No.545811

ゼロの使い魔 ~魔法世界を駆ける疾風~ 第二十三話

二十三話目です。お楽しみいただければ幸いです

2013-02-18 13:27:52 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:8775   閲覧ユーザー数:8057

 

学院長室の窓から飛び降りたおかげで、ルイズたちの居る使い魔小屋までは十数秒で着くことが出来た

改めて状況を確認してみると、カトレアとテファは多数の学生に囲まれて絡まれていた

特にテファは貴族では無い為に無理やり腕を掴まれている

気丈にも抵抗をしているが、魔法を使われればそれも出来なくなってしまうだろう

 

一方カトレアは毅然とした態度で、話しかけてくる学生達を一刀両断している

カトレアに断られた学生達がテファの方へ向かっている為に混乱しているようだ

 

「ハヤテ!ちょっと、あいつら何とかしてよ!ちい姉さまとテファが困ってるのよ!」

 

激昂して声を荒げたルイズが話しかけてくる。マチルダも傍によって来て事情を説明する

 

「あいつ等、公爵家の次女と金髪巨乳美少女が学院に来たって事で興奮してるんだよ!このままだと奴ら、二人に何をするか分からないよ!!」

 

事情は分かった。ならば次はこいつ等を大人しくさせることが優先だ

起爆粘土を口寄せし両手で拝むように押しつぶす

粘土にチャクラを練りこみ、燕の形に成型して空へ解き放つ

 

「芸術は爆発だ!『(かつ)』!!」

 

突然の爆発音。上空数mで起爆粘土が爆発したのだ

ルイズの爆発魔法に比べれば威力は小さいがそれでも学生達の興奮を覚めさせ、こちらに注意を向けさせるには十分だった

自分を睨みつける学生達に『自分の婚約者に何をしているのか』と殺気を伴った圧力をかける

 

すると彼らの反応は三つに分かれた

 

1.『スクウェアメイジに恐れをなして、その場から離れる者』

2.『吐いた言葉が真実かどうかを疑う者』

3.『真実かを確かめもせずに憤る者』だ

 

暫し睨み合っていると、カトレアとテファが其処に爆弾発言を投げ込んだ

 

「彼の言うとおりです。わたしは先日彼、ハヤテ・ナミカゼの婚約者となりました」

「私もだよー。だって、ハヤテ優しいんだもん♪あ、姉さんとエレオノールさんもだよね?」

 

とりあえずテファは後で説教だ。今言わなくてもいいだろう絶対に

二人の言葉に触発されたのか、2番目と3番めのグループが一気に殺気だった

その中から見覚えのある金髪の男子生徒が代表として出てきた

 

口に咥えたバラ。気障な振る舞い。何処からどう見てもナルシストなその風貌―――

 

―――間違いなく『ギーシュ・ド・グラモン』その人だった

 

「ミスタ・ナミカゼ…。貴方は公爵家の長女を婚約者にして置きながら、さらにミス・カトレア。あまつさえミス・ティファニアとその姉上まで毒牙にかけるとは…。一夫多妻ですって?なんと羨まし…げふん、なんと羨ましい!」

 

一回言いなおそうとしたのに、漢らしく羨ましいと言い切ったギーシュ。周りの男子生徒も同意するように首を縦に振っている

 

「…いやギーシュ君。君はミス・モンモランシ嬢が居るだろう?」

「確かに僕にはモンモランシーが居る…。だが!それでもやはり一夫多妻は羨ましい!!」

 

と言う訳で貴方に決闘を申し込む!とビシィッと音が付きそうな勢いで俺を指差すギーシュ

そしてその他大勢の生徒がギーシュに続き、決闘を申し込んできた

 

「いや、決闘は別に良いんだけどさ―――俺に勝てると思ってる?」

 

殺気を込めて彼らを睨み付けると、十数人が物怖じして後退りをする

しかし、ギーシュ以下数人のメイジは毅然と俺を睨み返す

 

「へえ、意外と持つね。良いだろう、残った奴全員でかかって来い。せめてものハンデだ」

 

ギーシュ以外の生徒はその言葉に憤慨するが、ギーシュは違った

曲がりなりにも俺と直接戦ったのだ。彼我の力の差が開いている事くらいは分かっている

だからこそ憤慨した生徒を取り成し、作戦立案を提案することが出来た

 

「待ってくれ。彼は強いんだ。それこそ僕らが束になっても敵わない。作戦を練って挑むべきだ」

「ふん!傭兵メイジ如きに負けた負け犬の話しなんて参考になるか!僕は一人で奴を叩き潰すさ!」

 

悪態を吐き、勇み足で進んで来たのは『ヴィリエ・ド・ロレーヌ』

その場に居た誰もが『お前も負けただろ』と思ったことは言うまでも無い

 

デルフを構え、写輪眼を発動しながらヴィリエをおちょくるように挑発する

 

「ま、一人で来るってんなら止めはしない。さっさとかかって来いよ」

「ッ…傭兵メイジ風情が…!この僕を舐めるなぁッ!!デル・ウィンデ!『エア・カッター』!!!」

 

