また、というかまだ、なのはの様子が変だ。
突然、朝食を桃子さんと共に作るようになり。さらに...
「はいっ!おまたせノワールくん!」
「お、おう....」
受け取ったお皿にはやや形の崩れた目玉焼きが乗せられていた。過程を観た結果を言えば。
その目玉焼きは、なのは作である。
『ジィ~』
「・・・」
家族全員&プラスαの視線が突き刺さるなかを箸で黄身を割き。とろりとした半熟の黄身が蕩け出て
それを白身と共に一口サイズで口に運ぶ。味付けは既に振りかけてあり塩コショウだ。
程よい塩辛さと香ばしいコショウの風味が口で黄身と共に蕩ける。
見た目は少し悪いが。味はいい。
「悪くない・・・」
小さくそう言って、再び、目玉焼きを口に運んでいると
「やったわね!なのは!」
「戦いは始まったばかりだよ。なのは!」
「う、うんっ!」
桃子さんと美由希さんがなのはに激励?をしていた。なんなんだ?
「なんだアレ?」
「さあ?なんか思うところがあるんだろう」
?マークを頭に浮かべている俺と恭也に向って小さく士郎が呟いた
「私の子は鈍感になる定めか・・・」
変な雰囲気のまま食事が済むと。
「の、ノワールくんっ!」
「なんだ?」
「えっと・・その...」
なぜか、モジモジと頬を染めてなのはが言葉を詰まらせる。
その後ろでは桃子&美由希が廊下の扉からこちらを伺っていた。
「その...デートしてくれないかな?」
その日は丁度、日曜日。つまりは学生など一般的な社会人はお休みの日である。
無論、サービス業である喫茶店、翠屋は営業する。
俺としては店の手伝いをしようか思っていたが
デートと言っても年齢的に唯のお出かけであるだろうし。どうしたものか・・・
「行ってきなさいノワール」
「士郎?」
お店へ行く準備をしていた高町士郎が弾んだ声で話し掛けて来た。
「僕達はお店で手が離せない。君のことだからお店の手伝いでもしようと思っていたんだろ?」
「まあな。まるっきり世話になってばかりでは居られないからな。」
まるっきり俺の考えは、こいつにはお見通しらしい。
「まったく君は、そんな事気にしなくてもいいんだよ?それはそうと、今日は、なのはもお友達と遊ぶ予定もないようだし。二人で一緒に居てくれると安心だな~」
なんとも保護者らしい言葉である。と、言っても子供を一人にしてしまうのは嫌だという考えには同意だ。
「わかった。なのはと出かけてくる」
「本当ッ!?デートしてくれるの!?」
「ちげぇよ。一緒に出かけるだけだ」
とは、言ってもデートの定義は人によって異なる。
異性と二人っきりで出かけるだけでデートと言う人も居れば。
異性と二人っきりで出かけるがデートと言わない人も居る。
俺からすると年齢が小学生同士のデートなどと言われてもピンッと来ない。
だが、なのはは、そうは思っていないようで。顔を赤くして喜んでいた。
「ったく・・・あ、そういえば。ユーノお前も来るか?」
どうせ唯のお出かけならユーノ・スクライアも連れて行けば子供が三人集まるので
士郎達も楽だろうと思ったが。
「僕はやめとくよ。それから、僕の名前を気安く呼ばないでください。」
「はいはい、ごめんなさいっと」
随分と嫌われているようだが。なのはと一緒に出かけるなら付いてくるものだと思ったが意外だ。
「ああ、それからノワール」
「んっ?」
徐に黒い小さな財布を士郎から手渡される。
中身を見ると3枚のお札が入っていた。つまりは3万円
「おいおい、子供に渡すには随分と多い小遣いじゃないか?」
「うんうん、その様子だと金銭感覚も大丈夫そうだね。
このお金は今日二人の小遣いでもあるけど。ノワール?
