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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第八十五話 ルーテシアと『聖帝』のおじちゃん

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-07-07 17:42:39 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:27354   閲覧ユーザー数:24294

 「フハハハハハハハハハハハ!!!!!」

 

 突然の笑い声が部屋中に響く。

 俺は目覚まし時計のアラーム音代わりに耳に入ってきた声のせいで意識が覚醒し、ゆっくりと瞼を開き上半身を起こす。

 目を擦りながら欠伸を噛み殺し、部屋を見渡すと

 

 「お師さんの許可なく俺を呼び出すとは何用だ小娘?」

 

 「うー?」

 

 可愛らしく首を傾げるルーテシアと、ルーテシアを見下ろすサウザーの姿があった。

 ………何でサウザーが出てんだよ?

 俺は本人に尋ねる事にする。

 

 「……おい、サウザー」

 

 「む?おお、お師さん、お目覚めになられましたか」

 

 「あ、おにーちゃんおはよー」

 

 トテトテという擬音が似合う歩き方で俺に近寄ってきたので頭を撫でてあげる。

 

 「……うー……にいしゃーん…むにゃむにゃ……」

 

 反対側ではジークが気持ち良さそうな寝顔を浮かべ眠っている。

 先程の笑い声でも起きなかった様だ。

 

 「とりあえずおはよう。で、サウザーは何で出ているんだ?」

 

 「そこの小娘が俺を呼び出したのですよ」

 

 ルーテシアが?

 

 「あのね。わたし、おえかきしたくておにーちゃんのおへやにえんぴつかりにきたの」

 

 鉛筆…確かに俺の机の上には鉛筆やらボールペン、マジックペンが置いてある。

 

 「そのときにつくえのうえのたまにてがあたっておちたらこのおじちゃんがでてきたの」

 

 「ぶふっ」

 

 思わず噴き出してしまった。

 くくっ…おじちゃん(・・・・・)……サウザーがおじちゃん(・・・・・)……。

 声を噛み殺して笑う俺。

 

 「フハハハハハ…この俺を、帝王であるこの俺を『おじちゃん』呼ばわりか。フハハハハハハ」

 

 高笑いするサウザー。ルーテシアはサウザーの方を見る。

 

 「ぬうんっ!!」

 

 ブオンッ!!

 

 「ちょ!?」

 

 笑ったかと思った次の瞬間、ルーテシアに向かって蹴りを突き出す。

 足はルーテシアの首筋でピタリと止められている。

 

 「うー?」

 

 その動作の意味が良く分からず、サウザーの足が添えられている方向とは逆の方に首を傾げ、疑問に思うルーテシア。

 

 「ふっ…避けようともせぬとは、俺が蹴りを寸止めする事を見抜いていたのか……小娘、その歳で大したモノだ」

 

 「てか何危ない事しとんじゃーーー!!!!!」

 

 スパーーーーン!!!!!

 

 宝物庫から取り出したハリセンを使い、俺は景気よくサウザーの頭を叩くのだった………。

 

 

 

 「ハア~…」

 

 「今日はやたらと溜め息を吐くんだね勇紀」

 

 謙介よ。貴様には分かるまい、俺の苦悩が。

 季節は7月。そして今は体育…水泳の授業中だ。

 もうクラス別に体育の授業を行っているため、銀髪トリオに会う時間は更に減って嬉しい。

 けど悩みが増えた。

 今までルーテシア(とジーク)に存在そのものを隠していたサウザーの存在がバレたのだ。

 メガーヌさんには話してはいたが実際にサウザーを見せた事は無い。

 

 「…結局、レスティアも一緒に紹介する羽目になっちゃったし」

 

 ルーテシアの落としたモンスターボールがレスティアの入ってる方なら良かったんだけどなぁ。

 

 「レスティア?紹介?何の事だい?」

 

 「……いや、何でも無い」

 

 「ふむ。まあ何に悩んでるのかは知らないけどアレを見て元気を出したまえよ」

 

 「アレ?」

 

 謙介が指差しているのは女子達が泳いでいるプールの5、6番コースだった。

 今日、ウィグル先生の儀式だが抜けた髭の数は4本。1周が25メートルなので4周、もしくは2往復で合計100メートル準備運動の代わりに泳がなければいけない。

 ちなみに3、4番コースは男子達が、1、2番コースは泳ぎ切った生徒が自由に泳げるコースだったりする。

 俺と謙介はちゃちゃっと泳ぎ切ったので現在はプールサイドに腰掛け、足だけをプールに浸けている状態で休憩中だ。

 準備運動さえ終われば自分のペースで休憩するなり泳ぐなり本人の意思で決めても良いとの事。

 サボり過ぎると怒られるが。

 

