あれから月日が経ち、私達は大学二回生となった。
カズトとの関係は相変わらずで、つき合ってこそいないけどゼミメンバー共々皆で仲良く過ごしてる。
未だに割り切ることが出来なくて、私から交際を再開してほしいとは言えず、
カズトの方からは私を気遣ってくれて再開してほしいとは言われてない。
後は私自身の問題で、私が割り切ることが出来たら、また彼氏彼女の関係に戻れる。
なのに、ゼミメンバーの皆で過ごす時間が楽しく心地よく、
こんな関係や状態が続けば自然と何かしら解決するのではって考えてしまうこともあって私は踏み出す決心が付けない。
そんなある日、私は気になることを聞いた。「カズトが女の子と一緒にいるのを見た」
これだけなら別に珍しくもない。ただ、それがかなりの頻度で大勢が見たとなると話は変わってくる。
気になった私はカズトと別行動をとる、と見せかけて彼の後を付けてみた(本当はこんなストーカーみたいなことしたくなかったけど)。
そして私は見た…カズトが小柄なかなりの金髪美少女と一緒にいるところを。それも一度や二度ではなくかなりの回数。
どこかの店にはいるだけではなく、カズトの車に乗っている所も見た。
更にはカズトの家に入るところも。
私から見て、カズトの方は仲のよい女友達に接している感じだったけど、
女の子の方は見る回を増す毎にカズトへの好感度が増しているように感じる。
この娘を皮切りにしたように、他にも私達の知らない女の人たちとカズトが一緒にいるところを見たり聞いたりする内に、
納まりかけていたカズト=一刀と言う考えが再発してしまった。
同時に、カズトは私じゃない別の女性とつき合うようになったのではないかと不安になった。
その不安が現実の物になったと思ったのは、意を決してカズトにあの金髪少女が誰で、カズトとはどんな関係なのか問いただそうとカズト宅に行ったとき。
件の金髪少女が携帯で通話しながらカズト宅の門の前に立っていた。
多分今カズトは留守で今どこにいるかなどの連絡を交わしているんだと思う。
しばらくして通話を終えて携帯をしまったのを見て帰るのかなと思ったけど、そうじゃなかった。
門をくぐってポストの裏側へと回って何かを探してる。
記憶に間違いがなければ、あそこにはカズト宅の合い鍵が隠されていたはず。
鍵の場所を教えてもらえるまで信用されているあの金髪少女は誰なのか。
もしや、あれがカズトの新しい彼女なのか。
もう少し様子を見てみようと、カズトの予定に合わせてはち合わせないように注意しつつカズト宅に来てみると、
金髪少女だけでなく、他にも複数の知らない女性がカズト宅に来て、
時間的に泊まっていったと考えられるパターンも何度かあった。
毎回はないけどかなりの頻度で金髪少女も一緒だった。
ここまで来たらつき合っていても不思議はない。
カズトが別の女性と付き合うことには、正直少し不満もあるけど、
それならそれで私が引くことであきらめが着くかもしれない。
ある日、とある駅カズトの車を見つけ、助手席には金髪少女が乗っていて、
ロータリーで別れてカズトはそのまま車で去っていった。
一人になったところで、私は意を決して改札を通ろうとするところを止めて声をかけた。
「すいません」
「?どなたかしら」
「今さっきそこで知り合いがいて、何をしてたのか気になって声をかけたんですけど」
「今さっきって…知り合いってカズトの事よね?特に何もしてなかったわ。
買い物をしていたら偶然会って、それから電車で帰る私を駅まで送ってくれただけよ」
「そう、ですか…カズトに送ってもらうなんて、ずいぶん仲がいいんですね」
「…そう言う貴女はカズトの何なの?」
そう聞かれて少し悩んだけど、私はこう答えた。
「私は、カズトの彼女です」
私の答えに少し考え込み、次いで若干問いつめるように聞いてくる。
「確か、振られて今は彼女なしって聞いてるのだけれど?」
私は返答に困った。
何を返せばよいか悩む私を見て、向こうも何か考えてから近くの喫茶店を指して提案された。
「少し話さないかしら。お互いいろいろ聞きたいことがあるのでしょうし」
無言でうなずき、私たちは駅前の喫茶店に入った。
半分ほど埋まっている中から禁煙席を見つけて向かい合わせで座る。
注文したコーヒーと紅茶が来た所で話が始まった。
「まずは自己紹介しときましょうか。私の名前は華琳。〇〇大学の二回生よ」
見た目から女子高生だと思ったら、実は自分と同じだったことに驚きつつ、
極力それを表に出さず私も自己紹介をする。
「舞、カズトと同じ大学、同じゼミの教室のメンバー」
私の紹介に華琳さんは納得した顔を見せてから聞いてきた。
「それで、何故彼女と名乗ったのかしら。確か…18禁ゲームの主人公と名前の読みが一緒で容姿も似ていることから、
カズトとその主人公を重ねられて、それが原因で振られたって聞いてるわ。
で、別れた振られたって言うのはカズトだけの認識で別れていないの?
