No.558454

遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第二章・十九話

月千一夜さん

どうも、お久しぶりです
月千一夜と申します

ハルカナ、更新いたします
今回は、少し短め

続きを表示

2013-03-24 00:54:16 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9301   閲覧ユーザー数:6620

草原

艶やかな緑色に染められた、美しい草原

その遥か頭上には、眩いばかりの蒼天が広がっている

 

“約束の草原”

 

いつの日か

いつの間にか

そんな名前がついていた

 

“此処にいたはずの皆がつけた名前”

 

 

 

『懐かしいわね・・・』

 

 

 

その草原に立ち

一人の少女は、笑っていた

 

風に揺れるフードもそのままに

彼女は、優しげな笑みを浮かべたまま手を伸ばす

その、手の先

太陽は、温かな光を放っていた

 

 

 

『たった一人で、よくこの場所を守ったわね・・・秋蘭』

 

 

 

“流石よ”と、彼女はまた笑った

それから、ゆっくりと振り向いた先

 

其処に、“彼”はいた

 

長くなった髪

大人びてしまった顔

そして、それでも尚・・・消えることのない、彼の“面影”

 

 

『あとは、任せなさい』

 

 

彼女は、その青年を見つめ

彼に向い手を差し伸べ、言う

 

 

 

 

『久しぶりね・・・“全身精液男”』

 

 

 

 

その言葉に

その表情に

 

何処か無邪気な、そんな・・・子供のような、真っ直ぐな笑みを浮かべながら

 

 

 

 

 

 

 

≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫

二章 十九話【アンタなら、きっと】

 

 

ーーー†ーーー

 

「そんな馬鹿な話があるかっ!!」

 

 

白帝城

その内部にある、玉座の間

其処に、怒気を孕んだ声が響き渡る

その声の主は、趙雲こと星であった

彼女は未だ痛むはずの傷を気にも留めず、この場所一杯に響き渡るよう声をあげたのだ

 

 

「鄧艾殿が蜀を滅ぼすなど・・・そんなこと、有り得るはずがないだろうっ!!」

 

 

叫び、彼女はようやく腹部をおさえる

そんな彼女の隣、紫苑は心配そうな表情を浮かべ立っていた

 

 

「星ちゃん・・・」

 

 

彼女の正面

白帝城の玉座の間、その場の中心に座る彼女

劉備こと桃香もまた、紫苑同様に星に対し心配そうな表情を向けていた

その視線に気付いたのか、星は“申し訳ない”とため息を吐き出す

 

さて、だ

ここで、どうしてこの様なことに至ったのか

その経緯を語ろうと思う

 

呉蘭・雷銅との激戦の後

黄権より受けた毒により倒れた一刀

しかしその毒は、桔梗の持っていた“解毒薬”により事無きをえる

それからすぐ、皆は白帝城に戻った

一刀は安静にさせるべく、現在は空いている部屋を使い寝かせている

その様子は、月と詠・・・そして、美羽ら一刀の家族が見ていた

そして残った蜀の皆はというと、玉座の間に集まり今後のことについて話し合おうということになったのだ

 

特に、星や白蓮らは成都の状況を何も知らない

故にまずは、お互いの情報を交換しようと、そういうことになったのだ

 

その、矢先のことである

星があのように、声を荒げたのは・・・

 

原因は、あの管輅の予言

“蜀を滅ぼす”という、あの予言である

 

 

 

 

「そのような戯言、皆はどうして信じるのだ」

 

 

“どうかしている”と

星は、心底呆れたように呟く

そんな彼女の言葉

表情を歪め答えるのは愛紗だった

 

 

「あの、管輅殿の予言だからだ」

 

 

この言葉

星は、愛紗を睨み言葉を吐いた

 

 

「ならばお主は、“お前は死ぬ”と予言されれば

その言葉をそのまま信じるというのか?」

 

「そ、それは・・・」

 

 

愛紗は、口ごもった

しかしすぐに、思い出したかのように声をあげる

 

 

「し、しかし、あの予言のすぐ後だったではないか!!

