「・・・・え?」
最初にそんなぼうけた呻きを上げたのは斬った本人だった。無理もないだろう。非殺傷設定にしているはずなのにありえないほどの血が流れたからだ。伸は一旦距離を取った。
「いや~驚いた。まさかこの短時間で動血装と静血装の弱点に気付くとは。見抜いたのは・・・・大方シャマルか?」
「え、ええ・・・そうよ」
「流石守護騎士のブレイン。なぜわかったのかな」
「あれだけの攻撃力と防御力・・・それだけでも人間離れしていた・・・・最初に思ったのは魔力強化していない不自然さだったわ。それであなたがアルフに攻撃しようとした時にヴィータが攻撃した時あなたは避けた。そこで私の憶測は現実のものとなったわ。あなたのその特殊な強化・・・あなた・・・」
シャマルが一呼吸おいて言い放った
「自分の血管に魔力を通して自分の身体を強化していたのね!」
その言葉にシグナム以外の皆が驚き伸は口元に笑みを浮かべていた
「よくわかったな。凄まじい観察眼だ。参謀に徹しているだけはある。」
「私は貴方の正気を疑うわ。そんなことしてあなた良く体が無事ね。」
「シャマル、それどういうことや?」
「人間の体は極力無駄なものは取り込まない性質を持っているの。そして血管が受け入れるのは血液・・・・そこに本来全く関係のない魔力を入れて循環させるんだから普通は体が壊死して死んでもおかしくないわ!」
その言葉に二人を除く全員が驚いていた。
「だが、分からなかっただろう?コレがこの強化術の最も最たるものだ。血管に魔力を循環させることで魔力消費を極端に抑え、魔力を放出していないため魔力強化していると察知されない。そしてその点のデメリットだが、魔力濃度と常に魔力を少しずつ入れていくことで耐性を得ることができる。今じゃ、これをするだけで鉄は軽く超える硬度を持つ身体にすることができた。」
「もはやそこまで行くと魔力強化じゃなくて魔力改造ね。でも弱点もある。魔力を循環させる性質上。どちらか一方にしか送り込めない。まあ・・・名前からして大動脈か大静脈からの注入で効果が変わるところかしら。だから同時に発動させることはできない!」
「・・・・見事だ。憶測だけで看破するとは・・・・」
「そ、それより伸!その血・・・」
フェイトが慌ててソレを指摘する
「ん?どうかしたのか?」
「だって・・・大怪我だよ!早く降参してほしいの!」
「・・・・呆れた。敵の傷の具合を心配するとはな」
「そんな・・・バルディッシュ!」
『サー、それが・・・今も非殺傷設定なのです』
「え?」
「ん?ああその点の疑問なら俺が答えてやろう。」
その疑問には伸が答えた
「この空間にはさらに特異な結界が張っていてな。それは・・・この空間限定で『非殺傷設定にしても殺傷設定になる』というものだ。最もそれだけじゃないのだが・・・まあそれは追々話してやろう。ネタバレはそれが起きてからのほうが楽しいしな」
「そんな・・・・なんでこんなことをするの!」
「こんなこと?・・・馬鹿か?そもそも俺は最初に言っただろう?『戦いならいいよ』って。戦いというのは生死を伴って初めて成立するものだ。死ぬことが無い戦いなんて戦いとは呼ばない。」
「そんなの違う!」
「違わないさ。それにお前ら何焦っているんだ?此れくらい日常茶飯事だろ?常日頃から犯罪者と対峙しているお前等が何言っているんだ?血なんて見慣れているだろう?それがただの同級生の血なだけだぞ。まさかとは思うが・・・・犯罪者と対峙するのに殺し合いなんかするわけがないとか思っているんじゃないだろうな?」
「「「「!?」」」」
その指摘に四人が驚いていた。
「図星か・・・・これじゃあお前等に逮捕された犯罪者に同情するな。」
これ以上喋らせたらマズイと思ったのかシグナムが釘を刺してきた
「だが、今のお前は致命傷だ。その傷ではもう戦えまい。」
「傷?・・・・この程度で?」
そう言って斬り裂かれたバリアジャケットをずらして素肌を見せた。そこにはフェイトが付けたはずの傷がすでにない。
「あの程度で俺がやられると本気で思ったのか?甘いな・・・そしてマヌケだ。」
「何?」
「恥ずかしいことに・・・・さっきまでの俺は完璧に慢心していた。あれで倒せると思っていたくらいだからな。だから、お前たちはあの時点で俺を倒すべきだった。おかげで・・・・」
眼を閉じながら伸は語り
『リカバー』
ゼイオンがバリアジャケットを新品同様の状態にまで修復し
「俺はお前たち相手に慢心しなくなってしまった」
眼を開け、写輪眼を展開した。
「なに・・・あの眼」
「さて・・・始めるか」
そう言って手を伸ばす。
「!?来るぞ!構えろ!」
魔法陣を展開しそしてそれをそのまま射出した
「な?」
そのあまりの急展開に全員散り散りになって回避した。魔法陣が出たからてっきりそこから砲撃か何かが来ると思い込んでいたのだ。
しかしその間も伸は大量の魔法陣を展開しては飛ばす。
(クソ!?この攻撃・・・範囲が拾い!)
