No.540364

〝ただいま・・・おかえりなさい〟魏 end after third episode

kanadeさん

久しぶりの投稿はこのシリーズの第三話となりました。
内容は武闘大会開始・・・って感じでしょうか。
変わらず楽しんでいただけたら幸いです。
それではどうぞ

2013-02-05 15:14:52 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:15664   閲覧ユーザー数:10509

〝ただいま・・・おかえりなさい〟魏 end after ~第三話~

 

 

 

さて、皆様、ここで一つ質問をさせて頂きたく存じ上げます。

俺、北郷一刀は、紆余曲折を経て、五年かかって、大切な人たちがいる世界に帰ってきて、つい昨日、感動の再会を果たしたわけですが――。

「なんでこうなるんだろうね」

というより、この決闘場はこの五年の間に出来上がったらしい。工事の現場指揮は真桜が務めたそうだ。流石は技術屋。

観客席は満員御礼。

舞台上にはまだ誰も上がっていないが、いい感じにヒートアップしている。

選手控室にいてもそれがわかるってのは相当だ。

ああ、つまり何を言いたいのかというと――。

帰って早々、ドンパチに駆り出されているわけです。

故に、今一度皆さん教えてください。

この場には歴戦の猛将ばかりがいるという中で、どうして俺がいるんですか!?

「昨晩、あれほどの武を見せられては、仕方がないと思います」

どうやら、疑問が口に零れていたようで、凪がそんな風に補足してくれた。

「いや、まさかこんな展開になるとは露にも思わず・・・霞、その笑顔の裏に凄い闘気を感じるんだけど」

「ん?ああ、そらしゃあないわ。てかな、一刀・・・ソレ、ウチだけと違うで」

言われるまでもなく、そのことは分かっていた。

なにせ、昨晩、あの場には魏の面々だけでなく呉、蜀の顔ぶれもあったのだから。その国々の武将に対して、以前戦えなかった自分があの春蘭の猛攻から逃げ果せたのだ。しかも、見切りを使ってだ。

ドンパチ大好きな方々の闘志に、ものの見事に油を注いでしまった結果である。

ちなみに、心配そうにしている凪も、その瞳の奥は爛々と輝いているのがハッキリとわかる。

「誰と当るかは運次第・・・か」

言うなれば、いきなり呂布と戦う可能性もあるわけだ。

死ぬ。絶対死ぬ。

どうか当たりませんように。かっこ悪いけど、マジで彼女と当ると結果が見えすぎてる。

と、内心で冷や汗をかいていると、一刀の隣に、呉の控室からやってきた黄蓋――祭が腰を下ろした。

「北郷、そう肩に力を入れては本番で空回りするだけぞ。肩の力を抜かぬか」

「いや、まあ・・・そうした方がいいのはわかってるんだけどね。ってか祭さん・・・ここで駄弁ってていいの?」

「カカカ・・・いつも顔を合わせておるからのう。こういう機会にこそ他国の者たちと言葉を交わさぬとな。儂らはどうしようもなく“将”じゃ。いざ戦ともなれば、言葉で語らず武で語れ。になってしまう・・・じゃからこそ、こういう機会を大事にせぬといかん」

そうやって言葉を交わしながら、一刀はこう思った。

――ああ、よかった――と。

自己満足でもあの時ああしてよかった、と。

 

 

帰って早々、春蘭と大立ち回りをすることになった一刀だったが。昨日の宴会の後には、その続きがあったのだ。

宴も終わり、洛陽の城が寝静まった夜中。

特に眠気が全く来なかった一刀は、せっかくなので星でも見ながら酒を飲もうと、向こうから持ってきた荷物の中から、酒瓶(日本酒)を取り出して部屋を出た。

そうして、城壁をうろついていると。そこに先客がいた。

「・・・黄蓋」

「ん?おお、御使い殿か・・・お主、その手に持っているのは酒か?」

「そうだけど・・・」

「ふむ、どうじゃ?儂と飲まぬか?」

特に断る理由もなく、聞きたいこともあった一刀は、黄蓋の誘いに応じることにした。

 