劉璋の軍が現れ、我々に襲い掛かってきたのは!!」

 

 

愛紗の言葉

皆は、無意識のうちに“頷いていた”

確かに彼女の言うとおりだったからだ

しかし、だ

 

 

「そこだ、愛紗」

 

 

彼女は、星は違った

愛紗の言葉を聞き、何かを思い立ったのだろうか

彼女は顎に手をあてたまま、愛紗を見つめいったのだ

 

 

「愛紗よ、おかしいとは思わないか?」

 

「おかしい、だと?」

 

 

“うむ”と、星

そのすぐ隣・・・朱里と並んで立っていた雛里も、同じような表情を浮かべていた

 

 

「確かに、管輅の予言と劉璋軍の襲撃の時期は上手い具合に合っている

それこそ、“合いすぎている”と言っても過言ではないほどにな」

 

「む・・・」

 

 

星の言葉

愛紗は、眉を顰め腕を組んだ

そんな中、声を発したのは雛里だった

 

 

「言われてみれば、そんな気もしますね

管輅さんの予言、そしてそれに“合わせたかのような”劉璋の襲撃

どうにも、おかしいような・・・そんな気がします」

 

 

そう言って、雛里は帽子を掴み考えるよう俯いた

そんな彼女のことを見つめながら

星は、“それに”と言葉を紡いだ

 

 

「実は我々も此処に来る前に、管輅に会っているのだ」

 

「なんだと・・・?」

 

 

驚く愛紗

星はそんな彼女に対し、フッと笑みを浮かべ頷いて見せた

 

 

「此処に来る前、ちょうど白蓮殿たちと合流した時だ」

 

 

“そうですな、白蓮殿?”と、星

それに対し、白蓮は静かに頷いた

 

 

「ああ、星の言うとおりだ

私たちは此処に来る前に、管輅に会っている」

 

 

それから、彼女は話し始める

此処に来る前に、管輅と名乗る少女と出会った事

その時、確かに自分達もその予言と同じようなことを聞いたということ

そして其処から、此処に来るまでの経緯について

彼女は丁寧に、ゆっくりと皆に聞かせていったのだ

 

 

 

「とまぁ、こんな感じだ」

 

 

ようやく話し終わった後、彼女は苦笑を浮かべていた

そのまま、腕を組み言う

 

 

「私も、星の言うとおり

なんか、おかしいような、上手くいえないけど・・・なんか、“嫌な感じ”がするんだよな

それに鄧艾の奴も、そんな悪い奴には見えないしさ」

 

「白蓮殿までっ・・・!」

 

 

“そう申されるのか”と、愛紗は表情を歪めた

他にも何人か、同じような表情を浮かべている

しかしそれに対し、星や白蓮と同じような考えをもっている者も僅かだがいるようだった

彼に助けれた紫苑もまたその一人である

雛里の隣、この国を代表する軍師である朱里も、どうやら星たちの考えと同じようだった

だが、それらを言葉にする者は一人もいない

故にこの場を、重苦しい沈黙が包み込んだ

 

 

 

 

「このままでは、埒があかぬな」

 

 

と、星

彼女は腕を組んだまま、溜め息と共に小さく呟く

 

 

「蜀を滅ぼす、か」

 

 

彼女と雛里

2人がいない間に現れたという管輅が言ったという

“予言”

彼女は何故、そのような言葉を残したのか?

星は、考える

 

そして・・・

 

 

 

 

 

 

『彼の者の“光”は、未だ消える運命にはありません

そしてこの“白き光り”こそが、この国の全てを“終わらせる為の光”』

 

 

 

 

 

 

「いや、待て・・・」

 

 

ふと、微かだが

彼女の頭の中、ある考えが浮かんだ

その考えに

彼女自身が驚き、そして・・・“震えた”

 

 

 

「まさか・・・」

 

 

彼女の、辿り着いた“答え”

しかしそれを、彼女は言葉にすることが出来ない

故に、彼女は唯一人

己の中、己自身に問いかけるのだった

 

 

 

 

 

 

“我らはもしや・・・何か、とんでもない勘違いをしているのではないか?”

