No.542483

真・恋姫†無双 想伝 ~魏†残想~ 其ノ四


モチベーションが上がらない~
と、いうことで前回の続きです

少し事態が動きます。

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2013-02-10 15:20:31 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:11073   閲覧ユーザー数:7863

 

 

 

「一刀さん?」

 

 

背後から掛けられた声にメモ帳を閉じる。

それをポケットにしまいながら背後を振り返った。

 

 

「ああ、黄忠。どうした?」

 

 

微笑む黄忠の右手に、眼が吸い寄せられる。

正確には右手では無く、右手に持っている物だが。

 

間違いなくそれは、日中というこの時間帯に不釣り合いな物。そう、酒だった。

 

 

「……なに持ってんの?」

 

「お酒です」

 

「いや可愛く言っても駄目だから」

 

「あら、お酒は嫌いですか?」

 

 

意外そうな顔で黄忠は頬に手を当てる。間違いなく演技。

 

まあワザとワザとらしくしているんだろう。それはそれで可愛らしい茶目っ気だ。

 

 

「嫌いじゃないけどね。昼間っからっていうのはどうも……」

 

 

散々付き合わされて飲んでたことはあるけれど。

 

 

「一刀さんは働き過ぎです。少しは息を抜かないと倒れてしまいますよ?」

 

「疲労で倒れる前に酒で倒れでもしたら洒落にならないんだけどね。いやほら、まだ俺仕事残ってるし」

 

「皆さんにお話ししたら快く許してくれたのですけれど……」

 

「え、何を?」

 

「一刀さんが少しお休みをいただくことを、です」

 

「手回し済みっ!?」

 

 

なんか黄忠の浮かべる笑顔が怖く見えてきた。

こう……ほら、あれだよ。『ククク……計画通り』みたいな感じ。

 

あそこまで凶悪じゃないけどさ。

 

 

「さあ、一刀さん」

 

「……はあ、しょうがないか。そこまでやらせて断るのも何だし、付き合うよ」

 

「璃々もー!」

 

「おおっと!?」

 

 

ばっと背中に飛びついて来た何かに吃驚するが、ここ数日で慣れっこになった存在に自然と口角が上がった。

 

肩越しに背中を見る。やはりというかなんというか、そこには黄忠の娘、璃々がしがみついていた。

 

 

「璃々は友達と遊んでたんじゃなかったのか?」

 

「でも璃々も一刀お兄ちゃんとお茶したい!ずっと忙しそうにしてたから……」

 

「あらあら、璃々は本当に一刀さんが好きなのね」

 

「うん!」

 

「……逃げ場無しかい。オッケー、分かった。でも璃々に酒を飲ませるわけにはいかないからな。お茶淹れてくる。あそこの庭にある東屋でちょっと待っててくれ」

 

「はーい!」

 

「では、お待ちしてますわ。……おっけー?」

 

 

元気一杯に返事を返した璃々。

反面、黄忠は笑みを浮かべ穏やかに返答し、聞き慣れない単語に首を捻りながらも、璃々を伴って親子仲良く東屋に歩いていった。

 

それを少しの間眺めた一刀はお茶を淹れる為に自分の仮住居へと歩き出した。

 

 

「ま、たまにはこういうのもいいか。急いては事をし損じる、果報は寝て待て。焦ったって良いこと無いだろうしな」

 

 

寝てじゃなくてお茶してだけど、と苦笑しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お待ちどうさまでした。お熱いのでお気をつけ下さい、お嬢様方」

 

「まあ……ふふ、ありがとうございます」

 

「……?」

 

 

一刀の芝居がかった茶を置く動作と言葉に、黄忠は満更でもないような顔で礼を述べる。

 

璃々は意味が良く分かっていないのか不思議そうな顔で首を傾げた。

 

 

「はは、璃々にはまだ早かったかな」

 

「あら、子供扱いすると後が怖いですよ?」

 

「そうだよ、璃々はもう『大人の女』なんだから!」

 

 

エッヘンと胸を張る璃々を見て、一刀と黄忠は二人で苦笑する。

 

