No.541488

ALO~閃光の妖精姫~ 第4魔 手掛かりを辿って

本郷 刃さん

第4魔です。
ついに明日奈が動く時が来ました。

どうぞ・・・。

2013-02-08 11:03:32 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:14396   閲覧ユーザー数:13331

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4魔 手掛かりを辿って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日奈Side

 

「ぅ、ん…ぁ……あさ…」

 

どうやら昨日母さんに泣きついた後、そのまま眠ってしまったらしい。服もそのままだった。

取り敢えず顔を洗う為に洗面所に向かおうとした時だった、携帯にメールが届いたみたい。

一応、確認をしておこうかと携帯を開いてメールを見る、

前に志郎君からアドレスを教えてもらっていたエギルさんからだった。

『パソコンに画像を送った、すぐに確認してくれ』と書かれている。

どうにも気になったのでパソコンを起動させてそちらのメールを確認する。

エギルさんからの画像付きメールがあり、昨日の晩から届いていたようだ。

画像ファイルを開いてそれを見た。

 

「?……っ!? なによ、これ…」

 

わたしは驚愕した。

添付されていた写真を見るとそこには体を鎖で雁字搦めにされながら吊るされ、

幾つもの剣で体を貫かれている黒髪の人物が映し出された。

わたしはその顔に見覚えがあった。

肩まである黒髪と顔を微かに俯かせているせいで分かり難いかもしれないが間違いない、この人は…。

 

「キリトくん!」

 

未だに病院のベッドで眠り続けているはずのわたしが愛する人、桐ヶ谷和人くんだ。

 

 

 

あの後、混乱する頭を無理矢理覚醒させてからエギルさんにすぐにお店に行くと連絡を入れ、

すぐさま身支度を整えて橘さんにエギルさんが経営する喫茶店兼BAR『Dicey Cafe』の近くへと送ってもらった。

お店の近くで車から降ろしてもらい徒歩で向かった。

そしてお店についたわたしは中へと足を踏み入れた。

 

 

 

「いらっしゃ…っ!? 久しぶりじゃねぇか、明日奈」

 

「お久しぶりです。SAO以来ですね、エギルさん…いえ、アンドリューさん」

 

「エギルで構わねぇよ。直接会うのは初めてだからな、お互い無事でなによりだ」

 

笑顔で挨拶を交わしたわたし達。

けれど、わたしはすぐに真剣な表情に戻してカウンター席に座った。

 

「あの、それで写真のことなんですけど…」

 

わたしが話しだしたことでエギルさんも表情を改めた。

わたしの前にココアを出すとあの写真の拡大図を取り出した。

 

「どうだ?」

 

「髪が長いから、皆は似ているとしか言えないかもしれませんけど……間違いなく、キリトくんです…」

 

訊ねてきたエギルさんにわたしは確信に似た言葉で言った。

さらにある物を2つ取り出して渡してきた。

 

「これ、『アミュスフィア』と『アルヴヘイム・オンライン』…」

 

「ああ。お前の親父さんがCEOを務める『レクト』、そこが開発し発売した2つだ」

 

この2つが出されたことで自然とどういう意味なのかが分かった。

 

「じゃあ、あの写真は…」

 

「このALOの内部、世界樹と呼ばれる場所の付近で撮影されたものらしい」

 

「だけど、どうやって…」

 

わたしの疑問に彼は答えてくれた。

なんでもこのゲームは飛行が可能で、

その飛行制限以内に多段ロケット形式で肩車をして世界樹上空の様子を窺う為に撮影したものらしい。

その際に鳥籠のようなものが発見され、それを撮影したところこの写真が撮られたようだ。

 

「でも、なんでキリトくんが………」

 

わたしは微かに呟いてから状況を整理することにした。

目覚めない和人くん、彼の命を握ることを仄めかす須郷、囚われのキリトくん、

ALO、アミュスフィア、レクト……っ!?