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

さて、場所は変わり

此処は白帝城内にある、とある一室

その部屋の中、寝台に眠る一人の青年がいた

鄧艾こと、一刀である

そんな彼を囲むようにして、彼の家族である美羽達

そして、彼の世話をみるべく月と詠がいた

 

 

「どうやら・・・容体は、もう安定してきたみたいですね」

 

 

と、そういったのは月である

彼女は安堵の溜め息を吐き出し、彼の額に滲んでいた汗をソッと拭った

 

 

「あの薬が、相当効いたみたいね」

 

 

詠の言葉

美羽は、泣きそうな顔のまま頷いた

 

 

「良かったのじゃ

本当に、良かったのじゃ」

 

 

この言葉に、七乃も“そうですね”と頷く

その隣では、祭と夕も同じように頷いていた

 

 

「とりあえずは一安心じゃな・・・しかし、油断は出来ん」

 

「うむ

とにかく、交代で様子を見よう」

 

 

夕はそう言って、椅子に座った

どうやら、“自分が見ているから、皆は休め”ということらしい

しかし、それに対し美羽は首を横に振った

 

 

「妾も、一刀と一緒にいるのじゃ」

 

「美羽様・・・」

 

 

言って、美羽は一刀の手を握った

それから、僅かだが微笑を浮かべ言う

 

 

 

「家族じゃから、な」

 

 

 

美羽の言葉

僅かに静まり返る部屋の中

しかしやがて聞こえたのは、クスクスという笑い声

そんな中、祭は笑いながら歩き出した

 

 

 

「仕方のない・・・寝具でも、借りてこよう

どうせ皆、此処で寝るとか言いだすんじゃろ?」

 

「あ、私も手伝います~♪」

 

 

祭に続き、歩き出す七乃

そんな彼女達を見送り、美羽はまた一刀のことを見つめた

規則正しい寝息をたてる彼を見つめ、彼女は呟く

 

 

 

 

 

「一刀よ・・・早う、元気になるのじゃぞ」

 

 

 

 

その呟きに、応えるよう

眠る彼は、微かに・・・笑った気がした

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

『久しぶりね・・・“全身精液男”』

 

 

“懐かしい”

無意識のうちに、そんな言葉が漏れそうになる

此処は、そんな場所だった

 

 

“約束の草原”

 

 

彼の中

その、本当に深い深いところ

そこに在る、大切な場所の名前

 

彼はそんな場所の中、いつの間にか立っていたのである

その目の前

“名前のわからない少女”を、ジッと見つめながら

 

 

「君、は・・・」

 

 

やがて、零れ出た言葉

“誰なんだ?”と、そう言おうとした彼の言葉を

彼女は、ケラケラと笑いながら止めた

 

 

『そうよね、たったあれっぽっちなんだから

私のことなんて、覚えてなくって当然よね

いえ・・・“知らなくって”の方が、正しいのかしら?』

 

 

“どう思う?”と、少女

それに対し、彼は困ったように首を横に振った

“わからない”、というサインだ

少女は、“当たり前、か”と零した

 

 

『ま、そうよね

アンタにこんなこと言ったって、意味がないわよね』

 

 

そう言って、少女は笑う

しかしその笑みは、何処か“寂しそうだ”と

彼は、何故かそう思ってしまった

 

 

『と、いけない

あんまり、無駄話をしている時間はないんだったわ』

 

 

と、彼がそう思ってすぐ

彼女は思いだしたようにそう言って

それから彼を見つめ、指を差し言葉を続ける

 

 

『今日は、他でもないアンタに

幾つか、大事な話があったのよ』

 

「話・・・?」

 

 

と、一刀

そんな彼に対し、彼女は素っ気なく“そうよ”と答えた

 

 

『本当はアンタと二人っきりで話をするなんて、“妊娠しちゃいそうだから絶対に嫌なんだけど”

まぁ、今回は特別よ』

 

 

“感謝しなさい”と、少女

彼はとりあえず、コクンと頷いてみせた

 

 

『まず、アンタ・・・なによ、“あの戦い方は?”

アンタ秋蘭から“想い”を受け取っておきながら、何一つ“わかっていないじゃない”』

 

「・・・?」

 

 

少女の言葉

一刀は、首を傾げてしまう

少女は、呆れたよう溜め息を吐き出していた

 

 

『アンタ、秋蘭が“弓だけで戦ってる”とでも思ってるの?

