「・・・ふう」
私は今露天風呂に入ってます。いや~景色イイねぇ~・・・・ん?なんで今かって?だって中身男だからね。あまり人がいない時間帯に入ったほうがのびのびできるし昨日は入る気がしなかったんだけどね・・・・
ただ高町は本当にどうにかならないのだろうか?小4にもなって羞恥心が無いのははっきり言ってどうかと思う。まあ、今は0時だから来るわけないんだけどね。
ガラガラ
え?誰か入って来たの?まあ知らない人なら別にいいけど・・・・
そう思い後ろを見てみると―――
「あ」
「あ」
セイバーがいた・・・そう言えばセイバーも入ろうとしなかったんだよね・・・・あれか?煩いから人がいない時間帯に・・・・って奴?
「れ、蓮!?」
「セイバー・・・・私出るわ。どうぞごゆっくり」
「あ、あの」
「ん?」
「いい湯ですね」
「そうだね。じゃ・・・・」
「その・・・・ここまで広いとは思いませんでしたので一緒に入っていただけませんか?」
「あの・・・私中身男よ?」
「ですが見た目は女の子ですので」
「まあ・・・いいけど」
そう言いつつ景色を見ながら露天風呂を再び満喫する私達。と言っても時間が時間だから電灯の明かりがポツポツあるだけだけどこれはこれでいいよね~あ、電灯の明かりの中に酔っぱらいが倒れている。
「そう言えば蓮・・・・ひとつ気になっていたことがあったのですが・・・」
「ん?」
「なんであなたは
「・・・・言葉の意味が解らないわね」
「蓮・・・・いや伸。貴方は、いつもは全く笑うことをしないのに今の状態や女装をしているときのほうが喜怒哀楽がはっきりとしている。バスを降りてテスタロッサ姉妹見たときも・・・・普段ならそんなことを思ったとしてもそれを表に出す事はなかった。そもそも、女性になったというのに貴方は全くと言っていいほど動じていないしむしろすぐに順応して剰え愉しんでいる・・・・・」
「・・・・・・」
「あ、いえ・・・その・・・・言いたくなければいいのですが・・・」
「いや・・・いいわ。うん、今は誰もいないからこの際だし話そうかな・・・・ちょっと長くなるよ?」
「構いません」
Side:三人称
「まあ、今だから言えることなんだけどよ。俺さ転生者だろ?」
「ええ・・・」
「最初転生するって言われた時さ・・・・最初はどうでもいいと思っていたんだよ。刃みたいにさ」
「ええ・・・」
「でもさ・・・本当に今にして思えば俺、腹の奥底じゃすっげぇ喜んでいたんだと思う。」
「?・・・なぜですか?」
「俺、前世の時に、中学で親を殺されてさ。その後は誰も助けてくれる人がいなくてな・・・・引き取ってくれる人すらいなかったんだよ?世知辛いよな~」
そう苦笑しながら話す伸の目はどこか遠くを見ているようだった。
「でさ、俺さ、妹を養うために必死になって働いたんだ。そうせざるを得なかったから・・・・文字通り身を粉にしてさ・・・・まあ、仕事先の人たちにはよくしてもらっていたし給料も弾んでくれたし学費も学校側がある程度負担してくれたから食う分には困らなかったし、自分が我慢すれば余った金は妹が使う娯楽費に回せるくらいの余裕はあった。まあだから、簡単な話。金の亡者のごとく金を稼げばせめて妹だけはマトモな学校生活を送らせられると思い込んで必死だったんだ。それが妹の幸せにつながると疑いもせずにさ・・・あの時までは・・・」
そういうと伸の目に暗い影が落ちた。
「・・・・妹は病気だった。それに気づいた時にはもうすでに遅くてな。床に伏した妹がさ最後にこういったんだ」
『少しでも多くお兄ちゃんと一緒に居たかった』
「・・・・結局のところ俺は妹のことを知っているつもりで何も知らなかった。その後のことは・・・・もうあんまり
「伸・・・」
「おおっとここからだよ?今までの話は言うなら前座。話の本番はここからだぞ?そもそも最初に吹っかけたのはそっちなんだから最後まで聞いてよね。」
