第百六十九技 傷を癒す者
キリトSide
話し終えた俺とクラインはアスナとカノンさんの元に歩み寄った。
「あ、お話し終わったの?」
「あぁ。お互いにすっきりした感じだ」
アスナが俺に訊ねてきたの軽く答えた。
「なら良かったわ、それじゃああたしはこれで「ちょいと待ってくれ」……えと、なんでしょうか? クラインさん…」
「カノン、今度はオメェに話があるんだ」
「あたしも、ですか…?」
クラインに呼び止められて、戸惑い気味であるカノンさん。
自分の過去を知られた後ならば不安なども当然あるのだろう。
「大事な話しなんだ。手間は取らせねぇつもりだ…」
「………分かり、ました…」
迷った末に答えたカノンさん。それなら俺達は…。
「帰ろう、アスナ…」
「ぁ、ぅ、うん…」
アスナも少々戸惑っているが、俺は彼女の手を掴み、≪転移結晶≫を二つ取り出してから使い、共に自宅へ戻った。
その際に、クラインに目で頼むと伝えたつもりだ。
キリトSide Out
カノンSide
キリト君とアスナちゃんが帰ってしまい、クラインさんとたった二人で残されてしまった。
いつもなら嬉しいところだけど、今は自分の過去を知られて、人を殺すところを見られて、そのせいで辛い…。
いまから話すことが分からなくて、怖い…。
何を言われて、何を聞かれるのかが、それだけでも…怖い。
「……キリトから、全部聞いた…」
彼がそう言った。キリト君から聞いた? 全部? どんなこと? まさか……。
「『嘆きの狩人』のこと、狩人が生まれた経緯と理由、カノンが『
「っ……そぅ、です、か…」
知られてしまった、全部…。
あたしはクラインさんの顔を見ることが出来なくなり、俯いてしまう。
そこに彼が近づいてきて…、
―――ぽふ、なでなで
「よく頑張ったな」
「え…?」
そう言って頭を撫でられた。いきなりのことについていけず、ボケッとしてしまう。
「あの、なん、で…」
あたしがそう言うと、クラインさんは苦笑しながら喋り始めた。
「カノンの過去を知って、今のことも知って、無茶してて、無理してるってのがよく分かった。
だから、もういいんじゃねぇのか? 甘えても」
「甘えてもいい」…それは、誰にでもいいから、あたしが一番言ってほしかった言葉。
だけど、まだ心がそれを良しとしない。
「だめ、ですよ……あたしは、キリト君達のお姉さん、ですから…。彼らよりも、強くないと、いけないん、です…」
そうだ、あたしよりも年下の彼らはあそこまで強い。
なら、せめて心はあたしの方が強くないと…。震える声でそう伝えた。
「キリト達だって、甘えてんだよ。
あいつ、『アスナがいなかったら、俺の心はとっくにボロが来ているはずだ』って、そう言ってた。
多分、ヴァルやハクヤ、シャインとティアも同じなんだろ。
勿論ハジメとルナリオも……皆、仲間や友達、大切な人に甘えてんだ」
「で、も……あたし、は…」
これ以上優しい言葉を掛けられたら、あたしは…。
そう思った時、あたしの体はクラインさんによって抱き締められた。
「もう、強がんなよ…」
「っ、ぁ、ぅ…うぅぅ……」
もう、涙が堪えきれなかった。
あたしは抱き締めてくれる彼の腕の中でしばらくの間、涙を流し続けた。
クラインさんはその間も、静かに、ただ優しく頭を撫でていてくれた。
しばらく泣き続けてようやく落ち着いたあたしは、今の状態は非常に大変な状況なのではと瞬時に理解した。
けれど、どうにも名残惜しくて離れられない…///
だからどうしても聞きたいことを聞いてみることにした。
「あの、クラインさん…」
「あ~、なんだ///?」
少々顔を紅くしている、照れているのだろうと思う。けど今は…。
「どうして……優しくしてくれるんですか…?」
「んなもん……好きだからに決まってるじゃねぇか…///」
「ぁ…//////」
あたしは自分の顔が真っ赤になるのが分かった。それと同時に、嬉しさが込み上げてきた。
「そりゃあキリト達みてぇにイケメンじゃねぇし、24になったおっさんだけどよぉ…」
少し拗ねた感じに言うクラインさん。
「そ、そんなことないですよ…年上の魅力といいますか、その、そういうのもあると思います…///」
それを聞いて少し呆気にとられた彼にそのまま話し掛ける。
「あたし、ホントは甘えたがりです…」
「おう」
「女の人どころか、男の人にも嫉妬するかもしれません…」
「そりゃ当然だ」
「その、恋愛経験無しですから…子供っぽいかもしれません…」
「子供っぽいってのはいい。恋愛経験無しってのは、俺が初めて?」
「は、はい//////」
「すんげぇ嬉しいぞ」
「っ…あたしも、クラインさんのことが好きです//////」
―――チュッ
あたしはそのまま彼の唇にキスをした。
クラインさんは驚いており、あたしが離れると自分の頬を抓ってから、顔を俯かせて両手を力強く握りしめた。
あれ、どうしたんだろう?
すると…、
「ぉ、おっしゃぁぁぁぁぁ!!!」
「ひゃあ!?」
いきなり大きな声を上げました。どうやら喜んでくれたみたい……だけど。
「あ、あの…誰もいないけど、恥ずかしいのでやめてください…//////」
「あ、あぁ、わりぃ///」
少し申し訳なさそうに、だけど嬉しそうに苦笑したクラインさん。
本当にあたしも嬉しくて仕方が無い///
けどクラインさんはハッとした表情をすると、少し思案した顔をし、そして何かを決意したようだ。
ウインドウを開き操作してから、
「よし……えっと、カノン! 俺と、結婚してください!」
―――『プレイヤー・クラインからプレイヤー・カノンに結婚が申し込まれました』
そのメッセージウインドウが現れた瞬間に、彼は頭を下げた。あたしの答えは、決まっている。
「こちらこそ、不束者ですがよろしくお願いしますね///」
―――『プレイヤー・カノン、プレイヤー・クラインからの結婚の申し込みを受諾しました』
クラインさんは顔を上げると、再び喜びながらガッツポーズを取った。
あたしは、強くなれる。大切な人がいれば、どこまでも…。
こうしてあたしとクラインさんは、夫婦となった。
カノンSide Out
To be continued……
後書きです。
どうだ! ウチのクラインさんはカッコイイだろう!
他のメンツに比べて糖分は少ないが、これぞ大人の対応ってやつだ!
さて・・・次回も甘いぞ~w
ではでは、また・・・。
Tweet |
|
|
22
|
7
|
追加するフォルダを選択
第百六十九話です。
甘いですよ、濃くはないですが甘いですよw
では、どうぞ・・・。