第3魔 決意の涙、シルフの少年
京子Side
夕方にもなった頃に橘さんから連絡が入った。
桐ヶ谷君のいる病院から帰る時から明日奈の様子がおかしいと、自宅に帰るなり自室に篭ってしまったとのこと。
心配になった私の様子を見かねた他の教授や教員に早くあがることを促されたので、
ここはありがたく受けておくことにし、早々に自宅へと帰宅した。
「あ、奥様…」
「橘さん、明日奈は…?」
帰宅した私は自宅用の服に着替えると明日奈の部屋の前に来た。
そこには橘さんがおり、困っている様子だ。
「鍵は掛かっているのかしら?」
「いえ、ですが1人にしてほしいと…」
それなら
「(コンコンッ)明日奈、入るわよ」
部屋の扉をノックしてから開けて、中へと入る。
部屋の中は灯りをつけておらず、外から差し込む光で見える程度だ。
明日奈はベッドの上で膝を抱えて座り込んでいる。
私は橘さんに目配せをしてから扉を閉め、明日奈のベッドに腰掛けた。
「明日奈、何があったの?」
「………」
呼びかけてみても反応がない……かと思えば、明日奈の体が震えていることに気が付いた。
私は彼女の体を優しく抱き締める。すると、明日奈は口を開いて喋り出した。
「わた、しの……せいで…かず、と、くんが…めを…さま、さない……かも、しれ…な…」
「っ、どういうことなの? 貴女は何を知ったの?」
「………」
震えながらもそう言った明日奈、だけど聞くともう一度黙り込んでしまった。
この娘が何を知ったのかは分からない。
ただ分かるのは、この娘はいま決断しなければならないということである。
「明日奈…貴女が何を知ったのかは私には分からないわ。
でもね、貴女はそれで諦めるの? 桐ヶ谷君を諦められるのかしら?」
「…め……ない、よ…」
「はっきりいいなさい、明日奈!」
私の問いかけに小さな声で喋る明日奈に喝をいれた。
すると彼女は顔を上げて涙を流しながらも決意のある表情を浮かべていた。
「諦…たく…い、諦めたくないよ!」
今度ははっきりとそう言った。
私は笑みを浮かべてからもう一度明日奈をしっかりと抱き締めた。
「なら、泣いてばかりいては駄目よ…。
その代わり、今日はたくさん泣きなさい……貴女、ずっと我慢していたでしょ?」
「ぅ…ぅぅ…、うぅ……」
私がそう言うと明日奈は途端に泣き出した。
この娘はあの
大切な男の子の為に、弱さを見せないようにしてきたはず。
ならせめて、母親である私には弱さを見せてほしい。
それが今までちゃんとした母親らしいことが出来ていなかった私の想いだから。
その後、明日奈は泣き疲れたようでそのまま眠っていった。
眠った彼女に布団を掛け、私は部屋を後にした。
「奥様、お嬢様は…?」
「もう大丈夫だと思います。明日にはいつものあの娘でしょう…」
「よかったです…」
橘さんはかなり心配していたようだけど、私の話しを聞いて安心したようだ。
それにしても、明日奈は一体何を知ったのかしら…?
その疑問が私の中に残っていた。
京子Side Out
ルナリオSide
「あらほいっさぁ!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!?」
僕の持つ『ヴェンダイヤ』の一撃を喰らい、サラマンダーの鎧戦士はHPが0になり、炎の塊となってから消滅した。
「リーファ、そっちはどうっすか?」
「こっちも終わったよ~!」
共に戦っていたリーファの方を見てみるとそちらも炎の塊が2つ浮いていたがすぐに消滅した。
「しつこい奴らだったっすね」
「世界樹攻略の為の資金稼ぎみたいだけど、どうもここのところは過激だね…」
サラマンダー領付近の中立地帯からシルフ領の中立地帯へと入ることが出来たボクとリーファ。
現在はシルフ領首都のスイルベーンの近くにある中立地帯の村に向かって飛行中である。
「サクヤの方もちょっと困ってるみたいだし、ここで手を貸してあげたいかな~」
「領主さんっすよね? ボクは別に構わないっすよ」
そんな会話をしながら村へと辿り着こうとした時だった……、
「リーファちゃ~ん!」
彼女を呼ぶ声が聞こえたっす。辺りを見回してみると下の方からシルフの少年が飛んできた。
「レコン!?」
どうやらリーファの知り合いみたいっすね、敵意も無さそうだし。
するとリーファは何を思ったのか、ボクの腕に胸を押しつけながら抱きついてきた。
ちょ、また、いきなり、柔らかっ//////!?