酒を酌み交わすはいいが、二人は全くの無言だった。

静かな夜。浮かぶ月、漂う雲、瞬く星々。ロケーションとしては全くの合格なのだが、いかんせん、相手が相手だけに、一刀はこの静かな空気が若干重たく感じていた。

「・・・御使い殿。赤壁での一件を気にしておるようならば、それは筋違いというものぞ。あの当時は、儂も、お主も、互いに敵、そして国に勝利をもたらさんがために動いておった。その中で、儂らは、策を破られ、結果として敗北したにすぎん。それに、儂は、敗北の結果を受け入れておった。あのとき、夏候淵の最後の一矢についても、恨みなどは微塵もない。寧ろ、感謝しておると言ってよかろう・・・火にまかれて死ぬのではなく、武人として、その生涯を、終えることが出来たのだからな・・・まぁ、儂は死ぬことなく、こうして生きておるわけだがのう・・・多くの兵が散って逝った中、儂は生き残ってしもうた・・・」

そうして杯を一度呷った後、黄蓋は一息ついて、一刀をじっと正視していた。

その眼差しに、一切の酔いは感じられない。真剣そのもの。

その眼差しを湛えていた表情が、閉じいていた口が開かれた。

「御使い殿・・・問うてもよいだろうか?」

断る理由など、全くなかった一刀は、言葉ではなく沈黙と、首肯を持ってそれに応えた。

 

――「何故・・・あのような真似をされた?」

 

 

あのような真似。

その言葉の意味するところを、一刀ははっきりとわかっていた。

一刀が行った行為とは、あの赤壁の戦いの折、戦場から離れた位置に、華佗を手配したことを意味している。

「・・・自己満足だよ」

自嘲気味に一刀は笑った。

「あの戦いの時、俺はほとんど限界だった。生存者の救出と探索に意識を向ける余裕なんてなかった。時間がない俺は、何としても華琳を、魏を勝たせたくて必死だった。・・・でも、一人でも多くの人に生きていてほしかった。でも、さっきも言った通り、そっちに兵や人を割く余裕はなかったんだ」

「呉と蜀が手を結んでおったからか?」

それもある。と、一刀はそう答えた。

「天の知識がある俺は、苦肉の計も、連環の計も、火責めの事も知っていたから、その裏をかけるように全力で手配したし、進言した。その中で、一人でも多くを救う方法を、俺は他人任せにするするしかなかった。・・・不調をきたしていた俺の診察の為に来てくれていた華佗にお願いしたんだ・・・戦後の事も含めて、ね」

そこで得心したのか、黄蓋は、ハッと目を見開く。

「公瑾の事もお主の仕業か?」

「・・・あれ、ひょっとしてそれは知らなかった?」

「少なくとも、儂は知らぬな。公瑾も、はたしてどうであろうかのう・・・まぁよいか。その辺は、公瑾が知りたくなったら、あ奴自身で、聞きに来るであろうしな」

その時、同じ説明することになるのかなと思ったが、それは、己の責務だからと勝手に納得することにした。

「・・・ふむ。まぁよいわ」

なみなみと注いだ酒を飲みつつ。いともあっさりとそれで終わらせた。

「カカ・・・なんじゃ?恨み言を言われるとでも思うたか?生憎じゃが、そのような阿呆らしい真似などせぬよ。おかげで今もこうして酒の味に舌鼓を打つことが出来るしのう」

ふぅ。と、満足げに、息を吐きつつ、笑みを浮かべた後、酒を改めて注ぎながら。

「故に、申し訳ないなどと思うのは筋違いぞ。お主は、お主によって助かった命に対して“よかった”と思うことを第一とせよ。助からなかった命に対しての悔いなど、無意味じゃ。死者は帰っては来ぬからのう。ならば、それによって得た後悔は、“昔こういう事もあった”と、思い出として懐かせ、“次”へと繋ぐことじゃ。忘れるのではなく、懐かせよ・・・それが生者の務めじゃ」

 

 