そんな考えじゃアンタ、いつか死ぬわよ?』

 

「っ・・・」

 

 

“死”

その言葉が、重く響いた

 

 

『まっさらな状態だったから、案外すんなりと秋蘭の“想い”とアンタは“一つになった”

だけど、今のアンタは“それだけよ”』

 

 

そんな中、響くのは少女の声

彼女は彼を指さしたまま、言葉を放った

 

 

 

 

『アンタが真に目指すべきは・・・“その先”、よ』

 

「っ!」

 

 

 

“その先”

その言葉を聞いた瞬間、彼は何故か胸が苦しいと感じた

同時に湧き上がるこれは、いったいどんな“想い”なのだろう?

わからないままに、彼は胸をおさえる

 

 

「その先、って・・・」

 

『それは、私が貴方に教えるようなことじゃないわ

というより、教えられるようなことじゃない』

 

 

言って、彼女は自身の胸に手をあてる

 

 

『答えは、“貴方の中”にあるわ』

 

「俺の、中に・・・」

 

 

“ドクン”と、胸が高鳴った

思わず、胸にあてていた手に力が入る

その瞬間

彼は、ようやくわかった

 

“呼んでいるんだ”

 

この、胸の苦しみは

湧き上がった想いは

“自分を呼ぶ声だったんだ”と

彼は何故か、そう思ったのだ

 

故に、彼は微笑んでいた

 

 

 

 

「ありがとう・・・」

 

 

 

 

そして、彼は言う

目の前の少女を見つめ、感謝の言葉を

 

 

『ふん・・・アンタにそんなこと言われたって、これっぽっちも嬉しくないんだから』

 

 

少女はというと、そんな彼の言葉に対し

素っ気なく、顔を背けてしまう

しかし、その頬は僅かに赤みかかっていた

 

 

『けど、まぁ・・・いいわ

仕方ないから、感謝されといてあげる』

 

「ん・・・」

 

 

彼女は、そう言って溜め息を吐き出す

やがて、“それから”と再び彼を見つめ口を開いた

 

 

『もう一つ、言うことがあったわ』

 

「なに・・・?」

 

 

彼は、首を傾げる

彼女はそんな彼に対し、ビッと指さし声をあげた

 

 

『戦いに関してだけど

アンタは、その“方法”に関してもまだまだ未熟よ

戦うということは、なにも“力を振るう”ことだけじゃないわ

もう一つ、他の戦い方もある』

 

 

“それが”と

そう言って、彼女は自身の頭を指さした

それから、ニッと笑い言うのだ

 

 

 

 

『“知”・・・アンタに足りない、“もう一つの戦い方”よ』

 

 

 

 

“知”

 

聞いた瞬間、またも彼の胸が高鳴る

同時に、やはり胸にあてた手に力が入った

 

 

「知・・・」

 

『そう

“武”とは対極の力

それが“知”よ

武に無限の可能性があるように、知にもまた無限の可能性があるわ』

 

 

 

彼女の言葉

“可能性”

その言葉が、妙に小気味よく響いた

 

 

 

『秋蘭は、確かに文武に優れていた

それでも彼女は武官であり、その本質は“武”よ

貴方は、そんな秋蘭の記憶を、想いを“力”に変えた

故に、貴方は“武”に関しては秀でているわ

だけど、“知”に関しての力はまだまだ全然足りない』

 

「そう、なのか・・・」

 

 

彼女の言葉に、彼は静かに頷いていた

“確かにそうだ”と

そう思ったからだ

 

 

 

『これから先、きっと必要になる力よ

そして・・・だからこそ、“私は此処にいる”』

 

 

少女の言葉

その瞬間、少女の体が淡く光を放った

 

 

『あぁ・・・もう、時間がないみたいね』

 

 

言って、少女は笑う

その笑みは、何処か寂しそうにも見えた

 

 

『アンタ・・・今から私の言うことを、よく聞きなさいよ』

 

「ん・・・」

 

 

頷き、見つめる先

少女は酷く真剣な顔を浮かべ言う

 

 

『目を瞑りなさい』

 

「目、を・・・?」

 

『いいから、早く』

 

「・・・わかった」

 

 

言われ、彼は目を閉じる

その暗くなった世界の向こう

少女の声が響いてきた

 

 

『はぁ・・・いい、よく聞きなさいよ?

“こんなこと”するの、本当は死ぬほど嫌なんだからね?

