第1章 2回目
「まだ、雪降ってるんだね」
「いつものことだろ」
2人して、ゆっくりと歩く。街路樹も、信号機も、住宅の屋根も、皆等しく雪は積もる。
「あ、猫さんだ~」
途中、塀の上にいる猫を見つけた楓夏は嬉々として近寄った。
「うにゃぁ ごろごろ」
「お~~ 久しぶりだねタルト。元気にしてた?」
野良猫にまで名前付けているのか、というか、どれが誰か判るのか!? と猫と戯れる楓夏を観察していると、紘晄と姫花が追いついてきた。
「置いていくとは、見損なったぞ親友め」
「ほざけ。いつ僕がキサマの親友になった。認めないからな」
「つれないなぁ、相棒」
「(無視)」
「おいおい、反応してくれよ。寂しいじゃんか」
「(無視)」
「……もしもし?」
なんて男2人でバカをやっている間、姫花と楓夏は猫と遊んでいた。
「にゃおん?」
「な~ご にゃあ」
「あ、楓夏。もう1匹来たわよ。名前、何だっけ?」
「あっちはマカロンですよ~ ほら、おいで~」
「にゃおにゃん ふにゃぁぁ」
「あー 触ってると暖かいわねえ。少しモフモフしてるかも」
「冬場は、猫も毛深くなるんだよ~」
「へぇー 触れて、初めて知るものね」
動物に関する知識については、楓夏は豊富に持っている。
「おーい、お2人さん方。もうそろそろ行かないと、早く帰る意味がなくなりますよ」
時計を確認すれば、4時半をとうに過ぎた頃。5時からのスーパーのタイムセールに間に合うように学校を出たのに、気がつけばこんな時間だった。
「じゃあね~ マカロン、タルト」
「「にゃおぅん」」
2匹の声援を受け、戦場(スーパー)へと急ぐ。
「姫花先輩も、スーパーですか?」
「買い物は特にないんだけど、ヒロが作る料理だもの。変なもの入れないか見張り、てトコかしら」
「賢明な選択ですね」
「ま~、わかりますよ」
「何? 会長だけじゃなくて、皆も? 俺ってそんなに信用ないの?」
道中、紘晄はボヤいていた。
スーパーに着いたのが、4時58分。数字だけ見れば、間に合った判断だ。しかしここは夕方のスーパー。すでに主婦(夫)たちが待ち構えていたのだ。
「あちゃ…… 出遅れちまったかな、こりゃ」
ヒロが言うまでもなくその通りだと、ユウは思った。
「とりあえず、中に入りましょう。分担すれば、何とか……」
なる、とは姫花をもってしても断言できなかったようだ。
とうとう、時計の針が5時を指し示した。
「ただいまより、夕方のタイムセールを実施します」という店員の声が終わるより早く、獣と化した人たちは行動を始めた。そこからはもういつものこととはいえ、あまりよく覚えていない。途中、「お兄ちゃん、下がってて。行くわよ」とか「それだ、ざまあ!!」とか聞こえたりもするが、ただ、気がつけば人の波は引いていて、なんとか目当ての商品を確保した自分がいるのだ。
皆と合流して会計を済ませたあと。
「毎日のこととはいえ、本当に疲れるわね……」
「ちょー、キツいな。少し休もうぜ」
「賛成です~」
近くの公園で少し休もうと、ベンチに腰を下ろした。
「もうすっかり暗いね~」
空を見上げた楓夏が呟く。
「もう5時半だしね。星ももう見えるだろ」
昼間は降り続ける雪も、夜になると止むことは少なくない。
「こんなけ星があるんだ。どれが何座かなんて判んねぇよな」
「そうねぇ」
それからしばらくは、あれは何座だのそれは何等星の何星だの、騒がしい鑑賞会だった。
と、近くの家から夕餉の香がただよってきた。
「あ~~ なんか、腹減ってきたな」
「そうね。そろそろ帰ろうかしら」
「じゃあ、買い物の精算をしないといけないな」
買ったものの中身を分配して、4人は別れた。
楓夏と2人で家路に着く。
「ヒロ君達、今日の夕食何作るのかなぁ?」
「姫花先輩に出すんだろ。やっぱ手の込んだものかな?」
「ん~ 今度訊いてみよっか」
