No.598017

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ四十六


 お待たせしました!

 今回は前回より少し時間が経った所から

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2013-07-15 19:07:26 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:5071   閲覧ユーザー数:3892

 

 

 

「さあっ、それでは本日ただ今より戦勝祝いの無礼講じゃ!!皆、思う存分

 

 飲んで食うが良いぞ!」

 

 陛下のその一言で宴が始まる。何の宴かというと、五胡との戦に勝利を祝

 

 う祝勝会である。

 

 この間の孫呉との会談より数日後、幽州を守る華雄から『五胡の軍勢が国

 

 境を越えて進軍せり』との伝令が洛陽に届き、陛下の号令で全ての諸侯が

 

 集結して戦いに臨み、五胡の総大将を討ち取った上、部族の長の大半を捕

 

 虜にするという大勝利に終わったのであった。

 

 そして洛陽に着いて戦後処理が終わるや、すぐさまこのような状況となっ

 

 たのである。

 

 宴に臨む皆の顔には安堵の表情が浮かんでおり、それだけ五胡との戦に勝

 

 利した事に対する喜びの大きさが見て取れたのであった。

 

 

 

 

 

 

「北郷殿、この度はお疲れ様でした」

 

 俺が一人で酒を飲んでいる所にそう話しかけてきたのは愛紗であった。

 

(彼女からも真名は預かり済である)

 

「五胡の総大将を討ち取った一番手柄の愛紗程じゃないけどね」

 

「そんな…私などはたまたま目の前に敵の総大将がいただけの事。それまで

 

 の北郷殿や他の皆様のお膳立てがあってこそですよ」

 

「そんな事は無いでぇ~、戦場での愛紗はかっこよかったしなぁ~」

 

 そう言って愛紗にしなだれがかっているのは霞である。戦場での愛紗の武

 

 を見て以来、ずっとこうなっている。正直、ちょっと複雑だが。

 

「一刀~、そんなにウチが愛紗と仲良くしてるのがおもろないかぁ~?」

 

 …うっ、顔に出てたか?決しておもしろくないとかいうわけでは無かった

 

 のだが。すると、

 

「大丈夫やで、一刀がシたい時は何時でも閨に行くさかいな」

 

 霞は俺の耳にそう呟いて酒盛りの輪に戻っていった。

 

「どうされました?随分と顔が赤いですけど…」

 

「あ、ああ…ちょっと飲みすぎたかな。ははは…」

 

 急にそんな事を言われたので顔が赤くなっていた所を愛紗にツッこまれて

 

 慌てて酒のせいにしてごまかした。

 

 

 

「一刀お兄様♪」

 

 愛紗が去った後、そう言って俺の所へ来たのは蒲公英だった。

 

「おう、蒲公英もご苦労さん。さすがは西涼の騎馬軍団、大活躍だったな」

 

「ふふ~ん、当然でしょ。何せ何時もあいつらと戦っているわけだし」

 

「姜維さんの作戦が凄かったって朱里や冥琳も言ってたけどね」

 

「おや、お褒めに預かり光栄ですね」

 

 そこに当の姜維さんがやってくる。その横には一人の男性がいた。もしか

 

 してこの人が…?

 

「お初にお目にかかります、北郷様。馬騰様が家臣、龐徳と申します。どう

 

 かお見知りおきの程を」

 

「龐徳さんはね~、真尋の旦那さんでもあるんだよ」

 

 蒲公英がそう言い添えると、二人は顔を赤くしていた。

 

「なるほど、姜維さんが前より柔らかくなった感じがするのは、龐徳さんの

 

 おかげって事かな?」

 

「なっ…北郷殿、確かに龐徳は優しくはあるが、別に私がどうこうと変わっ

 

 たわけでは…」

 

「はははっ、何時も怒られてばかりですしね」

 

「龐徳…だからもう少しあなたは威厳というものを持ってください。仮にも

 

 他国の要人を目の前にしてそういう態度では我々がなめられるのですよ!」

 

「いや、それはその…分かってはいるのですが、なかなか…」

 

「だ・か・ら!それがいけないと言っているのです!!」

 