勘違いするんじゃないわよ?』

 

「・・・?」

 

 

そんなこと言われても、彼には何のことか理解できない

故に、静かに頷くことしかできなかった

その、直後のことだった

 

 

 

彼の体を包み込むよう、少女は彼のことを抱き締めたのだ

 

 

 

瞬間、伝わってくる“温もり”

彼は言葉を失ってしまう

 

 

 

 

『か、勘違いしないでよね

これは、“仕方なく”なんだから』

 

 

響く、少女の声

其の声は、微かに震えていた

 

 

『いい?

知というものは、それこそ武と同じでそう簡単に己のモノとすることはできないわ

だから・・・“感じなさい”

秋蘭の時とおんなじよ

アンタの中に“ほんの少し”だけ存在する“私”を、“呼び続けるの”

そして、“思い出すのよ”

アンタの中に在る、この私を』

 

 

続く、少女の言葉

温もりは、どんどんと広がっていく

 

 

『なんて・・・こんな“ちっぽけな欠片”で思い出せるわけ、ないんだけどね』

 

 

“それでも”と、少女は笑った

目を瞑っていようとも、彼にはわかった

確かに、伝わったからだ

触れ合う少女の体から

その優しげな声色から

 

彼には、確かに伝わっていたのだ

 

 

 

 

 

 

『アンタなら、きっと・・・大丈夫よ』

 

 

 

 

 

だから、彼も笑ったのだ

目を瞑ったままで

それでも・・・彼女の体を抱き締めながら

彼は言う

 

 

 

 

「絶対・・・思い出すから」

 

 

 

 

 

そして・・・約束の草原の真ん中

彼は、その出会いを胸に刻み

 

その瞳を、ゆっくりと開くのだった

 

 

 

 

 

 

ーーー†ーーー

 

「どうやら、もう大丈夫みたいやな」

 

 

真っ暗な部屋の中

彼女は・・・“王異”は、そう言って笑った

その視線の先には、スヤスヤと眠る一刀の姿があった

その顔は、何処か嬉しそうな、そんな笑みを浮かべている

 

 

「あの蜀将、ようやったわ

まさか、“こんな展開”になるなんて

ウチでも、予想できへんかった」

 

 

“参ったわ”と、彼女は笑う

それから、部屋の窓を静かに開けた

 

 

「こら、“面白いことになりそうやで”」

 

 

言って、彼女はそのまま外に出る

それから少し歩いてから、スッと見つめる先

 

其処に立つ“少女”を見つめ、彼女は笑みを浮かべる

 

 

 

 

「なぁ、アンタもそう思うやろ・・・管輅」

 

 

 

其処には、ボロボロの布きれを身に纏う少女

管輅が立っていたのだ

 

 

「泥棒猫に手を貸してみたり、公孫賛たちを助けてみたり

アンタ、何を企んどるんや?」

 

「企むなど、そのようなこと・・・興味ありません

私はただ、この物語を“見守るだけ”です」

 

「はっ、見守る・・・ねぇ」

 

 

“まぁ、ええ”と彼女は歩き出す

それから、少女とすれ違いざま

“ああ、そうや”と声を出した

 

 

「アンタ・・・ウチの“最期”も“視えるんか?”」

 

 

彼女の言葉

管輅は、“ええ”と零した

それに対し、彼女は“そか”と再び歩き出す

 

やがて、そんな彼女に向い

少女は聴こえない様、小さな声で呟く

 

 

 

「私には、視えています

アナタの最期が・・・この世界から、“消えていく姿”が」

 

 

 

少女は、それから空を見上げる

真っ暗な闇の中

懸命に輝きを放つ星々を見つめ、口ずさむ

 

 

 

 

 

「世界よ・・・それでも、私は“諦めません”」

 

 

 

 

 

輝く、星々

届かぬ言葉

少女は、それでも尚

 

その小さな手を、ただ真っ直ぐに伸ばしたのだった・・・

 

 

 

 

 

★あとがき★

 

どうも、お久しぶりです

月千一夜と申します

 

前回から、一か月半ぶりくらいのハルカナ

いかがだったでしょうか?

こんなに待たせてしまい、申し訳ありませぬ

 

 

次回からは、いよいよ成都攻略編に突入です

残る二人の将

そして劉璋相手にどう戦っていくのか

次回にご期待ください


 
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