 「ほら、レヴィさんが泳ぎ切ったみたいだよ」

 

 謙介に言われ目を向けると丁度レヴィが泳ぎ切ってプールの端についたところだった。

 

 「相変わらず速いね」

 

 「てか準備運動代わりだっていうのに飛ばし過ぎだ」

 

 「レヴィさんも少しはペース配分考えたらいいのにね」

 

 全くだ。何事にも『全力全開』に取り組むのは、なのはの十八番だろうに。

 

 「ふっふ~ん。どうだフェイト、僕の方が速いんだぞ」

 

 「レヴィ、準備運動なんだから少しはペースを加減した方が良いよ」

 

 レヴィから少し遅れてフェイトも泳ぎ切り、2人揃ってプールから上がる。

 

 「あの2人にローウェルさんを加えた我がクラスの天使3人は本当、発育良いよね」

 

 …それに関しては同意する。

 ていうかシュテル達やなのは達もだけど、原作キャラは皆発育が良い。謙介が言うには一般中学生の発育の平均値を超えているんだとか。

 どうやって平均値とか調べたんだコイツは?

 

 「知りたいかい?」

 

 「……止めとく」

 

 犯罪の香りがする。

 

 「「「「「「「「「「杉村!!俺達に詳しく教えてくれ!!」」」」」」」」」」

 

 テメエ等いつから俺達の背後にいた!?

 

 「いいだろう。知りたい者は僕についてきてくれたまえ」

 

 謙介は大勢の男子生徒を引き連れて移動する。……そんな勝手な事してウィグル先生に怒られても知らんぞ俺は。

 しかし謙介が離れたおかげで1人になってしまった。

 

 「(……にしても、家は大丈夫かねぇ?)」

 

 現在、サウザーとレスティアはモンスターボールから出した状態で家に居る。

 もうバレたし、『いつもモンスターボールの中に入れっ放しというのもアレだから偶には出してやらないと』って思ったのが理由なんだが

 

 「(レスティアにサウザーの見張りを頼んでおいたし……)」

 

 『もしサウザーの行動が目に余る様ならモンスターボール使って閉じ込めといてくれ』ってお願いしといたから後はレスティアの判断に一任する事になる。

 ……今日は早く家に帰るか。

 アリシア、誠悟が部活に顔を出す様なら連絡しとかないとな。

 

 「ユ~ウ~♪」

 

 フニュッ

 

 「何難しい顔してるの?(うーん♪ユウの背中は温かいなぁ♪)//」

 

 プールサイドで腰掛けてた俺にいつの間にやら近付いて来ていたレヴィが背後から抱き着いてくる。

 水着越しに感じる柔らかい感触が…。

 

 「(ううっ…)//」

 

 コイツは無自覚で抱き着いてるんだろうなぁ。

 

 「あれ?反応無い?ユウ、起きてるよね?」

 

 「……流石に水泳の授業中に居眠りはしないぞ(出来れば離れてほしいんだが…)//」

 

 全く…人が思春期迎えてるのを知らないからとはいえ抱き着かれてるコッチの身にもなってくれ。

 

 「でもレヴィが言う様に眉間に皺が寄ってたよ。何考えてたの?」

 

 フェイトが尋ねながら俺の隣に腰を下ろし、俺同様にプールに足だけつける。

 

 「……サウザーの存在がバレた」

 

 「へ?」

 

 「あー…成る程ねー……」

 

 目を点にするフェイトと、『納得』と言わんばかりのレヴィ。

 

 「アイツは俺以外には容赦しないから……それが子供であってもな」

 

 口にする度、不安が押し寄せてくる。

 レスティア…マジ押し付けた様でスマン。

 俺は今ここにいないレスティアに対し、心の中で謝るのだった………。

 

 

 

 ~~レスティア視点~~

 

 サウザーの存在がバレたのを理由に私のマイスターである勇紀は家に居るメガーヌ、ルーテシア、ジークに私の事も紹介してくれた。

 それと学校に行っている間、あの馬鹿が何か問題を起こせばモンスターボールに戻していいと言っていたので私は馬鹿の行動を監視している。

 と言っても昼食も食べ終えた今の所、人を見下す態度を取っている事以外に問題は起こしていないのでこのまま勇紀が帰って来るまで大人しくしてくれたらいいのだけど…。

 

