あのお姉さんと仗助が出会った夜から数日が経ち、
仗助は現在、路上でなにやら怪しげな雰囲気の動物占いと言う店を開いていた、恰好はぐるぐる巻きの眼鏡を掛けた特徴的なリーゼントというもの、怪しすぎにも程があるといった格好である、
それでもって、その周りには控えるように大量の動物たちが居た、その種類は様々でライオンにキリン、鹿に豚などいったいどっから連れてきたのかわからないような動物ばかり、まるでサファリ状態である
数日の間、仗助はお姉さんの家に泊めてもらっていた、その理由は彼女が自分が出ていくと言った時に物凄く寂しそうな表情を浮かべていたためにほっとけなくなり、こういうことに弱い仗助は仕方なしに滞在しているという訳である
しかし泊めてばかりでは悪いと仗助は彼女に何かしらの恩返しをするために最初はスタンドを使ってそれっぽい占い店にしようとしていたのだが、気が付けばどこからか動物たちが集まり始め結果がこれ、…なんなんだこれは
仗助自身は新手のスタンド攻撃か何かだと最初は戸惑いをみせたもののしだいにこの環境に慣れてしまった、意外と彼は自分自身で順応性が高いなと感心してしまう
「おー…ピョートルーどうしたっスかー? 何ィ!腹減ったァ!オメーさっき飯食ったばかりだろー」
そういって占いの席で座っていた自分の肩を突くキリンに仗助は頭を撫でながら答える、その仗助のキリンに対する口ぶりは、まるで動物が言った言葉がわかっているようなものであった
自分がこの動物たちと触れ合ううちにスタンドではないもう一つの能力に目覚めそうで怖い、仗助は日に日にそう感じるのであった
まぁ、営業の方は意外と順調だ、クレイジーDのお蔭もあってか修理屋の仕事を兼任してやっているため割と盛況である、そこは流石仗助、まったく抜け目がない
あのお姉さんも偶にこちらに顔を出して来てくれる、ちなみに彼女の名前は姉ヶ崎妙というらしい、数日と一緒の部屋で泊めてくれたお蔭か彼女が親切に名乗ってくれた、今では仗助は彼女を妙さんと呼んでいる
その妙は仗助がやたらと気に入ったのか毎日の様に家で甘えてくる、とは言っても膝枕をしてくれだとか抱っこをしてくれだとかそんなものだ仗助にとってはなんともないため、彼女の要望に素直に従っていた
一応、現同居人の絃子に毎日のように仗助は連絡を入れているのだが、これがまたやっかいなもので、いつ帰ってくるのか、なにかされなかったとか、早く帰ってきて自分にも膝枕や抱っこをしてくれだとか、あの普段からの冷徹クールビューティの彼女とは思えないほどのギャップ離れした単語が電話越しから流れてくるために仗助はどうすることもできずに苦笑いを浮かべるしかなかった、…正直ドン引きである
しかし、いつまでも彼女の家に泊まってばかりにはいられない、仗助は今日を最後に明日の朝には絃子の家に戻る算段をつけていた、そのためにこの店も今日までで、この動物たちは承太郎に相談してSPW財団に頼み買い取った動物園に移送される
終始、仗助が事情を電話で話していた承太郎は呆れ声であったが、動物たちの中に変わった模様のヒトデが紛れていることを伝えると人が変わったように二言返事で了承してくれた、ちなみにそのヒトデは承太郎の元に行く予定だという
「あのーすいません、良く当たる占いって聞いてきたんですけどー」
とここで事情を思い返していた仗助は店に来た女性の一声で我に返り、営業モードに戻るなんにせよ自分は今、仕事をしているのだ、しっかりしなくては
「…うぃ…どうぞーそれでー…」
そうして、占いに仗助が入ろうとしたその時だったピシリとその店に来たお客の顔を見て彼は固まる、そう、特徴的な釣り目に金髪のツインテールそして猫被ってそうなこの口調、それは明らかに自分が知っている知人の一人だったのだ
(ウゲェ…金髪お嬢じゃあないっスかぁ~、まじかよーッ!!ばれたら面倒くせーぞこれェ…)
そう、金髪お嬢こと沢近愛理その人である、
しかしながら、夏休み期間中であるために私服の彼女はこちらの顔に気付いてないのか首を傾げ、とっさに仗助の顔を隠すように蛇やらアザラシなどが頭に乗ったり巻きついたりしている
「あなたどこかで…」
「えーなんの事っスかァ~僕わかんないですー!どうでもいいので早く要件を言ってくださいこのダボ」