 二人は俺と蒲公英を放って夫婦喧嘩を始めてしまった…いや、喧嘩という

 

 より龐徳さんがただ怒られているだけだが。

 

 

 

「なあ、蒲公英…本当にこの二人仲良いのか?」

 

「うん、だって龐徳さんの顔見てよ」

 

 蒲公英にそう言われて見ると…確かに龐徳さんの顔からは嫌そうな感じが

 

 まったくと言っていい程見受けられない。この人実はMなんじゃないかと

 

 思ってしまう位だ。対する姜維さんからも喜びのオーラしか感じられなか

 

 った。どうやらこれがこの夫婦のあり方なのだろう。

 

「ごほん!まあ、それはともかくだ。北郷殿、何時ぞやはあなたや諸葛亮殿

 

 に大変に無礼な態度と取って申し訳なかった。一度はちゃんと謝りたいと

 

 思っていたのです」

 

「俺は別に気にしてませんよ。ただ、陛下に対しての態度だけはいただけな

 

 いと思いましたけどね」

 

「陛下には此処に来て一番に謝罪に赴きました。こっちが拍子抜けする位に

 

 あっさりと許してくださり『これからも変わらず夫婦共に仲良く馬騰に仕

 

 えるが良いぞ』とのお言葉もいただきました」

 

 へぇ…こりゃまた本当にあっさりと。まあ、確かに陛下はあまり過ぎた事

 

 にぐだぐだと何かを言う事は少ない人だが。

 

「そういえば桃香達には会ったのか?今こっちに来ているみたいだけど」

 

「はい、此処に来る前に…しかし、北郷殿もお人が悪い。桃香殿が生きてい

 

 るのを黙っておられるとは」

 

「あの時は桃香を擁立した者達の動きを封じる必要があったのでね」

 

 しかし、桃香の事を真名で呼んでいる所を見ると、昔仕えていた時以上の

 

 繋がりになったようで、めでたい限りだ。

 

(俺も桃香達から既に真名は預かっている)

 

 

 

「むっ…姜維か」

 

 そこに愛紗が戻って来て、姜維さんの姿を見るなり険悪な顔つきになる。

 

「ご無沙汰しております、関羽殿。今回はお手柄でしたね」

 

 姜維さんも挨拶はするが、何だかギクシャクした感じだ。

 

「ああ、お前もすっかり葵様のお気に入りのようで何よりだな」

 

 愛紗の態度も何処か攻撃的な感じだ。

 

 そのまま二人の間の空気が悪くなりそうになるその時、

 

「初めまして関羽様、私はこの姜維の夫の龐徳と申します。お噂はかねがね。

 

 妻も関羽殿の事は何時も気にかけてまして、今日はこうして会えて嬉しき

 

 限りのようです」

 

 龐徳さんがこれでもかという位の低姿勢で間に入ってきた。

 

「は?…はぁ、そう…なのですか?」

 

「ちょっ、待ちなさい、龐徳。何時私が関羽殿の事を気にかけたと…」

 

「えっ!?あれは確か一昨日の閨で…」

 

「わぁーーーっ、わぁーーーーーっ、わぁーーーーーーーーっ!!」

 

 龐徳さんのその姿勢に愛紗はすっかり拍子抜けな表情となり、姜維さんは

 

 龐徳さんが何か言いかけようとしたのを珍しい位の姦しさで遮っていた。

 

「龐徳!時と場所と場合を考えて発言しなさい!」

 

「そうは言ってもですね…やはり聞かれた事にはちゃんと答えるべきかと…」

 

「そ・れ・で・も!です!!」

 

 そんな二人の様子を見ていた愛紗は、

 

「ふふ、仲の良い事だな。私も前からそのように心の底をさらけだすように

 

 喧嘩出来ていたら、もっと良い関係が築けたのかもしれないな」

 

 そう笑顔で姜維に話しかけていた。

 

「ふふ、あなたからそのような言葉を聞けるとは思いませんでした。我らの

 

 領土は境を接するのですから、これから何かとお会いする機会はございま

 

 しょう、よろしくお願いします」

 

