第百六十八技 明かす正体 カノン編
キリトSide
戦いも終わって、取り敢えずは今回の一件も終わりだと言えるだろう。
最早『
PoHは逃げたが、
最近では俺達『嘆きの狩人』もあまり動かなくなってきたからな。
改めて思うと、これで一つの区切りになったんだと思った。少しばかりホッとする。
そして集まった討伐軍の面々は続々と≪転移結晶≫を使い、自分達の帰るべき場所へと帰っていく。
俺は今回戦いに参加した仲間達を見回して、言葉を掛けることにした。
「さて、まずはみんなが無事で良かった。
かなり心苦しい戦いだったと思うけど、生き残れたっていうことで……ま、あまり長くなるとあれだからな。
それじゃ、今日は解散ってことでまた後日な」
「「「「「お疲れ様(でした)」」」」」
その言葉で各自が転移結晶を取り出したり、街に向かおうとする中、クラインが俺に近づいてきた。
「キリトよぉ、ちょいといいか…?」
おそらくはカノンさんの事だろうな。
「……分かった。カノンさん、アスナのことを頼みます」
「え、えぇ…」
少し戸惑った様子で答えたカノンさん。黒衣衆のメンツも少しばかり心配そうな様子である。
風林火山のメンバーもどうしたものか、という感じだ。
「あ~、わりぃけどオメェら先に戻っててくれっか?」
クラインにそう言われたので、風林火山のメンバーは一応納得したようだ。
「それなら念の為にハジメとルナリオ、送ってやれないか?」
「……構わない」
「いいっすよ」
「悪いな、疲れているだろうけど頼むよ」
ハジメとルナリオは風林火山のメンバーと共に彼らを送っていった。
「ハクヤとヴァルも先に帰れよ、リズとシリカを安心させろ…」
「ぅ、分かった…それじゃあ、おさき…」
「それでは、失礼します」
ハクヤは『リンダース』に向けて転移し、ヴァルは現在シリカと同棲している『フローリア』に向けて転移していった。
「んじゃ、俺達も帰るわ」
「さようなら」
「俺も帰ろう。おつかれ」
シャインとティアさんの二人も自宅へと帰っていき、エギルも自身の店兼自宅へと戻っていった。
残された俺達四人、俺とクラインはアスナとカノンさんから少し距離を取って話しをすることにした。
「それで、話しっていうのは……まぁ、カノンさんのことなんだろうな…」
「おぅ…。キリトはよぉ、カノンの従兄の兄ちゃんが殺されたっていうのは、知ってたのか?」
「いや、さっきティアさんから初めて聞かされたよ…、
あとカノンさんがデモントを殺したことも、シャインから聞いた…」
「っ!?……そうか、やっぱ誤魔化しきれてなかったか…」
クラインは不甲斐なさげにそう言った。
この様子ならば大丈夫だろう、俺はそう確信めいたモノを感じ、彼に伝えることを決めた。
「彼女の境遇が変わることはない。シャインも上手く誤魔化してくれただろ?
それに……俺達が、カノンさんが人を殺したのも、初めてじゃないからな…」
「っ、キリト…そりゃどういうことだ…?
いや、確かにオメェが前回の討伐戦の時に二人殺しちまったっていうのは聞いたけどよ…。
カノンも初めてじゃないってのは…」
驚きと戸惑い、その感情に揺れるクライン。だけど、コイツなら大丈夫だと俺は思える。
「そのままの意味だ……クライン、真実を知る覚悟はあるか?」
「真実…?」
「ああ。場合によっては、お前は俺達との関係に悩むことになるだろう。
カノンさんとの関係も、だ……それでも、知りたいか…?」
しばし、目を瞑り思考に耽っている様子のクライン。
だが目を開くとそこには決意の火が灯っているのが分かった。この男の心は…強い。
「聞かせてくれ、キリト…俺は、お前達を、カノンを信じてぇからな…」
「分かった……」
クラインの返答を聞き、今度は俺が覚悟を決めた。相変わらず、これを話すのには心が痛むし揺れるな…。
「俺達『黒衣衆』にはもう一つの姿がある………『嘆きの狩人』、それが俺達の正体だ…」
「っ!? お、おい、そいつは…え? マジ、なのか? 冗談でも、笑えねぇぞ…」
「自分で誤魔化そうとするな。言っただろう、真実を知る覚悟はあるのかってな…。
お前はあると言った…俺はそれに応えた。そしてこれが答えだ…」
「っ……理由を、教えてくれねぇか? オメェらが、何で狩人になったか……理由があんだろ?」
クラインの問いかけに、俺は『嘆きの狩人』結成の理由を語った。
かつて俺達が迷宮に入った際にオレンジギルドに襲われたこと。
やむを得ず、俺がオレンジプレイヤーを殺したこと。
それを共に背負う為に、みんなも手を汚すことになってしまったこと。
クラインは俺の話しを静かに聞いていたがその身を震わせている。
「以上が、俺達が狩人になった経緯だ。ちなみに、今ではアスナも狩人の一人だ……人は殺していないけどな…。
あとはリズとシリカも知っているし、協力者としてシンカーさんとマスターも知っている」
「そう、か…」
色々と衝撃が大きかったんだろうな、かなり動揺している。けれどこれだけは伝えたい。
「俺達への接し方は、お前が決めてくれて構わない。
ただ、カノンさんの心の傷は俺達では癒すことはできない。
だからクライン、カノンさんを頼む…」
俺はそう言って頭を下げた。するとクラインから、盛大な溜め息が漏れ出た。
「キリト……あまり俺を甘く見るんじゃねぇ。
そりゃあ驚いたけどよぉ、お前達はお前達のまんまだ。
正直言うと、エギルの言った通りで、オメェらにこんな事させてたのが悔しい…。
ならせめて、俺は俺に出来ることをやるだけだ」
そう言って親指を立てるクライン。俺はホントにバカなんだろうなぁ…こんなにも頼もしいじゃないか。
「話し聞いて腹括った……俺は、自分の想いをぶつけるぜ」
「そっか……なら、カノンさんを頼む」
「任せな!」
俺達は笑い合いながら、拳を作ってぶつけた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
クライン・・・漢だじぇb
などと自分で書いていて思いましたw
しかし、彼がもっと漢らしいと思うのは次回かもしれません・・・。
ついに次回は、告白じゃぁぁぁ!
それでは・・・。
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第百六十八話です。
カノンの正体をクラインが知りますが・・・カノンは明かしません。
どぞ・・・。