No.594360

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ四十五

 お待たせしました!

 会談の始まりの裏で、小蓮が自分勝手に暗躍という名の

 暴走を始めようとします。

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2013-07-04 20:55:25 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:5430   閲覧ユーザー数:4164

 

「そちらの意見は分かったわ。しかしこちら側の領民の言い分としては…」

 

「それを言い出したら結局、話は平行線になってしまうだろう?だからこそ

 

 此処は折衷案としてだな…」

 

「そのようなどっちつかずの提案で領民が納得すると思っているのか?」

 

「そこを何とか説得してこそだと思いますが」

 

 会談が始まって三刻程経ったが、此処まで解決の糸口を見つける事が出来

 

 ないままであった。

 

 双方の領民の言い分にも一理ある以上、完全にどちらかの意見で決めるわ

 

 けにもいかず、かといって安易な妥協案で納得もしない事は分かっている

 

 ので、双方にどれだけ利が出るかを考える必要に迫られていたのである。

 

「では、今日は此処まで。続きはまた明日に」

 

 議論が堂々巡りになっていると判断した司会役の亞莎のその一言で、一旦

 

 それぞれの宿舎へ戻っていった。

 

 ・・・・・・・

 

「しかしなかなか向こうも粘りますね」

 

「向こうとしては先々代の文台様の時代に領有していた場所というのが強く

 

 あるみたいですねー」

 

「でもそれって文台さんが半ば無理やり奪ったのはこっちの調査で明らかに

 

 なっている。こちら側の領民としてはそれで引き下がれないのも確かだ」

 

 俺達は宿舎に戻ってもそのまま協議を続けていたのである。

 

「やはりある程度の妥協は双方共に必要になりますね」

 

「後は何処まで飲めるか…ですねー」

 

 風のその言葉に俺達は頷きとため息で答えたのであった。

 

 

 

 一方。

 

「やはり向こうも譲るつもりは無いようね…」

 

「向こう側の領民としては文台様に奪われたという意識が強いようですね…

 

 確かに小競り合いのどさくさに奪ったのは事実のようですが」

 

 孫呉側も宿舎に戻ってから協議をしていた。

 

「しかしそれは元々向こう側の前の領主達の悪政が原因だったはずよ」

 

「それを差し引いたとしても文台様のやり方が短絡的過ぎたのも確かでした

 

 ので…あの時、向こう側の領民の長老がわざわざこちらの城門の前で抗議

 

 の焼身自殺をした位でした」

 

「…その話は知ってるわ。でも、母様もさすがに悪いと思ったのか、遺族達

 

 には過分に過ぎる位の見舞金を出したはずよ」

 

「それだけで納得出来なかったのでしょう。事実、その見舞金のほとんどは

 

 そのまま返されてきたはずです」

 

 冥琳のその話を聞いた蓮華は盛大にため息をついていた。

 

「やっぱりある程度の妥協が必要なのかしら…」

 

「もしくは向こうに対する応分の見返り、という事になりますでしょうね」

 

「…本当は今回の会談である程度の解決案を出したかったのだけど、難しそ

 

 うね。一刀達にも悪いけど」

 

「そうするにしても、もう少し双方の主張を確認する必要があるかと思いま

 

 す。以降はその辺りを中心に進める事にしましょう」

 

「分かったわ。…でもシャオが言ったような『親戚同士になったら解決』と

 

 かいう風に出来たら本当に楽よね」

 

「そうですね…でもそれをするなら、蓮華様と北郷が結婚して一つの国にな

 

 る位でないと無理でしょうけど」

 

 冥琳のその言葉を聞いた蓮華は耳まで真っ赤にして反応する。

 

「え…えええっ!?わ、私と一刀が…結婚。結婚!?」

 

 

 

「落ち着いてください、蓮華様。例えばです」

 

「えっ…ああ、そうね。例えば、ね…でも、私と一刀が…ふふっ」

 

 蓮華は『一刀との結婚』という言葉に少し酔いしれたような顔になり、一

 

 人身悶えていた。

 

「蓮華様…お楽しみの所申し訳無いですが、今は明日以降の会談の内容につ

 