よくよく考えてみれば、当たり前だった。

やらない方がよかった。なんて考えるなら、そもそも、最初からしなければいいのだ。

少なくとも、それを誰よりも率先してやってきた王の下にいたのだ。

今更なことに気付かされるとは、自分はやはりまだまだ未熟なのだと、強く思い知る。

「ありがとう。黄蓋さん」

「さて、礼を言われるようなことはしておらんし、言ってもおらんなぁ・・・しかし、美味い酒じゃの。天の酒もなかなか・・・」

一升瓶の酒が面白いぐらいに減っていく。

「・・・御使い殿、儂の事は、以後、“祭”と呼ばれよ。お主に、我が真名・・・預けようぞ。・・・真名の重さは知っておろう?」

一刀はそれに対して驚いた顔をしたまま、頷いた。

「ならば、その重さを背負うことを、お主に与える儂からの罰としようかのう。儂の死場を奪ったのだから、それくらいは背負って貰わぬとなぁ」

愉快愉快と笑いながら、半目でこちらを見る彼女の瞳は、とても楽しそうで、からかいの色が見て取れた。

ちょっとだけ、本当にちょっとだけ癪に障ったので、こちらの要求も突きつけてみることにした。

「貴女のことを真名でよべというのなら、こっちからも条件を一つだけ。・・・小さなことだけど、一つ・・・いいかな?」

「ふむ?儂を抱きたいのか?・・・儂もまだまだ・・・・」

「違う違う違う違ぁーう!!黄蓋さんが魅力的なのは否定しないけど、違うよ」

一刀の台詞に黄蓋が完全に虚を突かれて止まっていた。

彼女としては、冗談のつもりで言ったつもりだったのに、まさか『魅力的』と言われるとは、露にも思っていなかったからに他ならない。

詰まる所、魏の面々からすれば、『ああ、またいつものか』的な、一刀の無自覚系スキル“天然女殺し”が発動したのだ。

「えっと・・・大丈夫?」

その声に、ようやく我に返った。

儂は一体どうした?

己の鼓動がはっきりと聞こえる。

心なしか、顔も熱を持っている気がする。

酒のせいだと言いたいのだが、熱の持ちかたが違う。隙あらば酒を飲んでいる自分自身の事だからよく分かる。

「そ、それで、儂を真名で呼ぶ、その条件とは、なん・・・じゃ?」

い、いかん!いくらなんでも不自然すぎじゃ。

「いやさ、御使い殿っていうの・・・無しにしてくれないかな」

「・・・ふむ。しかし、考えてみたら、儂は、お主の名を知らなんだ」

思いっきりガクッとしてしまった。

――ああ、自分のいた国はともかく、他所の国の人からすれば、俺は“北郷一刀”ではなく、“天の御遣い”でしかないんでしたっけね。

はは、と苦笑した後、改めて黄蓋に名乗り、彼女の真名を預かった一刀。

余談ではあるが、こうして以降、黄蓋――祭は、一刀のことを“北郷”と呼ぶことになるのだった。

 

 

「北郷」

「!?ああ、ごめんボーっとしてた」

「よいよい。一応言っておくがの・・・戦うことに在ったら手加減はせぬぞ?」

正直、それに関しては、全く期待してない。

事に戦闘関係で魏の面々は“手加減”という言葉を知らないといってもいい。

その最たるは、間違いなく春蘭だ。

他の面子は、手加減はしないが、所々に“遊び”を入れるのだ。

だが、春蘭は違う。

徹頭徹尾、仕留めに来るのだ。

しかも、相手が俺だった場合は、間違いなく“殺り”にくる。悲しいぐらいに断言できてしまう。季衣と琉流はいつも全力で来るのだが、あの二人は微笑ましいから、特に気にしない。

凪や霞、秋蘭、真桜、沙和も全力で当たることに関して異を唱える気は全くないのだが!

春蘭だけはかなり話が違う。正直、異を唱えたい!

刃を潰してあるとか、なんの慰めにもなりはしない。

なんて考えていたら、霞が歩み寄ってきた。

「ま、春蘭にあたらんよう祈っとき」

そう耳打ちしてきたのだが、その時気づいた。霞が言ったことが聞こえたわけではないだろうが、何を言ったのかを悟ったという感じで、春蘭以外の全員、祭も含めて、全員がなぜか頷いていた。

 

――すると、伝令がやってきた。

 

――「一回戦の組み合わせが決定致しましたので、伝令に参りました。以降、将の皆様は、特別観覧席で御待機して頂きますよう、お願いいたします」

一呼吸間をおいて、伝令が口を開いた瞬間、伝令の口から死刑宣告と何ら変わりない対戦カードが発せられた。

 

その組み合わせは――

 

魏より、北郷一刀

呉より、孫策伯符

 

一刀の体から一気に血の気が失せた。

 

 

魏の控室に一刀を残し、皆がそれぞれの観覧席に向かい始めたその頃。

 