 「……何処に行くつもり?」

 

 「貴様に言う必要があるのか?」

 

 サウザーの向かう先は玄関。どうやら外を出歩こうとしてるみたいだけど…。

 

 「貴方は面倒事しか起こさない。確認するのに十分な理由だけど?」

 

 この馬鹿の考えは原作の中だけでしか通じないという事を理解して貰いたいわ。

 

 「フハハ!他人の事など知った事か!俺は誰にも縛られぬ。故に、貴様に言う必要が無ければ貴様の言葉に従うつもりも無い」

 

 ……やっぱりモンスターボールの中に戻すべきね。

 私は勇紀から預かっていたモンスターボールを使う。

 

 「ぬお!!?小娘!!何故貴様………」

 

 サウザーは言葉を全て言い終える事無く目の前から消える。

 さて、勇紀に連絡しておかないと。

 私は念話でサウザーをモンスターボールに戻した旨を報告する。

 

 「《……という事よ》」

 

 「《ハア~…やっぱ暴走しようとしたか》」

 

 「《今日はもうこのままにしておくわね。外に出したらどうなるか…》」

 

 「《そうしてくれ。流石に問題起こしてリスティさんや警察の人達に迷惑掛けたく無い》」

 

 その言葉を最後に念話を終える。と同時にリビングに姿を現したのはルーテシア。

 

 「あれー?おじちゃんはー?」

 

 おじちゃん……サウザーの事よね?

 

 「サウザーならいないわよ」

 

 「えーーー!?」

 

 大声を上げるルーテシア。

 

 「わたし、おじちゃんとあそびたい!!!」

 

 そして私は我が耳を疑った。

 

 「遊びたいって…サウザーと?」

 

 「うん!!おじちゃんとあそびたいの!!」

 

 …どうしようかしら?

 アレをまた出したら絶対に面倒事になりそうだし。

 基本勇紀の命令しか聞かず、他の者を見下すサウザーがルーテシアと遊ぶなんて有り得ないと思うのだけれど。

 

 「ルー、サウザーじゃなくて私とじゃ駄目かしら?」

 

 「おねーちゃんと?」

 

 首を傾げるルーテシアに私は頷く。

 

 「うー…でもおじちゃんともあそびたい!みんなであそびたい!!」

 

 「私だけじゃ駄目?」

 

 「やー!おじちゃんもいっしょがいいー!!」

 

 私は頭が痛くなってきた。

 ルーテシアはおそらく引き下がらない。けどサウザーを再び出した時のリスクを考えると…。

 

 「(……勇紀に判断して貰うしかないわね)」

 

 私は再び勇紀に念話を飛ばし、彼に決断を任せるのだった………。

 

 

 

 ~~レスティア視点終了~~

 

 現在、机に顔を突っ伏させている俺。

 レスティアから聞いた内容は俺をとことん悩ませるモノだった。

 

 「(あのルーがサウザーと遊びたい…ねぇ)」

 

 正直、ルーテシアの言う様に遊ばせてやりたいんだが、相手はあの聖帝様だ。

 心配するなという方が無理だろう。

 後、ジークも大丈夫だろうか?

 俺がいる間は唯我独尊(オンリーワンフラワー)使って『エレミアの神髄』を抑えていられたが今俺は学校だ。

 サウザーの殺気を当てられて『エレミアの神髄』が発動してたら我が家は大変な事になる。

 …それ以前にサウザーが南斗鳳凰拳でジークを返り討ちにしてそうだし。

 やべ、レスティアに掛かる負担が半端ないぞ。

 

 「《それで勇紀、どうしたらいいかしら?》」

 

 今は昼休みが終わり5時間目の授業が始まる直前。

 

 「《……レスティア。サウザーを出してやってくれ》」

 

 「《貴方がそう言うなら出すけど、本当にいいの?あの馬鹿、絶対に外出するわよ?》」

 

 そこへルーテシアがついていく……と。

 出来る事なら出したくない。けど…

 

 「《ルーやメガーヌさん、ジークに迷惑掛ける様なら即効でボールの中に戻せ。例えルーがお願いしようともだ》」

 

 最悪、早退してレスティアの支援とサウザーを黙らせる役目は俺が受け持つ事にする。

 

 「《了解。後、ルーの身を守るために私が側についておくわね》」

 

 「《お願いします》」

 