幸い、璃々は顔を天に向け眼を瞑り、胸を張るのに夢中だったため、二人の苦笑は見咎められることは無かった。

 

一刀はそのまま、黄忠と璃々の対極に位置する椅子に腰を降ろす。

 

と、すぐ目の前に黄忠の手が差し出された。無論、その手には酒の瓶。

 

 

「ん。ありがと」

 

「いいえ」

 

 

そのまま、一刀の杯に酒が注がれていく。ちょうど良い量だと見て取り、黄忠は注ぐのを止めた。

 

続いて自分の杯にも酒を注ぐ。

 

コトン、と瓶が置かれる音を機に、黄忠が酒の入った杯を控えめに掲げる。

 

釣られて一刀も同じように杯を掲げ、璃々もそれに倣った。

 

 

「それでは。一刀さん、いつもお仕事ご苦労様です」

 

「え、と……ごくろうさまです!」

 

「はは。二人ともありがとう」

 

 

コツン、と三つの器が控えめにぶつかり、小気味良い音を立てて鳴る。

 

そのまま三者三様。

璃々は熱かったのか湯呑をふーふーと吹き始め、黄忠は一気に煽り酒を空にした。

 

 

一刀もそれを見てクイ、と杯を傾ける。しかし半分くらい行ったか、と思われる辺りで唐突に、その手が止まった。

 

何かに困惑するような表情。

まだ半分を残した状態で、口から杯を離した。

 

 

「あの……お口に合わなかったでしょうか?」

 

「ああ、いやそうじゃなくて。……これ本当に酒、か?」

 

「え?……ええ、正真正銘お酒だと思いますわ」

 

 

一刀の疑問の声に、黄忠が新たに注いだ酒に口を付ける。

少しの間があり、不思議そうな顔で一刀に思ったままを伝えた。

 

 

「……まさかな」

 

 

なんとなくな心当たりの元、再びクイ、と残った半分の酒を一気に煽った。

 

口の中で少し転がす。そして飲み込む。ちょっとした静寂。

聞こえる音と言えば、璃々のお茶を冷まそうとする息づかいと、鳥のさえずりくらいのものだった。

 

そんな中でやっと一刀は、合点がいったという風な表情を浮かべる。

 

 

「あ、なるほどね。そういうことか」

 

「なにがそういうこと、なんですか?」

 

「いや、全然酒の味がしなかったから不思議に思ったんだけど、口の中で転がしたら微妙に酒の味はしたからさ、多分俺自身に酒への耐性が付いちゃってるっぽい」

 

「酒への……耐性?」

 

「くっそー、まあ確かに魏でも現代でも強い酒ばっか飲んでたからなあ……」

 

 

半強制的に飲まされていたとも言うが。主に犯人は霞や爺ちゃん。

 

というか霞はともかく未成年の孫に飲ませる祖父ってどうよ?

 

そして多分、俺の舌が肥えている気もする。

そりゃあ酒造りにも本気な覇王様の元にいたんだ。仕方がないだろう。

 

とにかく今は黄忠に対する罪悪感が凄かった。

 

 

「悪いな。せっかく誘ってくれたのに酒の味も分かんない奴が相手で」

 

「いえ、そんなことはありませんわ。酒を酌み交わす時はその場の雰囲気を楽しむもの、酒はおまけに過ぎません」

 

「でも大好きだろ、酒」

 

「はい」

 

 

もの凄く自然に即答した黄忠に苦笑い。

酔えはしないが折角なので、と一刀は再び杯を傾けた。

 

せめてこの場の穏やかな雰囲気だけでも楽しもう。

それが今、この場を設けてくれた黄忠への最大限の礼儀だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくの間、黄忠と璃々、一刀はお茶を楽しんでいた。

 

黄忠の手回しのおかげか、普段なら仕事が終わる様なタイミングで必ず誰かが訪れて新たな仕事を頼んでくるのだが、今のところその気配は無い。至って平和だった。

 

 