「みんなー!!盛り上がってるー!?」

『ほあああああああ!!』

帰ってくる声に、進行役を務める少女は満足気に何度も頷く、

張三姉妹の次女、地和である。

この世界におけるトップアイドルであるところの《数え役満☆姉妹》の一人で、一番の元気者の彼女。

そんな地和を進行役に任命したのは魏の覇王様である。

「いよいよ天下一品武闘大会の第一回戦が始まります!!観客席もいい感じに盛り上がってきました。さあ!それではみなさん第一試合の組み合わせの発表です!!」

裏方の兵士が、その組み合わせを記載した、一枚の竹簡を見て、地和が目を見開いたまま固まった。

その表情は信じられないモノを見ているという感じで、彼女の小さな肩はかすかに震えていた。

それを遠目に見ていた華琳には、彼女が怒りと戸惑いに震えていると感じられた。

 

――これは、何の冗談?

幾ら華琳さまとは言え、悪ふざけの度合いが酷すぎる。そりゃ、私も結構悪ふざけをする方だけど、コレはない。

何のつもりかと、無意識のうちに華琳を睨んでいると、その視線に気づいた華琳が、無言の視線のみで、確かにこう言っていた。

――言いなさい。

ふざけないで!と叫びたい気持ちはあったけど、それだけじゃなくて、本当に?という気持ちもあった。

だから、覚悟を決めて竹簡に書かれた組み合わせを、意を決して、声を絞り出した。

 

 

「それでは第一試合の組み合わせの発表しちゃいます!!第一試合、呉より、かつては王さまを務め、今は自由人!!孫策伯符!!」

観客の喝采と同時に、入場口から孫策がその姿を見せた。

「酷いわねー。ちゃんと仕事してるわよー?」

ボソッと口にしただけのつもりだった

が、どうにも冥琳にはキチンと聞こえたらしく、無言の圧力が、彼女のいる方に視線を向けなくても、はっきりと感じることが出来た。一体、どういう耳をしているのかしら?

 

「そして・・・そして!!そんな孫策に対するは、魏より・・・・・・」

肩が、声が震える。言わなきゃいけないのはわかってる。でも、これが嘘だったらと思うとやっぱり怖い。けど

「魏より、天の御遣い!!北郷一刀!!」

瞬間、会場が静止した。

 

入場口の奥に引っ込んでいた一刀は、内心で表情をひきつらせていた。

(うわぁ・・・さっきの盛り上がりは嘘みたいに静かになった)

この同盟祭は三国が舵を取っているとはいえ、やはり客層としては、開催国の人間の方が圧倒的に多い。

会場が一気に静まったのは、それが理由だ。

警邏隊の隊長として、また一個人として民と触れ合ってきた人々だからこその反応なのだ。

「ま、今更ビビってもしょうがないか。遅かれ早かれ、街のみんなにも会うことになるわけだし」

そう言って一歩を踏み出し、舞台へと登る。

孫策と向かい合う位置まで歩き、そして歩を止める。

彼女に対して一礼した後、観客席を見まわした後、声を上げて手を振った。

「みんな!ただいま!!」

一刀がそう言い終えた瞬間も、静かなままだったが、一刀が確かにそこにいることを、はっきりと認識した観客席の人たちは、その多くが立ち上がり。

 

――『お帰りなさい!!御使い様――!!!!』

 

歓喜の声と共に、会場の盛り上がりが一瞬で最高潮に達した。

 

 

大したものね。これほど民に愛されている人なんて、そうそういるわけじゃない。

この反応だけで、彼がどれだけ民のために動いていたかがよく分かるというものだわ。

祭から聞いてはいたけど、不思議ね。彼の事、もっと知りたいって心から思うもの。

「天の御遣い・・・か」

そんなも、魏の民にとって、きっと単なる肩書き程度の物なのでしょうね。だって、彼を呼ぶ民の声には、すごく優しくて、温かいものを感じるから。

桃香に似てるかしら?