 いて協議すべきかと」

 

「へっ!?…え、ええっと、そうね。そうだったわね」

 

「しっかりしてください。雪蓮が真面目にやってくれない以上、我らでちゃ

 

 んと考えておかねばならないのですから」

 

「そういえば、姉様はどうしたのかしら?」

 

「『疲れたからもう寝る』とか言って自分の部屋へ行ってしまいました…ま

 

 ったくあいつは…」

 

 冥琳はそう苦々しげにぶつぶつ呟いていた。

 

 ・・・・・・・

 

「あそこね…でも、本当にどの兵も真面目に番をしているわね。蓮華もまた

 

 見事過ぎる位に愚直な兵ばかり集めたわね」

 

 雪蓮は冥琳には寝ると言って部屋に入ったのだが、冥琳が蓮華の部屋に入

 

 ったのを見計らって部屋を抜け出し、小蓮がいる部屋の近くまで来ていた。

 

「これは孫策様、どうされました?」

 

「シャオは?中にいるんでしょ?」

 

「孫尚香様なら先程まで騒いでいましたが、お休みになられたようです」

 

「そっ、ちょっと中に入らせてもらうわよ」

 

 雪蓮がそう言って中へ入ろうとすると、

 

「申し訳ございませんが孫権様の許可書はお持ちでしょうか?」

 

 兵はそれを押し止める。

 

 

 

「どういう事よ、私が入るって言ってるのよ?なんで蓮華の許可がいるのよ?」

 

「孫権様より『私の許可書を持たない者は例え孫策様であろうとも中には入れ

 

 ないように』と言われておりますれば」

 

 雪蓮は兵を睨みつけるが、それでも兵は淡々とそう述べるのみであった。

 

(くっ、蓮華も本当にくそ真面目な連中をつけたわね…しかも私であろうとも

 

 って、完全に私が此処に来る事を見越した命令ね。兵達を気絶させるのは簡

 

 単だけど、変に騒ぎを起こせばややこしい事になるし…仕方ないか)

 

「分かったわよ、帰ればいいんでしょ?」

 

「お気を付けて」

 

 雪蓮は兵達の真面目すぎる態度と返答に苦笑しながら戻っていった。

 

 ・・・・・・・

 

「ぶぅ~っ、雪蓮姉様が来れば何とかしてくれると思ったのに~っ」

 

 小蓮は部屋の中よりその様子を見ながらそう一人ごちていた。

 

「でもこのままじゃ結局シャオが何しに来たか分からなくなっちゃうよ…何処

 

 からか出口は無いのかな」

 

 小蓮は部屋の中をゴソゴソと探し始めるが、小半刻もすると飽きてしまった

 

 のか、寝台の上に寝転がっていた。

 

「おや、そのような寝相ははしたないですよ小蓮様」

 

 そこに冥琳が突然入ってくる。

 

「えっ、何で冥琳が?蓮華姉様の許可が無くては此処に来れないんじゃなかっ

 

 たの?」

 

「私はその蓮華様の許可を貰ってきたのですよ。そもそも私は無くても入れる

 

 のですけどね」

 

 

 

 

「そうなんだ。で、どうしたの?シャオに用事?」

 

「ええ、是非とも小蓮様の願いを叶えてあげたいと思いまして」

 

 冥琳のその言葉に小蓮は驚く。

 

「え…どういう事!?だって蓮華姉様は…」

 

「無論、蓮華様のご命令に逆らうわけにも参りませんが、私としては孫呉の為

 

 にも小蓮様の存在も必要と思った次第で」

 

「シャオが必要?」

 

「はい、私と雪蓮は孫呉に天の御遣いの血を入れたいと思っております。当然

 

 蓮華様にそれがいけば言う事無しなのですが、ご当主の身にござりますれば

 

 なかなかにしがらみも多うございましてね。そこで…」

 

「シャオなら蓮華姉様より動きやすいって事ね?」

 

 小蓮のその言葉に冥琳は頷く。

 

「そこで私が手引きいたしますれば、小蓮様には是非北郷の所へ」

 