「ふう……にしても久しぶりだな。こんなに穏やかな昼下がりは」

 

「ここのところと言うか……この街に来てから一刀さんは働き詰めですものね」

 

「思い返せば確かに。一番大変なのは労働系の仕事じゃ無くて頭使う仕事だけどね。……もっと嫌なのは太守のおっさんに会いに行くことかな」

 

「そんなに嫌なのですか?」

 

「すげー嫌。黄忠も会ってみたら分かるよ。個人的には会わせたくないけど。不快な思いさせるのも嫌だからな」

 

「一刀さんがそこまで言うなら本当に会わないほうが良いのかもしれませんね」

 

 

一刀の本気で嫌そうな表情を見て、黄忠は可笑しそうにクスクスと笑い声を漏らした。

 

そんな黄忠を見て、一つ素朴な疑問が浮かぶ。

 

 

「……黄忠さ、一つ聞きたいんだけど」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「なんか俺への評価が妙に高い気がするのは気のせい?」

 

 

沈黙。

 

 

一刀は至極真面目な顔で黄忠を見据えていた。一瞬だけキョトンとした黄忠。

しかしそれはすぐに微笑へと変わった。その手が隣にいた璃々を膝の上に乗せる。

 

璃々を膝に乗せ、その頭を撫でる顔には慈愛の表情。

それを見て、黄忠は璃々のことを大切に思っているのだと改めて理解した。

 

 

「私は初めて一刀さんに会った時に言いましたね。『私にはこの子が全て』と」

 

「ああ、覚えてる」

 

「あの時、私は璃々が死んでいてもおかしくは無いと思っていました。街を襲った賊に殺されたのかもしれない、人攫いにでもあったのかもしれない。時が経つにつれ不安だけが大きくなるばかりでした。ですから、一刀さんがこの子を助け、連れ帰ってくれたのは私にとっては奇跡のような出来事だったんです」

 

「まあ実際、人攫いと言うか人身売買されかねない状況だったのは否定できないけど……そんな恩を着せようとやったことじゃないんだし、気にしなくてもいいんだぞ?」

 

 

身に余る賛辞に気恥ずかしくなり、首筋を掻く一刀。

 

頬は照れで少し赤くなっていたが、そこには半分本気な“止めてくれ”という意思表示が見え隠れしていた。

 

それに気付きながらも、黄忠は続ける。

 

 

「もちろん、それだけではありませんわ。この街に訪れてから数日の間、一刀さんがやってきたことを見ていれば、一刀さんのことを尊敬はしても、嫌いになれる人はいませんもの」

 

「俺みたいな若輩者には過ぎたる評価だなあ……嬉しくはあるけどね」

 

 

元々、魏にいた時ですら皆からの評価に疑問を感じていたのだ。

 

ここに来てそれを上回る(魏よりも小規模な括りではあるけれど)評価。

 

……正直、照れから体中が痒くなる。

 

 

「もし一刀さんがどこかの太守や、もしくは義勇軍の長であったなら私はその下についていたかもしれません」

 

「そこまで!?」

 

「ええ。偽らざる私の本心です。この荒廃した時代、一刀さんのような方が組織の長たれば少しはいい方向に向くかもしれませんから」

 

「はー……自分じゃ分かんねえや」

 

「そういうところも人気の理由かもしれませんよ?」

 

「うえ……マジか」

 

 

自分にさえ掴めていない性分を、少し呪わしく思った。

とはいえその性分があったからこそあの世界で華琳達と過ごせていたのだとしたら、完全に否定することも出来ない。

 

一刀は妙なジレンマに陥っていた。

 

 

「……唯一の救いは太守のオッサンがそういうことには無関心だってことか。黄忠の言葉を信じるならだぞ?客観的に見て、俺は人気を獲得してこの街を乗っ取ろうとしているようにも見えるだろ」

 

「あら、確かにそうですわね」

 

「おいおい……出来れば否定して欲しかったんだけどな」

 

「ですがやはり、一刀さんは普通ではありませんね。普通の人ならそんな考えにも至りませんもの」

 