先日のシャイニングウィザードの事を根に持っているのかドンドン口が悪くなる仗助、彼は顔を引き攣らせあくまで営業スマイルを浮かべながら、自分の顔をまじまじと見つめてくる彼女に早く要件を出すように促した
こちらの沢近も仗助の言動が多少カチン来たが、まぁでも気のせいだろうと言うので聞き流し、自分の聞きたいことをコホンと一つ咳払いして言い始める
「…えっとそれじゃあ、お父様が好きな食べ物なんですけど…」
「…オメーの失敗した料理イガイジャネーノ?」
「…アンタちょっと表出なさい」
その途端、沢近の頭からプツーンという音が聞こえた気がした、彼女はすぐさま仗助の胸ぐらを掴んで顔を近づけどすの利いた声を溢す、仗助は慌てて冗談ですよー冗談、と言って誤魔化し彼女に真実を伝えることにした
「…お父さんの好きな食べ物は…ズバリカレーっスね」
「オッケー死にたいようね」
「いやいやいや!!マジっスってッ!!真面目にやってこの仕打ちは酷いっスよォ~」
仗助の慌てたような口ぶりにフーンと声を溢す沢近、以前、彼女とは下校中に偶然会い、カレーが好きか肉じゃがが好きか仗助は問答されたことがあった、その時に仗助が答えたのがカレーである、ちなみに動物占いのこれは適当にカレーと答えた、理由は単に面倒だったためである
まぁ、それでも真面目に答えたお蔭か沢近は特にこれ以上何も言わないつもりらしい彼女は踵を返して占い屋の前から立ち退いてゆく、
「ま、いいわ 占ってくれてありがとう、それじゃあね」
そうして、彼女は去り際に何か思い出したようにあ、そうだ、と呟くと彼に再び振り返りこう言った
「それとアンタ、そんなくだらない事やってないで早く家に帰りなさいよー 来週、晶たちと海行くんだからー」
「…海ィ!マジっスか!うっはーテンションあがるッスねぇ!! …あ、テメー!それより占い代ッ!皆さーん!あそこに無銭で占いしたお嬢様が居ますよー」
「…何言ってんの!このばか!」
去り際に自分の正体がばれていたことを悟り開き直って無銭犯と煽ってくる仗助に向い全力投球で頭に空き缶を投げつける沢近、その空き缶は見事に仗助の頭に直撃し空き缶がぶつけられた彼からはウゲ! といった間の抜けた声がこぼれていた
しばらくして、仗助は再び占いの席に座り次のお客さんを待つことにする、すると、沢近が立ち去って数秒もしない内に客らしき人物から声を掛けられた
「すいませーんここ、占い屋ですよねぇ!烏丸君!ここすごいよ本物の占い屋さんだって!」
「……そうなんだ」
仗助は顔を上げてその素顔を目でしっかりと確認する、だが彼は目の前に現れた人物の出現に驚愕と同時にその彼女と一緒にいる人物に自分の目を疑い同時にカチンと氷の様に固まってしまった
仗助の前に現れた信じられない人物、神の悪戯かそれとも偶然か、それは天満と彼女が好きだと言っていた意中の相手、烏丸大路その人であった、
仗助は先日にあった出来事を思い出し自身の中でついにやっちまったという後悔をした
別に烏丸と天満が二人でいることはこの時仗助にとって左程重要ではない、ホントに重要なのは彼女との今の関係、自分は彼女を怖がらせてしまったという罪悪感がある
そんな彼女は自分の気持ちを知ってか知らずか、一緒にいる烏丸と自分の相性を占って欲しいなーとか言ってる始末である、しかし、表情が見えない烏丸は無言のままただじっと仗助を見つめていた
(やりずれ~なんなんッスかこの拷問ッ!ツララを尻の穴に突っ込まれた気分っすよォ~億泰~助けてくれー)
泣き言を内心でボロボロと溢す仗助、確かにこんな気まずい状況なら逃げたくなるのもわかる、誰だってそうする俺だってそうする、というやつだ
そんな気持ちの仗助を他所に天満はある例えとして、烏丸にある質問を投げかけた周りの人が聞けばなんだその質問はと言うものではあるが彼女なりに考えて作った質問なのだろう烏丸に訪ねる彼女は何処かモジモジしていて仗助は正直、可愛いいと感じてしまった
「…えっと、いまから占い終わったら、カレー食べ行くよね?烏丸君、それでね例えばなんだけど…私とカレーだったらどっちが好き?」
「カレー」
天満の質問に烏丸は即答だったッ!その間ッ!約0、2秒ッ!