 再び念話を終え、突っ伏していた顔を上げると丁度先生がやって来て5時間目の授業が始まるのだった………。

 

 

 

 ~~レスティア視点~~

 

 勇紀は激しく葛藤してから決断を下したみたいね。気持ちはよくわかるわ。

 

 「おじちゃん!!あそぼ!!あそぼ!!」

 

 「フハハハ!!この俺が小娘と戯れろと?冗談を言うな」

 

 再び解放したサウザーのズボンの裾をクイクイと引っ張ってルーテシアがせがむ。

 ……この子、本当にサウザーを怖がらないのね。

 

 「あわわ……」

 

 ジークは柱の影からコッチを見ては『あわあわ』言って落ち着きの無い様子を見せている。

 出来ればこの場を離れてくれないかしら?今『エレミアの神髄』が発動してしまったら勇紀が頭を抱えてしまう。

 ジークを暴走させないようにするには、あの子とこの馬鹿を引き離すのが一番。

 

 「ふっ、いつまでもここにいても仕方が無い」

 

 そう言って玄関に向かうサウザー。

 やっぱり外に出る気なのね。

 

 「おじちゃん、どこいくのー?」

 

 その後をトコトコと追いながらサウザーに尋ねるルーテシア。

 

 「ふっ、貴様に答える義理は無いな」

 

 「おそといくのー?ならわたしもいくー!」

 

 笑顔で答えるルーテシアの姿を見て私も頭痛が起きた様な感覚に陥る。

 何でここまでサウザー気に入ってるのこの子!?

 

 「ほう?……よかろう。聖帝であるこの俺と共に来る事を許そう」

 

 しかも認めた!?

 

 「(これ……私も行かないといけないわよね?)」

 

 軽く溜め息を吐いてから私も家を出るため、2人の後を追い掛ける。

 

 「あの……レスティアちゃん?」

 

 そこへ声を掛けてくるのはルーテシアの母親であるメガーヌ。

 

 「ルーの事、任せても良いかしら?」

 

 そう言ってくる彼女の表情は凄く不安そうだ。

 

 「ええ、勇紀にも頼まれてるしアレのせいで何か事件にでも巻き込まれたら大変だしね」

 

 メガーヌの言葉に頷き、少し話してから私も家を出るのだった………。

 

 

 

 「……それで、どこに向かうつもりなの?」

 

 ルーテシアと手を繋ぎながら歩く私は先頭を歩くサウザーに尋ねる。

 

 「知らぬな」

 

 「……外に出た目的は?」

 

 「お師さんが治めるこの街を見て回るためだ」

 

 勇紀が治めてる訳じゃないわよ。

 

 「もし下らんことでお師さんに迷惑を掛ける様なクズがいれば俺自らが手を出し、片付けておかねばならん」

 

 現在進行形で勇紀に迷惑掛けてるのは間違い無く貴方だと言えるわ。

 

 「おじちゃん、こうえんはあっちだよ?」

 

 どうやら一緒に外に出たルーテシアは公園に行くものだと思っていたみたいね。

 

 「そんな場所に興味は無いな」

 

 ルーテシアの言葉をバッサリと斬り捨て、ただ適当に街中を歩き回る。

 

 「(……よく考えたら私もサウザーも海鳴の街を歩き回るのは初めてなのよね)」

 

 普段はモンスターボールの中にいるので外を見る事が出来ず、周囲の音や学校・街中での他人の声が聞こえてくる程度だから。

 

 「(…何だかサウザーを監視しなければいけないのに散策出来る事を嬉しく思う自分がいるわね)」

 

 そう思うと勇紀には悪いのだけれど、サウザーの存在がバレて私も一緒に外に出られた事を喜ぶべきなのかしら。

 決して表情には出さない様にしているが足取りが若干軽いのが理解出来る。

 

 「(…今後は出来るだけ外に居させてもらう様、勇紀に頼んでみるのもいいかも)」

 

 「おねーちゃん、うれしそうだね?」

 

 私の顔を覗き込む様にしながらルーテシアが尋ねてくる。

 

 「そうかしら?」

 

 「うん!しゅてるおねーちゃんがうれしそうなときとおなじかんじするもん!」

 

 シュテルと同じ……ね。

 雰囲気で私の心情を察するなんてやっぱりこの子は大物なのかしら?