「まあ、確かに。完全にこれ政(まつりごと)とか戦略の話だもんなぁ」

 

 

それ以上言葉を重ねない黄忠の配慮に感謝しつつ、杯ではなく湯呑に手を伸ばす。

 

隠しているわけじゃないが、それが余計なトラブルを招かないとも限らないのだ。

 

話す必要が無ければ話さない。それがこの世界に来てから決めた自分のルール。

 

……とはいえ、自分の知識はともかくとして体験などはそもそも話す気になれない。

 

その辺りの心境は、現代に戻った時と同じだった。

 

胸襟を開いてくれている黄忠に何も話せないこととの相乗効果で少し憂鬱な気分になりかけた矢先――

 

 

「お母さん、おしっこいきたーい!」

 

「ぶっ!」

 

 

――あまりに唐突な璃々の宣言に咽込んだ。

 

 

「あらあら。すみません一刀さん、璃々もこう言っていることですし今日は……」

 

「あ、ああ分かった。お茶会は、お開きってことで」

 

「……?」

 

 

顔を背けながら必死に口を押さえている一刀の姿に首を傾げながらも黄忠は軽く会釈し、璃々を伴って庭から出ていった。

 

 

そしてその姿が見えなくなった途端、一刀は再び吹き出した。

 

吹き出した後に、堪えながらの笑い声が続く。

 

 

「くっくっくっくっ……あーヤバい。あれは反則だわ」

 

 

笑いと共に憂鬱になり掛けていた気持ちはどこかに吹き飛んでいた。

璃々の宣言があまりに唐突過ぎたのもあるが、なにより、もの凄く平和的だった。

 

 

どのくらい平和だったかと言うと、さっきまで感じていた憂鬱が吹き飛んでいくぐらいの平和っぷり。

 

しばらくぶりに感じた穏やかな気持ち。

 

未だに抑えきれない笑みを浮かべながら、庭の外へと歩いていく。心なしか、すっきりした表情で。

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃまするよー」

 

『お、北さん!今日は一日休みじゃなかったのかい?』

 

 

店の入り口をくぐって表れた一刀へ店主が陽気に声を掛ける。

 

 

「いや、そのつもりだったし厚意に甘えようとも思ったんだけどね。お茶会お開きになっちゃって」

 

『まさか……黄忠様が潰れたのかい!?』

 

「それこそまさか。黄忠さん、かなり酒に強いよ。生半可な酒豪じゃないね」

 

 

黄忠から放たれていた酒飲みの気質。

(しあ)辺りと似たような雰囲気をを思い返しながら、店主の言葉に肩を竦めて店のカウンターに寄っていく。

 

というか酒が苦手なら昼間っから飲もうとすら言わないだろうからな。

 

 

「で、なんか手伝えることある?」

 

『いーや、今日は黄忠様から直々に頼みこまれたからね。街の皆は自分の仕事をちゃんとやる日だって張り切ってるよ』

 

「……つまり?」

 

『北さんは今日一杯休みってことだ』

 

「おお……ジーザス」

 

 

街の皆のお手伝い、という万屋的な立場は既に職業病化していたらしい。

仕事が無い、という本来であれば嬉しい現実になぜだか無性に悲しくなった。

 

 

『たまに北さん変な言葉使うよな?そのーあれか、生国の言葉かい?』

 

「んーどうだろ。ちゃんとした英語と和製英語とか区別付きづらいのもあるし」

 

『……俺には北さんの言ってることの方が分からんがね』

 

 

店主は苦笑しながら肩を竦める。

 

分かってて言ったということもあり、一刀も店主に向かってニヒルな笑みを向けた。

 

そこに

 

『ごめんよ、店主さんいるかい?』

 

『おお、今度はまた随分早いな。どういう風の吹きまわしだい?』

 

 

店の中に入って来た中年男性を少し驚いた様子で迎える店主。

 

旅装束と背負う荷物。ここのところ懇意にしている旅の商人だった。

 

 

中年の商人は店主に促され、店の置かれている椅子に座る。

 