Side:セイバー
もう聞いていられなかった。ただ話を聞くだけなら良かっただろう。だが、彼が話すたびにその時の彼の感情が流れ込んでくる。そしてそこから先の死ぬまでの間に情は一切入ってこなかった。比喩でもなんでもない不気味なほどに何も入ってこなかった。
私は不意に恐ろしくなった。ここに来て私の直感が彼と言う人物がどういう人物なのかわかってしまった気がしてしまった。だからこそ恐ろしく感じてしまった。だから止めようとしたのだが無理だった。
「で、最初に転生した時に・・・・あ、そう言えば後から疑問になって聞いてみたんだけど。転生する前は副人格が表に出ていたらしい。まあ人格は・・・・・前世の餓鬼の時の俺だったけどな。まあ、親父が目の前で殺されたから、完璧に精神が崩壊しちまったけどな。でさ、転生したのはよかったんだが、まあなんというか・・・自分は知らないのに親の顔は知っているのに違和感覚えちまってよ。神との修行の間に神に与えられた眼の力で親を復活させようと思ったんだよ。この世界は前世と違って魔法があるからな・・・・それを用いれば簡単に・・・・・ってわけでもないが、まあできるからよ。んで、最初はただそれだけを馬鹿みたいに修行して、そして復活させようと思った時に気づいちまったんだよ・・・・」
この世に魔法はあっても
「ど、どういう意味ですか?」
「・・・・・もし俺が輪廻眼の力で親を復活させたら親はどう思う?すでに死んでいる人を蘇らせる・・・これが人間業だと思うか?」
「!?ま、まさか・・・・」
「ああ、俺がどこかで多分こう思っていた・・・・『ここはアニメの世界だから何をしても大丈夫。きっと受け入れてくれる』と・・・・だけどそれは違う・・・・・俺達だって一個の生命として此処に根を下ろしている・・・なら、彼らにだって人格はあるし確固たる意思も持っている・・・・・と、まあここは後々の結論。本当は・・・怖かった。」
「?」
「親を蘇らせてその親から拒絶されるのが怖かった・・・・俺は魔法を知っていても彼らには・・・・彼らの世界には魔法は無い・・・・・それを思ったら・・・・とてもできない。」
その時の彼はとても印象的だった。そして、此処からどのような葛藤があったのかは想像するに余りある。なにせ、失った存在を取り戻す術があるのにそれができない。その苦悩がどれほどのものか・・・・
「転生しているからわかるんだけどさ・・・彼らの優しさは、魔法が無い・・・ただの人間だったからこそだと思うんだ。自分たちが弱い存在なのがわかっているから・・・おそらく自分が魔法を使えると分かったら・・・・あの愛はもらえない・・・魔法が無いからこその親だったんだ。そう思ったらさ―――」
私の中にそれを知ってしまった時の主の感情が流れてきた。
「もう泣いたね。これでもかってほどに・・・それで気づいたんだ。自分が何を欲していたのかを。」
孤独、悲しみ、怒り、絶望・・・・数多の感情が絡み合っていた。そして最後に残ったのは。
「俺は結局のところ、肉親だけが与えてくれる愛が欲しかった。今思えばそれも当然だったと思うよ。出なきゃあの時に俺の家族はどうしているか聞く必要が無い。まあ、幸せに暮らしていると聞いた時にそっちについては見切りをつけたけどな。もしかしたら・・・不幸に生きているとか言われたら頼んでいたかもしれないな。」
自傷気味に笑う。我がマスターその眼にはもう光が無い。しかし、私は別段驚きもしない。なぜなら、この眼が
「その後は・・・・師である
そう、最後に残ったのは諦観と心に開いた決して癒えることのない虚無。それだけが残った。
「まあ、その後は・・・何故か魔法だけじゃなくて色々と手を出したね。拳法やら女装やらいろいろと・・・で、まあ女装しているときのほうがなんていうか・・・トリップできるというのか・・・・そう、麻井伸じゃない誰かになれる。だからじゃないかな・・・まあだからと言って一番は麻井伸なんだけど・・・・今までの自分を否定する気はないしね。娯楽だな。」