天満はまるで死んだ魚の目をしたようにその瞬間固まる、しかし、そこは流石は塚本天満というところだろう、笑いながら例えが悪かったねと烏丸に謝りもう一度違う例えで彼に訪ねだす
「レトルトのカレーと私ならどっちが好き?」
「……………」
意外ッ!それはッ!沈黙ッ!
なんと烏丸は天満とレトルトカレーの選択肢に沈黙と言う回答を選んだ、これにはさすがの塚本天満も精神的にもう耐え切れない!彼女は涙を流しながらその場から物凄い勢いで走り去る
「烏丸君の馬鹿ァーーーーー!!」
大げさに涙を流し走り去る天満、その姿はなんだか勇気をふりしぼって聞いた期待感を裏切られたとても悲壮感が漂うものであった
彼女に取り残された烏丸はそんな彼女の後姿を黙ってみていた、その顔はなんで泣いて走っていったんだろうと疑問に抱いているようなそんななんともいえない顔であった、彼女の涙を見た仗助はそれでも追っかけようとしない烏丸に苛々が募りそれが爆発した
「…あ」
「あ…じゃあねーすよアンタ!なんで追っかけないんっスかッ!」
仗助はすぐさま、天満を泣かした烏丸を睨み自分のスタンドであるクレイジーDを発現させそういって、そのスタンドの拳を彼に向って振るう
だが、直感かそれとも仗助のスタンドが見えているのか烏丸は宙返りで空を飛び、まるで鳥の様に道路にあるガードレールの柱の上に立っていた、何事もなくその柱の上に立てれるその身体能力の高さは凄いの一言に尽きる
「君が行ってあげるんだ…仗助君」
「…何ィ」
烏丸は儚げな瞳を仗助に向けながらそういった、そして自分には今やらなけらばならないことがある、といった使命感に満ちた表情であった
彼の視線の先、そこにはカレー屋があり全品半額といった事が店の表に掲げてあった、烏丸にはどうやらそっちの方が重要であるらしい
「…ったく!面倒くせーなァ!!」
仗助はそういって走り去った天満の後を烏丸をその場に残して全力疾走で追いかけてゆく、
自分はあの娘に嫌われたのに一体何をやっているんだろう、彼女には好きな野郎がいてそれがあいつじゃないのか、ほんとはアイツが追っかけて行った方が彼女が喜ぶことだって自分は知っている
なら、なんで自分は彼女の為に走ってるのか、決まっているまだ好きだからだ、嫌われようが何されようが知ったことではない自分はひたすらに突っ走るしか考えてない
彼女を呼び止めてどうするなんてのは後で考えりゃ済むことだ、今はただ…
いろんな考えがグルグル仗助の中で回る、例え、自分が報われなくても彼女が笑っていればいいそれだけ、けれどまだ自分は気持ちを伝えてない、そんな終わり方は絶対にしない
そんな風に考えていた仗助は歩道橋を全力で登り切り、降りおうとしたその時だった階段から足を滑らせ下の地面に叩き付けられる、その有様を見ていた女子高生が彼を心配して寄ってくるが仗助はすぐさま立ち上がり天満を追うために足を引きずりながら歩き始めた
転入した不安だったあの日に彼女を見て自分の世界が変わった…
しばらく、歩いた後に仗助は足に力が入らなくなってバタリと倒れた、もう追いかけられそうもないそう諦めそうになったその時だった
彼の前に光がさしたようなそんな錯覚がした、重い瞼をゆっくりと開けてみるとそこには自分が先ほどから追いかけていた女の子の面影があった、そうか、自分に気付いて切り返して道を戻ってきてくれたんだと仗助はその時思った
その面影から仗助へと優しく手が差し伸べられるまるで女神の様に細い手首だった
今、気持ちを伝えようそしてこれで終わりにしよう
仗助はそう決心してその差し伸べられてきた手首を思いっきりつかみ勢いに任せ上半身だけを起こし、息を吸い込み言葉を紡ぎ始める、転入した時から思いつめていた気持ちをブチかますようにそして彼はその言葉を放った
「聞いてくれッ!転入した時からずっとオメーの事が好きだったんだッ!ようやく!ようやく言えたッ」
「……え…」
だが、しかし、意識がしっかりとした仗助は手首を掴んだ相手を見た途端に石のように固まり、氷点下の様に自分の体温が一気に下がるのを感じた
仗助にいきなり告白された沢近の中では現在、いろいろと物凄いことになっていた
(え…リーゼントがいきなり私の事が好きだって…)
確かに顔も良いしスポーツできるし女子にもモテてしかも、スタンド使いっていう能力使いで自分には見せてないミステリアスなとこがある、断る理由も特にないしそれにこんな熱烈な告白を受けたの生まれて初めて…
そんな、乙女な気持ちがいっぱいに沢近の脳内を支配していた、彼の瞳を見るたびに沢近の心はキュンと苦しくなる…
対して仗助はそんな沢近の気持ちとは全く違い、とりあえずヤバいの大安売り大バーゲンセールだった、なんてマヌケな事をしてしまったんだ、自分はと、コンクリートに向って頭を強打したい気分である
そうそれは例えるなら、九回裏逆転負け、ドーバの悲劇、海底に沈んでゆくタイタニック、今の彼の心情には様々な表現ができるが、そこで問題だ!どうやってこの誤解を解くことができるのか?