「分かった。それでどう行くの?」

 

「もうしばらくはこのまま此処に。その時が来たら私が合図を出しますので」

 

 冥琳のその言葉に小蓮は頷く。そして冥琳はそのまま部屋を後にする。

 

「ふふ~ん♪さすが冥琳、それじゃ後は任せてもうしばらく休んでよ~っと」

 

 小蓮はそう言ってしばらく寝台に寝転がっていると、兵士が食事を運んでくる。

 

「あれ?食事って、もうそんな時間?」

 

「はっ、どうやら今日の会談は終わりになった様子で、皆様食事をされるとの事

 

 なので、尚香様にもお食事を運ぶよう孫権様よりのご指示にて」

 

「そうなんだ、それじゃ…いただきま~す!」

 

 小蓮は出された食事を残らず平らげる。

 

「ごちそうさまでした!ふわ~っ、何だか眠くなってきちゃった…」

 

 

 

 それからしばらくして。

 

「小蓮様、小蓮様」

 

 小蓮の部屋に冥琳が入ってきて起こそうとするが、幾ら強く起こしても小蓮は

 

 起きようとしなかった。

 

「おかしい…先程食事を運んできた時も既に寝ていたと聞いたが、ここまで熟睡

 

 するのはおかし過ぎる…まさか!」

 

 冥琳はそのまま一刀達の宿舎に向かう。

 

「おやー、どうしました冥琳さん?」

 

「風、小蓮様に一服盛ったのはお前か!?」

 

「?…どういう事ですー?」

 

「小蓮様が深く眠ったまま起きないのだ。明らかに眠り薬を盛られたような」

 

 冥琳のその言葉を聞いた風の眼が鋭くなる。

 

「それで、風が邪魔な尚香さんを眠らせたと?これはまた随分な邪推ですね」

 

「違うと言うのか?」

 

「幾ら邪魔だからといって、会談相手の妹御に一服盛るなんて行為は死罪に相当

 

 する話でしょう?そのような事をする相手とあなたは明日からお話し合いなん

 

 て出来ますか?風は無理ですよ、はっきり言ってすぐさま戦ですけど?」

 

 風の反論にさすがの冥琳も何も言い返せず、

 

「…すまなかった、少々混乱していたようだ」

 

「分かっていただければいいのですよー。今の事は聞かなかった事にしておきま

 

 すねー」

 

 素直に謝ると、風も全く気にしない感じで答えていた。

 

 

 

 一方、その頃。

 

「う、う~~~ん…よく寝た~~っ」

 

 小蓮は起き出して部屋の周りを見ると、寝る前までいたはずの兵達が一人もい

 

 ない事に気付く。

 

「あれ?誰もいない…そうか、冥琳の言っていた合図ってこの事ね。よ~し、そ

 

 れじゃ…」

 

 改めて誰もいない事を確認しつつ、小蓮は部屋を出て一刀達の宿舎の方へ向か

 

 っていったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

「ふふ、うまくいったみたいね。冥琳にはちょっと悪かったけど、全ては孫呉の

 

 未来の為って事で」

 

 そこから少し離れた所でそれを見ていた雪蓮がそう言って笑っていた。

 

 ちなみに小蓮の食事に眠り薬を盛ったのは彼女である。小蓮の部屋に蓮華の他

 

 に冥琳も入れる事を知った雪蓮が冥琳が部屋に来る頃にうまく効くように薬を

 

 盛った事で、混乱した冥琳が兵達の配置を忘れたまま部屋を飛び出していく事

 

 を計算した上でこのような事をしたのであった。

 

(冥琳は小蓮が抜け出せるように兵達には蓮華の命という事で部屋より離れるよ

 

 う指示をしていたのである。兵達も蓮華から冥琳の命は自分の命と同じである

 

 という指示を受けていたので、疑問に感じる事もなくそのまま部屋を離れてい

 

 たのであった。本来なら部屋を離れる際に兵を再配置するべき所なのだが、予

 

 想外の事態に冥琳はそれを忘れたまま部屋を出て行ったのである。さらに言う

 