おそらくこの少年(精神は大人だが)は、心に開いた穴を無意識に埋めようとしていたのだろう・・・・埋められるはずがないと分かっていて・・・彼の心の傷は彼女たち原作組でも、私達でも、愛する人間でも、ましてや神でも埋められない。
「俺はあの日に気づいた・・・俺の過ぎ去った幸福は決して手に戻ることは無いって・・・・でもさ、やっぱり学校へ行くと羨ましくも思う。うん、結局のところ本当はただ羨んでいるんだろうな・・・アイツらを・・・だって考えても見ろよ?小学校テストとか普通いい点とるための理由なんてさ『親に褒めてもらう』か『親に叱られないため』だと思わないか?だけど俺にはそれが無い。仮にテストで0点取ろうともそれを叱ってくれる人がいない・・・・いや
「・・・・それが貴方の・・・臨んだことですか。」
「ああ、正直魔法なんていらなかったし、こんな眼もいらなかった。ただ当たり前の環境と生活・・・・それが欲しかったというだけの話。まあ、兄弟については深くは考えなかったけど」
そこに居たのは普段大人じみている彼ではなくただの年相応の子供だった。
「だからせめて・・・せめて面白いこと・・・愉しいことに全力を注ごうって決めましたというだけの話・・・・し」
此処でマスターの様子がおかしいことに気づいた。
「?・・・!!れ、蓮!」
「きゅう・・・・」
どうやら長湯でのぼせてしまったらしい。私は急いで蓮を風呂から出し浴衣に着替えさせ髪を乾かしてて部屋の布団に寝かせた。布団にはすでにタマモが寝ていた。
『どうだった?』
「・・・・・これが目的だったのですね・・・ゼイオン」
『何のことかね?』
「惚けないでください。貴方が彼を性転換させた理由は彼の口から彼自身の過去を
『・・・・ばれたか』
「どうせ解毒薬についても・・・」
『ああ、できている』
「それよりなぜこんなことを?」
『なに、ただの気まぐれと・・・ま、俺だけがアイツを知っているのは不公平だと思ってな。最もタマモの奴は融合した際にはからずも知ったみたいだが・・・』
「不器用ですね」
『・・・明日、これを渡せ・・・・これを飲めばその次の日には元に戻る』
そう言ってデバイスからカプセル状の薬が出てきた。
「そうですか・・・では」
そう言って電気を消して。私も眠りについた。その時見たマスターの顔になぜか愛おしさを感じた。
二日後、そこには元気にキングオクトパスコングを狩っている伸の姿が修練の門で発見された。
オマケ
「なのは達の奴・・・・いったいいつまでPAに入る気だ?」
「あの王鬼様・・・・そろそろお帰りになったほうが・・・」
「うるせえ!たかが使用人の分際でこの俺に指図するな!!!それよりちゃんと見てろ!!」
「は、はぁ・・・(ぶん殴りてぇ・・・もうこの仕事やめようかな。でも時給500万だし・・・・はぁ・・・旦那様や奥様・・・それに綾子様はとても心身深く懐も大きいというのに・・・・)」
「クソが・・・・(それにしても後ろにいたあの紫に似たあの女・・・あれはよかったな。ありゃ将来絶対別嬪になるぜ・・・どうせ俺のニコポで堕ちるんだしその後は・・・・ククク、俺のハーレムが一段と濃厚になったな。)」
「紅帝様・・・もう」
「黙れ!グズ!!この俺に指図するな!俺のほうがテメエより各上なんだぞ!!(畜生本当なら今頃なのはや紫たちと・・・・それをなんでこんな野郎の使用人に)・・・・俺は寝る!確りと見ておけよ!」
「わかりました・・・・・・(今度、旦那様に許可をもらって有給取らせてもらおう・・・はあ・・・旦那様と奥様はとても良い人格者なのにどうしてこんなのが・・・・甘やかして育てたわけでもないのに・・・・)」
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第六十一話:彼の心の内