それとも彼女って言うのは頭に元が付いて本当は今は別れているの?」
聞かれてと言うより問いつめられた私は結局白状することにした。
「カズトとつき合っていたことは本当のことで、華琳さんの言った通りの理由で今は分かれています」
「そう。私からすれば、別れるような理由には思えないけれど」
「…それじゃあ、華琳さんは原因のゲームを知ってるんですか?」
何故聞いてしまったのか。
どのゲームのどんなキャラクターかを知ってしまったらカズトの印象が悪くなってしまうのではと思い友達には恋姫のことは話したことがなかった。
なのに何故目の前にいる華琳さんに聞いてしまったのか。自問する私に華琳さんは答えた。
「もちろん知っているわ恋姫夢想のことでしょう?」
当然のように答えられた。
「その主人公を見てどう思いました?」
「名前の読み方は一緒だし、容姿もカズトに似てはいるけど、あれはゲームのキャラクターであってカズトではないわ」
言い切る華琳さんを私は羨ましく思った。恋姫を知っていてなお割り切れていることに。
そんなことを考えていると、ふとあることを感じた。
華琳と言う名前と彼女の容姿、どこかで見聞きした覚えがあるような…
思い出すにかかったのはわずかな間、今さっきまで話していたことから私は思い至った。
彼女もまた恋姫のキャラクターに、髪型が違い体型も僅かに違うけど、
ゲームのパッケージに3トップアップで描かれて、
カズトの友人曰わく感動したいならこいつのルートだと絶賛していたキャラクターのモデルだったかのように似ていると。
名前も、あのときに見た一回切り全然触れてないからうろ覚えだけど、
確か三人の名前はトウカ・シェレンそして…カリンだったような気がする。
ここまで来ると、失礼かもしれないが聞かずには入られなかった。
「あの…つかぬ事を聞きますけど、華琳さんも恋姫のキャラクターと重ねられて何かいやな思いでもされたり、ですか?」
もしそうならカズトと仲がよいのもちょっとは納得できる。そう思っていたんだけど…
返ってきた答えは、これまた私の予想外な物だった。
「重ねられたと言うより、ある意味本人よ」
「は?」
正直意味が分からなかった。
モデルにされたのとは違うだろうし、第一さっき自己紹介があったように華琳さんは女子大生。
親が製作会社に勤めていて、娘である華琳さんがベースモデルになったという事だろうか。
「言っておくけど、私自身は製作会社と何の関わりもないわ。
カズトの元カノだから話すけれど…私は恋姫の世界から転生した曹操孟徳本人なのよ」
私は唖然とした。恋姫と言うゲームは三国志をベースに主だった将が全員女性になっているという設定だ。
目の前にいる華琳さんはそこから転生したという。
正気を疑うような話だけど、華琳さんは至極真面目で嘘や妄想、厨二病的な事をいっている感じじゃない。
「…その話、カズトは信じたんですか?その前に、カズトにはそのことを話してるんですか?」
「勿論初めてあったときに話してるし信じてくれたわ。そうね…その時のことを話しましょうか」
そして語られる二人の出会いと今までのこと。
前世を思い出した華琳さんは他にもいないか探し、一度諦めたがGWに行われたイベントでカズトを発見。
会って話してみると本当の探し人ではなかったけれど、カズトに本心を問われ、やはり諦めきれず可能ならば会いたいと答え、
それを聞いたカズトは自分も手伝うと言って、それから二人は頻繁に会い情報交換を行う。
恋姫のゲームを手がかりにいろいろさがし回った結果、今に至るまでに何人か華琳さんの他に見つけることが出来たという。
そこからは二人だけでなく、新しく見つかった娘も加えて今も探しているらしい。
「こんなところね」
「…じゃあ、私が聞いたカズトが私たちや知り合いが知らない何人かの女性と一緒にいたって言うのは」
「おそらく私たちのことでしょうね。
たぶん一番会ってるのは私でしょうけど情報交換は豆にやっているから他も何度か会って話したりしてるわ。