 そんな事を考え、ルーテシアと繋いでいる手の力を少し強めながらサウザーの後をついていくといつの間にか駅前の方に到着していた。

 

 「あ、あれ!!」

 

 ルーテシアが指差すのは一件のお店。

 

 「おにーちゃんたちがかってきてくれるおいしいあいすのおみせだよ!」

 

 店の看板には『東雲堂』と書かれている。

 …そう言えば時々、勇紀も『ちょっと東雲堂に行ってくる』って言ってるのを聞いた事があるけど…

 

 「(ここがそのお店なのね)」

 

 店の前には平日の昼過ぎにも関わらずそこそこのお客さんが列を作り、買う順番を待っている。

 

 「折角だし、私達も買って行きましょうか?」

 

 「あいすかうの!?でもわたし、おかねもってないよ」

 

 「大丈夫よ。家を出る前にメガーヌから若干お金を受け取っているから」

 

 そう言ってルーテシアに1000円札を2枚見せる。

 

 「ついでに勇紀達の分も買っていきましょう。きっと喜んでくれるわ」

 

 「ほんと!?おにーちゃん、いっぱいいいこいいこしてくれるかなぁ?」

 

 「きっとしてくれるでしょうね。……という事でサウザー、貴方もここで少し待ちなさいな」

 

 「小娘…貴様、誰に命令している?」

 

 「貴方よ馬鹿。『ここで私達を待つ様に』って今、勇紀からの命令が届いたわよ」

 

 これはウソだけど。『勇紀が命令した』とでも言わないとサウザーは絶対に単独行動をする。

 かと言ってルーテシア1人で行動させる訳にはいかない。

 勇紀には後で連絡して口裏を合わせて貰いましょう。

 

 「む?お師さんからの命令か。ならば従わぬ訳にはいかんな」

 

 どうやら効果は抜群ね。

 もっともサウザーは列に並ばず、少し離れた場所からコッチを見ているだけ。

 列で並んでいる人達だけじゃなく通行人の人達もサウザーの圧倒的な存在感に威圧されている。

 チラチラと盗み見てはいるが目線が合うとサウザーの目力に耐え切れず、慌てて逸らす。

 ていうかあの聖帝の服が目立ち過ぎよ!!

 

 「おじちゃん、あいすいらないのかな?」

 

 「……並ばないって事はいらないんじゃないかしら」

 

 むしろあんなのが店内に来たら店員さんが大騒ぎするかもしれないし。

 私は時折、サウザーが勝手に移動しないか監視しながらゆっくりと前に進む列に続く。

 

 「……ルー、皆の分のアイスを1人で買える?」

 

 「ひとりでー?」

 

 「そ、私はサウザーが勝手に何処かへ行かないか見ておかないといけないから」

 

 先程サウザーは納得したとは言え、絶対に単独行動しないという保証は無い。

 

 「おじちゃん、まいごになっちゃうから?」

 

 「そうそう」

 

 アレが迷子になって街を1人でウロついたら大変な事になるから。

 

 「うー…わかった。わたし、ひとりであいすかってくる」

 

 「良い子ね。アイスの種類は全部バニラにしておきましょう」

 

 「はーい」

 

 ルーテシアの頭を優しく撫でてあげ、お金を手渡す。

 それから少ししてルーテシアは1人で店内に入って行く。その間私はサウザーの監視と店内のルーテシアの様子を交互に見ながらジッと待つ。

 

 「……………………」

 

 結局サウザーは何処にも行く事無く、ルーテシアがアイスを買い終えるまでその場で待っていた。

 

 「おじちゃん!!おじちゃん!!」

 

 「何だ小娘?」

 

 「はいこれ!おじちゃんのぶんだよ!!」

 

 サウザーに近寄ったルーテシアが箱から取り出したカップのアイスを手渡した。

 …家に帰ってから渡さないとアイスが溶けるわよ。

 けどルーテシアはその事に気付かず、サウザーに手渡す事が出来てご機嫌の様子だ。

 

 「……ふん」

 

 ……しかし意外ね。あのサウザーだったらルーテシアの目の前でアイスを捨てる様な態度を取って泣かせるんじゃないかと思っていたのだけど。

 

 「はやくかえっていっしょにたべよーよ!」

 

 「帰るなら1人で帰れ小娘。俺はまだ全然歩き回っておらんのでな」

 

 どうやらサウザーはまだ街を散策する様だ。

 けど箱の中にドライアイスが敷き詰められているとはいえ、アイスが溶けてしまうかもしれないのも事実だし…。

 

 「おじちゃん、まだどこかいくの?」

 

 ルーテシアは尋ねるがサウザーは無視して踵を返し、再び歩き始める。

 