 姜維さんもそう言葉を返し、二人は真名を交換するまでになっていた。

 

 その様子を龐徳さんは満足そうに見つめていた。

 

「龐徳さん、もしかして二人がこうなるようにわざとあのような低姿勢で臨

 

 まれたのですか?」

 

 俺がそう問いかけると龐徳さんは笑ってごまかしていたが…さすがに姜維

 

 さんの伴侶になられただけの事はあるようだ。

 

 

 

「ほう、随分と盛り上がっているようじゃな」

 

 そこへ陛下が目立ってきたお腹をかばうようにさすりながらやってきた。

 

「こんな所までやってきて大丈夫なんですか?」

 

「ほう…そう思うのならそちらから妾の所に来る位の甲斐性は見せて欲しい

 

 ものじゃがな。お主の父御は随分と薄情よなぁ」

 

 陛下は皮肉をこめながら、そうお腹の子に話しかけていた。

 

「いや、その…別に放っておいたとかじゃなくて」

 

「なら少し妾に付き合うが良いぞ」

 

 そう言うなり陛下は俺を引っ張って少し離れた場所へと移動する。俺には

 

 拒否権とかいう物は存在しないようだ。

 

 ・・・・・・・

 

「ふう、良い風じゃな」

 

 宴の場所から少し離れた窓際で俺達は寄り添うように並ぶ。

 

「ところでな…そろそろちゃんとお主の将軍位への復帰について正式に決め

 

 ようと思っておるのじゃが」

 

「!…それはまだ『時期尚早では無いぞ』いや、でも…」

 

「でもではない。今回の戦でもお主達北郷軍の活躍はめざましいものがあっ

 

 た。もう誰も文句を言う奴はおらん」

 

 俺は何とか辞退しようとするが、陛下の意志は固いようだ。

 

「どうじゃな?妾としては前将軍か後将軍辺りを考えておるのじゃが…」

 

「申し訳無き話ながら…」

 

「そうじゃ!天の御遣いたるそなたの為に新しい将軍の名を考えるのも良い

 

 な!名前に『天』を入れればそれらしい感じになりそうじゃしな!」

 

「陛下、お待ちを…」

 

「これは早速、月達と協議せねばな!」

 

「命!俺と朱里は…『言うな!!』…えっ!?」

 

 

 

「お主も朱里もずっと此処におるのじゃ!二人とも漢にとって、妾にとって

 

 必要な人材じゃ!お主達の帰る場所はこの大陸の他に無いのじゃ!!」

 

 そう叫ぶ命の眼からは涙が溢れていた。

 

「命…何時から分かっていた?」

 

「何時からも何も…そもそもそなた達が違う世界から来た人間である以上、

 

 いずれは帰る日が来るであろう事は想像しとった。それに、曹操との戦が

 

 終わってからのお主達の行動を見ていると、何時自分達がいなくなっても

 

 良いように後始末をつけているのがまる分かりじゃ。本気でばれてないと

 

 でも思っておったか?」

 

 命のその言葉に俺は何も言い返せない。そんなにあからさまにやったつも

 

 りは無かったのだが…。

 

「なぁ、一刀…本当に帰らなければならないのか?このまま此処にいる事は

 

 出来ないのか?」

 

「…正直、そうしたい気持ちが無いわけでは無い。でも…俺と朱里は此処に

 

 天の御遣いとして自らの意志でやってきた。そういう者は必ず元の世界に

 

 戻らなければ、逆にこの世界の崩壊を招きかねないらしい」

 

 命の哀願とも言うべき言葉に、俺は喉の奥から搾り出すようにそう答える

 

 のが精一杯であった。

 

「なら、妾もそっちの世界に『それはダメだ!』…何故じゃ!?」

 

「命は漢の皇帝だ。この国の発展の為にはまだまだ強い皇帝の力が必要にな

 

 る。此処でお前がいなくなってしまっては、この大陸は結局五胡の餌食と

 

 なる。そうなったら、再統一までに数百年を要する事態になりかねないん

 

 だ。それではこれまでの俺達の、命の苦労が全て水の泡だ」

 

 

 