わたしはそれらを繋げることで1つの結果に思い至ってしまった。

 

「まさか……そういう、ことなの…?」

 

「どうした、明日奈?」

 

わたしの様子が変わったことでエギルさんが心配してくれているのが分かった。でも、これはわたしが…。

 

「エギルさん、良かったらALOのソフトを…」

 

「構わない、持っていきな。アミュスフィアもいいぞ」

 

「いえ、アミュスフィアはいいです…。これは、アレ(・・・)でも起動できますから…」

 

「なっ、アレをまた被るのか!?」

 

エギルさんは両方ともいいと言ったけれど、わたしはアミュスフィアを断った。

 

「エギルさん……わたしのSAO事件は、まだ終わっていないんです…。

 これで彼が死ぬことになれば…わたしも、この世界からログアウトします…」

 

そう宣言するわたしの表情を見たエギルさんは一度辛そうな表情をしたけれど、すぐに真剣な表情へと変えた。

 

「明日奈…。お前さんの覚悟は分かった……だが訂正させてくれ。

 お前のじゃない、俺達全員の事件だ。

 それと、絶対にキリトと帰ってこい…俺達の英雄を、救ってくれ…」

 

「はい」

 

彼の言葉にわたしは胸が震えるのを感じた。

 

「何か手伝ってほしいことがあったら何でも言ってくれ、力になる」

 

「ありがとうございます。それなら1つ、いえ2つお願いしたいことが…」

 

エギルさんは力強く頷いた。

 

「このことを黒衣衆の皆に知らせてください、わたしは見張られているかもしれませんから…」

 

「何か心当たりがあるんだな……分かった、引き受けよう。2つ目は?」

 

「…彼が戻ってきたらお祝いをしたいので、ここを貸してください」

 

「っ、勿論だ!」

 

1つ目には警戒を含んだ表情で答え、2つ目には笑顔で応えてくれた。

わたしは冷めてしまったココアを飲み干すと、橘さんに連絡を入れてお店のある通りのすぐ大通りまで来てもらい、

お金を払うとお店を後にして家へと帰った。

 

 

 

帰宅後、夕食を十分に取り、母さんが帰ってくるのを待った。

母さんと、そして意外にも父さんも帰ってきた。

わたしの様子を見た橘さんが呼んでくれたらしい。

両親が夕食を終えてから、わたしの自室へと来てもらった。

 

「明日奈、話しとはなんだい?」

 

わたしは二人にベッドに座ってもらい、全てを語らずに話すことにした。

 

「ALOをする為に…わたし、もう一度ナーヴギアを被る」

 

「っ!? 何を言っているの、明日奈!」

 

「そうだ、ソレを被らなくともアミュスフィアでやれば…!」

 

母さんも父さんも必死で止めに入る。だけどここで引くわけにはいかない。

 

「お願い、これが和人くんを助ける最初で最後のチャンスなの」

 

「それは、どういうことなのかしら…?」

 

「ごめんなさい、詳しくは言えないの…。だけど、信じて…」

 

本当は話したい、ようやく分かり合うことが出来た両親に頼りたい。

だけど奴はどこからこのことを嗅ぎつけるか分からない、だから…。

その時、温かなものに抱き締められた。

 

「明日奈、帰ってくるのよね?」

 

「お、母さん…?」

 

抱き締めてくれたのはお母さんだった。

 

「約束しなさい、今度も…いや、今度は彼と共に帰ってくると…」

 

「お、とう、さん……うん、必ず…帰ってくるよ…2人で…」

 

今度はお父さんが頭を撫でてくれた。和人くんとは違う優しい撫で方に心が温かくなる。

 

 

 

「気を付けるんだよ、明日奈」

 

「明日奈、何かおかしなことがあったらすぐにやめるのよ」

 

「うん」

 

お父さんとお母さんが心配そうに、だけど信頼の表情でわたしに声を掛けてくれた。

わたしはナーヴギアにソフトをセットし、頭に被る。ベッドに横になり、お母さんが布団を掛けてくれた。

 

「いってきます」

 

「「いってらっしゃい」」

 

二人に声を掛けて、わたしは目を瞑った。

あの日、全てが始まった日に、このナーヴギアを恨んだ。

これがなければ、わたしは絶望することはなかったと思う。

だけどこれがあったから、和人くんやみんなに出会えた、日常という幸福を知った、

本当の愛情を知った、両親とも分かりあえた……そして、和人くんを助けることが出来る。

だから、

 

「リンク、スタート!」

 

始まりの言葉を告げた。

 

明日奈Side Out

 

 

 

To be continued……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

はいはい、今回はエギルの登場と彼の伝手によりキリトの情報を知った明日奈でした。

 

家族にナーヴギア装着を告げて、ついにALOへと突入します。

 

というわけで、次回からはALO内での話しが主になりますが・・・次回は再びあの人が登場します。

 

それではまた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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