 「あっ!おじちゃん、まってー!!」

 

 ルーテシアがサウザーの後を追うので私も必然とついていく形になる。

 それからしばらくは街を散策するサウザーに私とルーテシアがついていく形で歩き回るのだった………。

 

 

 

 街のあちこちを散策し、気が付けば公園に来ていた。臨海公園では無く街中の小さな公園だ。

 

 「おじちゃんおじちゃん!!ここがママといっしょによくくるこうえんだよ!!」

 

 もともと公園に来たがっていたルーテシアは公園に着くや否や目をキラキラ輝かせて言う。

 

 「ふん、小さな公園だ」

 

 鼻を鳴らし、全く興味を示そうとしないサウザー。

 

 「あっ、るーちゃんだ!」

 

 「ほんとだ、るーこがいたぞ!」

 

 そんな時、私達の背後から何人かの男の子、女の子が声を上げてルーテシアの周りに集まってくる。皆、ルーテシアと同い年ぐらいの子達だ。

 

 「「「るーちゃん、こんにちは」」」

 

 「「「おっするーこ、きょうはおかあさんといっしょにきたんじゃないのか?」」」

 

 「みんなーこんにちはー。きょうはね、おじちゃんとれすてぃあおねえちゃんといっしょにあそびにきたんだよ」

 

 …いつの間にか私も遊ぶメンバーにカウントされていた。別に嫌な訳じゃないけどね。

 

 「そうなんだ。はじめましておじさん、おねえさん」

 

 「よろしくな!おっちゃん、ねえちゃん!!」

 

 今度は私達の方を見て挨拶してくる子供達。

 

 「初めまして。私の名前はレスティアというの。ルーテシアと仲良くしてくれている様でありがとうね」

 

 しかしルーテシアは自分と同い年の友達を、ちゃんと作っていたのね。

 

 「鬱陶しいガキ共だな。俺の機嫌を損ねぬ内に去れぃ」

 

 心底鬱陶しそうに子供を見ながらサウザーが口を開く。

 

 「おっちゃんのふく、かっこいい!!」

 

 「おっちゃん、そのふくどこでうってるんだ?」

 

 「おっちゃんって、るーこのおとうさんなのか?」

 

 目をキラキラと輝かせながら子供達はサウザーに質問する。

 男の子達におっちゃん(サウザー)大人気ね。

 

 「……………………」(イライラ)

 

 …マズいわね。当の本人は徐々に苛立ちが募り始めてる。

 

 「《サウザー…分かってると思うけど子供に手を出そうなんて思わない事ね。流石に子供に手を出せば勇紀も黙ってはいないと思うわよ》」

 

 サウザーに念話で釘を刺しておく。

 

 「《……ふん!分かっておるわ》」

 

 本当に分かってるのかしら?

 

 「おっちゃん!おれたちといっしょにあそぼうぜ!!」

 

 「さっかーやろ!さっかー!!」

 

 「えー!?わたしたちさっかーにがてだよぅ」

 

 「ままごとしようよままごと」

 

 「うっせー!ままごとなんてようちなことやってられっか!!」

 

 「そうだ!おれたちはおっちゃんとさっかーするんだ!!」

 

 ……この子達もサウザー相手に物怖じしないわね。

 

 「小僧共。聖帝であるこの俺が貴様等の下らん児戯に付き合えと?馬鹿も休み休みに言え」

 

 「「「「「「せいてい?」」」」」」

 

 『聖帝』という単語に反応し、首を傾げる子供達。

 

 「おっちゃん!!『せいてい』ってなんだ?」

 

 「ふっ、『聖帝』とは神に最強の肉体を与えられ、南斗聖拳最強と称される南斗鳳凰拳を伝承したこの俺の事を言うのだ」

 

 「「「へえ~~」」」

 

 男の子達はサウザーに向ける瞳を更に輝かせ、女の子達は

 

 「わたししってる。ああいうこというひとって『ちゅうにびょう』っていうんだよね」

 

 「えっ!?るーちゃんのおじさん、びょうきなの?」

 

 「おじちゃん!からだのぐあいわるいの!?」

 

 「ぷっ…」

 

 中二病扱いされ、ルーテシアにまで心配されてるサウザーを思うと吹き出してしまった。

 確かにこんな平和な場所であんなこと言ってたら中二病扱いされるわね。

 

 「なんかかっこいいな!!」

 

 「おっちゃん!おれも『せいてい』っていうのになれるかな?」

 

