No.566332

恋姫外史終章・いつまでも一刀第21話

アキナスさん

南陽よ!私は帰って来た!!

2013-04-15 03:46:50 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5419   閲覧ユーザー数:4104

さて、一刀一行は無事南陽にたどり着き、美羽たちのいる城へと向かっていたが、

 

「本当にいいタイミングだったみたいだな・・・・・・」

 

一刀は店の壁に貼ってあった一枚の紙を見てそう呟いた。

 

それにはこう書かれていた。

 

(袁術、舞台にて歌う!今回だけ入場無料!わらわの歌を聞け!!)

 

ようするに宣伝用ポスターで、街の各所に貼り出されていた。

 

「あと三日か。一言知らせて欲しかったぜ・・・・・・」

 

「・・・・・・ねえ一刀?」

 

「何だ?」

 

「袁術が打ち込んでる事って・・・・・・・これの事?」

 

「まあな」

 

「・・・・・・マジで?」

 

「大マジ。さて、早く帰って様子見てやろっと・・・・・・」

 

一刀はそう言うと、スタスタと城へ向けて歩き出した。

 

「・・・・・・嘘はついてないみたいね」

 

「馬鹿な・・・・・・」

 

「ふむ、なかなか面白そうじゃのう。わしもやらせてもら・・・・・・」

 

「「やめてください」」

 

雪蓮と冥琳は頭を下げてほぼ同時にそう言ったのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで城へとたどり着いた一刀たちだったが、そこでは予想外の事態が起こっていた。

 

「美羽が塞ぎこんだだあ?」

 

「そうなのよん・・・・・・」

 

城内の廊下で、貂蝉はため息をつきながら一刀に言った。

 

「何があったんだよ?」

 

「ご主人様、街に貼ってあったポスター見たでしょ?」

 

「ああ、入場無料とか奮発したなあと思った」

 

「あれ、アタシのアイデアなの。それと、兵士たちの家族や友人に声をかけて、席の四分の一くらい埋めさせる予定」

 

「サクラまで使うのか・・・・・・」

 

「その辺りの話で美羽ちゃんと口論になっちゃったのよん。「そんな事する必要はない!そんな事せずとも、わらわの歌を聞きたがる者達など腐るほどおるはずじゃ!!」・・・・・・ってね」

 

「それで?」

 

「アタシも本職なんでついカッとなっちゃって、今、美羽ちゃんに民の人気なんてないわん!こうでもして興味を引かせないと、誰も聞きにきてくれないわよ!!・・・・・・って」

 

「・・・・・・」

 

「それが四日前の話。それからは練習にも出なくなって、部屋に閉じこもっちゃったのよん・・・・・・」

 

「お前なあ・・・・・・もっと言い方考えろよ」

 

「反省してるわん。ついムキになっちゃって・・・・・・」

 

「はあ・・・・・・行って来る。悪いが三人はここで待っててくれ」

 

「え、ええ・・・・・・」

 

一刀はため息をつき、貂蝉と雪蓮たちを残して美羽の部屋へ歩いていくのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?七乃か?」

 

「あ・・・・・・一刀さん・・・・・・」

 

美羽の部屋の前まで来た一刀は、美羽の部屋から出てきた七乃と出くわした。

 

ちなみに、七乃の記憶はもう戻っている。

 

美羽と間違えて貂蝉に抱きついた後、うなされている時に前外史の夢を見て、その時に記憶が戻ったらしい。

 

「美羽は?」

 

「中にいますけど、美羽様すっかり落ち込んでて・・・・・・私も慰めようと努力したんですけど、効果が無くて・・・・・・」

 

「・・・・・・そうか。じゃあ、今度は俺が話してみよう」

 

「お願いします」

 

そう言うと、七乃は扉の前から退いた。

 

「美羽、入るぞ~~」

 

一刀は軽くノックすると、美羽の部屋に足を踏み入れたのだった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

美羽は、寝台で体育座りの体勢になっていた。

 

顔は膝に埋めており、良く見えない。

 

「お~い、久しぶりに帰ってきたんだからおかえりくらい言ってくれてもいいんじゃないか?」

 