商人は旅路の長さを物語る様に、ふう……とひとつ溜息を吐いた。

 

 

「よっ!今回は良い品揃ったか?」

 

『お、北さんもいたのかい。ああ、北さんから教えてもらった交渉の仕方で頑張ってるからな。いやー北さん様々だよ』

 

「俺が教えたのは交渉相手の見分け方とかだけだぞ?仕事がうまくいってるのはおっちゃんの交渉術が上手いからだよ。あとは元からあったんだろ、才能がさ」

 

『おいおい、俺以上に口がうまい人が何言ってんだよ!なあ?』

 

『ああ。北さんこそ商人やってみればいいんじゃないか?良い線行くと思うぜ、俺は』

 

「止めてくれよ二人とも。俺はこのぐらいの立ち位置のほうが性に合ってるからさ」

 

 

店主と商人。二人のからかうような視線に微妙な表情で頭(かぶり)を振る。

 

 

普段であればこんな会話を皮切りに、店主と商人が交渉しやすい様な話題を振っていくのがここのところの常だった。

 

しかし

 

正直、今の一刀にそれ以上話を拡げるほどの余裕は無かった。

なぜなら一刀は、この商人の訪れを今か今かと待っていたのだから。

 

 

『そんじゃ今回の品を用意して来るからちょいと待っててくれ』

 

『あいよ、急がなくてもいいからなー!』

 

 

踵を返して店の奥に歩いていく店主の背中に声を大きく張り上げて呼び掛ける商人。

 

その声が届いたようで、店主は軽く片手を上げて店の奥に消えていく。

 

商人もそれを見届けると、荷を降ろし中身をガサゴソと漁り始めた。

 

 

「おっちゃん、その件始める前にこっちの件片付けてもらってもいいか?」

 

『ああ、構わないよ。北さんはお得意様だからな。えーと、情報だったか。……にしても物好きだねえ。情報を金で買うなんて刺史様や太守様の中でも少ないってのに』

 

「まあ……俺の場合はただの趣味みたいなもんだよ。それで、頼んでた調査終わってる?」

 

『調査ってほど大層なもんでもなかったがね。俺もそれを専門でやってるわけじゃあないからそこまで詳しくは分からんかったが』

 

 

言いながら商人は荷の中から紙を取りだす。

一刀が調査を頼んだ際に渡した、メモ帳の一頁だった。

 

 

それに眼を通しながら、ああ、と声を上げる商人。

 

メモとはある意味、記憶の忘却を補うための道具。

もしそこに書かれている字が他人には分からないものであったとしても、当の本人が分かっているならば問題は無いのだ。

 

薄らと反対側から透けて見える記号のような羅列に眼を向けながら、一刀は商人の報告を待った。

 

 

『陳留の刺史様は北さんの言っていた曹操って御方じゃあ無かったよ。確か……王肱様とか言ったっけ。あんまし評判は良く無かったねえ』

 

「……そっちはまあいいか。それで、もう一つの方は?」

 

 

陳留刺史が曹操ではない。

そう聞いても然程の驚きは無かった。王肱という名にも特に聞き覚えは無い。

 

とりあえず陳留の刺史が曹操ではないという情報を得ただけでも良しとすることにする。

 

 

外史というものを少しづづ理解し始めた故の感想。

現に黄忠がこのタイミングで劉表の元を離れている、などという記述は演義にも正史にも無い。

 

前の外史でもそうだったように、ここは可能性の世界なのだ。

だが、しかし。

 

 

 

『北さんから頼まれた……ええと、曹氏だったか?人伝に聞いたり、色々やって情報を集めては見たんだが――』

 

 

 

なぜだか、悪寒がした。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――そんな姓の家は存在しなかったよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思いもしなかった可能性を、告げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真・恋姫†無双 ~魏†残想~ 其ノ四

【 外史(うんめい)悪戯(いたずら) 】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【 あとがき 】

 

 

 

特に無いです。……多分。

 

 

 

 

 

 

 


 
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