一瞬で怒りが沸点を通り越したヴィリエは俺に向かってエア・カッターを放つ

しかし工夫も何も無いエア・カッターでは、かの『烈風』と模擬戦とは言え勝利した俺に当たる筈も無い

最小限の体裁きで風の刃をかわし此方も攻勢に出る

デルフを携え常人には見えない速度の足裁きでヴィリエに近づき、胴体を斜めから切り上げる

しかし切りかかった場所に標的は居らず、すぐに体勢を立て直すべく離脱する

 

「やるねぇ…。風の魔法で無理やり移動したのか」

「貴様に褒められたって、嬉しくは無い!」

 

間髪をいれず『エア・ハンマー』が放たれる

風の槌は唸りを上げて俺に向かってくるが―――

 

 

 

―――俺はデルフで唸り来る風を真っ二つに切り払った

二つに分かれたエア・ハンマーは俺の体を逸れて、学院の壁面に着弾する

その現実離れした光景をみたギャラリーたちは思わず息を呑む

ヴィリエ本人すら目を丸くしているのだ

 

「え、エア・ハンマーを剣で切るなんて、無茶苦茶だ!」

「確かに無茶だが、実際それが出来ているんだ。現実から目を逸らすなよ」

 

ギンッと音がするかのようにヴィリエを睨みつける

彼は気圧されこそしたものの、いまだ目に戦意は燻ぶっていた

 

「っく…デル・ウィンデ!『エア・カッター』!!」

「まだ戦う意思があるのか。そちらが風ならこちらも…『風の刃』!!」

 

向かってくる凶刃に軽く指を振る

チャクラを纏った指は真空を発生させ、具現化したチャクラが風の刃と化す

風の刃の応酬が互いの体に裂傷を刻み血が滲む

やがてその痛みに耐えられなくなったのか。それとも膠着した状況に苛立ったのかヴィリエが荒げた声を上げる

 

「なんで!どうしてなんだ!?僕は貴族だ!なんで傭兵メイジ如きと魔法で互角なんだ!!」

 

その貴族制の悪しき習慣が生み出した言葉に呆れ、呪文を詠唱する

 

「お前には一度、本物の風魔法を魅せたほうが良さそうだ。ラナ・デル・ウィンデ・ハガラース『エア・ストーム』!!」

 

『烈風』の魔法を写輪眼でコピーしたトライアングルスペルを発動する

ヴィリエの周辺に不自然な風の渦が現れ、彼を包み込みながら巨大化する

そのうち数mの竜巻となりヴィリエは完全に見えなくなってしまう

 

 

暫しの静寂。聞こえるのは竜巻がナニカを切り裂く不穏な音だけ。生徒の中にはヴィリエの命の安否を心配してる者さえ居た

数分が経ち竜巻が消えていく。誰もがヴィリエは負けたと思っていた

しかし彼は地面に倒れこみ、制服もメイジの証たるローブも無残に切り裂かれ、多数の切り傷を四肢に作り血を滲ませながらも、いまだ戦意をその目に滾らせ、両の足で立とうとしていた

 

「まだ立とうとする気力があるか。正直お前を見縊っていたよ。今の風魔法はかの『烈風』から俺がコピーしたものだ」

 

つまり最強と名高い烈風のトライアングルスペルを受けても、ヴィリエは生き残る事が出来るということ

 

「成る程…。たかが傭兵メイジと侮っていたがお前は、いや貴方は『烈風』のカリン様から教えを受けていたのか…。っははは。笑えてくる。そんなの、ラインである僕が勝てるわけ、無いじゃないか…」

 

教えを受けた訳ではないが、魔法をコピーした俺は義母上以上の魔力を持っている

それを不完全とは言え防いだのだから、義母上の魔法を受けても…まあ死にはしないかな?

疑問形がついてるのは、あの時義母上が本気だったか分からない為だ

実際『エア・ストーム』を使ったのは『火遁・豪火球』を打ち消す為だったから、最低限の魔力で放ってただろうしねぇ…

 

「だがどうやって『エア・ストーム』を凌いだ?相殺したにしては時間がかかったし、何も対処しなかったら最悪、手足が千切れる威力だった筈だ」

「ふっ、やられたら致命傷になる部分だけを風で受け流したんだ。もっとも、それで僕の魔力は尽きてしまったがね…」

 

成る程。だから頭や体には比較的傷が少なく、魔法が終わるまで何も出来なかったのか

しかし魔力が尽きたとなれば当然…

 

「ああ。魔力が尽きたからには、メイジたる僕は何も出来ない。この決闘、僕の負けだ」

 

ヴィリエはどこか清々しい表情で、自身の敗北を宣言した

 

 

 

 

今回はヴィリエとの決闘でした

あっれ~、書き上げてみたら、何処と無くハヤテが悪役風味…

そんな感想を抱きました

 

 

次回はギーシュ+モブとの決闘です

書いてる途中でも思いましたが、多対一での決闘は決闘と言えるのだろうか…?

ま、そんなことは水洗便所に流しましょう

 

 

さて次回の投稿をお待ちください


 
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