「・・・・・・おかえりなのじゃ」

 

美羽は顔を上げずに言った。

 

「やれやれ・・・・・・」

 

一刀は美羽の寝台までやってきて、美羽の隣に腰掛けた。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

しばらく二人は無言だった。

 

口を開いたのは美羽からだった。

 

「・・・・・・一刀」

 

「ん?」

 

「わらわは、民に嫌われておるのか?」

 

「そうだな、嫌われてるな」

 

「・・・・・・そうか」

 

美羽は膝に顔を更に埋めた。

 

「で、それがどうしたんだ?むしろ俺としては好都合だと思うんだが・・・・・・」

 

「・・・・・・?」

 

一刀の言葉に、美羽は少しだけ顔を上げる。

 

「発想を変えてみろよ。嫌われてるお前が舞台で客を魅了する事が出来たなら、それはお前の歌がそれくらい力があるって証明になるって事じゃねえか」

 

「あ・・・・・・」

 

言われて初めて気づいたとばかりに、美羽は顔を上げて一刀の顔を見る。

 

「しかも、成功すれば少しはお前への評価も変わるだろ?一石二鳥じゃねえか」

 

「おお・・・・・・確かにそうじゃな」

 

体育座りの視線を完全に解いた美羽は、感心した様子で一刀の言葉に頷いた。

 

・・・・・・が、美羽は急に不安そうな表情になる。

 

「じゃ、じゃがもし駄目だったら・・・・・・」

 

「・・・・・・やれやれ」

 

一刀は軽く首を横に振ると、ひょいと美羽の身体を抱き上げた。

 

「はえ?」

 

いきなりの事に戸惑いの声を上げる美羽。

 

そんな美羽に構わず、一刀は美羽を自分の膝の上に乗せた。

 

「そんなに不安になんなよ。大丈夫だ。お前は一人じゃねえ。俺もいるし、七乃だっている。麗羽も貂蝉もみんなお前を支えてくれる。お前はただ、全力を出して舞台に臨めばいいんだよ」

 

美羽の頭を撫でながら、一刀は美羽を励ます。

 

「・・・・・・」

 

「だいたい、その若さで失敗怖がってどうすんだよ。むしろ失敗して当然、当たって砕けろくらいの覚悟で行ってみろよ」

 

「う、うむ・・・・・・」

 

一刀の言葉に頷く美羽だが、やはりまだ不安そうだった。

 

「ふう・・・・・・仕方ねえな。俺が元気が出る歌を歌ってやるよ」

 

「元気が出る・・・・・・歌じゃと?」

 

「おう、しっかり聞いてろよ?」

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

そのころ、貂蝉は雪蓮たちと話をしていた。

 

「へえ?貴方が袁術の先生なの?」

 

「そうよ。アタシの名前は貂蝉。しがない踊り娘よん♪」

 

「どこがしがない・・・・・・いや、それより踊り・・・・・・娘?」

 

貂蝉と雪蓮の会話に冥琳は当然の疑問を呟くが、残念ながら疑問に思っているのは彼女だけのようだった。

 

「ふむ、かなり鍛えられているようじゃのう。おぬしの踊り、一度見てみたいものじゃ」

 

「あらん?なら今すぐでもいいわよん・・・・・・?」

 

ふと、貂蝉がキョロキョロ辺りを見渡した。

 

「どうかした?」

 

「しーー・・・・・・」

 

貂蝉は唇に指を当て、静かにするようジェスチャーした。

 

「この歌は・・・・・・」

 

「歌?」

 

貂蝉の言葉に、雪蓮たちは耳を澄ませた。

 

どこからか、歌が聞こえてくる・・・・・・

 

 

 

 

 

 

若い日は、みな何かを目指~せ~

 

秘めた力、自分じゃ分からない~よ~

 

夢を大きく持~と~う~

 

そうだとびきりで~か~く~~

 

 

 

 

 

 

「この歌は、ご主人様ね」

 

「ご主人様って、一刀?」

 