 「おれも!おれも!」

 

 「フハハハハハ!!『聖帝』になりたいだと!?この俺を前にしてよくそんな事が言えるものだ!!」

 

 男の子達の言葉を聞いたサウザーは笑い、ルーテシアや女の子達はきょとんとしている。

 

 「(あんなのになりたいだなんて…)」

 

 男の子達の将来が心配だわ。

 

 「おっちゃん!どうやったら『せいてい』になれるのかおしえてくれよー!!」

 

 「「おしえてくれよー!!」」

 

 「ふん、貴様等の様な武の心得も無い者に『聖帝』と名乗れる程の力を持ち合わせている訳がなかろうが。身の程を弁えい」

 

 サウザーは見下す様な視線で自分に群がる男の子達を一瞥する。

 しかし男の子達も諦める素振りを見せず、必死に『聖帝』へのなり方を請う。

 

 「ならその「ぶ」ってやつもおしえてくれよー!!」

 

 「「おしえてくれよー!!」」

 

 「フハハ!!残念だが我が南斗鳳凰拳は一子相伝の拳法。素質の無い貴様等に教える事は出来んな。だが、俺の技を見て盗む事は許そう。来るがいい、我が拳を特別に見せてやる」

 

 そう言って踵を返すサウザーに男の子達は後をついていく。

 

 「……って、待ちなさい!!何処に行くつもり!?」

 

 「知れた事。この街に巣食う汚物を探し、消毒してくるまでよ」

 

 「ふざk「アホな事すんな!!」……!」

 

 凄まじいスピードで接近し、手に持ったハリセンで彼を叩いたのは私とサウザーのマイスター、勇紀だった………。

 

 

 

 ~~レスティア視点終了~~

 

 俺はルーテシア、サウザー、レスティアを引き連れ、家に帰って来ていた。

 どうしてもサウザーの行動に不安を覚え、学校を途中で早退してサウザー、レスティアの魔力反応を探して現場へ急行した。

 そこで聞こえたのはサウザーが子供達に南斗鳳凰拳を見せるため、何処かへ行こうとしていたのですかさずハリセンで叩いてその行動を阻止した。

 あのまま見逃していたら見知らぬ誰かが鳳凰拳の餌食になっていただろう。それを事前に食い止める事が出来て本当に良かった。

 

 「サウザーは単独行動禁止な」

 

 とりあえず、今後のサウザーの行動方針の大前提として俺が許可しない限り俺かレスティアと行動を共にさせる事にしないと。

 レスティアには本当に迷惑を掛けて申し訳無く思う。

 

 「むぅ……しかしお師さん、この街にお師さんの害になるネズミがいる様ならば今の内に片付けておかないと…」

 

 「この海鳴市内で俺個人を狙う様な犯罪者なんていないだろ?」

 

 少なくとも地球ではそこまで目立った事をしてるとは思えないので自分の名が裏世界で有名だとは思わん。

 せいぜい『長谷川泰造の一人息子』程度だろう。

 あるとしたら管理世界で逮捕した違法魔導師ぐらいだがそいつ等は皆、拘置所に収容されている。

 

 「ですが……」

 

 まあ、コイツが本気で俺の身を案じてくれている事はちゃんと理解しとるよ。ただ、人を見下す態度もそうだが手加減せずやり過ぎるのが問題なんだよ。

 

 「とにかく俺自身もちゃんと自分の身を守れるぐらいには戦えるから」

 

 「……分かりました。ですが単独行動の許可はいただけないでしょうか?」

 

 「いや、普通に無理と言わざるを得ないんだって」

 

 「そこを何とかお願いします!!」

 

 サウザーは土下座をして俺に頼んでくる。

 ちょっと驚いた。いくら相手が俺だとはいえ、あの『退かぬ』『媚びぬ』『省みぬ』が信条のサウザーが躊躇せず土下座したもんだから。

 

 「おにーちゃん、おじちゃんもおそとにだしてあげて」

 

 ルーテシアからまさかの援護射撃!!?

