本日はクリスマスイブ。
アベック達が街にあふれ出す、ロンリーな者にとっては地獄の祭典とも言えるこの日。
雪も降り積もるホワイトクリスマス、一人の少年が絶望にうちひしがれていた。
彼の名前は及川。
聖フランチェスカ学園に通う平凡な高校生である。
「・・・・・・」
頭や肩に積もっていく雪を振り払いもせず、彼は棒立ちで携帯の画面を見つめていた。
(急用で行けなくなっちゃった。ごめん)
画面にはそう写し出されていた。
そう、彼は少し前に出来た彼女にクリスマスデートを見事にすっぽかされたのだ。
それだけではない。
メールの追伸にはこうも書かれていた。
(それと・・・・・・私、やっぱり及川君とは友達以上にはなれないみたい。別れよう)
一方的な別れの文章であった。
「・・・・・・」
そんな彼を尻目に、街にはべこるアベック達はべたべたしながら言っていた。
「何だあいつ」
「きっとデートの約束すっぽかされたのよ」
「クスクス・・・・・・」
「カワイソー」
「ああはなりたくねえよな」
皆、及川を嘲笑しながら彼の横を通り過ぎていく。
「・・・・・・ア」
及川が、ふと口を開いた。
そして
「アベックなんて、この世から消えて無くなればええんやーーーーーーーーー!!」
及川は血の涙を流しながら天に向かってそう叫んだのだった・・・・・・
家に帰り、ベッドで布団にくるまって、枕を泣き濡らしていた及川は、泣きつかれて眠ってしまっていた。
そして、彼は夢を見ていた。
彼は夢で、暗闇の中にいた。
何故か制服姿で。
「何や?ここはどこや?」
きょろきょろと辺りを見渡す。
しかし、辺り一面闇、闇、闇。
「・・・・・・はぁ」
及川はため息をついた。
「何でみんなあんなにラブラブできるんや?ワイは付き合えてもピュアな関係までしかいけへんし、長続きせえへんし・・・・・・」
及川は愚痴をこぼし始めた。
「嫉ましい。ホンマ嫉ましいわ・・・・・・」
そう及川が呟いたその時、暗闇の中から光が差した。
「な、何や?」
及川は眩しそうに、目を腕で覆う。
光の中には、一つの人影があった。
「誰かが嫉妬に狂う時、しっとマスクを呼ぶ合図。私こそはしっとの父。人呼んでしっとキング!!」
光の中から現れたのは、怪しいマスクをかぶり、パンツ一丁にマントを羽織った筋骨隆々の大男であった。
「し、しっとキング?」
「そうだ。私は君の素晴らしいしっとパワーに導かれてやってきたのだ」
「しっとパワー・・・・・・」
及川ははっきりと分かった。
これは夢だと。
「ともかく!君のしっとパワーは先代しっとマスクをも凌ぐ素晴らしい物だ。そこでキミもしっとマスクとして、世のため人のため戦ってみないか!?」
しっとキングはそう言うと、頭にSと書かれた同タイプのマスクとベルト、そしてゴーグルを取り出し、及川に手渡した。
「このアイテムを身に着ければ、今日から君もしっとマスクだ!もてない男達の希望の戦士として頑張ってくれたまえ!!」
「ちょ、ちょい待ち!ワイはこんな物いら・・・・・・」
「そして、これから君のもっともしっとすべき相手の所に連れて行ってやろう!」
「人の話を聞けや!」
及川の言葉には耳を貸さず、しっとキングは及川の腕を掴み、光の中へ及川を連れていく。
「では行くぞ!しっとマスクスーパー1よ!!」
「誰が・・・・・・のああああああああ!!」
こうして及川は
光の中へと消えていった・・・・・・
「う、う~~ん・・・・・・」
及川はようやく目を覚ました。
「変な夢見たなあ・・・・・・って」
及川は周りを見渡し、怪訝な顔をした。
「ここはどこや?」
及川がいたのは自分の部屋ではなく、どこかの路地裏であった。
「・・・・・・まだ夢見とんのかなあ」