「そうよん。ご主人様もなかなかのセンスを持ってるのよ?」

 

「へえ・・・・・・?どうかした?祭?」

 

「うむ、この歌声、どこかで聞いた事が・・・・・・」

 

顎に手を当て、何かを思い出そうとする祭。

 

だが、残念ながら、結局ここでその何かを思い出す事はできなかったのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えより、もっと大事な事~は~

 

勇気出して、自分を試すこと~だ~~

 

君は何かが出来る~~

 

誰も何かが出来る~~・・・・・・

 

 

「どうだ、少しは元気出たか?」

 

「・・・・・・つまり、何事も挑戦じゃ。勇気を出してやってみろ、と言う事じゃな」

 

「ふむ、ちゃんと伝わったようだな」

 

「歌というのは、誰かに何かを伝えるものでもあるのじゃな・・・・・・」

 

「ああ、今回俺はお前に俺の気持ちを伝えたくて歌った。今度の舞台で、お前は誰に何を伝える?」

 

「・・・・・・それは後のお楽しみじゃ」

 

そう言った美羽の表情に、もう不安の色はなかった。

 

「それじゃ、貂蝉に謝って練習再開だ。もう時間もないんだからすぐ行くぞ」

 

「うむ!」

 

そして二人は部屋を出た。

 

「あ・・・・・・」

 

部屋から出ると、そこには七乃の姿があった。

 

美羽が心配でずっと部屋の前にいたのだろう。

 

「美羽様、もう大丈夫なんですか?」

 

「うむ、心配かけたの。今から貂蝉に謝りに行くのじゃ。すぐに練習を再開するから、七乃も一緒に来てたも」

 

「は、は~い」

 

美羽の言葉に返事した七乃は、一刀に近付き、

 

「一刀さん、ありがとうございました」

 

軽く頭を下げ、礼を言った。

 

「いや、俺がやりたくてやった事だ。礼言われることじゃねえよ」

 

「いえ、美羽様が元気になってくれたのは一刀さんのおかげですから・・・・・・ちょっと嫉妬しちゃいますけど」

 

「何か言ったか?」

 

「いえいえ、それじゃあ美羽様、行きましょうか?」

 

「うむ!」

 

「俺も行く。孫策たち待たせてるから」

 

「はえ?孫策が来ておるのかえ?」

 

「ああ、ちょっと野暮用でな」

 

「ふむ・・・・・・まあよい。とにかく行くぞ!」

 

「はいは~~い」

 

「おう」

 

美羽を先頭に、三人は駆け足で貂蝉たちの下へ急ぐのだった。

 

 

 

 

 

その途中、七乃は一刀に小声で訊ねてきた。

 

「でも一刀さん。今孫策さんたちを連れてきて、どうするつもりなんですか?」

 

「ああ、それなんだがな・・・・・・」

 

一刀はぼそぼそと、今後の事に関して七乃に呟いた。

 

「ってかんじでまとめようと思うんだが、駄目かな?」

 

「う~ん、まあ、いいんじゃないですか?私は特に不満ありませんけど」

 

「あんたは美羽と一緒なら不満なんてないも同然だろ?」

 

「それはそうですけどね~~」

 

互いに笑いあう一刀と七乃。

 

「二人とも何を話しておるのじゃ!早く行くのじゃ!」

 

「はいはい~~」

 

「分かってるって」

 

 

 

 

その後

 

 

 

 

貂蝉の下にたどり着いた美羽は、貂蝉に自分の非を詫び

 

 

 

 

貂蝉もまた、言い過ぎたと美羽に謝罪した

 

 

 

 

そして仲直りしたところで、今までの遅れを取り戻すべく、すぐさま猛練習を始めるのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

最初は今回で美羽を舞台に出そうと思ってたんですけど、それでいいのかなと悩み始めて、今回の話になりました。

 

次こそは美羽(と七乃)のファーストステージなので、どうぞ見てやってください。

 

ところで、もう一つの問題である孫策たちにした提案を、一刀は美羽にどう納得させるんでしょうねえ・・・・・・

 

そんな所で次回に・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メテオザッパーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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