「雪蓮、もう戦いの準備は万全だ。いつでも始められるぞ」
「そう、なら残る問題は・・・・・・」
「奴・・・・・・だな」
「シャオには悪いけどね」
「では、今夜にでも・・・・・・」
「捕まってもらいましょう」
そんな会話を交わしていた雪蓮たちのいる部屋の前に、思春の姿があった。
「・・・・・・」
思春は無言で扉の前に立っていたが、
「失礼します」
扉を開けて、部屋の中に入って行った・・・・・・
「・・・・・・と言うわけだ。どうする?」
「ん・・・・・・そうか。時間切れか」
一刀の部屋で、ボン太くんの頭の部分だけ外した一刀と思春、そして思春が来る前から一刀の部屋にいた小蓮は三人で話をしていた。
あの後、思春は雪蓮たちから一刀の捕縛を命じられていたのである。
「一緒に過ごしてれば何らかのきっかけで記憶が戻ると思ってたけど、呉陣営では三人か。上手くいかないもんだな・・・・・・」
ふう、と一刀はためいきをついた。
「仕方ないな、最終手段だ」
「何かいい方法があるの?一刀?」
「・・・・・・何をする気だ?」
小蓮と思春の問いに一刀は頷き、
「ああ、それはだな・・・・・・」
「失礼します」
ガチャリと扉を開けて、思春は雪蓮と冥琳のいる部屋へと戻ってきた。
「どうかしたの?ボン太くんは?」
「捕らえたのか?」
その問いに、思春は首を横に振った。
「いえ、すぐにでも捕らえようと思ったのですが、その場に小蓮様が居られまして・・・・・・」
「・・・・・・で?」
「通訳で、ボン太くんから重大な話があるので、雪蓮様たちと話をさせてくれと頼まれました」
「重大な話?」
「私一人では判断しかねるのでご報告に・・・・・・」
「そう・・・・・・いったい何の用かしら?」
「さてな、直接聞いてみればいい。くだらん事だったらその場で捕らえるだけだ」
「そうね・・・・・・思春、ボン太くんを連れてきてくれる?」
「はっ!」
思春は踵を返し、部屋を出て行く。
そして数分後・・・・・・
「連れてきました」
「ふも」
思春に連れられて、ボン太くんと小蓮は雪蓮たちの前にやってきた
「重大な話があるって事だけど、何?」
「ふもっふ」
ボン太くんは一言そう言うと
自分の頭に手をかけて
ゆっくりと持ち上げていった・・・・・・
「あ、あなた、北郷一刀?」
着ぐるみの中から一刀の顔が出てくると、雪蓮は少なからず驚きの声をあげた。
「その通り。久しぶり・・・・・・てことでいいのかね?素顔で会うのは久しぶりだし・・・・・・」
一刀はそう言いながら、残った着ぐるみも脱いでいく。
「北郷一刀・・・・・・だと?確かその名は・・・・・・」
「袁紹の男だったのよね?自己紹介の時は補佐って言ってたけど・・・・・・」
雪蓮の言葉に、冥琳は一刀に厳しい視線を向けた。
「嘘は言ってねえよ。仕事はそんなもんだしな」
着ぐるみを全て脱いだ一刀は頭をかきながら平然と言った。
「・・・・・・シャオ、貴方、一刀の事を知ってたの?」
「う、ううん。言ってる事は分かったけど、素性までは・・・・・・」
雪蓮の問いに、小蓮は戸惑った声で答える(もちろん演技)
「・・・・・・そう。で、一刀。貴方、ここに何しにきたの?そんな着ぐるみまで着て・・・・・・」
目を細め、鋭い視線を一刀にぶつける雪蓮。
一刀はさらっと視線を受け流し、
「いや、ちょっと気になる事があったんで、潜入捜査をさせてもらってたんだ。おまえらが、美羽の所に攻め込もうとしてるって情報があったんでな・・・・・・」
「「「「・・・・・・・」」」」
一刀の一言で、場の空気が一気に重くなった。
雪蓮と冥琳は一刀にあからさまな敵意の視線を向け、小蓮は冷や汗を垂らし、思春は得物に手をかけいつでも飛び出せるようにしていた。
「それで?捜査の結果は?」
「クロだな。自分達が良く分かってるだろ?」
一刀ははっきりとそう言った。
雪蓮たちの一刀に向ける敵意の視線に殺気がこもった。
「ならばどうする?貴公がここに来たと言う事は、袁紹は袁術の味方だと言う事だな。袁家二人の軍で私達を潰すか?」
冥琳は一刀に向けていた視線を、扉の前で構えている思春に向ける。
(合図したら捕らえろ)