 と雪蓮は冥琳が自分と同じ目的で小蓮の所へ行ったという事は知らない)

 

「さあ、後はシャオがうまくいくように見届けるだけね」

 

 雪蓮はそっと小蓮の後を追っていったのであった。

 

 

 

 その頃、一刀の部屋には思いもよらない来客が来ていた。

 

「どうしたんだ、思春?蓮華からの用は今ので終わりだろう?他に何かあるのか?」

 

「うむ…本当は主命に反する事なのかもしれないんだが…」

 

 そのまま思春は何やら口ごもったままになっていた。

 

「お~い、どうしたんだ?」

 

「!!!…な、何でもない、何でもないんだ」

 

 あまりにも思春がそのままなので、俺が顔を近付けて呼びかけると、思春は耳

 

 まで真っ赤にして数歩あとずさる。

 

「どう見ても何でもないって顔には見えないけど?」

 

「何でもないというのはそういう意味での何でもないという事では無くてだな…」

 

 思春は何やら言い続けていたが、完全にしどろもどろになっていて何を言って

 

 いるのかほとんど理解出来ない状態であった。

 

 ・・・・・・・

 

「…少しは落ち着いたか?」

 

「…すまん」

 

 それから四半刻程経って多少なりとも落ち着いてきたのを確認して再び話しか

 

 けると、顔を赤くしたままそう答えていた。

 

「実はだな…今回の会談の本当の目的についてやはりちゃんと話すべきかと思っ

 

 て此処まで来たんだ」

 

「本当の目的?境界線以外に何かあるのか?蓮華からはそんな感じはしなかった

 

 けど…」

 

「蓮華様は純粋に境界線の事で来ている。実は雪蓮様達がな…」

 

 そこまで言って思春の眼が再び泳ぎ始める。これ以上本当に言うべきかどうか

 

 迷っているように見える。

 

 

 

「雪蓮達が?どうしたって?」

 

「う、うむ…お前と蓮華様をくっつけようとしているんだ」

 

「…もしかして前に南陽で風達とモメたのって」

 

「ああ、その関連だ。風にはどうやら勘付かれているようだしな」

 

 それを聞いて俺は前に朱里が『ご主人様は知らなくてもいい事です』と言って

 

 いたのを思い出していた。

 

「…あれ?でも、何でそこで風達が出てくるんだ?俺と蓮華がどうなろうと関係

 

 無いんじゃ…」

 

「…本当にお前は鈍いんだな。だからこそ朱里がずっと独占してこれたんだろう

 

 がな」

 

 思春はそう言うと盛大にため息をついていた。

 

「悪かったな…鈍くて」

 

「別に悪くはないさ、それが北郷の魅力だと思うしな」

 

「えっ!?魅力って…」

 

 俺がそう聞き返すと、思春は顔を真っ赤にしたまま何も言わずに俺を見つめる。

 

「そ、そうなのか…てっきり思春には嫌われているのかとばかり思っていたんだ

 

 けど」

 

「…本当に嫌いなら真名を預けたりしない。最初は蓮華様が想われているのが気

 

 になっていただけなんだがな。気付けば北郷の事を眼で追っている自分がいた

 

 んだ。完全に気付いたのは陛下がお前の子を身籠ったと聞いた時だ。蓮華様も

 

 そうだったのだが、私も…お前の子が……」

 

 思春はそこまで言って眼を逸らしてもじもじとしていた。

 

 幾ら鈍いと言われている俺でも目の前でそう言われてまったく何も感じない事

 

 は無い。

 

 

 

「思春…俺には朱里がいるのと、後少しで天に帰ってしまう事を分かってるよね。

 

 それでも、そう想うのか?」

 

「帰ってしまうからこそだ。だって、帰ってしまったら…もう二度と叶う事は無

 

 いだろう?」

 

 思春はそう言うとそっとおれに身を預けてくる。正直、朱里や陛下の顔がよぎ

 

 ってくるのだが…此処まで言わせてこのままには出来ない。

 

 俺はそのまま思春を抱きしめると、思春は少し身を固くするも俺に身を預けて

 