「じゃから皇帝なんて嫌なんじゃ…幾らこの国で一番偉いといっても、結局

 

 一番欲しい物は手に入らんのじゃ…うっうっうっ」

 

 命は俺にしがみついたまま嗚咽を洩らしていた。

 

 ・・・・・・・

 

「すまぬ…少しだけ落ち着いた」

 

 しばらくしてようやく泣き止んだ命を近くの椅子に座らせる。

 

「それで…何時帰るのじゃ?」

 

「詳しくは俺も分からないのだけど…おそらく一月は無いと思う」

 

「一月か…それで、何処からどうやって帰るのじゃ?」

 

「既に迎えは来ている。時が来たらその者に導かれて帰る事になるだろう。

 

 命も既に会っているけどね」

 

「妾も?…まさか」

 

「ああ、あの怪人さ」

 

「あらぁん、怪人とは失礼ねぇん」

 

 いきなり気配も無くかけられた声に俺達は慌てて後ろを振り向く。

 

「貂蝉…頼むからいきなり現れるのは勘弁してくれ。朱里も貂蝉を連れて来

 

 るなら先に教えて欲しいんだけど」

 

「はわわ…あ、あの、お知らせする間も無く貂蝉さんに連れて来られまして」

 

 そこには貂蝉とその小脇に抱えられた朱里がいた。

 

 

 

「貂蝉とか言ったの?お主に聞きたい事がある」

 

「何かしらぁん?」

 

「一刀達は本当に元の世界に戻らないとダメなのか?」

 

「そうねぇん、本当はご主人様達が望むならこのままこっちに残してあげた

 

 いのだけど…少し悪い言い方をすると、二人はこの世界にとっての異物に

 

 近い存在なのねぇん。必要以上に長くいると、逆に悪い方へ作用しかねな

 

 い事態になりかねないのよぉん」

 

 貂蝉のその説明を聞いていた命の眼には不本意な色が見えていた。

 

「異物…何故じゃ!?一刀も朱里も漢の為に此処までしてくれたのじゃぞ!

 

 妾達は誰一人として二人を異物などと思っておらんぞ!」

 

「それとこれとは別なのよぉん。残念ながらね」

 

 命の叫びに貂蝉は冷淡にそう言い返す。

 

「あなたがご主人様にいてもらいたい気持ちは漢女として良く分かるのだけ

 

 ど…悲しいけど、これが世界の事実ってヤツなのねぇん」

 

 貂蝉のその言葉を命はうつむいたまま聞いていた。

 

「命…こんな事を言っても気休めにもならないけど、俺も朱里もつらい気持

 

 ちはずっと持っているんだ。この世界に来て、皆と多く接していくにつれ

 

 て…何時か来る別れの時に思いをはせる度にさ」

 

「本当に…気休めにもならんな」

 

 俺の言葉を聞いた命はそれだけ言うと一人その場を離れていった。

 

 

 

 

 

「ご主人様…」

 

「こればかりは此処に来た時から考えていた事だ。俺達が何時までもいる事

 

 が結局はこの外史の為にならないのなら余計にな」

 

 俺はそう言って朱里の肩を抱く。

 

「ところで貂蝉、命にも聞かれたけど俺達はどうやって元の世界に帰るんだ?

 

 その時が来たら勝手にいなくなるのか?」

 

「帰る時が来たら、二人にはあそこに行ってもらうわぁん」

 

「あそこ?」

 

「もしかして…」

 

「ええ、泰山よぉん」

 

 泰山か…何処に行っても俺達はあそこに縁があるという事か。

 

 

            

 

                                          続く…。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 何だかいろいろすっ飛ばした感はあるのですが…とりあえずは

 

 完結に向けて動き始めました。

 

 完結まで後何話かけるかはまだ未定の部分も多いですが、皆の

 

 揺れ動く想いと共に進んでいく予定です。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ四十七でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 貂蝉は一応まだこの間の宮中への侵入騒動で追いかけら

 

     れている身なのですが…命は一刀の事に気を取られてい

 

     るせいで、すっかりその辺の事を忘れていたりします。 

 

 

 

 


 
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