ♪)」
ヴィータが突然腕を組んできながらなのはに言う。
「…コチラへどうぞ(ヴィータちゃん、私の目の前で腕組むなんて絶対私に対する嫌がらせだ!!)」
ぷくーっと頬を膨らまして、ますます『私不機嫌です』とアピールしながら席へ案内するなのは。
席に案内されてから待っているのだが
「~~♪~~♪」
なのはとは対照的にニコニコ笑顔を浮かべているヴィータ。
「(アイス食い放題のプレミアムチケットまで後一歩だもんなー)」
ここのお題をクリア出来ればだが。
お?なのはがコッチに近付いてくる。
「どうぞ。これが翠屋のお題です」
テーブルの上に置かれたのは10個のシュークリーム。
これを早食いしろとでも?
「翠屋のお題は『ロシアンシュークリーム』だよ。この中に1つだけ本物のシュークリームがあるからそれを見極めて食べる事が出来たら合格、外れを引いたらやり直しだよ」
「本物を見極めろ…ねぇ」
見た目や匂いだけじゃ全く分からん。
「ちなみに外れは何が入ってんだ?」
「それは外れを引いたら分かるよヴィータちゃん(外れを引いて地獄を見るといいの)」
「…何か外れを引いてほしそうな感じだななのは(つか外れ引くのを期待してやがるな)」
何故か2人の間で火花が散っている。君等、A’s以降の原作ではそんなに仲悪く無かったよね?
「…とりあえず1個食ってみるか」
俺とヴィータは適当にシュークリームを1個選んで掴む。
「あ、駄目だよ勇紀君。参加するのは1人だけだから」
「……マジ?」
俺とヴィータで挑戦するものとばかり思ってた。今まで挑んできたお題は2人で挑戦出来てたし。
「2人で挑戦だとすぐに当たる確率が増えるからね。勇紀君かヴィータちゃんのどっちかが参加してもう1人は休憩って事になるかな」
休憩……今の俺にとっては何とも魅力的な言葉だ。
「見た感じ勇紀君、結構辛そうだよね?休憩したら?」
「それはヴィータにも意見を聞いてみないと…」
「勇紀、別に休んでてくれていいぞ。ここはアタシがやる!!」
ヴィータが参戦の意志を示す。
「…俺としては休憩できるのは非常にありがたいけど本当にいいのか?」
「ああ、アタシはポッ〇ーに手を出してない分勇紀よりは腹膨れてないからな」
その瞳は力強さで満ちている。
「…じゃあ頼むよヴィータ」
俺は掴んでいたシュークリームを元の位置に戻す。
「任せろ!!つー事だなのは!!時間が惜しいからさっさとやるぞ!!一発で正解を当ててやるぜ!!」
「了解…ヴィータちゃんだね。じゃあ早速その手に持ってるのを口に入れてみて」
「いくぞ!……はむっ!」
気合を入れてからヴィータはシュークリームを食べる。
モグモグ…
「………っっ!!!~~~~~~~~~っっっっ!!!!!」
少し食べるとヴィータの表情が変わる。
「お、おいヴィータ…大丈夫か?」
「~~~~~~~~~っっっっ!!!!!」(ブンブンブン!)
凄い速さで首を左右に振る。
「と、とりあえず水だホラ!」
「っっ!!」(ゴクゴクゴク!)
俺からコップを奪う様に取り、凄い勢いで水を飲み始める。
「外れを引いたみたいだねヴィータちゃん♪」
そんなヴィータの反応を楽しそうに見るなのは。
「なあ…外れって一体何が入ってるんだ?」
「大量のタバスコだよ」
……うわ~、そりゃキツイわ。
タバスコ入りシュークリームを食ったヴィータはやや涙目になっている。
「うう~……」
恨みがましい目でなのはを睨むヴィータ。
「今回は外れを引いた訳だけど、どうするの?まだ挑戦する?」
「あ…あひゃりめーだ!!」(あ…当たりめーだ!!)
「じゃあ新しい外れのシュークリームを用意しないとね♪」
大丈夫なのか?ちゃんと喋れてないみたいだけど…。
そんな俺の思いを余所にヴィータは再びロシアンシュークリームに挑むのだった………。
「~~♪~~♪」
上機嫌で俺の隣を歩くヴィータ。
「ホント、嬉しそうだな?」
「そりゃーな。念願のプレミアムチケットをゲット出来たんだ。嬉しいに決まってんだろ♪」
頬が緩々になっていくヴィータの顔。
「結局当たりを引くまで19個も食ったもんな」
シュークリームを食べては水を飲むという行為をひたすらに繰り返していたし。
ヴィータがあまりにも可哀相だったので翠屋を出てからすぐに治療魔法使ってあげたけど。
その後、全力ダッシュで東雲堂まで戻りスタンプ3つ獲得したのを提示して見事にアイス食べ放題のプレミアムチケットを手に入れる事が出来たのだ。
東雲堂に着いたのは2時57分。
俺達が到着した時点でマウンテンバイクとプレミアムチケット2組分は既に別の参加者に取られていたので最後のプレミアムチケットを何とか獲得。
時間も景品もギリギリだったので間に合って本当に良かった。
「それにしてもなのはの奴、アタシが外れを引く度に笑いやがって」
翠屋での一戦を思い出したヴィータは緩々だった表情から急にブスッとした表情へ変化して愚痴を零す。
そうだね。本人は必死に笑いを堪えようとしてたみたいだけど。
「つーか何でなのはの奴があんなにヴィータに対して敵対してたんだろうな?」
「……さあな」
「以前に何か恨みを買う様な事したんじゃないのお前?」
「アイツが昔の事を根に持つような奴かぁ?」
「…持たないよなぁ」
銀髪トリオ関係ならともかくとして…。
「しかし今日は本当に食い過ぎたわ」
何もしないとマジ太るな。夏休みの間、軽く基礎トレーニングでもするか?
「…その、すまねえな。今日はアタシの私用の為にワザワザ付き合わせちまって」
申し訳無さそうな表情を浮かべ、謝ってくるヴィータ。
「ああ、良いよ良いよ。何だかんだで少しは楽しめたし」
一応俺もプレミアムチケットは貰えたんだ。文句を言う理由なんて無い。
「いや、これじゃあアタシの気が済まねえ」
気にし過ぎだっつーのにこの子はもう…。
「だからアタシ個人から勇紀にやりたいモノがあるんだ//」
「はあ…」
「少し恥ずかしいからな。目ぇ瞑ってくれ//」
「ん…こうか?」
俺はその場で目を瞑る。
「う、動くなよ////」
言われた通りに動かず立っていると
「んちゅっ…////////」
「っ!!?」
突如唇に柔らかい感触を感じたので目を見開くとヴィータの顔がドアップで視界に入る。
「んんんっ……////////」
「んくっ…んっ……////」
しばらくしてヴィータから顔を離す。
「い、今のがお礼だ////////」
「そ、そっか…////」
お互いに向き合えず、俯いたまま会話する。
ヴィータもそうだが今の俺も顔が赤くなっているだろう。ただでさえ暑いのに更に体温が上がったように感じるし。
しばらくは無言のまま時間が流れ…
「じゃ、じゃあアタシは帰る!!今日は本当にサンキューな!!//////」
「き、気を付けてな!////」
俺の側から駆けていくヴィータを見送って、その背中が完全に見えなくなってから
「…さっさと帰ってシャワー浴びよう」
俺も踵を返して歩き出す。
ヴィータの奴……最後の最後でやってくれるよホント………。
~~あとがき~~
最近は残業のせいで執筆時間が減ってしまうのが辛いです。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。