 きた。

 

 ・・・・・・・

 

「すまん…本当は蓮華様みたいな魅力的な身体をしていれば良かったのだがな」

 

 事が済んだ後、思春は恥ずかしそうにそう話していた。

 

「そんなに卑下する事は無いよ。思春は十分魅力的さ」

 

 俺がそう言って微笑みかけると、思春はくすぐったそうに身をよじりながら

 

 恥ずかしそうにしていた。

 

「本当はもう少し余韻に浸っていたいが…蓮華様からの遣いで来た以上、あま

 

 り長居も出来ん。今日はこれで帰る」

 

「ああ、蓮華に『明日の会談は良い方向に向かいたい』って伝えてくれ」

 

「…それだけか?他には無いのか?」

 

「今、思春とこうなった後でそういう方面の言葉は思いつかないよ」

 

「そ、そうか…ならまた明日な」

 

 思春はそう言って部屋を後にした。

 

 しかし…何だか他の女性となしくずし的に関係を持ってしまっているような

 

 気が…これじゃ前の外史と一緒のような…また種馬呼ばわりされてしまいそ

 

 うな気がするのは気のせいだろうか?

 

 

 

 その頃。

 

「ふっふ~ん、此処が一刀がいる宿舎ね…さあ、シャオの魅力でメロメロにし

 

 ちゃうんだから」

 

 部屋を抜け出した小蓮は宿舎に近付いていた。

 

 そして宿舎の中に入り、一番奥まった部屋に入る。

 

「此処が一刀の部屋よね~。ふふ、よく寝てる…でももう眠らせないんだから」

 

 小蓮は寝台の中に潜り込むと中で寝ている者の下半身に手をかけようとする。

 

「あれ?無い…男の人だったら此処にあれがあるはずなのに」

 

 小蓮は訝しげに思いながらもそこをまさぐっていると、

 

「ひゃっ!?誰ですか?」

 

 突然発せられた女性の声に小蓮が驚いたその瞬間、布団がめくられる。すると

 

 そこには…。

 

「えっ!?あなたは…確か尚香様。何で此処に!?一体これはどういう事なんで

 

 すか!?」

 

 困惑した顔の燐里がいた。

 

「えっ!?…何で!?一刀の部屋じゃないの!?」

 

「確かに昨日は一刀様はこの部屋に寝ておられましたけど…今日は別のお部屋で

 

 お休みです。ところで…何故あなたはこのような時間に一刀様のお部屋に?何

 

 か御用ですか?」

 

 燐里にそう問われた小蓮の眼が泳ぐ。

 

 

 

「どうしました?答えられないようなお話ですか?」

 

「ええっと…その…さよなら!」

 

 燐里に問い詰められた小蓮は脱兎の如くそこから逃げ出す。

 

「待ちなさい!衛兵、その者を捕まえなさい!!」

 

 燐里の指示で兵達が小蓮を捕まえようとするが、

 

「よっと…へへ~んだ、捕まらないよ~」

 

 小蓮はうまくかいくぐって外へ逃げようとする。そこへ、

 

「どうされました、燐里様!」

 

「凪、その人を捕まえて!!」

 

「えっ、尚香様!?何故此処に…」

 

 凪が現れるが、彼女が少し面食らっている間にその横をかいくぐる。

 

「なっ…待て!!」

 

 慌てて凪も追いかけようとするが、小蓮はそこらの物を投げつけたり、床にば

 

 ら撒いたりして足止めをさせようとしながら逃げていく。

 

「よし、このまま外へ…えっ!?」

 

 入り口まで来た小蓮が勝利を確信したその時、既に外には風と流琉が兵と共に

 

 配置しており、逃げ場は完全に塞がれていた。

 

「やれやれ…尚香さんもせっかちな人ですねー」

 

 膝から崩れ落ちていた小蓮を見ながら風はそう呟いていた。

 

 ちなみに一刀が部屋を変えるというのは風と燐里が考えた策であった。そして

 

 忍び込む者がいたら、中では燐里が犯人を追い、その間に風が外を囲むという

 