そう言うと及川は立ち上がったが、その時、足に何か当たった。
及川が足元を見ると、
「うげっ!?」
そこにはしっとキングに手渡された三つのアイテムが置いてあったのだ・・・・・・
「・・・・・・ほんまにここどこなんや?」
何とか路地裏から抜け出た及川。
その手には何故か、三つのアイテムを抱えている。
「何かドラマで見た中国の街みたいやなあ・・・・・・」
きょろきょろと辺りを見回す及川。
そんな中、彼の目に一人の人物が止まった。
「か、かずぴー?」
そう、彼の友人、北郷一刀その人である。
しかし、及川は衝撃を受けていた。
何故なら
一刀はとんでもない美少女と腕を組んで歩いていたからだ。
「か、かずぴーまでワイを裏切って勝ち組に・・・・・・」
及川は絶望した。
それと同時に、彼の心の中に燃え滾るものがあった。
それはしっとの炎。
「嫉ましい・・・・・・嫉ましいでかずぴー・・・・・・」
しっとに燃える及川。
その時、三つのアイテムが光り始めた。
そして宙に浮いたかと思うと、まずマスクが及川の頭部に張り付いた。
「ふごっ!」
そしてベルトが及川の腰に装着され、最後にゴーグルが装着される。
及川の身体に力が漲っていく。
「・・・・・・しっとマスク!スーパー1参上!!」
新たなるしっとの戦士の誕生であった・・・・・・
一刀は一人の女性と仲良く街を歩いていた。
そんな彼の耳に、何者かの声が聞こえてきた。
「待ちや!そこのアベック!!」
一刀が声のした方向を見ると、民家の屋根の上に怪しいマスクをした青年が立っていた。
「何だ?」
「ワイこそは汚れたアベックを根絶やしにするためやってきた正義の戦士!しっとマスクスーパー1!!」
そう叫ぶと、しっとマスクスーパー1は屋根から飛び降り、一刀を睨みつける。
「もてない男達の敵、北郷一刀!命をもらうで!!」
「俺を知ってるのか?っていうか、その制服とその喋り方は・・・・・・」
「問答無用や!必殺!バーニングしっとフィンガーー!!」
右手を炎に包み、一刀に襲い掛かるしっとマスクスーパー1。
しかし、彼はあまりに不幸だった。
そう、一刀と一緒にいた女性とは・・・・・・
「・・・・・・邪魔」
天下無双、恋だったのだ。
ゴガーン!!
「ぶべらあああああああ!!」
キラーン☆
恋のコブシをまともに喰らい、しっとマスクスーパー1は星になった。
「・・・・・・哀れなやつめ」
「・・・・・・一刀」
くいくいと恋が一刀の袖を引く。
「ああ、行くか」
一刀と恋は再び腕を組み、歩き始めるのだった・・・・・・
「ぐうっ・・・・・・」
しっとマスクスーパー1は、荒野でボロボロになりながらも生きていた。
「あ、あきらめへんで。アベックは皆殺しにしたる。この借りは必ず返すで。かずぴー・・・・・・」
そう言って、しっとマスクスーパー1は意識を失った。
その後、彼が大陸のもてない男達を集め、しっと団・漢を結成するのだが、
それはもう少し先のおはなし・・・・・・
どうも、アキナスです。
今週は週7で休みなし。
正直書く時間が取れなくて困っています。
今回の作品も本当はイヴに上げる予定だったんですが、間に合いませんでした。
休み欲しいなあ・・・・・・
まあ周辺事情は置いておいて、番外編とはいえついに彼が主役となりました。
もっと前に出せてればハルマゲドンも起こせたんですけど、今回はここまでです。
次はもっと大活躍させたいですね。
それでは次回に・・・・・・
「しっとマスクスーパーモード!ダブルトルネードアターーック!!」
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クリスマスイヴを寂しく過ごした方々(私も含む)に捧げます