「それはやめてくれ」
「ん? どうして?」
「作れそうにないモノ言われたら、流石にヘコむわ」
「私は、ユウの料理、好きだけどなぁ」
「そう言ってくれるのはありがたい」
でも、とユウは思う。成績よくて運動も実はうまくて、美術や音楽も難なくこなす紘晄が料理でもすごいもの作るとなれば、もはや手の付け所がなくなるじゃないか、と。
それでも紘晄はこう言うのだ。『ただの器用貧乏なだけだよ』と。
それでもやはり、ちょっと悔しさに似た感情はあった。
「それじゃあ、今日は腕によりをかけてやりますか」
「楽しみに待ってるよ~」
いつもより少し時間はかかるだろうが、最高に美味いものを作ってやろうと思った。
「ただいま~」
「悪い、遅くなった」
玄関を開けると、ドタドタと2階から1人の少女が降りてくる。
「全く、本当に遅かったですね、兄さん」
帰宅早々、不機嫌そうな声に迎えられた。
この家に一緒に住んでいる、1つ年下の後輩かつ義理の妹、由香里である。笑えば可愛いだろうに、少なくとも兄であるユウの前ではそんな素振りは見せない。
「だから、悪かったって」
「ま、いいですけど」
そう言って部屋に戻る彼女の横顔は、やはり不機嫌そうだった。
「……折角……は早い……聞いて……」
気になったが、靴を脱ぎ終えた時には由香里は既に部屋に戻っていた。今から尋ねてもさらに彼女を不機嫌にさせるだけだと思い、ユウは台所に向かった。
それから約1時間後――
「ふぅ、できたか」
自分にしては上出来だろうと思える、会心の出来な料理の数々。
「2人ともー 夕食できたぞ」
声をかけると
「は~い 今行くよ~」
と言う楓夏に続き、無言で由香里が降りてきた。
「いい香りがするね~」
「まあな。今日は魚介系が多いし、香り付けもうまくいったし」
食卓に並ぶのは、シーフードパエリア、ホタテとサーモンのカルパッチョ、鱈のホワイトクリーム添えetc…
「あ~ 由香里ちゃんの好きなの多いね」
「まあ、そーいう日もあるだろ」
無難に答えながらも、内心『そこは気付いても言わないで欲しかった』と思うユウ。
チラリと由香里の顔を確認すると、澄ましているがどこか嬉しそうに見えた。
「じゃあ今度は、私の好きなものも~~」
「ま、気が向いたらね。それより、早く食べようよ。冷めるよ」
「そ、そうね。兄さんがそこまで言うのなら……」
普段は口数の少ない由香里が、今日は率先して席に着く。
「じゃ、いただきます」
「「いただきます」」
好物の前では、いつも不機嫌そうな由香里も柔らかい表情を見せる。
(餌付けってわけじゃないけど、相手の胃袋を掴むのは大事なんだなぁ)
と改めて認識したユウだったが、ともかく賑やかではないが温かな食卓を3人で囲む。
それから約1時間後。
よほど料理が気に入ったのか、珍しく後片付けを買って出た由香里に皿洗いを任せると、ユウは自室に戻った。
課題を片付けて入浴も済ませれば、時計の針は1時前を指していた。期限の長い課題は、やっぱ毎日コツコツやるべきだよなぁ、と少し反省しながらベッドに横たわると、そのまま眠りに就いた。
あとがき
わけあって修正ペースが大幅に遅れてしまいました さらに引越しとかも重なるので、これから先も更新ペースが遅くなりそうな予感しかしない(殴
しかし、平行しながら作品を書いていると、どっかでキャラがごっちゃになったりしてしまいます。まだまだ未熟者だと痛感する今日この頃。プロットをちゃんと使わないバチが当たりましたねorz
何本も連載書いてる人とかすごいですね。 日々精進
では、今日はこの辺りにて失礼
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
ボツ原稿を修正してみました 結果、方向を見失いましたorz な作品です 暇潰し、気まぐれ 何でもいいので、よかったらどうぞ