最近は新しくそれっぽい娘が見つかって、カズトはその娘に会うためにいろいろ準備している所よ。
様子見に家に行ってみたけどいなかったしね」
「それですか、最近になってかなり車のメンテナンスとかしてるのは」
「そうよ。どんなことをしてるかは同じ大学の貴女の方が詳しいでしょう。
気になるなら様子を見てみると良いわ」「いや…あの中にはいるのはちょっと」
最近のカズトはドライビングテクニック同好会のメンバーと一緒になって車のメンテナンスととある峠での走行練習の繰り返しの日々を送ってる。
毎日オイルまみれ砂まみれになっているのに、それを全く気にするところ無く無駄にハイテンションで活動している所は正直引いてしまう。
そのテンションにカズトまで一緒になっているものだから、それがカズトの良いところではあっても、
車にそれほど興味がない私には受け入れられがたかった。
それはともかく…普段は顔を出し少し活動する程度なのに、
今回ここまで打ち込んでいるのが私の知らない女性のためだと思うとやっぱり複雑な思いがある。
「あの…華琳さんは何とも思ってないんですか?カズトが、その…見知らぬ女の人のために何かしてるのを」
私がそう聞くと、華琳さんはむしろ何故そのような聞くのか不思議そうな顔をした。
「別に何とも思わないけれど?
と言うより、私達が会って何かするとしたら大体が私のような恋姫からの転生者に会う為よ。
元々カズトとも転生者を探して会う目的でしか今のところ会ってないわ。
だからかしらね、カズトが女性と一緒にいても別に何も思う所はないし、
元々あの顔の広さだから私が知らない女性と一緒にいることもあるでしょうよ」
華琳さんはそう答えた。
そもそも二人はつきあい始めたわけではないし共通の目的目標のために行動しているだけで、
好きあって会ってるわけじゃないんだ。
そこで私は気づいた。
私はカズトが好きだからこそ、カズトに私だけを見てほしいって思いがあるからこそこんな気持ちになってしまうんだと。と言うことは、
「あの…華琳さんはカズトのことはどう思ってるんですか?」
「どう、って?」
「その…男性として」
ここまであっけらかんとカズトのことを許してるのは、カズトを男友達だと認識しているからだと思った。
ゼミの中でもオープンオタクなカズトの友人とも交友できているのは誰もつき合っている訳じゃないからこそ、
多少癖があっても個性として割り切って交友できている。
恋姫のゲームを、北郷一刀というキャラの容姿性格を知ってなお男女で付き合っていられるとは思ってなかった。けど、
「そうね…カズトのことは一人の男性として好いているわ」
「っ?!」
「貴女とは事情が違うし、何よりある意味では恋姫の北郷一刀本人を知っていることもあるけれど、
それを抜きにしても私はカズトの事が好きよ。
今貴女がカズトをどう思っていようと、付き合っていたときにどこまで行ったかなんて関係ないわ。
生まれてから今まででカズト以上の男はいないと思ってる。
そう言うわけで、叶うなら私はカズトとこれからも一緒にいたいと望んでいるわ。
カズトの方は今の所貴女と別れたばかりって所があるからか誰ともつき合う気はなく、
私のことも恋姫関連以上の付き合いはあまりないけどいつか振り向かせてみせるわ」
私は、宣戦布告された。
華琳さんの放つオーラのような物があるせいか、私は反論することもとめることもできなかった。
何も言えずうつむいた私に華琳さんは問いかけてくる。
「ちなみに、貴方はどこまで行ったの?」
「どこまでって?」
「キスまでとか一緒に寝るまでとか」
「うっ…二人で一緒に出かけたりはしましたけどそこまでは…」
「そう。それじゃあ、これは持ってるかしら?」
そういって鞄から取り出したのはキーホルダーの付いた一枚の金属。鍵だ。
この状況で出てくる鍵となると、
「その鍵って、もしかして…」
「ええ、カズトの家の合い鍵よ。まあ、付き合って持つようになったわけではなくて、
恋姫関連で何かとカズトの家にやっかいになることがかなりあったから渡されたのだけれど、
貴女は持っているかしら?」