「な、何をしてるっすか、スグ///!?」
「リーファちゃん!?」
「い、いいでしょ、別に/// 今更だし…///」
思わず彼女の本名をあだ名で呼んでしまった。今更って、まだそんな仲じゃないっすよ!?
いやまぁ、そういう仲にはなりたいっすけど……って、そうじゃなくて!
「どうしてリーファちゃんがレプラコーンと……もしかして、レネゲイドになった理由って!?」
「か、彼があたしのパートナーだからよ///! 彼と一緒に居る為にレネゲイドになったの///!」
少年の発言に思わず本音を喋ったリーファ。え、そうだったんすか?
自由に空を飛びたいって言ってたっすけど、それも本心なんすね……ちょっと嬉しいっす///
だからそうじゃなくて!?
「僕が居るのに!?」
「だれがアンタを!?」
まぁ、とりあえず2人を止めて話を進めないといけないっすね。
「はいはい、2人とも落ち着く「「ちょっと黙ってて(ください)!」」……はぁ~…」
ボクは大きく溜め息を吐くと、2人の傍に近づき……、
―――ガシッ!
その頭を鷲掴みにしたっす。そして…、
「ちょっと黙ってるっす……」
「「は、はいぃ!」」
脅したっす(黒笑)。
あの後、中立の村に移動したボク達は宿屋で食事を取りながら話しをすることにしたっす。
「じゃあまずは自己紹介から……ボクはルナリオっす、見ての通り種族はレプラコーン、よろしくっす」
「シルフのレコンです、よろしく」
彼と握手を交わす。
「ルナ君、あたしとレコンは中学校の同級生なの。ALOについて教えてくれたのも彼」
「なるほど、そういうわけっすか」
まぁそれでスグと接していく内にホの字になったと、なんか罪悪感があるのは気のせいっすかね?
「レコン、ルナ君はあたしの幼馴染よ」
「そうだったんだ…(なんか、その時点で勝ち目がないような…)」
リーファに言われてレコンが何かを言った気がするっすけど、なんて言ったんすかね~?
「で、でも本当に驚いたよ。リーファちゃんがレネゲイドになったって聞いたから…」
「ん~、元々いつか出ていくつもりだったのよ。
やっぱり領地に縛られずに自由に飛びたいっていうのがあったからね…」
レコンの言葉に静かに口にしたリーファ。色々と思うところもあるんすね…。
「……で、レコン…アンタはこれからどうするの?」
「勿論、一緒に行くよ!……って、言いたいんだけど、最近なんかシグルドの様子が怪しくてね…」
「シグルド?」
彼女が訊ねるとレコンはそう答え、ボクは聞き覚えの無い名前に首を傾げた。
その様子から2人が教えてくれた。
なんでもシルフ領でも手腕のあるやり手みたいっすけど、
レコン曰く実力もそれなりなのにあっさりとサラマンダーにやられることが多いとのこと。
「それは確かに怪しいわね…」
「うん、だからちょっと調べてみるよ。何か分かったらすぐにメッセージを送るよ」
レコンの案に頷くリーファとボク。
「それならボクとフレンド登録してもらえるっすか? シルフとレプラコーンの仲は悪いとは聞かないっすし」
「えっと、それじゃあお願いするよ」
ボクはレコンとフレンド登録をしておいた。
「そういえば、2人はいつまでシルフ領にいるの?」
「一応2日くらいはここら辺に居る予定っすね」
サラマンダーの迎撃に個人的に協力するということをレコンに話したら喜んだ様子だった。
そしてレネゲイドになってからのボク達の話しをして、
リアルでの時間も夜遅くなり始めたところでボクとリーファは宿屋のそれぞれの部屋からログアウトし、
レコンはスイルベーンの方に戻っていった。
ルナリオSide Out
刻Side
「ふぅ~…今日も疲れたっすね~」
ナーヴギアを取り外し、体の柔軟をする。
そういえば、スグがレコンは同級生だと言っていたということは、
ボクにとっても同級生なんすよね……今度会えるっすかね~?
そんなことを考えながら、ベッドの温もりに瞼が落ちていったっす。
刻Side Out
To be continued……
後書きです。
今回は京子さんの視点で明日奈を激励させました。
原作では直葉が和人を元気づけるシーンですからね。
そしてルナリオとリーファの前にレコン登場、恋のライバルの出現に意外と余裕なルナリオw
レコン、まぁ・・・頑張れb
次回はついに黒人の彼が登場、乞うご期待w
それではまた~・・・。
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第3魔です。
前回の明日奈からの続きですが、視点は違います。
あとは刻(ルナリオ)の視点ですね。
それではどうぞ・・・。