君が家の子になるんだからいろいろと必要な物も出てくる。
今日、町に行くついでに買って来なさい」
「ああ、そういうことね」
「はい、これメモね」
と、言って隣から桃子さんがなぜかなのはにメモを渡す。
「わたしに?」「なのはに?」
疑問を懐いていると桃子さんがなのはにボソボソ耳打ちをした。
「フフンッ。なのは?絶対にそのメモはノワールくんに見せたらダメよ?」
「わ、わかりました!」
そして、納得してしまったらしい。
「なんなんだ?」
「さあねぇ」
ワザとらしく士郎の顔が笑っている。何か企んでいるようだ。
「ま、どうでもいいか」
何か企んでいようと危険なことはないだろう。
そうして、高町なのはとのお出かけ(デート)が始まったのだが。
「・・・」「・・・」
家を出てから沈黙が続いて街中まで来てしまった。
時間にして、彼是30分ほどが立ったころになって、なのはが口を開く。
「あ、あの・・・」
「ん?」
「手、繋いでもいい?」
俺からするとなにを今さらという感じだが。今のなのはは借りて来た猫のように大人しい。
「別にいいぞ。というか、いつもは俺に聞かないで手どころか腕まで組むだろ?」
「う、うんっ・・・でも、なんか恥ずかしくて///」
「お前大丈夫か?」
熱でもあるんじゃないかと心配になり、なのはのおでこに手を伸ばすが。
「ふわッ!」「っ!?このバカ!」
なにかに慌ててなのはが街道の車の走る交通量の多い道路へ逃げようとしてしまったので。
腕を掴み無理やりに胸の中まで引っ張りこむ。
「気をつけろよ。轢かれるぞ」
「あ、ありがとう///」
「ったく・・・目が離せないな。ほら」
腕を捕まえて居たのでそのまま手を掴み、俺が位置を変わって道路側を歩く。
「ッ///」
なのはは、顔を真っ赤にして、手を繋いだまま大人しく付いてくる。
不意に可愛い奴だなと思った考えを振り払い。質問を投げかける。
「そういえば、これからどこに行くんだ?」
向う先は、桃子さんのメモによって決まっているが。そのメモはなのはが持っており俺は行き先を知らない。
「え、えっと・・・まずは、デパートだよ?」
「服か?」
つい先日高町家に来た俺に自分の衣服がない。高町恭也のお下がりなど古着を借りて来ている状態だ。
現在も紺色のジャージに身を包んでいる状態でお世辞にも見栄えがいいとは言えない。
女物の服なら異様なほど用意されていたが全て断った結果でもあるが。
「う、うん。まずは、服を何着か買いなさいって」
「ふう~ん・・・」
通常、一日出かける状況で荷物が早々に増えるのは好ましくないが。
この先、いろいろと連れ回されるよりかはいいだろう。
と、そう思っていた俺を後になって殴りたくなった自分が1時間後には居た。
「こんなのどうかな?次これ着てみて♪」
「ああん!主任ずるいですよ次は、私の番なんですから。ほら、この服なんてお洒落じゃない?」
「先輩ちょっとそれは派手じゃないですか?こっちのシックなほうが似合いますって」
「わ~!どれも似合いそうなの~!」
「どうしてこうなった・・・」
子供二人の買い物客が目立っていたのか。デパートで服選びを始めて僅か1分でお店の店員に捕まり。
次々と服を着せ替えられ。その後も、騒ぎに気づいた他の店員も集まり。
小さなファッションショーが開かれてしまっていた。
ついでとばかりになのはも参加しており。ついさっきはフリフリのゴスロリ風のドレスをなのはと二人で着せられ。
真っ黒なドレスに身を包んだ俺に対になったように真っ白なドレスを着せられたなのは、客を呼ぶのに十分な効果があったようで
周りには携帯のカメラなどを構える若い女性など婦人に囲まれてしまっていた。
幸いと言っていいのかデパートということもあって男の姿は少ないがあまりいい気分ではない。
「はぁ~・・・帰りたい。それか吹き飛ばしたい」
「ノ、ノワールくんダメだよッ!?」
「冗談だ「さあ!次はこれを着てみて」はぁ・・・」
結局これから1時間に及ぶファッションショーが続き。
あまりの騒ぎにデパートの責任者が駆けつけ終了となったのだが。
お客であり、しかも子供相手に長時間半ば強制的に拘束したとして
迷惑料代わりにお店側から上下合わせた10着ほどもの服をタダで貰ってしまった。
その半分以上が可愛らしい女物の服だというのは今は忘れておこう。
結果的には、士郎からもらった軍資金は消費しなかった訳で
お店としてもいい宣伝になっただろう。無論、俺としては二度と近づきたくはないが
「たのしかったねー!」
「もう二度と行かんぞ」
「えー!とっても似合ってて可愛い服ばっかりだったのにー!」
嬉しそうに不満を言うなのはと俺は両手にお店の紙袋を一杯に下げ。メモに記された次の場所へと向っていた。
結局、自分自身で着てみようという服は2着ぐらいしか入っていない。
「えっと・・・お昼のランチを食べる喫茶翠屋です!」
「・・・・」
次の場所の正体は、高町家が運営している喫茶店であった。
なるほど、これなら午前中に服を買いに行っても荷物を置いておける訳だ。
なのはを無視してお店の扉に手を掛ける。
「あっ。ま、待ってよ~!」
扉を開けると待ってましたとばかりに高町夫婦が揃って出迎える。
「お、いらっしゃいお二人さん」
「奥のテーブル空けてるからさあさあって、荷物がいっぱいみたいね。美由希ー!ちょっと来てもらえるー?」
「あ、はーいっ!ほらほら二人とも座って座って!」
すぐさま美由希も店の奥から現れ荷物を奪われテーブル席まで押し込まれてしまった。逃げる間もない。
そしてさらに、見たことのないウェイトレスがメニューを持って現れる。
「い、いらっしゃいませ・・・・」
「あ?」「え?ユーノ・・・くん?」
俺が過去に着せられたメイド服の基本色が緑になった柔らな雰囲気がある衣装に身を包んだユーノ・スクライアがそこに居た。
ああ、俺以外に犠牲者が・・・。
「ご、ご注文は?」
頬を赤くしてそう尋ねてくるユーノ。
モジモジとしていて不覚にも同姓なのに可愛らしく思えてしまった。(※ノワールはユーノを男の子だと思っています。この作品のユーノは女の子です)
「あ、ああ。コーヒーのランチセットで」
「なのはは、紅茶のランチセット。その服とっても似合ってるね!ユーノくん!」
「え?あ、そ、そうかな?」
そして、本人も心なしか嬉そうである。なのはに褒められたのも原因だろうが、不憫だなぁ....