そう目で言っていた。
思春はわずかに頷く。
そんな緊張が続く中、一刀はいつもと変わらぬ様子で雪蓮に言った。
「孫策よ。一つ言いたい事があるんだが・・・・・・」
「・・・・・・何かしら?」
「えっと・・・・・・」
「美羽の領土、おたくから奪ったぶんも含めて全部渡すから、美羽の命は見逃してやってくれねえか?」
「・・・・・・は?」
一刀の発言に雪蓮は思わず呆けた声を出した。
冥琳も信じられない表情で一刀を見ている。
「き、貴公は正気で言っているのか?」
「おう」
冥琳の問いに一刀は即答する。
「そちらさんだって、戦いで愛する民たちを危険にさらしたくないだろ?兵士たちを失いたくないだろ?美羽への復讐を諦めるだけで無傷、しかもおまけつきで目的の物が手に入るんだ。悪い話じゃないだろ?」
「そ、それはそうだが・・・・・・」
冥琳は珍しくうろたえていた。
当然だ。こんな破格の条件を出されれば。
そもそも、袁紹に袁術、特に袁術からすればほとんど利がない、それどころか全て失う破滅への条件ではないか。
「そんな戯言信じられん。そもそも、袁術がそんな条件飲むはずがないだろう」
「心配いらねえ。ちゃんと説得するさ。そもそも、美羽は今熱心に打ち込んでる事があるからな。そっちをしっかり援助してやれば、そこまで文句は出ないはずだ・・・・・・」
「・・・・・・打ち込んでる事?何それ?」
「何って・・・・・・そうだ!そろそろ仕上がってる頃だろうし、直接見てもらったほうが早い」
ポンと手を叩く一刀。
「孫策、南陽行こう。そこに行けば全て分かる」
ピッと指を立てて雪蓮に言う一刀。
「馬鹿な・・・・・・完全に敵だと分かっている者の本拠地にわざわざ出向く馬鹿は・・・・・・」
「・・・・・・そうね、行きましょうか」
「いな・・・・・・雪蓮!正気か!?」
雪蓮の答えに冥琳は仰天した。
「んじゃ、準備が済み次第出発ってことでいいか?」
「ええ、構わないわ」
「そか。じゃあ俺は部屋に戻るかね・・・・・・」
そう言って脱ぎ捨てたボン太くんの着ぐるみを拾い、踵を返す一刀。
部屋から出ようとする一刀だったが、扉の前には思春が・・・・・・
「思春、通していいわよ」
「・・・・・・はっ」
孫策の言葉に思春はすっと道を空ける。
「じゃあ、出来るだけ早く準備しといてくれよ」
扉を開け、スタスタと一刀は部屋を出て行った・・・・・・
「何を考えている雪蓮!むざむざ殺されにいくような物だぞ!それより、あの男を人質に取って切り札にしたほうが・・・・・・」
「冥琳落ちつきなさいって」
まあまあと冥琳をなだめる雪蓮。
「そんな事したら本気で袁紹と袁術怒らせる事になるでしょ?万が一、一刀に逃げられでもしたら私達終わりよ?」
「しかし!あんな話信用出来ん!!」
「そうね、でも、もし本当だったらタナボタ所の騒ぎじゃないわ」
「・・・・・・もう行くと、決めてるんだな」
「ええ」
互いに見つめあう雪蓮と冥琳。
「・・・・・・はあ」
冥琳は大きくためいきをついた。
「分かった。好きにしろ。ただし、私も行く。死ぬときは一緒だ」
「いやいや、まだそう決まったわけじゃないでしょ?」
「百回中九十九回は死ぬと思うがな・・・・・・」
「ん~~、でも、私大丈夫だと思うのよね~~・・・・・・」
「根拠は?」
「勘」
「・・・・・・だと思ったよ」
再び大きくため息をつく冥琳だった・・・・・・
そして一週間後
一刀、雪蓮、冥琳、それに護衛に立候補した祭を含めた四人は
袁術のいる南陽へと旅立つのであった・・・・・・
どうも、大変おひさしぶりのアキナスです。
毎度お待たせして申し訳ないです。
ああ、もっと時間が欲しいなあ・・・・・・
さて、ついに正体を明かした一刀。
その水爆級の発言に疑いを持ちながらも、一刀と共に南陽へ旅立つ雪蓮、冥琳、祭。
その先に待つのは・・・・・・予想つくと思いますが・・・・・・
そんな所で次回に・・・・・・
「チャクラエクステンション!シュート!!」
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平穏な時の終わり・・・・・・