魔法陣だけで半径が10メートル近くあり避けるのは非効率的と考えたのかシグナムはデバイスで斬りつけて行った。そこに
「スフィアアニマ」
黒い球体のようなものがシグナムの前に現れたそしてそこから大量の球体が至近距離で飛んできた。
「グ!?」
だがそれだけでは終わらない。さらに飛来してきた魔法陣が光り輝き、そのまま、極太の砲撃を放ってきた。
「シグナム!」
さらに間髪入れずに伸は次の標的に照準を定め向かおうとしたが
「ディバインバスター!」
高町が桃色の光線を放った。しかし伸は最初からそこに光線が来るのがわかっていたかのように左腕をだし―――
「呪層:黒天洞」
紫色の盾のようなものでガードされてしまう。
「今!姉さん!」
「うん!」
「「フォトンランサー・ファランクスシフト!」」
盾を張っていない。もう片方のほうから無数の雷が伸に迫ってくる
「・・・図に乗るな。スパイラルバスター」
漆黒の光線に紅い螺旋が加わった砲撃が無数の雷の槍を全てのみ込む。
「そ、そんな」
(あれだけの収束砲撃を一瞬で放つなんて・・・・ダメ・・・よけきれない!)
そしてその砲撃がフェイト達を飲み込む前に
「させん!テォアアアアア!!!」
ザフィーラが割って入り盾を展開してガードした。しかしそれでも完璧にガードしきったわけではなくところどころ傷を負っていた。
「流石は盾の守護獣か・・・ならこれはどうだ?」
そう言って魔法陣を展開した。それに対して全員がシールドを張った
「アビス・アース・レイ」
魔法陣が輝くと同時に無数の砲撃が
「え!?」
「し、下からキャアアアアア!!」
「終わったか・・・」
一方クロノ達は唖然としていた。その卓越した技能に
「刃、アレは一体」
「まあ・・・簡単に言うとさっきの魔法陣を起点に魔素を収束させて地面から放っただけだね。いうなれば殲滅型砲撃魔法。本気出せば大体半径1キロ以内を廃墟にできるよ。」
その言葉にクロノ達は絶句していた。なんせリンカーコアを介さずに外の魔素だけでこれだけの魔法を放ってしまったのだから。
「言っておくけどこれはまだ序の口・・・・彼女たちが立ち上がればまだまだこんなものじゃないよ。だってこれは彼の基本技みたいなものだし」
「・・・・・まだ立つか・・・」
「あたり・・・前や」
「なのはの怪我がかかっているんだから」
「だから負けられないの」
「・・・・しかし驚いたな。」
「あの頃よりかは・・・成長しているよ」
「そこじゃない。俺が驚いたのは・・・まさか俺にあれだけの傷を与えておきながら何の躊躇もなくお前等が俺に攻撃できるとは・・・守護騎士は例外だが」
「どういう意味?」
「なに・・・お前等のような奴が友と信じていた少年に平気で砲撃を撃てるほどに外道だったことをさ・・・・さっきの挟み撃ちにしたって死んでいたぜ?防御しなかったら。」
「「「「!?」」」」
「いや~ほんとすごいなお前等・・・口では友達がなんだ、話し合ってどうたら言っているくせに信じていた存在をこんなに簡単に切り捨てられるんだからよ。あまつさえ、あれだけの血を俺に流させたくせに。」
「ち、ちがう!私たちはそんな・・・・」
「何を動揺している?ここは戦場だぞ?そんな隙だらけでいいのか?・・・月牙天衝」
「!?」
そう言ってアリシアにいつの間にか持っていた天鎖斬月で月牙天衝を放った。それをアリシアはバルディッシュの兄弟機であるハルバードのシールドで受け止めたが
「だから甘いんだよ・・・月牙天衝」
突如背後から同じ斬撃がアリシアを襲った。
オマケ:オリジナル技
動血装、静血装:魔力を血管に送り込み循環させる特殊な強化術。普通の魔力強化が魔力を纏わせる鎧のようなものならこれは皮膚そのものを変質させるようなもの。大動脈か大静脈側から魔力を通し循環させるかによって効果が変わるため同時に発動することができない。
魔方陣攻撃:魔方陣そのものがアクセルシューターみたいな感覚で相手に襲い掛かってくる。しかも馬鹿でかいため避ける動作をするよりも同じ力で相殺させる方が無難。これ自体が盾にもなるためけっこう便利。そして今回みたいな砲撃を撃つための魔方陣を紛れ込ませて奇襲させると言った素敵な事もできる。いやらしい・・・。
スフィアアニマ:黒い球体が常に相手を追尾し一定時間置きにアクセルシューターぐらいの大きさの魔力弾を大量に放つ技。大体三回打つと球切れで自然消滅する。
呪層黒天洞:知っている人は知っている。タマモさんの主戦力。因みに当然のように魔力吸収効果持ち。
スパイラルバスター:黒い砲撃に紅い螺旋が外に纏っている砲撃。大体エクセリオン以上SLB以下の威力を持つ。因みに黒天洞で吸収した白い魔王の砲撃は全てこっちに回していたため伸はほとんど魔力消費をしていない。もっと簡単に言うと高町:伸で魔力比率は8:2でその2もリストバンドにため込んである魔力である。まさに外道
アビス・アース・レイ:頭上に魔方陣を展開しその魔方陣が起動している間半径一キロにわたり空気中の魔素を自身の魔力に強制変換させ地面から無数の砲撃を撃つ殲滅型砲撃魔法。だまし討ちのほぼ初見殺し技。因みにこれでも未完成。伸の目標は最低半径十キロ
因みに写輪眼を使っていないように見えますが写輪眼で常に先読みしています。万華鏡はもう少し後です。まあ、いきなりやっちゃうと『デレデレデェェェン』になっちゃうので
あと守護騎士は仮にも命がけのやり取りを何度もしていますのでそこまでショックは受けていません。そしてそろそろ伸に本格的なスイッチ入ります。彼スロースターターなので(笑)
次回!アリシアのあんまりな扱いにプレシア血涙を流す!!?お楽しみに!!!
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第七十三話:さぁて、少し腰入れるか