でも、微妙に違う気がする。

上手く言葉に出来ないんだけど、違うという事だけは、ハッキリとわかるもの。

本当に・・・不思議な子。

人柄もそうだが、昨日の春蘭との一連のやり取り。アレだけのことが出来るにも拘らず、それを全く感じさせないなんて。

そういう意味では、恋の方が近いかも知れない。

あの子、戦と普段がまるで噛み合わないもの。

ただ、向き合って分かったのが、彼は決して揺らがない人物なのだという事。

こんな言い方は、陳腐かもしれないけど、彼と華琳はお似合いだわ。大陸の覇権を争っていたころの華琳は、私同様に抜身の刃そのもの。臣下もまた同様と言っていい。例外は桃香ぐらいでしょうけど、蜀はその分、周囲に刃が多かった。

覇王とまで呼ばれた華琳が、血で錆びつかなかったのは・・・彼が、彼女の、いいえ、魏の将たちの“鞘”だったからに違いない。

ただの勘でしかないというのに、それが間違いないということが、確信できてしまう。

「もし、貴方が“こっち”にいたら・・・」

小さく、本当に微かな音を溢した。観客の歓声もあって、私の声は自分以外の誰にも届いていない。

いけない、すでに過ぎたことに思いを馳せたところで意味はないのに、そんな夢想をつい抱いてしまうわね。

三国同盟における今最大の課題となっている《主柱》・・・華琳が頑なにそれを断った訳がわかる気がする。

――『私は《主柱》の器ではないわ・・・』

初めてその議題になった時に、華琳こそをという意見が殆どだった。しかし、華琳は決して頷こうとはしなかった・・・あの時は、理由がわからなかったけど、今はわかる。

「貴方がいたからなのね」

「?」

微笑んで呟いた。

そしたら、聞こえた彼が、首を傾げた。

「ただの独り言よ。さ、そろそろ始めましょう♪」

「楽しそうだなぁ」

「だって楽しいもの♪」

私の言葉を最後に言葉はなくなった。

 

――その代わりに、空気が一気に張りつめた。

 

 

構える孫策を前に、一刀は内心で冷や汗をだらだらとかいていた。

(・・・春蘭といい勝負?いや、こっちの方がなんかヤバい)

言ったら間違いなく怒られるが、春蘭は、身内に対しては、普段と戦場があまり変わらない。

根底的な雰囲気が“春蘭”であることに変わりはない。

だけど、彼女は雰囲気も何もかもが別人だ。

昨日の宴会で見た彼女が別人に思えてならない。

 

――江東の麒麟児、或いは小覇王

 

幾度となく華琳が戦うことを熱望した相手が、眼前に佇んでいる。

その迫力たるや、マジ切れした愛しの覇王様を髣髴させた。

なので、華琳をチラリと見てみれば、実に楽しそうだ。

 

(ま、何を言ったところで戦うしかないわけで)

 

無謀極まりない。

(だけど、まぁ・・・勝ちを狙ってみよう)

 

一刀は一度目を瞑って、気持ちを作り変えた。

昨日、春蘭とのじゃれあいとは違う、完全に戦闘に意識を集中させる。

鞘から刀身を抜く感じを想起し、眼を開ける。昨夜の宴会の雰囲気はそこにはなく、孫策には、これまで刃を交えた名将と遜色ない気迫を感じていた。

それは、観覧席で見ている他の将たちも変わらない。

 

別人と化した一刀に、全員が驚いていた。

 

そして遂に――。

 

「それでは、第一試合・・・始め!!」

 

地和の声と共に、二人は互いに向かって踏み込んだ。

 

 

~あとがき~

 

 

 

どうも。どうも。どうも。

久しぶりすぎる作者、kanadeでございます。

久方ぶりの投稿が、孫呉伝ではなく、ただいまシリーズ(魏アフター)となり大変申し訳ありません。孫呉伝については、今もなお執筆中ですが。反董卓連合編を書き終えてから投稿しようと思っております。

この文だけで、「まだ書きあがってないのか」と思われた方も多いと思います。

すいません。

でも書きます。以前も言いましたが、打ち切り(挫折)するつもりは毛頭ありません。

しっかり完結させるつもりでございますゆえ、長いーーーーーい目で見守ってください。待っていてください。

それでは、次に物語の補足です。

多くの方がやっている武闘大会ですが、これについては長くするつもりはありません。つまり、大会における全試合は書きません。

ご了承ください。

次に文中に登場した控室ですが三国それぞれ用意されています。用途としては、基本的に武器(真桜謹製のレプリカ)置き場、或いは試合終了後の選手の医務室等も兼ねております。

怪我の度合いが酷い場合は、華佗が実況席から派遣されてきます。基本的には各国の医者が待機しております。

と、こんなところでしょうか。

孫呉伝シリーズ、ただいまシリーズ共に、今後ともよろしくお願いします。

それでは次の作品でまた――

Kanadeでした。

 


 
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