 手筈になっていたのである。

 

(思春は蓮華からの正式な使者として来たので一刀のいる部屋まで通されていた

 

 のである。ちなみに二人がいたのは離れになっていたので、この騒ぎは知らな

 

 いまま情事に励んでいる最中である)

 

 ・・・・・・・

 

 ちなみに。

 

「ありゃ~っ、こりゃダメね。今日は帰って寝ましょう」

 

 外からそれを見ていた雪蓮は薄情にも妹を見捨ててその場を去っていった。

 

 

 

 次の日。

 

 孫呉の面々は平謝りであった。それに向かい合っていた一刀の横には、縛り上

 

 げられた小蓮の姿があった。

 

「何よ~っ、シャオが何したって言うのよ~っ!?妃が夫の部屋に行く事の何処

 

 が悪いのよ~っ!?」

 

 小蓮は縛り上げられたままそう喚いていたが、彼女はそれが場の空気を悪化さ

 

 せている事にまったくと言っていいほど気付いていない。

 

 ある意味一触即発の雰囲気にまでなりかけたその時、

 

「遅くなりました~」

 

 会談場に現れたのは朱里であった。

 

「朱里!?…洛陽の用事は終わったのか?」

 

「はい、一昨日に全て。本当は南陽に帰ろうと思ったのですが、此処で境界線に

 

 ついての会談を行うという報告を受けましたので、直接参りました。ところで

 

 …一体何があったのですか?なんで尚香さんが縛られているのです?」

 

 朱里の疑問に風が答えている。(ちなみに何故朱里が初対面のはずの小蓮の事

 

 を知っているのか誰も疑問に感じていないようだ)

 

「はぁ…なるほど。でしたら、蓮華さん。尚香さんの事は無罪放免にしますので

 

 会談についてはこちらの提案を聞いていただいてもよろしいですか?」

 

 朱里の提案に蓮華も冥琳も反論出来ず、そのまま会談はこちら側の主導で進み

 

 境界線については七割方はこちらの言い分が通る形で決着がついたのであった。

 

 

 

「シャオ…建業に帰ったら覚えてなさい」

 

「ひっ!?…シャオは旅に出ますので探さないで…」

 

「ダメに決まってるでしょ!!」

 

 蓮華の怒りのオーラに小蓮が震えているその横で、

 

「はぁ…こりゃ今回もダメね」

 

「ううむ、何故毎回こうもうまくいかないのか…」

 

 雪蓮と冥琳は眉根を顰めて考え事をし、

 

「どうしたのじゃ、思春。顔が赤いぞ」

 

「い、いえ、何でもありません」

 

 一人一刀との事を思い出し、顔を赤くしていた思春が祭に対してしどろもどろ

 

 に返答をしていたのであった。

 

 ちなみに、思春が一刀と事を成したのが皆に知れるのはそれから三ヶ月程後の

 

 事であり、その時既に元の世界に戻っていた一刀がそれを知る事は無かったの

 

 であった。

 

 

 

                                         …続く!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回はかなり投稿が遅れて申し訳ありません。

 

 またモチベさんが何処かへ行ってしまわれた…でも漢女に関する全ての物は

 

 一切受け付けませんので悪しからず。

 

 そして…本当はもっと小蓮を暴れさせるつもりだったのに、何だか活かしき

 

 れませんでした。でも、騒ぎを起こした事で思春の事が誰にもバレていない

 

 のである意味頑張ったものと(マテ。

 

 ちなみに思春は蓮華から『会談について一刀側の言い分を改めて確認してく

 

 るように』との命で正式に使者としてやってきております。しかしヤッて帰

 

 っていきましたが。

 

 一応次回は…さすがにもうそろそろ完結に向かって進んでいかなければと思

 

 っていますが…検討中という事で。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ四十六でお会いいたしましょう。

 

 

 

 追伸 建業に帰った後、小蓮はそれはそれはとてもきついおしおきを受けた

 

     のですが…そこは小蓮が誰にも言わないでくれとの事なので割愛とい

 

     う事で一つ。

 

 

 


 
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