 

 「……ルーはサウザーの単独行動に賛成か?」

 

 「わたし、おじちゃんといっぱいあそびたい!!みんなも『あそびたい!!』っていってた!!」

 

 確かに子供(男の子達)には物凄い人気あったし。

 てかサウザー相手に『おじちゃん』『おっちゃん』『おじさん』呼ばわりするルーテシアや海鳴の子供達が逞し過ぎる。

 

 「けどなぁ……」

 

 俺は難しい顔で考える。

 何か揉め事に巻き込まれたら絶対武力で解決するに違いない。過剰防衛というオマケ付きで。

 けどルーテシアはサウザーとメッチャ遊びたがってるし。

 

 「《どうすれば良いと思う?》」

 

 念話でレスティアに意見を求める。

 

 「《最終的には私は貴方の判断に従うけど、そうね……何らかの制限処置はするべきじゃないかしら?》」

 

 制限…ねぇ。

 うーん……。

 しばらくの間考え込む。そして…

 

 「サウザー、お前が単独行動するにあたって俺の出す条件を守れるのなら認めても良い」

 

 「本当ですか!?」

 

 ガバッと床に擦り付けていた頭を上げ、俺を見る。俺はサウザーに軽く頷き条件を提示する。

 

 「条件と言うのはお前が誰彼構わず暴力で屈服させようとするのを禁じる事だ。自分からケンカを吹っ掛けるのは当然として絡まれたとしても基本手を出すな。お前は絶対加減せずやり過ぎるだろうし。てか南斗鳳凰拳は禁止だ」

 

 「南斗鳳凰拳を禁止…ですか?」

 

 「ああ。(まず無いと思うが)どうしても自分の手に負えない相手と相対した時以外は絶対にだ」

 

 純粋な体術でも相当なモンだからそこも極力、力を抑えてという条件も付けておく。

 

 「分かりました!お師さんの言う事を絶対に守り抜くと誓います」

 

 「ん、じゃあ許す。それからサウザーも好きな空き部屋使ってくれていいぞ」

 

 「ご厚意感謝致します。それでは」

 

 頭を深く下げ、リビングを出て行く。

 

 「…本当に良かったの?」

 

 レスティアが問い掛けてくるので俺は小さく溜め息を吐いてから

 

 「…ああは言ったけど、本当に何もしないかしばらくはアイツの単独行動見張っててくれないか?」

 

 『サウザーにバレない様に』と付け加えるとレスティアは素直に頷いてくれた。

 …ええ子や。文句の1つぐらい言ってくれても罰は当たるまいに。

 

 「それとレスティアも好きな空き部屋使ってくれ。お前等を連れ歩く時以外はモンスターボールの外に出しておくから」

 

 「分かったわ」

 

 そう言ってレスティアも立ち上がり、静かにリビングを後にする。

 

 「じゃあ私は夕食のための買い物に行ってくるわね」

 

 「ママ、わたしもいくー」

 

 メガーヌさんは玄関に向かいその後をルーテシアが追い掛ける。リビングには俺1人だけ。

 

 「……もう、コッチに来てもいいぞジーク」

 

 そう言うと柱の影から顔だけ覗かせて見ていたジークがリビングに入り、俺の膝の上に乗って胸元に顔を埋める。

 

 「何つーか…そんなにサウザーが苦手か?」

 

 「だって…あの人の威圧感、半端や無いんやもん」

 

 「……出来るだけ抑えてほしいとは俺も思ってるんだけどなぁ…」

 

 『よしよし』とジークの頭を撫でながら言う。

 

 「兄さん、どないしよ?このままやったら(ウチ)『エレミアの神髄』発動させそうで怖い」

 

 「そん時はちゃんと止めてやるから。家が壊れたとしても修正天使(アップデイト)使えば元に戻せるし」

 

 「…兄さんが家におらん時は?」

 

 「出来るだけサウザーに近付かないでくれ。今現在忍さんにお願いしてる物(・・・・・・・)が完成すれば何とかなると思うから」

 

 俺が忍さんに頼んだのは機械的に唯我独尊(オンリーワンフラワー)を発生させる『『能力』無効化装置(デフォリアント)』又は『枯れ葉剤』と呼ばれる装置だ。『Hyper→Highspeed→Genius』原作にも登場したアイテムであり、原作の内容を思い出した時に『コレならいけるんじゃ?』と思って忍さんに打診してみた。

 忍さんは大乗り気ですぐに開発に取り掛かってくれた。

 アレをジークの身に着けさせれば『エレミアの神髄』は抑えられる筈だからな。

 

 「……うん」

 

 不安そうにだが頷いてくれたジーク。

 それからシュテル達が家に帰って来るまでジークは俺にしがみついたまま離れようとしなかった………。

 

 ~~あとがき~~

 

 サウザーのおじちゃんは海鳴の子供に何故か好かれやすい性質です。

 


 
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