3択―ひとつだけ選びなさい
答え①ハンサムの仗助は突如言い逃れのアイデアがひらめく
答え②仲間がきて助けてくれる
答え③告白を受けいれる。現実は非情である
だめだ、どうやってもいいアイディアが浮かばないというより沢近は顔を真っ赤にしてこちらをジッと見て来てそれどころではない、仗助は辺りを見渡してこの状況を助けてくれそうな人物をすぐさま探す
と、丁度いいところにこれを目撃した周防と晶、そして億泰の姿を仗助は発見した、こいつは助かった正解は二番だと思い彼女にスタンドですぐさまサインを送る
だが、全員手を揃えて左右に振り無理という返答を返してきたオーマイゴット!!
それどころか仗助の早とちりによる誤解の告白がわかった途端に全員踵を返して見ないことにしようとしている、薄情にも程があるという奴だ、しかも沢近はしだいに満更でもない的な表情に変わってきている
仗助はすぐさま役立たずの仲間たちから視線を沢近に戻し、諦めて誤解であることを説明しようとした、だが、その矢先…
「ジョジョ~…どこ行ってたの~探したんだからー今日は肉じゃがだぞー」
妙さんが背中から生えるように登場、仗助に抱きつきながら彼の頬を突き微笑みそう告げる
これがここを逃れるチャンスとばかりに仗助は立ち上がり、空回りなテンションでこう言った、これはいけるやはり仲間はだめだった答えは一番だ!
「いっやードラマの告白ってぇこんな感じッスよねーお嬢!ちょっと緊張したけど反応、メッチャお嬢の可愛かったすよー! んで妙さん肉じゃがッスよねー俺、好きっすよォ!よく好みがわかってらっしゃる!」
きつい、いろいろと言い逃れ方がきつすぎる
しかし、これなら誰も傷つかないわけではないが誤解は解けたはずだ、さて後は立ち去るだけ、仗助は颯爽と立ち上がり、いつも通りにリーゼントを整えて沢近の方に振り返り、それじゃ来週に会おうぜと言って妙の背中をせっせと押して急かしすぐに立ち去ろうとする
だが、そうは問屋が降ろさない
女の人と立ち去ろうとする仗助を見て、沢近はポツリと言葉を漏らす
「待って…仗助君…」
「…へ…?」
そこからは、沢近の全力疾走、彼女は仗助に向い一直線、
そう、あれだけ熱烈に告白された彼女がこれで終わる訳がなかった、立ち去ろうとする仗助に勢いをつけてきた彼女は彼に近づきそして…
「…うぎゃああああああ!!」
背後からとび蹴りを食らわした、そのしなやかな足とは裏腹にその効果は抜群
蹴りを受けた仗助は骨が折れたような鈍い音と悲鳴と共にコンクリートの地面の上に見事にKO、そんな仗助が蹴りをお見舞いされる状況を驚いて見ていた妙さんはコンクリートに沈んだ仗助に近寄り安否を確認する
「ジョジョー大丈夫~?」
「…アンニャロウ…先日、シャイニングウィザードの次にこれってシェレにならないっスよォー」
「…なによ…デレデレしちゃって…」
そういって、とび蹴りをし終えた後にコンクリートに沈む仗助を確認しながら、カレーが好きだって言った癖にと立ち去ってゆく沢近、仗助は予想外の不意打ちにスタンドでガードする間も無くやられた為にダメージを受けた場所を手で抑え悪態をつく
残念ながら正解は三番でした、現実は非情である
誤解により更なる波乱が巻き起こるか!がんばれ東方仗助!!
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市杜王町に住む東方仗助、虹村億泰はある日を境に空条承太郎からある高校に転入し、スタンド使いの捜査を頼まれることになる、杜王町から離れての高校生活に不安を抱える仗助はそこで一つの出会いを果たしてしまった、そうそれはスタンド使い同士が引き合うような運命のように…
ラブコメにジョジョという無茶な設定ではありますが楽しんでいただけたらなとおもいます