しばらくして注文したランチセットが運ばれ、美味しくいただきつつ。
横目にユーノが慌ただしく店内を行き来している姿を見て近い将来の自分に投影した。
メイド服は確かに可愛いかもしれないが、着たくないなと思う。
ま、それも数年の辛抱か。その頃にはきっと男に見え....
「女の子に間違われる男の子って高校生ぐらいになっても間違えられたりするらしいよ?」
同じくメイド服に身を包んだ美由紀に通りすがりにそう告げられる。
「勝手に現れて心を読むな!」
「なのはは別に気にしないよッ!?」
「俺は気にするんだよッ!」
ちなみになぜユーノがメイドになっていたかと言うと....二人の尾行が原因だった。
デート初頭。フェレットの姿で遠くから会話のなさそうな二人を見つめていた。
「二人が気になって付けちゃっけるけど。これなら一緒に行けばよかったかな?」
道路に慌てて飛び出しかけたなのはをノワールが助けた姿を見て思わず声が漏れた。
「あっ。意外と優しいんだ・・・。」
そして、しばらく追いかけると二人はデパートへ。そこで問題発生。
フェレットの姿で遠くからの追跡だからこそ二人に気づかれていないが。
人間の姿だとなのはからは気づかれなくてもノワールには多分バレてしまう。
何度かフェレットの状態でも視線が一瞬、飛んでくることがあり。
ユーノはノワールの力量を肌で感じてしまっていた。
無論、フェレットという小さな体と遠距離からの追跡だったので隠れることは容易かった。
でも、デパートはそうは行かない。二人意外にも人が多く。完全に隠れての追跡は難しい。
また、魔法でどうにかしようとしても。ノワールには気づかれるかもしれない。
そんなところへ....
「あれ?もしかしてユーノくん?」
「きゅ?」
ユーノが振り返ると高町 美由紀が立っており。手にはビニール袋を下げていた。
「お買い物ですか?美由紀さん」
「うん、お店の材料で急に足りなくなったのがあってねぇ~。で?ユーノくんは...はは~ん?さては二人を」
「えっ!?ち、違います違いますってばッ!」
「ふふッ。わかりやすいね、君は。なら、ここで見つけたからには御用だー!」
「ッ!?」
フェレットという体は追跡や潜入には向いていたが。一度人に抱きかかえられると変身を解かない限り無力に近い。
そして、そのまま翠屋にユーノ・スクライアは連行されてしまい。あとは語るまでもない....
改めて言おう。この作品のユーノは女の子です!女装ではありません。
あと、美由希の言っていた「女の子に間違われる男の子」の年齢については
作者の実体験を元に書かせていただいています(えっ?)
次の投稿はスランプとハードワーク(仕事)という病に掛かっている作者の病状次第です。
コメントという特効薬が効けば早く完治すると思います。(と、思いたい)
次回、デート後半です。お楽しみに
※読んでくれてありがとうございます!感想などなどはお気軽に!
※誤字脱字などの指摘もどんどんお願いします。
※また誤字脱字や妙な言い回しなど見つけ次第修正しますが特に物語りに大きな影響が無い限り報告等は致しませんのであしからず。
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神様などに一切会わずに特典もなくリリカルなのはの世界へ転生した主人公。原作知識を持っていた筈が生まれ育った厳しい環境の為にそのことを忘れてしまい。知らず知らずの内に原作に介入してしまう、そんな魔導師の物語です。 ※物語初頭などはシリアス成分が多めですが物語が進むにつれて皆無に近くなります。 ※またハーレム要素及び男の娘などの要素も含みます。さらにチートなどはありません。 初めて読む方はプロローグからお願いします。