カズトの家の合い鍵を私は持ってなかった。
それどころか、私はカズトの家にいったことは何度かあるけど泊まったこともない。
それに対して目の前にいる華琳さんは何度か泊まっているようだ。
だからこそ合い鍵を渡しても問題がないとカズトは判断したんだと思う。
ここまで来ると、元カノだった私以上に華琳さんは彼女らしく感じてしまう。
そういうことを考えるのは、やっぱり私自身が未練を引きずっていてどこかでやり直したいと思っているのかもしれない。
その考えを表情から読んだのか華琳さんは私にいってきた。
「貴女が今後カズトとどうつき合うのかはわからないけれど、一応宣言しておくわ。
今は転生した娘を探すことに重点を置いて動いてはいるけれど、
それとは関係なく私はカズトに告白するわ。
始めは恋姫関連ことに対する感謝の気持ちだったけど、
一緒に探していく内に芽生えたこのカズトに対する想いは本物で本気よ。
貴女とよりを戻す事になったらどうするかは分からないけれど、仮にそうなってもこの気持ちは変わることはないわ。
もしよりを戻そうというなら早めにする事ね。
でないと、貴女以外の女性がカズトの隣にいる光景を目の当たりにすることになるわ。
まぁ、それが私か他の娘かは分からないけれど、貴女が変わらない限り確実にそうなると思うわ」
そう私に告げて華琳さんは用事があるからと伝票を持ってこの場を去っていった。
その後しばらく、華琳さんがいた場所を見つめていた。
そうだ。私たちが別れることになったのは私の一方的な感情のせいであってカズトに非はない。
人として、男性として好きになったカズトは、彼の性格からいろんな女性と一緒にいても下心無く接しているんだ。
その証拠に相手が男性でも性別の違いから多少違う箇所があっても、
大体同じように接している。
改めてカズトという男性について見直すと、やっぱり私はカズトが好きなんだと自覚した。
後は私が謝り、やり直したいと言えば、もう一度カズトと彼氏彼女の仲に戻れるかもしれない。
友達や華琳さんの言うとおり、誰かがカズトに交際を申し込んだり告白するかもしれない。
特に華琳さんは元カノだった私に対してあそこまで言っていたから要注意だ。
今カズトの方は、華琳さんが言っていた転生した人に会うために忙しなく動いているから、
それが一段落したら…
それと、私の方でも試合があるから、それが終わったら、私はカズトと話し合うことを決意した。
今、カズトは私のことをどう思ってくれてるかな…
~あとがき~
現代に生きる恋姫達 目指すは恋姫同窓会 舞の中編 いかがでしたでしょうか?
こんな感じで、舞ちゃんヤンデレの扉の前に立った感じのところで華琳と出会い、
改めてカズトに対する想いを再認識して謝罪と再交際を申し出ることを決意しました。
作中に出てきましたカズト宅の合鍵ですが、自分の中では彼氏彼女が持つ必須アイテムであると認識してます。
そう思うのは自分だけでしょうか?
見て分かるとおり、華琳と舞ちゃんが会ったのは、霞の話が始まって数日ほど経った時くらいです。
GWに華琳とカズトが会ってからそれなりに時間が過ぎて、
恋姫転生者もそこそこ見つかった辺りです。
舞ちゃんや友達が言っていた知らない女性と言うのは、言わずもがな転生者たちというわけで。
最後に出てきました”試合”と言うのは、舞ちゃんは何かならいごとをしていて、その試合です。
文武どちらになるかは考え中ですが、今のところ武道かスポーツ関係になる確率が高いです(武将が多いので)。
で、その試合会場にてカズトがいて、まさかの転生者までいました!って展開になる予定です。
舞ちゃんが何をやっているかが決まれば話が書けると思います。
それではこの辺で。後半を楽しみにしていてください。
Tweet |
|
|
24
|
1
|
追加するフォルダを選択
現代恋姫シリーズ 舞の中編です。名前が出ましたのでタイトルはこっちにしました。
サブタイトルはずばり…(元)彼女は見た!www
楽しんでいただけたら幸いです。それでは、どうぞ…